【第05回】“アンチ天才”のボトムズ流仕事術

「ワガママで、組織の論理をねじ伏せる」

“アンチ天才”のボトムズ流仕事術
2007年9月26日(水) 渡辺由美⼦

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⾼橋 今の新作「ボトムズ(ペールゼン・ファイルズ)」はサンライズ本社ではなく、インタラクティブというゲーム部⾨を⼿がけている系列会社で制作しているんですよ。そのインタラクティブの塚⽥君が「ボトムズ」をどうしてもやりたいと⾔ってきた。

高橋良輔,ボトムズ,サンライズ,矢立文庫
「現場監督」 ⾼橋良輔⽒
(写真:⼤槻 純⼀、以下同)

 

⾼橋 最初はできる状態じゃなかったですよ。「ボトムズ」はサンライズの本社で作っていて、サンライズの財産と⾔われているのに、何でそっちの会社に、と。(インタラクティブにはアニメの)映像の制作体制も何もないじゃないか、というところがあったんです。

―― サンライズ本社ではなく、系列会社で作りたいと。それはちょっと難航しそうですよね。塚⽥さん、ちょっと事情を聞かせてください。

インタラクティブ・塚⽥ インタラクティブの社内には、以前からゲーム以外の仕事もしていきたいよね、という声がありました。それで僕の⽅にも、映像も作っていきたいという思いがあったんですよ。

 でもそれをやるには、⼀発⽬からオリジナル作品、というのではリスクが⼤きいですよね。それで、サンライズのコンテンツでこれをやれば当たるよねというタイトルを指で折っていって、そこにはまったのが「ボトムズ」だった。サンライズで⾔えば「ガンダム」と「ボトムズ」は⼀応双璧ですから、「ボトムズ」をやりたい、やりたいと3年ぐらい前から、ずっと⾔っていたんです。

―― 3年前からですか。

塚⽥ はい。うちでも映像をやりたいですという話をずっとしていたんです。社内の役員会で。でも「ここはそういう会社じゃないから」と返されていたんです。それでも念仏のように唱え続けていたら、ある時、急に役員会で「そうなの、やりたいの?」と。こちらもそう⾔われて「あれ? そう⾔っていませんでしたっけ、3年間」って(笑)。

 それで「やる」という話に急になって、じゃあ監督とお話をして、ということで。

⾼橋 これはやっぱり、⾔った⼈が熱があるからなんですよ。しつこさも含めて。

 僕としても、やりたいという⼈がいた時に……⾔ってみれば、そこには僕の好きな“遊撃隊のロマン”というものがあったんですね。

―― 遊撃隊のロマン?

⾼橋 「⼤きな組織の中に少数精鋭部隊を作って頑張る」という。

実は「もうボトムズはやり尽くした」と感じていた

―― そう⾔えば監督の作品には、⼩規模な特殊部隊が活躍するものがたくさんありますね。

⾼橋 やりたい⼈がいて、その熱を⾒て、僕⾃⾝もそろそろやってもいいよねというふうに、気持ちが変わってきたんです。

 僕は、「ボトムズ」に関しては、もうやり尽くした感があったんです。僕は「新しいこと」が好きで、アニメにはいつも新しいことを⼊れたいと思っているんだけど、「ボトムズ」に関してはもうその要素はないと思っていたんです。だから最初は気が乗らなかった。でも新しいことの1つに、3Dを取り⼊れるというのがあったんですね。

 今回も「ボトムズ」を好きな⼈ほど「⼿描きでやってほしい」と⾔う意⾒が強かった。でも僕は3Dでやってみたい。結果が良くなければその⼈たちを裏切ることになるんだけど。でも、僕は3Dの可能性みたいなものと「ボトムズ」という作品が、どこかで繋がるんじゃないかなという気がしたんですね。

 それで僕からも、サンライズに「ボトムズをインタラクティブでやらしてよ」と⾔うと、サンライズの制作のトップの内⽥さんや富岡さんとかも、僕との⻑年の関係があるから、「しょうがねえな、最後のワガママだろうから⾔うこと聞くか」って。

 やりたいことをやるためには、あまり論理的じゃないほうがいいんです。はたから⾒たらまるでワガママのように、「どうしても、3Dでやってみたいんだ」みたいに⾔うほうが通る。論理的にやるとかえって反発されることもありますからね。

―― そうなんですか? 会社というのはこう……理屈が通っていないと、やりたいことが通らないような気がしますが。

⾼橋 ⼈間というのは、あまり理屈でもっては説得されないですよ。

 感情か、あとは「よく分からないけど、もうしょうがない。あいつがあそこまで⾔ってるんだから」とかいう⽅がいいわけですよね。

―― それは、「会社が理屈より情熱を重視してくれる」というより、監督がサンライズとの⻑年の関係があるから「個⼈的にワガママが利く」のではないですか。

⾼橋 確かに、⻑年のつき合いの積み重ねだから通るたぐいのことかもしれませんね。でも、情熱を否定して、論理だけで押し切るのは無理です。

 やっぱり社会を動かしていくことの相当⼤きい⼒は⼈間関係ですよ。底の⽅に横たわっているというか、とぐろを巻いていますよね。組織も個⼈も、今までつき合ったことと、これから付き合っていくことの間に⼈間関係というものがあるわけですから。これを抜きにすると、と⾔うより無視すると、なかなか⽣きづらいんじゃないかなという感じはしますよね。

じゃあ、⼈間関係はどう築く?

―― 最後は、⼈間関係がものを⾔う。

⾼橋 だってそれしかないですもん。

―― 「⼈間関係がものを⾔う」ということになると、逆に、⼈間関係をうまく築けないと、組織の中で⽣き抜いていくことは難しい……? もうぶっちゃけて⾔いますと(笑)、フリー業の私なんかですと、やりたいことを押し通すことも重要ですが、それ以上に、これから先もこのまま⾷べていけるのか? という不安があって。

高橋良輔,ボトムズ,サンライズ,矢立文庫
「現場監督」 ⾼橋良輔⽒

 

⾼橋 僕は、僕より年下のフリーの⼈で、⾷えなくなっちゃう──アニメ業界の商売って、結構⾷えなくなっちゃうということに直⾯することがあるんですけど──そう⼼配する⼈に、いつも⾔っていることがあるんです。「⾷っていくための、ものすごく具体的な⽅法」があるんですけどね。

―― えっ、アニメ業界でですか!? アニメ業界って、失礼を承知で⾔いますと、⼈気はあるけど雇⽤が不安定で、⾷えなくなる⼼配が他の業界よりもさらに⼤きそうな。⼀体どのような⽅法が……?

(次回に続く)


※本連載は、2007年に公開されたインタビューのリバイバル掲載になります。 


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