覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第26回】

覇界王~ガオガイガー対ベターマン~

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number.04 兆-KIZASI- 二〇一七年(5)

 

11(承前)

 見覚えのある懐かしい姿──だが、その全身は燃えるようなオレンジ色のオーラに包まれている。

「マイク、僕だよ──天海護だよ!」

 覇界の眷族と化したマイク・サウンダース十三世に向かって、ZR-04ゼロゼロフォー群に半包囲されたままのガオガイゴーから、護が叫んだ。その声が届いていないわけではない。その証拠に、覇界マイクは微笑みさえ浮かべている。

「オウ、マイフレンズ護! 久しぶりだっぜ!」
「マイク、君は──」
「マイクは知ってるっぜ。こっちの時間ではクールでロックでビューティフルなショートタイムだったけど、地球ではロングタイムレイター、長い時間が過ぎたって!」
「そうか、だから“久しぶり”なんだね……」

 護は寂しそうな声でつぶやいた。短いその会話から、恐れていた事態が的中したことを悟ったのだ。

 

 護は思い返していた。木星圏からの帰還途中、そして帰還後のオービットベースにおいて、GGGが覇界の眷族への対応を検討し、様々なシミュレーションを行ったことを。そこで立てられた仮説のひとつが、<覇界の眷族>と<ゼロロボ>の違いだ。

「要するにあれだろ、ゾンダリアンとゾンダーロボみたいなもんだ」

 オービットベースにおいてその話題になった時、阿嘉松がそう解釈して、楊が情報を補足した。

「大筋では間違っていない。ゾンダリアンがゾンダーロボを発生させるように、覇界の眷族がゼロロボを発生させる。違いといえば、ゾンダーメタルのような媒体を必要としないため、ゼロロボの方が遥かに効率的ということだな」

 会議室内にいる楊、阿嘉松、プリックル、凱、護、戒道、そして研究部から火乃紀、メカニックから牛山次男、諜報部からはカムイも加わった九人全員が表情を引き締めた。たしかに木星圏において、覇界王ジェネシックはその全身から発生させるオーラによって、ディビジョントレインの一部や宙龍をゼロロボへ変貌させた。ゼロロボの発生に制約がないという事実は、原種大戦時以上の脅威が容易に想像できる。

「付け加えて言えば、GストーンやJジュエルを持つ者をゾンダーロボやゼロロボに変えることはできないが、ゾンダリアンや覇界の眷族に変えることはできる……それも類似点だな」

 その言葉を聞いて、戒道がかすかに悔しそうな表情を浮かべた。いや、あるいは悲しみだろうか。いずれにしても、Jジュエルの戦士としての宿命をまたしても歪められてしまったソルダートJやトモロの事を思っているに違いない。そんな相棒の様子を痛ましそうに見つめながら、護は静かに語る。

「……でも、その代わりにゾンダーコアにされる人がいないというのは、僕たちにとって好材料のはずです」

 凱も即座にうなずいた。

「ああ、護の言う通りだ。俺たちはあくまで、覇界の眷族に変わってしまったGGGグリーンのみんなを止めることだけ、それだけを考えればいい!」
「デモ、止めたアトで元に戻すことはできるノ?」
「参謀の疑問はもっともだけど、僕たちは自分の力に賭けてみる……今はそれしかない」

 戒道が自分の掌をじっと見た。かつて、ピッツァやペンチノンをゾンダリアンの呪縛から解放したのは、彼の浄解能力だった。そして今は、護と凱もあわせて、三人の浄解能力者がいる。

「そうだな、そこは出たとこ勝負だな。もし浄解できなかったらとっ捕まえて、戻し方がわかるまで閉じ込めとくしかねえだろ」

 かつての仲間とはいえ、人類を滅ぼしかねない存在を野放しにはできない。粗雑なように聞こえるが、阿嘉松の言葉は理性的な対応だ。

「長官の判断は的確だが、ひとつ留意しなければならないことがある。覇界の眷族と化した者は、操られたり洗脳されたりするわけではないことだ」
「ああん? どういうことだ、楊の旦那! 地球を守ってきたGGGグリーンの連中が、自分の意思で地球を滅ぼそうとするってのか!?」
「ある意味ではその通りだ。宙龍が残したログを解析した結果、私はある仮説に至った」

 楊はその恐るべき仮説を語り始めた。
 ──トリプルゼロに浸食され、覇界の眷族と化した者は宇宙の摂理に従う。それはすべて、その者の自由意志、自己判断による行動なのだ。彼らはただ、自然の摂理に従って、宇宙を救おうとしているに過ぎない。

「宇宙を救う……人類滅亡と天秤にかけてもか?」

 戒道が眉をひそめつつ、問いかける。

「生体医工学では、性格を決定付けるものは、脳内のケミカル物質と考えられています」

 割って入った火乃紀が畳み掛けるように続ける。

「人体の血液は輸血により、輸血前とは異なる成分バランスに変化して、脳内血管を巡る際に少なからず影響を及ぼします。それまで開かなかったニューロンレセプターが開く例も多く、趣味趣向や、気性、価値観が変化することも珍しくはありません」

 説明を聞いた阿嘉松が感心したようにうなずく。

「あったまイイ説明だなぁ、火乃紀。で、つまりどういうことなんだ?」
「え? ……つまり、トリプルゼロというエネルギー物質が入り込んだ人体や、GSライドを備えたロボットは、血液やGリキッドを介して、脳やAIも変質して、性格も変わる可能性を否定できないということです」
「あ~なるほど。じゃあ浄解が効かなかったら、車からガソリン抜くみてえに、物理的に体からトリプルゼロを抜く方法を考えればいいんだな?」
「そうですね。理論上はそうなります。血液の場合は、新たに別の血液と入れ替えなければいけないけど……」
「硬化接着剤で固めて保管シテル、CRだったゼロロボの機体はドウナンダイ? ウッシー」

 参謀からのいきなりのウッシー呼称に、ずっと聞き入っていた牛山次男が慌てて口を開いた。

「ああ、はい、スキャンしたところ、物質構造ごと変化していて、まるでゾンダーロボですね。出力も機能も、ミニ四駆に例えるなら、コースアウトしそうなパワーと攻撃性に特化した数値バランスになっています。機体性能としてはいびつで個体差もあるけど……AIを積んでないので性格の変化まではわかりません」
「ゼロロボからトリプルゼロを抜き取る方法はアルカネ?」
「宇宙空間においては、機体を粉々に爆散させれば、トリプルゼロも四散して、自力でまとまったエネルギーには戻れないようです」

 牛山の見解を、議事録として黙々とチャプター整理するカムイも復唱する。

「ゼロロボ攻略法は粉々に爆散させること……」

 そして、自分の見解をそこに加えた。

「宇宙全体としてはエントロピーは減少しない……不可逆性の証明のようなものか」
「じゃあ、侵食されたGGGグリーンの機動部隊みんなを、覇界の呪縛から解き放つ方法は……」
「最悪の場合、Jやトモロを、木端微塵に打ち砕かなければならない…ということか」

 護が深刻な面持ちでつぶやき、戒道も苦渋の表情で応える。

「どうなんだぁ? 一応、そんなことになる前に、きゃつらがこちらの説得に応じるか、試してみた方が……」

 希望を探る阿嘉松の意見だったが、すぐさま楊が否定する。

「無駄だな。覇界の眷属は、トリプルゼロの浸食によって、知性をそのままに倫理観が変質してしまっているはずだ。おそらく、話し合いなど無意味だろう……」
「ぐぬ……」

 押し黙る阿嘉松に、凱も追い撃ちをかけるように語る。

「楊博士の仮説は、俺がオレンジサイトで父さんから教えられた認識とも一致します」

 宇宙の卵で、精神生命体となった麗雄から送り込まれた思考を、凱は思い出す。トリプルゼロとは純粋なエネルギーであって、知的生命体に敵意を持っているわけではない。潮の満ち引きのように、宇宙が開闢して終焉に至るサイクル──そこに抵抗する存在には圧力がかかるというだけのことだ。

「凱兄ちゃん、じゃあ覇界の眷族は自分の気持ちよりも、義務感を優先して人類を滅ぼそうとするの……?」
「ああ……あいつらはきっと、つらい気持ちを抱えたまま、滅亡や自滅へ向かう使命を果たそうとするだろう……」
「そんなの、ひどすぎるよ──」

 護の胸は痛んだ。ある意味、自由意志を奪われ、操られた、かつてのレプリジンたちに与えられた運命よりも残酷である。
 そして、その恐れていた事態は、たった今オーストラリアの大地で現実となったのだ。

 

12

「マイフレンズ、護……残念だけど、みんな一緒にビューティフルなフィナーレを迎えようっぜ!」
「マイク、本当に人類を滅ぼすの!?」
「ソーリー……悲しいけど、それが宇宙のセツリ……だっぜ……」

 覇界マイクの言葉に苦渋が混ざる。楊や凱の予測通り、彼は望んで知的生命体を殲滅しようとしているわけではない。だが、それでも宇宙の摂理に従おうとする意思は強固だった。

「ディスクP、セットオン! 」

 コスモビークル・バリバリーンが展開したスタジオセブンから放たれた、オレンジ色のオーラを纏ったディスクを、覇界マイクは胸のトレイを開きセットしようとする。おそらくゼロロボを活性化させるようにチューニングした強化ディスクだろう。だが、その行為はすでにGGGブルーによって予測されていた。

『<シミュレーション・ケース:アマレイ>実行ッッッ!』
「ブレイクシンセサイズ!」

 阿嘉松の指令と同時に、戒道は事前にデータを打ち込んでおいた<アマレイ>をモニターに表示選択し、ボイスコマンドを叫んだ。そして、ディスクPがトレイに吸い込まれる瞬間を狙って、ガオガイゴーを突進させる。

「ジーセット……シナプス弾撃!」

 そのコマンドと同時に、ガオガイゴーの両肩に折りたたまれていたガイゴーの腕部が展開する。右から硬化液ブルー、左から硬化液レッドが射出され、それらは狙いあやまたず、閉じかけた覇界マイクの胸部トレイ内へ流れ込み、混ざり合った。

「ホワッツハプン!?」

 竜シリーズが運用するペンシルランチャーの硬化弾頭、その内部に充填される薬液がTMシステムで合成され、トレイ内部のディスクをスクエアケースの中に閉じ込めるがごとくガチガチに固めてしまったのだ。当然、ディスク音源を演奏することはできない。

「よしっ! 巧いぞ、幾巳!」
「次はこいつだ……ファントムリング・プラス!」

 戒道の動作によどみはなかった。かつての仲間が敵対する可能性を想定した時点から、彼らはシミュレーションを繰り返してきたのだ。この点、ガッツィ・グローバル・ガードは、相手の情報を持っていない覇界の眷族よりも優位に立っている。

「ブロウクンファントムッ」

 ガオガイゴーの右腕が、空中であわてふためく覇界マイクに向かって撃ち出されようとする。狙いは覇界マイクを浮遊させているスタジオ7だ。この飛行ユニットを破壊してしまえば、覇界マイクは機動力を大きく低下させる。さらに内蔵された各種ディスクや楽器類も失うことになり、その脅威は著しく低下する──それがシミュレーションの結果だ。だが──

『戒道副隊長ダメですちょっと待って撃たないでスタジオ7内部に生体反応があります!』

 悲鳴のようなタマラからの通信。戒道は即座にガオガイゴーの左腕でファントムリングをつかんだ。強烈な擦過音が鳴り響くが、危ういところでブロウクンファントムの発射を止めることができた。
 ワダツミのブランチオーダールームで、阿嘉松が歯ぎしりする。

「ええいっ、畜生! 人質を盾にしてやがるのか!?」

 今のマイクが、シナプス弾撃のことを知らなくても、スタジオ7が狙われることは予測可能だったのかもしれない。

「あの中にイルのは……GGGグリーンの生還者ナノカ!?」

 火麻とは米軍時代に同僚だったプリックルが頭を抱えた。すかさずタマラが報告する。

「こちらからの通信に応じる様子はありません意識があるのかすら不明ですわかりません」

 楊が冷静に指摘する。

「もし、覇界側に寝返ったGGGグリーンの隊員が乗り込んでいたら、覇界マイクに対して戦闘の補佐となるオペレーションをしている可能性も否定できない」
「んなバカな……! タマラ、生体反応はスタジオ7のどこから検出されたんだ!?」
「キャビンです通常人員を乗せる際はバリバリーンの状態ですので今のスタジオ7の状態では逆さになってるから居心地悪いと思われますー」

 阿嘉松の問いに答えたタマラの報告は通信によって、戒道や護にも届いていた。だが、応答する余裕はない。ディバイディングフィールド内にいるゼロロボのうち、残る五体に取り囲まれていたのだ。

「くっ、こいつら──」

 戒道は必死に振りほどこうとするが、それぞれが長大な車輌から変貌したため、大質量でガオガイゴーを押さえ込もうとする。

「おい、他の勇者ロボたちはどうなってる!」
「それぞれ各所でZR-04と交戦中! ガオガイゴーの救援に向かう余裕がありません!」

 阿嘉松に向かって、華が応える。次の問いを予測したアルエットも、先んじて状況を伝えた。

「ファントムガオーは依然、通信途絶──現在位置は不明です!」

 先ほどから、山じいの手を借りてサテライトサーチで捜索中だが、有効な手がかりは得られていない。まさかこの時、凱がラミアによって足止めされているとは、誰も想像すらできなかった。

「急いで幾巳! あと二十分でディバイディングフィールドが消滅する!」
「わかっている、護……だけど──」

 ディバイディングフィールドには、ドライバーのキットナンバーごとに維持限界時間が設定されており、そのリミットを過ぎれば空間は復元を開始する。内部に物体が残っていた場合は、復元力によって圧壊する上、その質量によっては大爆発を起こすことになる。
 だが、ZR-04群によって大地に押さえつけられたガオガイゴーは、身動きすらとれない。さらにその上空から、新たな機影が迫ってきた。

「……輸送ヘリ!?」

 ザ・ガンの鉄道基地から奪われたのは、列車だけではなかったのだ。鉄道事故が起きた場合に、貨客をすみやかに回収するための輸送ヘリが変貌巨大化した姿──十二体目のZR-04がガオガイゴーの胴体部に轟音とともに強烈な体当たりを敢行する。

「うわあああっ!」
「くうううっ!」

 ガオガイゴーの各ヘッドダイバーは、強靭な三重連太陽系の超能力者である。更にニューロメカノイドの優れた耐震性能に守られているものの、それすら凌駕する多方向からの激しい衝撃に、戒道も護も悲鳴をあげた。その声を聴き、つらく感じたのか、覇界マイクが表情を曇らせつつも、ゼロロボたちにも声をかける。

「ソーリー、マイフレンド……。助かるっぜ、マイブラザーズ!」

 十一輌の列車と一機のへリコプター、その数は偶然ではないのかもしれない。覇界マイクのうちに眠るメモリーがあえて、かつてのマイク・サウンダースシリーズと同数のゼロロボを発生させたのだろうか。いずれにせよ、兄弟が稼いでくれた貴重な時間を使って、覇界マイクは胸部トレイ内の、硬化剤で使い物にならなくなったディスクをかき出すことに成功した。その際、トレイ内パーツの一部が破損したが、ザ・パワーの効力を超える勢いで自動修復されていく。

「護……残念だけど、一緒にグッバイしてもらうっぜ」

 覇界マイクは全身からオレンジのオーラを噴き出しつつ、新たなディスクをスタジオ7から取り出した。

「まさか……マイク、それは!」
「ディスクX、セットオンッ!!」
「!!」

 

 覇界マイクが取り出した最終兵器をメインスクリーンに確認して、ブランチオーダールームが騒然となる。

「お、おいおいおいおい、やばいんじゃねえのかッ!?」
「ソリタリーウェーブをまともに浴びるわけにはいかん──プロテクトウォールの空間湾曲で防ぐのだ!」

 だが、孤立した今のガオガイゴーに、楊のアドバイスを活かす余裕はない。

『ダメだ、全身を押さえつけられて、動けない!』
「戒道くん、あきらめないで!」

 涙声で叫ぶ華の横で、アルエットが必死に通信機に叫ぶ。

「凱、応えて! 戒道さんと天海くんが大変なの! 凱、お願い、返事をして──!」

 ──その直後、数十分前から空電ノイズしか帰ってこなかった通信機から、頼もしい声が響いた。

『すまない、アルエット! 何が起きているんだ、状況を教えてくれ!』
「凱──!」

 ソムニウム・ラミアとの戦いを終えたばかりの凱の声を聞いたアルエットは、喜びの表情を浮かべつつ、猛然と得意の高速キータイプを始めた。凱のエヴォリュダー能力で受信するなら、言葉よりもその方が速く的確に情報が伝達できるからだ。数秒で事態を把握した凱が叫ぶ。

『マイクがディスクXを!? 了解した! すぐ向かう!』
「急いで……お願い!」

 そう返しつつも、アルエットは絶望しかけていた。凱が応答してきた発電所の位置から、ガオガイゴーがいるウルルの近くまでは、ファントムガオーの最大速度でも十五分はかかる。現状から護や戒道がそれだけの時間を耐えられるとは、とても思えない。

(なにか……なにか今の私にできることは──!)

 絶望へと至る崖っぷちから脱する道筋を、アルエットの頭脳が必死に検索する。

 

「護、ソーリー! 全人類を連れてマイクもすぐ後からいくっぜ……」
「マイク、やめて! 本当にそれがマイクの意思なの!?」
「そうサ……そう、これは……マイク…マイクの……意思……」

 歯切れの悪い言葉を発した覇界マイクだったが、すぐさま迷いを断ち切るように雄叫びをあげる。

「ギラギラーンVVダブルブイ!」

 スタジオ7から放出されたギター型サウンドデバイスをかまえる覇界マイク。胸部トレイ内では、すでにディスクXが高速回転を始めている。

「ソリタリーウェーブ──!」

 覇界マイクはギラギラーンを弾き鳴らし、強烈なエネルギー孤立波を生み出した。旧GGGのデータベースには、ガオガイゴーのデータは存在しない。だが、ガオーマシンは旧来のものであり、新開発されたガイゴー部にも同じレーザーコーティングG装甲が採用されている。

「ファイアッ!!!」

 その分子構造の固有振動数にあわせてセッティングされたソリタリーウェーブが、ついに放たれた。しかも、本来の威力にトリプルゼロの無限にも近い膨大な力が加わって。

「バイバイ……マイフレンド……」

 それは確実にガオガイゴーを粉砕できる破壊力を持って迫りくる。

「マイク……」

 覚悟をしていた護でさえ、愕然とさせる容赦のない攻撃。

 

 直前、遠い場所で紗孔羅の意識は感じていた──

(くるよ……)

 

 リンカージェルが瞬時に沸騰するほどの圧とともに、ソリタリーウェーブはガオガイゴーに迫る。

「護っ──!」

 戒道が絶望しかけたその瞬間、彼の視界に影が飛び込んできた。放たれたソリタリーウェーブの手前に、猛スピードで何者かが割り込んできたのだ。

(翔竜……いや、違う!)

 そのシルエットは、小型勇者ロボである翔竜よりもさらに小さい。細身のそれは外骨格に翼を生やした竜のようにも見えた。

『光なるモノよ、まだ滅せられてはならない──』

 リミピッドチャンネルから意思が伝達される。護はその意思の主に覚えがあった。

(ソムニウムの……ラミア──!?)

 そう、その姿は、アニムスの実の一種を喰らうことで、ラミアが変身したベターマン・ネブラだった。
 竜に似た姿を持つネブラは、空中で両腕を大きく拡げた。その内側には、人間でいう耳にあたるような集音器官が大きく備わっており、到達前のソリタリーウェーブを空気振動で瞬時に解析する。その間、わずか一秒にも満たない一瞬の出来事だった。間髪入れず、ネブラは顎門を大きく開き、目前まで迫っているソリタリーウェーブに向かって叫び声を発した。

 

同時に、オービットベースのマニージマシンで眠りについていた紗孔羅の身体が、リミピッドチャンネルの大きなうねりを感じ呼応した。

『サイコヴォイス──!』

 覇界マイクが放ったソリタリーウェーブと、ネブラが放ったサイコヴォイスが空中で激突する。孤立波と衝撃波のぶつかり合いは、まばゆい光をも生み出し、周囲を白く明るく照らしだす。大地や大気が激しく揺さぶられ、轟音が遠方にまで響き渡る。
 一瞬の後、鼓膜を破裂させるほどの超高音と共に、超特大級の爆発が辺り一面を包みこんだ。

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


次回6月19日(月)更新予定


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