【第03回】“アンチ天才”のボトムズ流仕事術

「一番になれないと、不安かい?」

“アンチ天才”のボトムズ流仕事術
2007年912⽇(⽔) 渡辺 由美⼦

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⾼橋 宮崎(駿)さんや富野さん、押井さんがいて僕もいる。「あれもあれば、これもある」ということがいいんじゃないですかね。

高橋良輔,ボトムズ
「現場監督」⾼橋良輔⽒
(写真︓⼤槻 純⼀、以下同)

⾼橋 たとえば、僕は⾞が好きなんだけど、⽇本ではアルファロメオってやたらと⼈気がありますよね。クルマ雑誌を開けば載っている。だけど、総合的に⾔って、まぁ、どうでしょって⾞じゃないですか(笑)。どうでしょって⾞なんだけど、“味”があるんですよね。

 僕が中学ぐらいの時、落語が最盛期だったんだけど、僕はその時期が⼀番好きなんだね。当時は“伝説の”⼤師匠たちがいっぱいいたわけですよ。どんな伝説かというと、志ん⽣なんていうのは、酔っぱらって⾼座に⼊ってきて、語ろうかなと思ったら眠くなっちゃって……⾼座でスースー(笑)。でも、まあひいきの客が、いいから少し寝かせておけみたいな。今の感覚では、えっ︖ と思うんだけど、そういう落語家もいたから⾯⽩かったんですよ。

―― 今⾔われた“味”というのは、主流とか定型、数値化できる⽬標値とかとは違う⽅向にあるということですか︖

⾼橋 何でも規模を⼤きくして勢⼒を拡⼤していくのとは違う、ということですね。僕の理想は、規模は⼩さくても⻑くやっている「専⾨店の名店」。飲み屋さんでもお菓⼦屋さんでも何でも。味があるじゃないですか。積み重ねがあって、付加価値がある。

―― そうは⾔っても数値⽬標は、誰でも納得できる透明感があって、分かりやすいですよね。

⾼橋 時代の象徴として使わせていただくんですが、“ホリエモン”(堀江貴⽂⽒)がいるでしょう。彼はやっぱり、「勝つか負けるか」なんですよ。勝つか負けるかの基準は、「時価総額」という経済的な⾦銭の多寡か、いずれにしても企業のランクとか規模ということなんでしょう。

 でも、規模が⼤きくなると、いろいろと⼤変じゃないですか。

売れないものと、売れているものの間

⾼橋 さっき⾔った専⾨店の名店だって、3代⽬が事業欲を起こして全国展開しようとしたら、中⾝が変わっちゃう。会社として規模が⼤きくなるとチェーン店化しますよね。

 いろいろなお客さんに合わせることで、失われていく味もあるわけで。⾯⽩くもおかしくもなくなっちゃう。

 商売として成⽴していれば、「何も⼀番たくさん売れなくたっていいじゃない」、ということもあるわけですよ。本当は、売れないものと売れているものの間によいものがあるとしても、⼀番いけないのは、売れている⽅向だけにみんながなびくということじゃないかなあ。

―― 「⼀番志向」を否定されるわけじゃないんですね。

⾼橋 ええ。僕は、ホリエモンのような⼈がいない世界は寂しい気もするんですよ。だけど、⼀番になれたら、誰でも必ず幸せになれるかというと、そんなことはないと思うんですよ。⼀番になろうとする前に、あなたが幸せになるためには、⼀番と味、どっちにあるかを考えたほうがいいよ、と。

 結局、僕はいつも、何らかの形で最後にはそこに強引に結び付けるんですけど、あらゆることは「幸せ論」にかかってくるわけですね。幸福感っていろいろあっていいと思うんですよ。

 いつも勝者である必要はないというか、場合によっては、あえてトップを狙わないで、3番⽬の居⼼地がいいんだという⽣き⽅もあるはずなんですね。そうすると、「意気地なくなる」ことをあまり恐れない。

 ⼭登りで全員が頂きを⽬指さなくてもいいんですよ。頂きを極める楽しみもあるけれど、⼭麓を散歩する楽しみもあるわけで。

―― ⼀番になる、なれない、という考え⽅は「才能」があるなしのお話にも繋がっていると思うんです。才能とか成功というのは、どうしても、あるorなしの⼆元論で語られがちです。0か100か、のような。

―― 私⾃⾝や、周囲の若い⼈でもそうなんですが、頑張った仕事で評価されないとか、就職活動で会社をひとつ落ちると、⾃分の能⼒が全否定されたような気がして、ああ⾃分には能⼒がないんだと落ち込んだりするんですね。

⾼橋 そんなことはないですよね。0か100かなんていうことは。

 ⾃分にはどんな能⼒があるかを考えて、そのうえでどうしたら⾃分が幸せになるかということをある程度真剣に考えると、会社に期待しなくなるんですよ。

―― 会社に期待しなくなる?

⾼橋 だって、会社ってそんなに簡単に変わらないと思う(笑)。さっきおっしゃったように、⼤勢で働くところだったら、当然、「数字」で判断することがどうしたって多くなるし、そうなると数字という結果が⽬的化してしまう。味で評価してくれ、って期待しにくいよね。当然。

俺は、味でいく。そう決めたら考えるべきこと

高橋良輔,ボトムズ
⾼橋良輔⽒

⾼橋 じゃあ会社を⾃分で変⾰するかといったら、⼤変な労⼒がかかる。変化することを期待しないわけではないけれど、期待し過ぎても、そう簡単には変わりませんからね、会社というのは。⼤勢の⼈間でできているからね。

―― 「会社に期待し過ぎると不幸だ」ということは分かります。でも、会社に期待し過ぎないことが、イコール⾃分の幸せに繋がるとは思えないんですが……。そんな会社だったら辞めてしまった⽅が、というのが、いまの考え⽅のように思えます。

⾼橋 味でいく、と決めたら、決めたなりのやり⽅があるということですよ。数字のうえから⾒たら「ボトムズ(最低野郎)」扱いされるかもしれませんが、そこでしぶとく⽣き抜いてやるんですよ。

―― 数字で⼀番になることが幸せに繋がらない“味志向”の⼈間は、どうやったら会社でしぶとく⽣き抜くことができると思いますか︖ 具体的に、どんな⼿があるのでしょうか。

⾼橋 まず、組織の中で「⾃分の⽴ち位置」を考える。それが、ものすごく必要なことだと思うんですよ。そうすると、⾃分が「味」で勝負するのに必要なものが⾒えてくるんです。これができれば若い⼈も、⼊った会社をすぐに辞めたいとは思わなくなるんですけどね。

―― そうなんですか︖

(次回に続く)


※本連載は、2007年に公開されたインタビューのリバイバル掲載になります。 


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