覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第31回】

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《前回までのあらすじ》

 <トリプルゼロ>に浸食され、全てを破滅へ導く<覇界の眷族>となった旧GGGが、同時に二か所に出現し、我々人類をかく乱する。
 ドバイのメガソーラー発電所へ出撃するGGGブルー機動部隊。
 ハワイのプナ地熱プラントには、GGGグリーン長官代理・獅子王凱が向かった。ゼロロボを従えた覇界ゴルディーマーグに、新ツール<ゴルディオンダブルハンマー>で対抗するガオファイガー。だが、圧倒的なパワーの前に苦戦を強いられる。その時、重力を操るベターマン<ポンドゥス>が現れた!

number.05 恨-URAMI- 西暦二〇一七年(4)

4(承前)

 重力制御──宇宙の統一理論への挑戦ともいうべきその技術は、二〇〇五年には実現されていた。現在はGGGブルーに所属する平田昭子博士がヒッグス粒子を活用する理論を完成させ、世界十大頭脳のひとりである獅子王雷牙博士が重力制御機構を実用化、オービットベースに設置したのである。
 だが、この技術は重力──すなわち時空を収縮させる歪みを人工的に発生、もしくは拡大するものである。その一方で、数学的な解として存在する膨張する歪み──すなわち反重力は、いまだ理論上の存在でしかない。
 しかし今、ガオファイガーの眼前に現れたベターマン・ポンドゥスは、生体の能力として、この反重力を発生させていた。そして、それは覇界ゴルディが放つ重力衝撃波に正対する波形を有していたのである。

「おおお!? こいつ、俺のグラビティショックウェーブを相殺してやがる!」

 覇界ゴルディの声音が、衝撃に揺れる。GGGの科学技術をもってしてもいまだ発生させることはかなわない、反重力衝撃波──それが眼前のベターマンから放たれている。覇界の眷族と化した大河幸太郎がいかに優秀な指揮官であろうと、この展開を読み切ることは不可能だっただろう。

「いまだ……!!」

 獅子王凱は、瞬時にして決断した。次になすべき行動を。
 重力衝撃波と反重力衝撃波が相殺しあい、激しい時空の歪みがまき散らされる地底空間。その勢いは、ディバイディングドライバーによって大きく開かれた地下天井を越え、地上や上空にも逆オーロラと逆台風のような激しい衝撃を噴き上げていた。即座にガオファイガーはゴルディンダブルハンマーを大地に投げ捨てた。そして、右腕のマーグハンドをかまえる。

「ゴルディオンマグナムッ!」

 巨大な右腕をスラスターの噴射推進で射出する。マーグハンドに比べれば遥かに小型・軽量な通常のブロウクンマグナムであれば、重力衝撃波の嵐のなかで、一瞬で吹っ飛んでしまっただろう。だが、大質量と頑強な構造を有するマーグハンドは、その威力を減衰されることなく、重力嵐ともいうべき空間を突っ切り、覇界ゴルディーマーグの頭部に直撃した。

「ぐおおおおおっ!」

 だが、ゴルディオンマグナムは、覇界ゴルディの頭部を粉砕するために撃ち出されたわけではない。先程までゴルディオンダブルハンマーの柄をつかんでいた巨大なその拳は、大きく開かれ、標的となるゴルディの頭を強烈な握力で鷲づかみにしていた。

「うがあああっ!」

 覇界ゴルディの苦悶の声が響く。

「ゴルディ! お前なら耐えられるはずだっ!」

 凱は知っていた。金色こんじきの破壊神との異名をとり、果断な戦術眼と無骨な中にも侠気を持った勇者ロボの耐久力を。そして、信じていたのだ。それ故の攻撃である。
 そしてついに、マーグハンドの拳が閉じられ、AIブロックを兼ねているゴルディーマーグの頭部がえぐり取られた!
 制御中枢を失った覇界ゴルディは膝をつき、重力衝撃波の放出も停止した。空前絶後の強烈な衝撃の中、ベターマン・ポンドゥスも、さすがに能力維持の限界か、メビウスの輪のごとき全身をくねらせて、空中へ離脱する。
 AIブロックを握りしめたまま、かろうじて戻ってくるマーグハンド。覇界ゴルディのAIは音声出力機能が破壊されたのか、黙して語らない。あるいは過負荷にAIがシャットダウンされ、“失神”状態に陥っているのかもしれなかった。
 ガオファイガーはマーグハンドを右腕にドッキングしつつ、頭部を失った覇界ゴルディのボディへ向き直った。

「あとは……ゼロ核を抜き出せば!」

 マーグハンドには、かつてゾンダーコアや原種核を回収する際に用いられた、ハンマーヘル・アンド・ヘブン機能が備わっている。これを使えば、難なくゼロ核の回収も果たせるはずだ。だが──

『凱、離脱して! 覇界ゴルディが自爆するわ!……あと五秒!』

 オービットベースから、悲鳴にも近いアルエットの通信が飛び込んでくる。その言葉を裏付けるように、ガオファイガーの眼前で覇界ゴルディの首から下の機体が赤熱化していた。おそらく、内部でゼロ核となっている者が、GSライドを暴走させたのだろう。

(く……再生ではなく自爆に転じたのか!? ……この五秒でできることは!)

 凱の脳裏では、コンマ零秒の速度で様々な思考がよぎった。その中に、少なくともこのまま離脱するという選択肢はない。もちろん、凱がそう考えることを想定した上で、ゼロ核になっている者は自爆を選択したのだろう。“地球人類抹殺のために邪魔な存在を排除する”ために。
 もっとも有効な手立てはヘル・アンド・ヘブンだったが、右腕がマーグハンドの状態では、五秒間での換装は不可能だった。ゼロ核をえぐり出し、ガオファイガーの機体を楯にすれば、覇界の眷族となった旧GGGの誰かを救うことができるかもしれなかったが、万策は尽きた。ポンドゥスも既に安全圏まで離脱している。

「……くうッ!」

 万事休すと思われたその瞬間──

 またも、異形が出現した。

 頭部を失って、大地に膝をついた覇界ゴルディのボディ──その足元に人間の傷口のような空間が出現する。ヒイラギが出現したのと同じ、ソキウスの門である。
 異空間からの出口はすぐに消えたが、その場にいくつもの細く伸びる枝のような物体を排出していた。
 いや、枝と見えたのは、アニムスの実を喰らったソムニウムの変身態である。合掌造りの木造建築を、精緻な人形に作り替えたようなベターマン・アーリマン。その全身を枝状の形態に組み替え、覇界ゴルディの胴体を貫いていた。枝の先にからめとられているのは、オレンジ色の繭のような物体。
 次の瞬間、覇界ゴルディの機体はGSライドの暴走によって爆発していた。ガオファイガーが、確保したゴルディの頭部、AIブロックをかばうように爆圧に耐える。同時にベターマン・アーリマンが、ゼロ核を爆風にさらさないよう、器用に放り投げてきた。

「……!」

 ガオファイガーはあわてて、ゼロ核を左手で受け止める。

『上手い上手い! ソレを落とされたら、苦労して助けた意味がありませんからなぁ』

 リミピッドチャンネルを介して、おどけたような意志が伝わってくる。凱は、その意識の主がライという名のソムニウムであることを知らなかった。

「ベターマン……俺を助けてくれたのか?」

 爆煙に満ちた地底空間で、凱は問いかける。だが、ニヤニヤ笑いのような気配が伝わってくるのみで、応える意志はない。それでも重力衝撃波を相殺したベターマンと、ゼロ核を見事に抜き出したベターマン、彼らの狙いが、凱と敵対するものでないことは明らかだ。

(以前から、ベターマンは滋さんや護を救ってくれたという……。じゃあ、あのラミアという奴だけが、俺を敵視しているということか……?)

 眼前の爆煙が晴れていく。至近距離での爆発に、機体表面の各所を損壊させたガオファイガー。だが、致命的な損傷は負っていない。AIブロックとゼロ核も守り切った。
 だが、凱の疑問に答える者は、もはや広大な大地の何処にもいなかった。

『凱! 生きてるの? あと二分でディバイディングフィールドが収縮するわ! 聞こえてる!?』

 アルエットの通信がノイズ交じりに響き渡った。

 

 GGGオービットベースから分離発進、大気圏突入した機動完遂要塞艦<ワダツミ>と諜報鏡面遊撃艦<ヤマツミ>。ワダツミがハワイへ向かう一方、ヤマツミはドバイへと降下していた。
 アラブ首長国連邦第二の中心都市、ドバイ。この地に建設されたメガソーラー発電所は、インビジブル・バーストからの復興において、中東地区の電力供給を支えた一大拠点である。ハワイのプナ地熱発電所とは異なり、強電磁場災害の後に稼働開始した施設ではあるが、その発電規模は極めて大きい。一般的にメガソーラー発電所とは一メガワット以上の出力を持つ施設に与えられる通称だが、この発電所のそれは八〇〇メガワットを上回る。今後の施設拡充によっては、人類史上初のギガソーラー発電所となることも十分にあり得るだろう。

 高度一〇〇〇に到達したヤマツミからミラーカタパルトで射出されたのは、GGGブルー機動部隊に所属する翔竜、月龍、日龍の三機である。常ならば、隊長である天海護、副隊長の戒道幾巳、経験豊かなポルコートのいずれかが彼らを指揮している。だが、今回は護が待機することになり、戒道は入院中、ポルコートはオーバーホール中で出撃できずにいた。そのため、若き三機のみでの出撃になったのだ。
 その中でも勇んで最初に出撃した翔竜は、メガソーラー発電所のデータに存在しないはずの施設に激突しそうになった。

「うわっ、なんなんですかこれ……!」

 翔竜は飛行形態にもシステムチェンジできるビークルロボだ。先行して上空から偵察するはずだったのだが、高度一二〇〇メートルにも達しようかという巨大なタワーに激突しそうになり、緊急回避した。

「オービットベース、正体不明の高層タワーを確認、映像解析お願いします!」

 翔竜が見る光景そのものが、軌道上へ転送される。続いて、形式番号は新しいものの、開発時期は古い“姉”たちも射出されてきた。そして、発電所近郊の荒野にそれぞれのスタイルで着地する。

「翔竜、あれは何なの!?」
「くぅ~~~、情報を集めなさいっ!翔竜……」

 クールに問いかける月龍に対して、日龍の声に苦悶が混ざったのは、着地に失敗したためである。追加装備であるシールドの重量バランスが影響しているとも噂されているが、炎竜、雷龍、闇竜に受け継がれてきたクセは、いまだに末っ子においても改善できていない。

「はい、わかりました!」

 いずれにせよ、姉たちの指示に翔竜は素直に応じた。

 

 転送されてきたデータに、メインオーダールームのスタッフは愕然とした。

「おい、楊の旦那……発電所のデータにはなかった、あんな高いタワー! ありゃあ……」
「ああ、本来の集光タワーは四〇〇メートルほどだ。倍以上の高さに成長している」
「はっ、肥料はトリプルゼロってか? そりゃジャックと豆の木なみにすくすく育ちそうだ!」

 ドバイに建設されたメガソーラー発電所は、広大な敷地に数千万枚のヘリオスタット反射鏡を敷き詰め、中央タワーに太陽光を一点に集光反射することで発電する。しかも、ヘリオスタットは地球の自転に追随して稼働するため、発電可能時間も長い。その中央タワーに、変事が発生したのだ。
 阿嘉松と楊の推測を裏付けるデータを、さらにタマラが報告する。

「たいへん大変ですー高濃度のZ0シミラーあのタワーから検出されていますー」
「ほほう……<ケースZX-05>ということか」

 原種大戦のさなかに出現したZX-05──脊椎原種は中国・内モンゴル自治区において、巨大なタワー状の形態になった。それは地底深くのマントルを噴き上げ、衛星軌道上のオービットベースを狙おうという企図に基づいたものである。

「なぁるほど、そいつと同じことを目論んでるってわけか。よし、現時刻よりあいつをZR-05ゼロゼロファイブと認定呼称するぞ!」
「……すみません、先ほどGGGグリーン長官代理の権限を借りて、ハワイのゼロロボをZR-05に認定してしまいました。そっちはZR-06ゼロゼロシックスでお願いします」

 獅子王凱の戦いを補佐しているアルエットが、モニターから視線を動かすこともなく淡々と告げた。阿嘉松が自席からずり落ち気味に、ずっこける。

「……んだとぉっ!? 同じ作戦使うヤツでZX-05とZR-05、韻を踏めてヤッターって思ったのによぉ~~!」
「そんなことより解析を迅速に」

 そうバッサリと言い切った楊に、プリックル参謀が言葉を続ける。

「イエス、その通りよ。ヘイ翔竜! ZR-06の攻撃方法は推定できる? やっぱりマントルシューティングキャノンかい?」

「はい、いまスキャニングしてみます!」

 オービットベースからの問いかけに答えつつ、翔竜は全身のセンサーでスキャンを開始した。いきなり三機がかりの総攻撃でタワーを破壊してしまう手もあるが、そこまで想定してトラップが仕掛けられている可能性は十分にあり得る。敵の指揮をとっているのは、おそらく、あの大河幸太郎なのだから。
 その瞬間、鋭い声が響いた──

「翔竜、緊急回避!」
「タワー先端部より熱線攻撃ですわ!」
「……システムチェンジ!!」

 月龍と日龍の警告がなければ、翔竜の小柄な機体は瞬時に焼き尽くされていたかもしれない。飛行機型のビークル形態にシステムチェンジした翔竜、その一瞬前にいた空間を、メーザー光線が通過していく。

「危なかった……!」

 そのまま低空へ高速下降した翔竜は、ロボ形態となり、タワー基部にピッタリと着地する。どれほど射角が広かろうと、この位置なら撃たれないと判断した好ポジションだ。

「なるほど……メガソーラー発電所をゼロロボ化したのは、大出力メーザーに必要な電力を確保するためか!」

 楊はZR-06をゼロロボ化した者の狙いを察知した。だが、ZR-06に備わった攻撃能力はメーザー光線だけではなかった。同じくタワー頭頂部から、無数のミサイル群が放たれたのだ。

「メーザー光線とミサイルによる攻撃──もしや、ここに送り込まれた覇界の眷族は!」

 楊の推理に、周囲の者たちもすぐに連想が追いついた。
 必死の回避飛行に転ずる翔竜を、ミサイル群が追尾する。迎撃態勢になれず、あわや、というところで、ようやく施設内に月龍と日龍が到着した。

「ブロウクン・ブレイカー!」
「プロテクト・プロテクター!」

 日龍の背部ユニットが展開、空中でミサイル群を次々と破壊していく。
 月龍の背部ユニットは、近距離の爆発や、日龍が撃ちもらしたミサイルから、空間湾曲の楯となって翔竜を守っていく。

「ありがとうございます! 姉様方!」

 翔竜も態勢を整え、磁力線攻撃でおのが身を守りつつ、姉たちのもとへ合流した。三機は一〇〇〇メートル級タワーの上空を見上げる。ミサイルにはチャフ弾も含まれていたようだ。チャフと爆煙とで、タワー頂上部は見えない。それでもそこにいるのが何者か、月龍と日龍のセンサーは捉えていた。

「……いつか出逢う日がくると覚悟していた、先任の二人ね」
「私たちの相手としてふさわしいわ」

 翔竜も少し遅れて事態に気付く。

「……光竜と…闇竜?!」

 光学的、電子的に欺瞞されていようと、音声は届く。大音量の声は、高層にいる覇界の眷族たちにも届いていた。

「小さな機体…それにドイツ製の後輩たち……とっても美しくて勇ましい姉妹ね」
「小さいのは可愛いけど、月龍と日龍は、妹なのに大人っぽくて……ドキドキしちゃう」

 タワー頂上部にいる覇界闇竜と覇界光竜のつぶやきは、地上までは届かなかい。
 闇竜の人格は成人の落ち着きを持っているが、光竜の声は少女のように幼い。これはとある事件によって、闇竜の超AIが機体から降ろされた状態で育成されたことに由来する。本来なら、光竜と同じようにずっと機体に乗せて育成された月龍と日龍も、その成長は緩慢なはずであったが、妹たちの方には長い時間が流れている。結果として、四機の女性型竜シリーズのうち、光竜の成長だけが少々遅れた状態になってしまっていた。
 そんな幼い“姉”をあやすかのように、覇界闇竜は穏やかに告げる。

「光竜、準備はいい?……私たちに課せられた任務を実行するわよ」
「OK! いつでもいけるよぉ、闇竜」
「一度で全滅しちゃうかもしれないけどね、まず私から……」

 覇界闇竜が背部にマウントされたフレキシブル・アームドコンテナを展開する。

「シェルブールの雨!」

 コンテナから発射されたマイクロミサイル群の雨が、地上に降り注ぐ。降水量の極めて少ないドバイだが、もちろんこれは慈雨とはならない。
 翔竜、それに月竜と日龍は、降り注ぐトリプルゼロのエネルギーをまとった強力なミサイルのゲリラ豪雨をかろうじて回避し、それぞれに身を守りつつ、悔しがる。

「くっ、高所を確保されていては、戦術的不利は否めない……!」
「あなた方、卑怯ですわ! 正々堂々と地上に降りてきて戦いなさい!」

 不利な体勢でも高圧的な態度の月龍と日龍である。返答の代わりに、さらなるミサイルが降ってくる。

「うわあ、姉様方、このままじゃ保ちません!」
「チャフのせいで、オービットベースに支援も求められない……」
「ますますもって憎たらしいですわね!」
「そうか! ヤマツミからミラーカタパルトでタワーの上に撃ち出してもらえば、接近することができますね!」

 翔竜が得意げな声で告げる。

「僕、ヤマツミを呼んできます……システムチェンジ!」

 ビークルモードに変形した翔竜が飛翔する。

「やめなさい、あなた一人では狙い撃ちされます!」
「お戻りなさい!」
「大丈夫です、こうやってタワーに添って飛べば!」

 小型飛行機が、タワーに密着するような至近距離で上昇していった。あっという間に、チャフと爆煙が地上との交信を阻害する。

「翔竜! 翔竜……ああ、どうか無事で……」

 ミサイルを迎撃する手を緩めず、月龍が不安そうな声をもらす。

「大丈夫ですわ。私たちの可愛い弟を信じましょう」

 背中合わせで戦いながら、日龍が励ます。普段は仲が悪いとさえ思える二体であったが、翔竜のことを考える時は、意見が一致するようだった。
 だが、事態は予想外の展開を迎える。爆煙を突っ切って、全長四〇〇メートルの巨艦が降下してきたのだ。

「ヤマツミ!?」
「なぜここに……!?」

 軌道上のオービットベースにおいて、地上の機動部隊と通信途絶した瞬間、覇界の眷族が光竜と闇竜であると見抜いた楊のアドバイスで、阿嘉松が決断したのだと月龍と日龍が知るよしもない。
 いずれにせよ、上空へ向かった翔竜とは、すれ違うことになってしまったのだ。

「いけない……翔竜が孤立する!」
「急ぎなさい、月龍! ヤマツミへ! ミラーカタパルトで私たちも飛びますわよ!」

 金銀の姉妹がうなずきあい、ヤマツミへ向かっていく。

 

 ──ドイツ製の姉たちの不安は的中していた。
 チャフが吹き荒れる高度を突破した翔竜は、高空にヤマツミがいないことに気づいたのだ。辺りを見回しても、アクティブセンサーで走査しても、周囲に見つけることができない。

「そんな……まさか覇界の眷族に撃沈されてしまったの!?」

 この時、ヤマツミがすでにオービットベースからの指令で低空へ降下、電波妨害のただ中に進入していたとまでは思い至らない。

「でも、急がないと姉様方が……!」

 地上で一方的に攻撃され続けている月龍と日龍のことを考えると、翔竜のうちに勇気がわいてきた。いま、自分こそが頑張らなければならない、と──
 小型飛行機が、タワーへの密着飛行から高空へと躍り出た。

 

 アクティブセンサーを全開にして、高空を飛翔する翔竜の姿は、タワー頂上部から丸見えだった。

「あの機影……おそらくGBR-05を再設計した勇者ロボですね」
「じゃあ、あたしたちのお兄ちゃん? それとも弟?」
「戦績データで存在は確認できていたけど、詳細はわからない。でも、私たちは作戦を実行するのみ……」

 覇界闇竜のその声のトーンに、つらそうな波形を感じた覇界光竜は、少々物悲しげに応える。

「優しいね、闇竜は。でも、宇宙の摂理のために、やらなきゃならないんだよ……だから、今度はあたしがやる!」
「光竜……」

 覇界闇竜は自分の半身の姿を見る。本来は優美ともいえるスマートなビークルロボの肢体が、この時はZR-06・タワー型ゼロロボに無数のケーブルで接続されている。その姿は誕生直後、バイオネットによってフツヌシに接続されていた時の光景を想起させた。だが、これは何者かに強制されたものではない。彼女らが自ら望んで、ゼロロボと接続したのだ。
 宇宙の摂理を守るために──

「集光ミラー、展開……」

 覇界光竜から発せられたその指令はケーブルを通じて、ヘリオスタット反射鏡群へと送信された。数千枚の可動ミラーが、ある意志のもと、角度を変えていく。
 太陽光の反射をある一点に凝集しようというのだ。

 

 上昇したヤマツミのミラーカタパルトで、射出を待っていた月龍と日龍は、艦外カメラが捉えた映像に目を奪われた。
 無数のミラーが、一点を狙って反射光を集約している。その狙いは明らかだ。そして、トリプルゼロのパワーを帯びたその光は、一点のみを確実に消滅させるだけにとどまらず、地表に届けば確実に、この惑星そのものに致命的で甚大な被害を及ぼすほどの力を秘めていた。

「翔竜、緊急回避を!」
「お逃げなさい、急いでっ!」

 月龍と日龍の声は、電波妨害に阻まれて届かない。それでも何故か、翔竜は自分の名を呼ばれたような気がして、機首をめぐらせた。だが、時すでに遅し。

 光と闇、フランス製の姉妹は、あたかも世界を消し去る寸前の神々しさを放ちながら、同時に言葉を繰り出した。

「宇宙に終焉のブランチを…」

 次の瞬間──
 若く勇敢な勇者ロボの全視界を、天界へと導くキラキラと眩い光が覆い尽くした

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


次回2018年1月更新予定


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