成長した戒道幾巳の設定を公開!さらに戒道外伝小説の冒頭も先行掲載!
君たちに最新情報を公開しよう!
『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~上巻』が6月22日に発売することを記念して、20歳になった戒道幾巳の設定画を特別公開!
木村貴宏さんの手で描かれた、成長した戒道の設定画がこちら!!
さらに、今回は特別に『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~上巻』書き下ろし外伝エピソード「勇者王ガオガイガーpreFINAL第3.5章 赤き流星の天使(アルマ)」の冒頭を先行掲載!下記よりぜひご覧ください!
勇者王ガオガイガーpreFINAL 第3.5章 赤き流星の天使 -西暦二〇〇六年-
1
その夜、十歳のユカ・コアーラは夜更けまで、本を読んでいた。昔、ドイツ人の兄弟が書いたと言われている童話集。天使が出てくる話が印象的で、つい夜更かししてしまったのだ。いや、東の空は白みはじめている。もう夜更かしですまされる時刻ではない。
ようやく眠気を覚えたユカは、開けっ放しだったカーテンを閉じようと窓辺に近づいた。室内は暖かいが、外気に触れている窓は冷たい。近づいたユカ自身の吐息で、たちまち白く曇った。
その曇りの向こう、払暁の空に少女は見つけた。
──地上に舞い降りてくる赤い流れ星を。
あわてて両手を合わせて、願い事をつぶやきはじめる。それは、ユカの友人たちが誰も知らない風習。ユカだけに亡き母が教えてくれたおまじないだった。
「えっと……」
たわいもない、だが本人にとっては一生懸命な願いの数々は、すべて言い切ることはできなかった。流れ星はあっという間に、丘の向こうに消えてしまっていた。しかし、最初の願いだけは言い終えたのではないだろうか。
(明日、流れ星が落ちたあたりに行ってみよう……)
そんなことを考えながら、ユカは眠りについた。
──オーストラリア大陸の中央部、北部準州の南端部。北半球では夏にあたる時期だが、この地域では当然のように冷たい空気が肌を刺す。だが、それも夜のうちだけのことだ。
日が昇るとともに気温は上がりはじめ、昼過ぎには気候の穏やかな国の夏くらいには暑くなる。
だから、夜更かしのせいで昼過ぎに目覚めたユカは、汗だくになっていた。日曜日で学校が休みだとはいえ、あまりにも寝坊が過ぎた。
最近、父が営む農場には、熱心な働き手がひとり増えたため、人手は充分に足りている。そうでなければ、ここまでゆっくり寝かせてはもらえなかっただろう。
新たな農夫に感謝しながら、ユカはシャワーを浴びて着替えた。朱色と白のボーダーに、黄緑のショート・オーバーオール。日差しに負けないよう、麦わら帽子も忘れずに。
家の外に飛び出して自転車にまたがると、愛犬が嬉しそうに小屋から飛び出してくる。
「おいで、ポチ!」
そう声をかけて、ペダルを全力で踏み込む。寒暖の差が激しいこの地域、昼間の空気は熱いが、乾燥している。自転車を漕いでいると、頬をなでる風が心地よい。
周囲には、駆除しても駆除しても湧いてくるバッタたちが跳ねている。そして、それよりもずっと高く飛び跳ねる野生のカンガルー。特にこの辺りには、最大種のレッドカンガルーが多い。同じく飛び跳ねるようについてくるポチとともに、ユカは丘の向こうへ自転車を走らせた。
「うわぁ……ほんとに……かなっちゃった」
それが、第一声だった。ユカの部屋の窓から見て、丘の向こうへ自転車で三十分。レッドカンガルーや、赤いバッタたちに囲まれた、草むらの上に横たわっているモノを見つけて、最初にあげた声である。
いや、モノというのは妥当ではない。それは人間──少なくとも、そのように見えたからだ。
ユカのようなソバカスはないが、少々スス汚れのついた頬は、若いツヤをたたえている。同じく綺麗な薄紫の髪。黒っぽいジャージのような上下服の上に羽織られた白い外套。胸元には、不思議な輝きを放つ赤い宝石が下がっている。ユカがこれまでの生涯で見た、どんな人とも違って見えた。
「一度でいいから、天使に会ってみたいってお願いが……かなっちゃった」
ユカがそう思ってしまったのも、無理はない。自分と同年代に見えるその少年は、現実離れしていて、とても普通の人間には見えなかった。昨夜、流れ星として降ってきたのが、この男の子だったとしたら、生きているだけでも常人ではありえない。
死んでいるようにも見えるが、生存の証拠に、赤い宝石を乗せた胸は、ゆるやかに上下している。
「ポチ、フラット!」
命じられるがままに、黒いシェットランド・シープドッグは伏せた。ユカは男の子の身体を転がすようにして愛犬の背に乗せ、自転車用の荷掛けロープでくくりつけた。一瞬だけ、不満そうな表情を浮かべたものの、よくしつけられた犬は、飼い主に逆らったりはしなかった。
2
「う……ん……」
かすかにまぶたが震えた。小さなうめきを聞きとめたユカがベッドに近づくと、男の子はゆっくりと覚醒するところだった。
いや、目覚めたとはいえない。それは単に、まぶたを開いただけだった。
(綺麗な瞳……)
半覚醒の目が、ユカを見る。だが、焦点は合っていない。ひどく疲れているのだろうか。ユカは枕元に用意しておいた、以前母が使っていた吸い飲みを、男の子の口に当てた。流し込まれる水をふくんでいるうち、自分で吸い始める。
どうやらのどが渇いていたようだ。少なからぬ水分を呑み干して、ようやく人心地ついたように、息を吐いた。
「はああ──」
「よかった、元気みたい……!」
「ここは……どこだ?」
「私の部屋よ。あ、私はユカ・コアーラ、あなたのことはポチが運んでくれたの!」
手柄を誇示するように、ポチが一声吠える。しかし、ユカに(静かにしてなさい!)という目でにらまれ、消沈したように丸くなってしまった。
「ユカ……ポチ……」
「ね、あなたは誰なの? 名前、なんていうの?」
「名前……名前か……あるはずだよな、僕にも……」
男の子は押し黙ってしまった。その表情は、名を明かすことを拒んでいるようには見えない。必死に思い出そうとして、苦しんでいる。
「思い出せないの?」
ユカの問いに、男の子は無言でうなずいた。
「あ、無理に思い出さない方がいいよ。クマチャンもね、記憶を失って、思い出そうとすると頭がズキズキ痛いって言ってたから」
「……クマ……チャン?」
「だから……帰る場所がわかるまで、うちにいていいし……」
「いいのか……?」
「うん、うち、部屋はいっぱいあるし。パパもかまわないって……」
「───」
男の子は無言でうつむいた。もしかしたら、頭を下げたのかもしれない。どちらにしても、悪い人には見えなかった。いや、それ以前に人には──
「ね、君、名前思い出せないんなら、“テンシ”って呼んでいい?」
「テンシ……?」
「だって、空から降ってきたように見えたから……」
明け方、流れ星を見たユカは、“本物の天使に会いたい”と願い事を唱えた。それは、母から教わった日本の風習である。流れ星が落ちたと思われる地に横たわっていた男の子は、天使にしか見えなかったのだ。
「僕は天使なんかじゃない、僕は……」
「でも、呼び名がないと不便だよ。思い出すまでは、テンシって呼ばせて、ね!」
「……」
今度はユカにもわかるように、男の子はゆっくりとうなずいた。
こうして、戒道幾巳は“テンシ”と呼ばれるようになった。
この時、西暦二〇〇六年六月。勇者王神話の狭間におけるささやかな挿話のはじまりだった──
いかがでしたでしょうか?
気になる続きは、ぜひ6月22日発売の単行本でお楽しみください!
単行本には、その他にも初公開となる勇者ロボの設定画も掲載されておりますので、どうぞお楽しみに!
覇界王~ガオガイガー対ベターマン~上巻
著:竹田裕一郎 監修:米たにヨシトモ
体裁:四六サイズ/360ページ
定価:本体1500円(税別)
発売日:2017年6月22日
レーベル:モーニングスターブックス
発行:新紀元社
ISBN978-4-7753-1504-0
URL:http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-1504-0/
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