『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』下巻が本日発売!書き下ろし外伝の冒頭を特別掲載!
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『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』下巻が本日9月29日に発売することを記念して、単行本書き下ろし外伝エピソード「number.EX 結-CEREMONY- 西暦二〇一八年」の冒頭を特別掲載!下記よりぜひご覧ください!
number.EX 結-CEREMONY- 西暦二〇一八年
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「……新郎たちよ、あなた方は新婦を健やかなる時も病める時も愛し、ともに生き続けることを誓いますか?」
西暦二〇一八年六月吉日、牧師姿の八木沼範行の声が、蒼穹に響く。参列者たちの間から、思わず……といった雰囲気の小さな感嘆がもれる。
「……おいおい、元長官、思いっきりハマり役じゃねえか」
参謀である火麻激と、かつてスーパーバイザーを勤めた高之橋両輔も、壇上に立つ元上司を感心の眼差しで見つめている。
「いやぁ、八木沼牧師のおかげで、この式は九十八パーセント、いや百十八パーセント大成功ですな」
たしかに、八木沼がガッツィ・ギャラクシー・ガード二代目長官だった時代を知る者でさえ、ローマンカラーの白いスーツ姿の彼を、本物の牧師と見紛うほどに違和感がない。
「……誓います」
八木沼の視線のすぐ先に立つ、ふたりの新郎が声をそろえた。ともにホワイトタキシードに身を包んでいる。獅子王凱の胸には深紅のバラのブートニア、そしてグリーンのネクタイ。天海護のブートニアはピンクのバラ、ブルーのネクタイ。ふたりともお揃いのピンバッジ、Gの文字を象った金のネクタイピンを留めている。護にとっては、十二年ぶりとなる二度目の結婚式だが、さすがに今回は宇宙服ということにはならない。
「俺は宇宙服でもいいんだけどな」
──というのは、長時間に渡る衣装合わせの際に、疲れ果てた凱がもらした言葉である。
護も一瞬、同意しそうになったのだが、すぐ近くで楽しそうに自分たちの衣装を見せ合っている愛妻たちの様子を見て、小声ながらも注意した。
「ダメだよ、凱兄ちゃん。こういう場で空気読まないと、奥さんに一生恨まれるんだって」
「そ、そういうものか……」
護の真剣みあふれるアドバイスに、凱も思わず真顔でうなずいた。
「あ、その情報はうちのお父さんの話じゃないよ。ウッシー二号さんに聞いたんだ」
GGGブルー整備部オペレーターである牛山次男を、四兄弟の次男であることから“二号”と呼ぶのは、阿嘉松長官の口癖であったのだが、あまりにも利便性が良いが故に、いまではすっかり全隊員に伝染している。護にとっては義理の従兄にあたるウッシー二号の、極めて有効な個人的アドバイスに感謝しつつ、ふたりはタキシードを選んだのだった。
凱と護の声は重なりつつ、穏やかな風に乗って流れていく。緑豊かな丘の上に設営された特設の会場。海の方角から吹いてくる初夏の風が、百人を超える参列者たちの頬を軽やかになでる。いや、人々だけではない。人間たちの後方には手入れが行き届いた草原があり、そこでは勇者ロボたちも微風に身を任せている。実のところ、彼らにも出席してもらうため、広大なオープンスペースで結婚式が開かれることになったのだ。
(護機動隊長、ご立派な姿に……)
白いタキシードに身を包んだ護の姿をじっと見守っているのは、ボルフォッグだ。そのカメラアイはただ見守るだけでなく、式の様子を余すところなく録画している。もちろん、個人的な趣味のためではない。新郎新婦たちの希望で、記録係を頼まれたのだ。会場の周囲ではガンドーベルが移動カメラで、上空からはガングルーが空撮カメラで、別アングルの映像を抑えることにも抜かりはない。それらの仕事ぶりを横目で見ていた猿頭寺も、同じテーブルに野崎、平田とともに座っている犬吠﨑博士に向かって、こっそりサムズアップする。
「……新婦たちよ、あなた方は新郎を健やかなる時も病める時も愛し、ともに生き続けることを誓いますか?」
新郎たちの宣誓にうなずいた八木沼元長官が、今度は新婦たちの方へ問いかける。
「……誓います」
胸を張るような卯都木命の声と、緊張に震えている初野華の声。いや、すでに入籍をすませたふたりは、獅子王命と天海華と呼ばれる立場になっている。
この式のダブル主演とでも言うべきふたりのいでたちは、対照的に鮮やかだ。命はこぼれ落ちそうな胸元が大胆に開いたビスチェに、乙女らしいパフスリーブ。ショート丈のスカートの下には、サムシングブルーをあしらったガーターが顔を見せている。短めのベールを留めるクリップはウサギ型だが、今日からは旧姓にちなんだ……といわれることになるだろう。チョーカーとアンクレット、そしてトレーンを飾るのは、ブーケに合わせた深紅のバラ。
大輪の花のような命の隣に立つ華は、可憐な可愛らしい花そのものだ。たっぷりの花で飾ったロングベールに、プリンセスラインのボリュームあるスカートも、切り替え部に花を散らしてある。命のショートグローブに対して、こちらはロングスカートと合わせたロンググローブ。手にしたブーケは、護のブートニアと同じく淡いピンク色。
そんな華の姿に、既視感を覚えている参列者も多い。なぜなら、このドレスは小学生の頃の華が思い描いていたデザインであり、友人たちと一緒に手作りして、地球から旅立つ護の前に現れた時と同じ姿だったのだ。あの時、満月の丘に集った者たちの全員が、この場にも来ている。見覚えがあるのは当然だ。
「チョベリグね! 生地も凝ってるし、やっぱりプロの仕立てはひと味違うわねぇ」
感心したように漏らしたのは、小学校で華の同級生だった狐森レイコだ。あの時、ひとりでドレスを仕上げようとして、間に合いそうもなく途方に暮れていた華を手助けしたのが、実は裁縫に自信があるレイコだったのだ。当時の自分たちとしては最高の出来上がりと思えたが、今日のドレスと比べると、さすがに雲泥の差である。
「いやいや、俺はあん時のドレスもよくできてたと思うぜ」
レイコのつぶやきにそう答えたのは、ウッシー四号こと、牛山末男だ。新郎新婦たちにとってはGGGの同僚であるが、同時に護や華の小学生以来の同級生である。この時はGGG隊員たちのテーブルではなく、数納鷹泰、鈴木わかば、手里たまよ、その他の旧クラスメートたちと席を並べていた。
「そぉ? チョベリバじゃない?」
「そんなことないって。俺たちの式でも、自分で仕立てたらいいと思うぜ」
レイコと四号のやりとりにニヤニヤが止まらない、わかばとたまよ。ひとりだけ状況が呑み込めず、友人たちの顔をキョロキョロと見比べる数納の眼には、なぜか滝のような涙が流れている。
「いいわね、ウェディングドレスも……」
声に出すつもりはなかったのだが、思わずつぶやいてしまい、あわてて袖口で口元を抑えたのは彩火乃紀である。彼女も二か月前に神前で結婚式を挙げたばかりであり、新調した留袖を身にまとっている。
「え、もしかしてやっぱりホントはもしかして、合同でやりたかった?」
隣で慌てたのは、紋付きを着た蒼斧蛍汰だ(彼らは結婚するにあたって夫婦別姓を選んだため、獅子王家や天海家と違って、別々の姓を名乗っている)。挙式を準備している時、今日の主役である二組から「一緒に」と誘われたのだが、ふたりで相談の上、辞退した。
「後悔なんてしてないから、大・丈・夫っ」
「あは……だよな、だよな、あの人たちの間に割り込むのは、野暮ってもんだよなぁ」
火乃紀の返事に、蛍汰はホッと胸を撫でおろした。
「それに私、角隠しに憧れてたんだ」
すべて偽りのない気持ちだが、火乃紀には秘めていた思いもある。
(タキシード姿で、凱さんや護くんと並ぶことになったら、ケーちゃんちょっと可哀想だもんね……)
まだ二十代であるにも関わらず、少しお腹の出てきた蛍汰にも、神前式での和服はよく似合っていた。今日に至るまで様々な紆余曲折はあったものの、自分のこれまでの選択に後悔はない。口には出さないものの、火乃紀はその思いを再確認していた。
いかがでしたでしょうか?
気になる続きは、ぜひ本日発売の単行本でお楽しみください!
覇界王~ガオガイガー対ベターマン~下巻
価格(税込):2750円
サイズ:四六判
発売日:2021年9月29日
発売・販売元:株式会社新紀元社
http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-1930-7/
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