【第06回】“アンチ天才”のボトムズ流仕事術

⾷いっぱぐれない⽅法は、ひとつだけ

“アンチ天才”のボトムズ流仕事術
2007年10⽉3⽇(⽔) 渡辺由美⼦

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―― これさえやれば、雇⽤が不安定と⾔われているアニメ業界でも⾷べていける、その秘法とは?

⾼橋 とにかくどんな⼩さくてもいいから、事務所をつくる。

高橋良輔,ボトムズ,サンライズ,矢立文庫
「現場監督」 ⾼橋良輔⽒ (写真:⼤槻 純⼀、以下同)

―― はい。

⾼橋 ⾃分1⼈でもいいし、仲間がいればなお結構。それで電話がかかってきた時に、丁寧に応対するんです。より具体的に⾔うと「電話をかけた側が『電話代を損した』と思わない対応をすること」。これだけ。

―― …え(笑)。来た電話に、丁寧に応対するだけでいいんですか?

⾼橋 それはどういうことかと⾔うと、電話をかけてくる相⼿というのは、企画をやっている⼈、営業の⼈、「さあ、次に何かやらなきゃいけないんだ」という⽴場の⼈なんですね。

 僕が、「スタジオあかばんてん」という事務所を運営していた時がまさにそうだったんですけれども、「企画が思いつかない、誰かいないかな」といった時に、「良ちゃんに電話して、ちょっと話でもさせよう」となることが多いわけですよ。
 それはなぜかっていうと、どんな⼈でも、困っちゃったなという時は、「電話しやすいところ」にかけるから。

―― (笑)。そうですね。困っている時に話しやすいところがあったら、まずはそこに電話しますよね。

⾷うことができれば、次が⾒えてくる


⾼橋 電話しやすいところに電話して、それなりの答えが来たらば、その次もまた電話するわけですよ。そうしたら、「次はこういう仕事をやりたいんだけど」って続いて、絶対に⾷えるんですよ。

 つまり、弱みを抱えている者同⼠の場合、絶対に、⼈間をまるっきりのタダで使おうなんてふてえ奴はいないんですよ、世の中に(笑)。そんなことを考えていたら、すぐに⾃分が⾷えなくなります。だれも⾔うことを聞いてくれなくなるから。

 電話の応対は、何も丁寧な⾔葉じゃなくてもいいんです。その⼈なりの誠意のある対応で、電話をした⽅が「かけ損だった」と思わせなければ。僕が「⾷えなくなる」という恐怖感が今までなかったのは、その1点だけですね。

 ⾷うことを確保すれば、⾃分のやりたいこととか次の展望というのも、余裕を持って迎えられるじゃないですか。

―― あっ、そうですよね。将来への不安が解消されれば、⾃分がやりたいことにも全⼒で取り組めますよね。でも⼀⽅で、「電話に出たら即、⾷える」に繋がらないかも、とも考えてしまうんですよね。

―― だって電話に出ても、もし⾃分に相⼿が望むような能⼒が無かったら、仕事⾃体を断らざるを得ないし……。

高橋良輔,ボトムズ,サンライズ,矢立文庫
「現場監督」 ⾼橋良輔⽒

⾼橋 それはあります。でも、⾃分はこの仕事には向かないといった時に、ただ断るのではなくて、適した⼈がいたら紹介するということだって、電話をかけてくる相⼿にとってちゃんと役に⽴つことじゃない。そのことだけでもね、相⼿はちゃんと覚えていて、また電話をかけてきますから。

―― なるほど︕ ⼈を紹介していくだけでも⾷べていけると(笑)。

⾼橋 だけど世の中には、それを分かっていても、「こういう仕事があるんだけど」と紹介の電話をするのも苦⼿な⼈がいるわけですよ。これはしょうがないですね。電話をするのがうっとうしい、しんどいという性格の⼈もいるから、それはその⼈にやれと⾔っても無理。それは仕⽅がない。

 でも⾒知らぬ会社や家のドアをたたいて「すみません、我が社の商品を」と⾶び込み営業をすることに⽐べたら、仲間内だけで電話をかけ合うなんてすごく楽ですよ。僕の場合は、そういうふうに考えるということなんですね。

⼈をうまく仕事を振るコツは︖


―― 電話をしやすい相⼿になる努⼒、他の才能につなぐ紹介⼒、どれも先ほどの⼈間関係のお話に関わってきますね。

⾼橋 最終的にはね。

―― 「⼈に仕事を振る」と⾔えば、「⾼橋監督は⼈に任せるのがうまいとか、⼈を使うのが抜群にうまい」という評判をよく⽿にするのですが。

⾼橋 本当はそんなことありません。ええ、本当はそんなことないんですね。

 もちろん⼈にやってはもらっているんですけど、僕が⼈を使うのがうまいから、やってもらえているということじゃないですね。だって僕は、⾃分のやりたいことしかやらないというのが基本ですから。

―― そう⾔いながら、これだけの評判を獲得する理由は何なんでしょうか。

(次回に続く)


※本連載は、2007年に公開されたインタビューのリバイバル掲載になります。 


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