【第07回】「GEAR戦士電童」20周年記念連載
「スーパーミニプラ」シリーズも大好評!! ますます盛り上がる『GEAR戦士電童』20周年企画。
今回は、キャラクターデザイン、総作画監督を手掛けられた久行宏和さんと、総メカ作画監督を手掛けられた重田 智さんに当時のお話を聞いていきます。
◆第7回「電童」に関わるきっかけ、メカデザインについて!
――まずはお二人が、電童に関わられたきっかけは何だったのでしょうか?
久行 まだ『サイバーフォーミュラSIN』の作業をやっている時に、プロデューサーの古里さんに声を掛けていただいたのが最初ですね。サイバーの最終巻の作業をしながら、電童のキャラクターデザインを進めていました。電童は当初2000年4月に放送開始の予定で、サイバーの発売が2000年3月でした。どうしても作業が被ってしまうので、1話の作画監督が出来なかったというのが心残りですね。「サイバーを止めて、電童をやらせて」とお願いしたのですが、「お前はサイバーをやらないとダメだ」と言われました(笑)。その後、電童の放送は10月になったのですが、既にシフトは決まっていたので、変更できませんでした。
重田 久行くんと同じで、サイバーをやっているときに、「次にこういうものをやるから参加して」と言われたのが最初ですね。手脚に回転するタイヤがついていて、それを駆動力としてロボット本体が大の字になってグルグル回ると説明されたんですけど、最初はコレをいったいどうやって映像で見せるんだろうと思いました。ロボットのデザインは阿久津さんが進められているということでしたので、自分はサイバーが終わってから参加すればいいのかなというくらいに構えていましたが、制作が進む中で電童と凰牙のアニメ用の作画設定が欲しいという話になり、描かせてもらうことになりました。これが初めてのことだったので手探り状態でした。設定画は、それを初見で見せられたアニメーターが間違いなく描けるかどうかという所が重要ですので、そこを考えながらの作業でしたね。特に腿から膝にかけてのデザインが複雑なのですが、デザインを省略しすぎてしまうと電童の特徴もなくなってしまうようで、悩んだ末に描いたのが設定画になっています。でも、初めての作業ということもあって、楽しかったですね。
久行 あの腿は、円柱の間に板が挟まっている形で描きにくいですよね(苦笑)。あと見ている人にはわからないだろうと思ったけど、タービンの溝が電童と凰牙で逆になってますよね。
重田 アレは電童の設定を描いた後、反転コピーを取って凰牙を描いたからですね(苦笑)。共通パーツが多いので反転した絵を下敷きにして、反転になるところは描き直そうと思ってたんですよ。でも、同型のボディで敵と味方だから合わせ鏡のようで意味深な感じが出せるかなと反転のままにしました。
――電童は、デザインにプラスとマイナスがあるなど、対になる要素も多いですよね。
重田 電童と凰牙の飛行ポーズやアクションポーズも、それぞれ手がグーとパーになっているんですけど、アレも設定画を描いている時に、どうしようかと久行くんに相談しましたね。
久行 福田監督が「脚を開いて立っているポーズが決まらない」と言って嫌がっていたので、だったらウルトラマンみたいにポーズを付けたらいいんじゃないって言って、「ウルトラマンガイア」のDVDを福田監督に貸したのが始まりですよ(笑)。
重田 電童は、銃や盾を持っていないので、ある意味ポーズを決めるのが難しいんですよ。そういうデザインだったので当然格闘ものでやっていくんだろうと思っていたら、早々にデータウェポンが出てきて必殺技の撃ち合いになりましたけど…(苦笑)。データウェポンとギアコマンダーに関しては、ほぼ阿久津さんのデザインのままで、線を減らしただけですね。「このまま現場に下ろすと大変なので、ディテールを作画作業がしやすいように何割減にして」と言われたので調整しました。輝刃に関しては時間がなくて阿久津さんのデザインはまだラフでしたので、こちらでクリーンナップをしました。フェニックスエールは、久行くんのデザインですね。
久行 フェニックスエールは最終回のネタとして出すだけで、商品化もする訳ではなかったので、なんとなく現場でデザインする流れになったと思います。映像に出てくるだけなので、そんな苦労した記憶はないですね。でも、神殿のシーンで出てくる曼荼羅みたいなヤツの方が大変でした(苦笑)。しかし、まさかフェニックスエールを本当に商品化するとは思いませんでした(笑)。
重田 アカツキの大太刀も出るんですよね。今見返すと、よくあのデカい剣を4:3の画面に収めていたなって思いますね。当時はそれが当たり前だったんですが、今は16:9の画面に慣れてしまったので…。特にサイバーフォーミュラみたいにマシンを横に並べる絵面は、16:9の方がよかったと思いますし…(笑)。
久行 僕も16:9に変わったばかりの頃は、ロボットの全身を収めるカットとか描きにくくて苦労しましたね。
重田 最初の頃、何話かは作監をしていたんですけど、途中からOPとかDNに専念してくれって言われて…。最終回には作画監督でテロップに入ってますけど、1話まるまるは作監していないんですよね。だから、実はストーリーも細かくは把握していたりしないんですよね(苦笑)。来る日も来る日も、必殺技とかで、電童と凰牙しか描いてないなくて、毎話数どんな敵と戦っているのかもあまり知らなかったんです(苦笑)。
――久行さんは、機獣のデザインもされていますね。
久行 「勇者シリーズ」でもなく、「エルドランシリーズ」でもない新しい子供向けロボットアニメの敵メカって何だろう? 電童の世界観なりの敵メカってどうなんだろう? 毎回、毎回、子供たちに覚えてもらえるような敵メカ作ろうよという話はしていました。最初は別の方はやる予定だったのですが、意見を出している内に半ば強引に仕事を取ってしまうような形になってしまいました。
重田 でも、久行くんが全部のデザインをやっていたから、敵の幹部も機獣もデザインが乖離していなくて良かったなと思いましたね。
久行 今の作品ですと、設定だけでもスゴイ量になっていますが、電童の時はまだそこまでの量はなかったので、ひとりでもやりきれたんだと思います。
重田 「勇者シリーズ」みたいに毎年やっていると、ルーティンも出来てやりやすくなっていくのかもしれないですが、電童みたいにポツンと新しいスタイルを立ち上げるとやはり大変ですからね。
――中盤には、敵もパワーアップしますしね。
久行 放送時期がズレた影響で、11話でデータウェポン争奪戦が終わって、凰牙が一時退場することになります。その後の展開に登場する敵が、これまでと同じ機獣でいいのか、弱く見えないかという話があって、設定としてパワーアップさせることになりました。最初から想定していたことばかりでなく、やっていく中で思いついてこうしようとしたことも多かった気がします。当時のスタッフも、子供向けのロボットアニメからちょっと時間が空いてしまっていましたから…(苦笑)。
重田 今ほどじゃないと思いますが、ロボットアニメが少ない時期でしたからね。知らない訳じゃないけど、作ってみてから改めて気付いたということもずいぶんとあったんじゃないかと思います。でも現場としては、久行くんの作業が一番多くて、大変だったんじゃないでしょうか? デザインでキャラクターと機獣を作って、さらに作画監督もやってと…。一番しわ寄せが行ってたんじゃないかな。
▲阿久津氏によって描かれた電童のデザイン画(上)と、重田氏によって描かれたアニメ用の設定画(下)。線を整理するだけでなく、アニメの演出も考慮されたプロポーションとなっている。
▲重田氏によって描かれた電童と凰牙の参考用アクションポーズ。電童は拳を握り、凰牙は手を開いたポーズとすることで、それぞれのキャラクター性を見せている。
▲最後に出現したデータウェポン・フェニックスエール。電童には巨大な翼、凰牙には二振りの刀となってインストールされる。
▲7体のデータウェポンが1つになったアカツキの大太刀を振るう電童。電童の3倍はあろうかという長さとなっている。
(つづく)