覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第42回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。
 だが、手をこまねいて滅亡の時を待つ地球人類ではない。浄解によって復活した隊員たちがGGGグリーンに帰還し、GGGブルーと共に新たな戦略を練る。獅子王雷牙を救出することでディスクXを増産し、逆転への望みを繋ぐ作戦が動き出したのだ。
 そんな激務が続く深夜、ひとときの休息中だった天海護の私室に、不穏な初野華が訪れた。

number.07 煉-RENGOKU- 西暦二〇一七年(3)

4(承前)

 コチコチコチ──
 アナログ時計が時を刻む音がする。もちろん、本物ではない。天海護の私室内に置かれた二十四時間表示のデジタル時計から、合成音が鳴るように設定してあるだけだ。針の音を聞いていると、落ち着くような気がするから。この夜も、六十回ほど聞いたところで、ドキドキがおさまったようだ。

「華ちゃん……」

 もう一度名前を呼んで、護は華の方を振り返った。すると、大きな目いっぱいに涙をためこんでいる顔が視界に入ってきた。

(綺麗だ……)

 恋人がなにかしら、悩みを抱えているにも関わらず、護はそう感じた。一分ほどの時間は護と同じように、華にも心の安定を与えてくれたらしい。こぼれそうだった涙を右の袖口で拭き取り、いまだに幼さの残る少女のような容姿のオペレーターは、ぽつぽつと語りはじめた。

「あのね、護くんの意見を聞きたいと思って……アルエットちゃんのことなの」
「もしかして……幾巳とのこと?」

 予想外の話題を切り出され、戸惑いながらも護は聞き返した。華はうなずいて、数時間前に目撃した光景を語りはじめた。新装開店した<おーびっと亭>の一角で、一緒に食事している様子の戒道幾巳とアルエット・ポミエを見かけ、声をかけようとした。だが、二人の会話が聞こえてきて、つい足が止まり、その機会を逃してしまったらしい。

「申し訳ないけど、二人で食事するのは、もうやめにしたい」
「……ウイ。戒道さんがそう言うなら異存はないけど、理由を聞いてもいいかしら」
「君は頭のいい人だ。説明なんかしなくても、わかってるんじゃないか?」
「無理よ、そんなの。思考のすべてをシミュレートできるほど、あなたを知っているとは言えないもの」

 華の見たところ、そう答えた時のアルエットの表情は普段とまったく変わりなかった。だが、その声はかすかに震えているように聞こえた。この食堂に限らず、二人だけで一緒に食事をしている姿は初めて見る。もうやめたいと言わしめるほどに何度も食事してきたのか、華にはどうにも想像がつかなかった。距離をおいて立ち尽くす華に気付かない二人は、そのまま会話を続けた。

「そうだな……すまない。自分を知ってもらえるほど話をしてきたとは、とても言えない」

 アルエットの声音に含まれた心の動きを察したのだろうか。戒道の口調は、常よりはずっと優しかった。もともと、彼は自分の気持ちや考えを人に伝えるのが、苦手な少年だった。むしろ、それで良いと思っていた。だが、友人や仲間が増えるに連れ、そんな自分を変えたいという想いが芽生えてきた。しかし、いまだに達成されたとは言いがたい。そんな自分を自覚しているからこそ、うちから沸いてくる感情を素直に告げた。

「僕には大切にしたい女性がいる。その人のことを考えると、そうしたくなる……それが理由だ」
「正直ね、戒道さん。大切にしてる……じゃなくて、大切にしたいってとこ」

 アルエットはどこか寂しそうに、笑顔を浮かべた。そして席から立ち上がる。

「よかった……好きになっちゃった人が、戒道さんで」

 自分の食事トレイを返却口に運んでいくアルエットの後ろ姿を、戒道は何も言わずに見送っていた。慌てて身を隠した観葉植物の影で、一部始終を見ていた華もまた──

 話を聞き終えて、護はため息をついた。

「うわ…はぁ……それは……つらいね」
「……うん」

 ベッドの上で、深くため息をついた護と並んで座りながら、華はうなずいた。

「戒道くんは悪くない……でも、アルエットちゃんが可哀想……」

 その言葉を聞いて、護は数か月前の出来事を思い出した。オーストラリアの病院に戒道が負傷入院した時のことである。戒道の恋人と思われるユカを、わざわざ病院まで連れてきたのは、アルエットだった。その時、護は「優しいんだね……」と声をかけようとして、なぜだかためらわれた。もちろん、彼女が優しくないという意味ではない。

(あれはきっと、幾巳のためにとか、ユカちゃんのためにやったわけじゃない。あの子はただ、自分がそうしたいからそうした……それだけなんだ──)

 あの時感じたものを、ようやく理解できたような気がした。同時に華も、悩み事を話すことができて、すこし胸のつかえがとれたらしい。
 護も華も、戒道やアルエット、そしてユカのことを大切な友人であり、仲間だと思っている。だが、どんなに心配であっても、それ以上なにもできないこともあるのだと、悟らざるを得なかった。彼らにできるのは、友人たちを見守っていこうと思う、ただそれだけだった。それを確認する会話の後、華がベッドから立ち上がった。

「ごめんね、護くん。寝るの邪魔しちゃって……おやすみなさい」
「大丈夫だよ、華ちゃんも……おやすみ」

 若い二人にとっては、あっという間の二十六分二十六秒間の出来事だった。踵を返して、華は護の部屋から出て行く。その物腰には、なんの違和感も見られない。
 だから護は気づかなかった。華はたしかに友人たちのことで悩んでいたが、同時に自分自身においても深刻で、かつてない命にかかわる重大な悩みを抱えていたことを──

 

5

 混沌とする世界情勢のさなか。ニューヨークの国際連合本部ビル、その事務総長執務室では部屋の主が膨大な書類の決裁に追われていた。といっても実質は、秘書官の指示する通りに処理を続けているという方が実情に近い。

「はあ、チェリー……これで全部かなぁ?」
「主要委員会のものはそれで全部です。ですが、まだ大切なものが残っています」
「オウ、そうだったそうだった。忘れていたわけじゃないよ! チェリー」

 うなずいたハート・クローバー事務総長の前に差し出されたのは、GGGブルーから提出された緊急予算請求を承認するための稟議書だった。チェリーという愛称で呼ばれている秘書官の磯貝桜が、付帯する資料を手際よく壁面モニターに映し出していく。クローバーは資料にうなずきつつ、言われるがままに次々と書類を決裁していった。傍目には秘書官が、事務総長の職権を壟断しているように見えるだろう。だが、これはクローバー自身が選んだやり方だった。可能な限り最短で、GGGブルーが要求するだけの予算を配分するために。
 現在、全世界が覇界の眷族の脅威にさらされていた。毎日のように無数の難民が生まれ、危機的状況にあっても国家間の足並みがそろわぬ案件が発生する。それらを調整するのも重要だが、GGGブルーに可能な限りの行動の自由を与えることこそが、人類存亡にとって不可欠なのだ。クローバーはそのことを知っていた。美人秘書の操り人形と陰口を叩く者もいるらしいが、体面にこだわるつもりなどなかった。
 GGGブルーが全人類のための防衛組織である以上、その活動には多額の予算を必要とする。その流れを円滑にすることもまた、戦いの一環なのだ。

「ふう、もうこんな時間か……腹がすいたな」

 クローバーはモニターの隅の時刻表示を見て、つぶやいた。

「チェリー、君は休憩を兼ねて食事でもしてきたまえ。ああ、ついでにケータリングでハンバーガーでも買ってきてくれると助かるな。公私混同で悪いが人手不足なんで……」
「事務総長、ハンバーガーでなくて申し訳ありませんが」

 桜がそう言って差し出したのは、日本式のお弁当箱だった。箱の中には、桜が勤務の合間に握った、おにぎりが入っている。

「こ、これを私のために……!」

 クローバーは感激の涙を浮かべつつ、おにぎりを手に取った。右手で仕事を続けつつ、左手でおにぎりにかじりつく。

「美味い、美味いよチェリー!」

 涙を流さんばかりの勢いの上司を見て、桜は微笑んだ。かつて、個人的好意を抱いていた日本人の上司にすら、このようなことをした記憶はない。だが職務を通じての、クローバーの全人類への献身を見ていたら、つい握ってしまっていたのだ。

「事務総長、ここに麦茶もありますから、飲んでください」

 桜は微笑みを浮かべたまま、麦茶の入った水筒と携帯用マグカップを差し出した。おにぎりと仕事を器用に両立しつつ、クローバーは麦茶に手を伸ばした。

(可愛い……)

 苦しそうに喉を詰まらせている上司が必死に麦茶を飲む様子を見て、桜はそう思った。

 国連首脳部が苦しい状況下で捻出した予算は、膨大なものだった。かつてゴルディオンクラッシャーを開発した際のそれにも匹敵する規模だっただろう。
 その予算をどんどん消費する機関のひとつに、GGGドイツ科研がある。GGGアメリカ宇宙センター、中国GGG科学院航空星際部、フランスGGG技研と並ぶGGG外郭機関のひとつだ。
 大気圏往還艇<テナヅチ>でオービットベースからこの機関に降り立ったのは、GGGブルー参謀アーチン・プリックルである。足早に面会室を訪れたプリックルは、部屋で待っていた人物と、握手をかわした。

「久しぶりだ、ドクトル・アー」
「ああ、そちらも元気そうで何よりです、ミスター・プリックル」
「元気でいるのが意外と言いたげだな。世界がこんな状況なのに……というのは確かだが、指揮をとる者こそ、タフであらねばならないからな」

 ドカッとソファーに腰掛けつつ、GGG参謀は豪快に笑った。この時、ドクトル・アーと呼ばれた人物とプリックルは、英語で会話している。もともとガッツィ・ジオイド・ガードが日本の秘密防衛組織であったことから、現在のGGGブルーでも職務中は主に日本語が使用されていた。日本語を口にする時、常にひょうきんでグチっぽいプリックルが、英語を話すときは重厚な口調になる。なかなかに周囲の人物を戸惑わせる奇癖だった。

「タフか……うらやましいですね、歳のわりにその頑強な身体──」

 皮肉ではなく、素直な賞賛の言葉だった。この時、ドクトルはソファーに座ってはいない。その細い華奢な身体は機械仕掛けの椅子の上にある。正確には椅子に変形した義足で、その側面からはマジックハンドが伸び、ドクトルの口元まで飲み物のコップを運んでいる。

「麗雄博士が設計したこのチェアがなかったら、ずいぶん不自由な人生だったと思う」
「獅子王兄弟はいつも色々な発明で、君たちの探査計画をバックアップしていたな」
「ああ、この脚はドイツ製だが、優秀なスタッフがメンテも手伝ってくれるので助かっている」

 獅子王凱の実父である亡き麗雄博士、そしてその兄である雷牙博士も、プリックルとドクトルには奇妙な縁があった。ドクトルは今でこそ両手両脚を義肢とする身であるが、かつては有人木星探査船計画の一員だった。その時の同僚に、麗雄博士の愛妻だった獅子王絆、プリックルの弟カクタス・プリックルがいたのである。
 木星探査に情熱を傾けた仲間同士であったが、いまは絆もカクタスも存命ではない。ドクトルとプリックルは、同じ寂しさを共有しあっていた。

「さて、積もる話はあるが、GGG参謀の貴重な時間を奪ってしまうのは人類存亡に関わる」

 そう言ってドクトルは、人の腕と同じように可動するマジックアームで、タブレット端末を指しだした。プリックルがのぞきこむと、そこにはGGGドイツ科研が担当しているとある案件の進行状況が表示されていた。一読して、プリックルが唸る。

「むう……かなり厳しい状況だな」
「そう、地球全土の黒化にはとても間に合わない」

 覇界の眷族による"黒い大地"の拡大は、黒化と呼ばれるようになっていた。ドクトルが提示した進捗からは、黒化の進行に追いつけないことは明白だった。

「これでも全力を尽くしてはいる……」
「気にしないでくれ、ドクトル。アメリカも中国もフランスも似たようなものだ」

 そう言って、プリックルは苦笑した。

「凡人が数を頼んでも、麗雄博士や雷牙博士にはかなわないか……」

 この十年、GGGとその外郭機関が常に直面してきた問題だった。だが、ドクトル・アーが凡人を名乗るのは、実のところ謙遜が過ぎるというものだ。
 ドクトルは義肢の権威であり(自らが被験者となってしまったのは皮肉なことだが)、かつて凱やルネのサイボーグ・ボディを開発する際にも、大きく貢献した人物なのだ。さらにその技術は勇者ロボたちのマニュピレイターにも応用されている。いま地球の叡知を結集して進めているプロジェクトにおいても、ドクトルの存在は欠かせない。

「わかった。オービットベースに戻って、この資料を提出させてもらう」
「やはりプランBを実行することになるな」
「危険性は高いが、やらなきゃならない。何故なら、我々はGGGだからな」

 プリックルの誇らしげな顔に、ドクトルは目を細めた。彼らが進めているプロジェクトとは別案で進められているプランB──それは機動部隊の勇者たちに、大きな危険を強いる賭けのような作戦だった。だが、危険を怖れていては、金色と緑色のエムブレムを背負った先輩たちに顔向けできない。それがプリックルだけでなく、青色のエムブレムを背負った者たち、全員の想いだった。

 ──翌日、オービットベースのビッグオーダールームに招集されたのは、現在のGGGブルーとGGGグリーンの総戦力と言っても良かった。GGGブルーのヘッドダイバーである護、戒道、蛍汰、火乃紀。ポルコートと月龍、日龍、翔竜といった勇者ロボたち。そして、GGGグリーンの凱とコスモロボ形態のマイク&バリバリーン、ようやく修復が完了したビークル形態のボルフォッグと、ロボ形態のゴルディーマーグ。いや、ゴルディーの姿は以前とは変わっていた。

「ホワッツハプン? うすらトンカチが増えてるもんね~~」

 マイクがそう言って、モニター上の目を丸くしたのは、ゴルディーが背負ったハンマーの他に、もうひとつのハンマーを手にしていたからだ。以前ならマイクの軽口に、頭部から蒸気を噴き出しかねない勢いでキレていたゴルディーだが、この日は上機嫌だった。

「おうよ、これこそ俺様の新しい力! 今日からゴルディーマーグではなく、ゴルディーダブルマーグと呼んでもらおうか!」
「長くて言いにくいんだもんね。略してゴデブーでいいんだもんね」
「て、てめぇ、俺様のリニューアルが台無しじゃねえか!」

 ゴルディーの上機嫌がもったのも、わずか数十秒だったようだ。

「凱長官代理……我々と同時期に回収されたはずの光竜と闇竜の姿が見当たりませんが」

 そう疑問を呈したのは、パトカーの状態で音声を発したボルフォッグである。ゴルディーとともに修復完了してようやくこの場に臨んだのだが、その観察眼は衰えていないようだ。

「ああ、その疑問はもっともだが……まずはGGGブルー長官の説明を聞いてくれ」

 凱の言葉を受けるようなタイミングで、阿嘉松が両GGGの隊員たちに作戦説明を始めた。

「言うまでもねえことだが、俺たちの目的は覇界の眷族による黒化を止めて、地球を救うことだ。それにはディスクXの量産が有効、そのためには不本意だがキノコ雲あたまのクソ不良老人を救出しなくちゃなんねぇ」
「長官、そんなところに個人的感情を持ち込むのダメダメよ! 僕、幻滅しちゃうネ」

 プリックルが大げさに両肩をすくめてみせ、笑いが起こった。前日に英語を話していた時とは異なる、気の抜けたひょうきんな口調。それが深刻な空気を吹き飛ばす役に立ったようだ。

「ああ、わかったわかった。とにかくこれから発動する作戦の最大の目標は、獅子王雷牙の救出だ。だがそのためには、幻竜神と強龍神──この二体を攻略しなきゃならねぇ」

 獅子王雷牙がこの二体のどちらかの内部に、ゼロ核となり存在しているであろう可能性は高い。だが、目標がわかっていても、その困難具合が減じるものではない。

「長官……悔しいけど、いまの僕たちでは彼らに打ち勝つのは難しいと思います」

 護が静かに、言葉を発した。自分たちの無力さを自覚してはいても、絶望はしていない。このように作戦会議を開くからには、なにか対抗策を見つけたのだと信じている表情だ。

「護の言う通り、ガオガイゴーもガオファイガーも、トリプルゼロの恩恵を受けてやがるあいつらにはかなわねえだろうな。だから、勝てる可能性がある奴らをぶつける。勝利の鍵は、こいつらだ」

 メインスクリーンに、ヤマツミ内部の格納庫が映し出された。そこにはビークル車両がすっぽり収まるほどのカプセルが二つ置かれている。ハッチが閉じられていて、内部の様子はわからない。

「ご機嫌はどうかな? 光竜、闇竜」

 阿嘉松の後を継いで、楊が語りかけた。

『上々ですが、この状態ではロボジュースが飲めないのが残念です』
『はやく元の体に戻りたい~~!』

 モニターから出力されてきた闇竜と光竜の声に、戒道がはっとする。

「どういうことだ?……闇竜と光竜はビークル形態のまま、AIブロックを分離されているのか?」
「そうだ。故あって、AIは機体に接触しない状態にある。搭載されるのは……月龍、日龍と奇蹟のシンメトリカルドッキングを果たすときだ」
「それは……木星でザ・パワーの力を借りて実現した、あの合体のこと!?」

 驚く護に、楊が説明を続ける。

「ご明察。今、幻竜神と強龍神はトリプルゼロの力でそれを再現しているのだ。同等の力で立ち向かうのが正攻法と言えよう」
「……天竜神と星龍神にも同じことを!?」

 トリプルゼロの副産物であるザ・パワーをコントロールするのは難儀である。それをよく知っている護の表情を見て、凱が応える。

「そうだ、覇界将たる幻竜神と強龍神に対抗するには、それしかない。それが俺たちのくだした判断だ」

 凱もまた、GGGグリーン長官代理として、阿嘉松や楊と議論を重ねた。そしてたどりついた結論である。

「天竜神の機体は、AIと分離して修復した後、あえてトリプルゼロを排除せずに、厳重に保管している状態だ」

 楊は表示されているカプセルについて、説明した。カプセル内部には高濃度のGリキッドを循環させており、それが周囲へのトリプルゼロの浸食を防いでいることを。
 作戦が始まったら、できるだけ幻竜神と強龍神に接近したところで、光竜と闇竜のAIブロックを機体に戻す。数分もすれば、また覇界の眷族となってしまうのは疑いない。だが、それまでの間に奇蹟のシンメトリカルドッキングを敢行、幻竜神と強龍神を攻略することさえできれば──

「覇界将二体の中のゼロ核を回収できるはずだ!」

 その作戦に戦慄したのは護だけではない。

「だが、時間制限が厳しすぎる。目標を達成する前にトリプルゼロに浸食されてしまったら、光竜と闇竜は覇界の眷族に逆戻りだ。それどころか、月龍と日龍まで敵にまわることに……」

 戒道はその先の懸念を口にしなかった。だが、言わんとすることは明らかだ。最悪の場合、覇界幻竜神と覇界強龍神に匹敵する強敵が、新たに二体誕生し、戦力差が逆転不可能な状態になる。そうなれば、もはや人類が勝利する確率も完全にゼロとなるだろう。戒道の指摘を覚悟していた阿嘉松は、静かに切り出した。

「そうならねえための対抗策として、悪いが護と幾巳にゃ無茶してもらわなきゃなんねえ。お前さんたちは……合体ビークルロボ内部に乗り込んで、GストーンとJジュエルの力で、トリプルゼロの浸食を少しでも遅らせてほしいんだ……」

 阿嘉松は苦渋の表情で告げた。勇者ロボを軽んじるわけではないが、三重連太陽系生まれとはいえ生身である若き二人に、危険な任務を強いている。それを自覚しつつも、告げなければならないのが、GGG長官という立場だ。
 だが、GGGブルー機動部隊隊長と副隊長は迷わなかった。むしろ、その表情は勝機を見いだした希望に満ちていた。

「うわっはー! やります! やらせてください!」
「ああ、どう考えてもそれ以上に成功率の高い作戦は存在しないようだな」

 オペレーター席で、発言することなしに会議を聞いていた華とアルエットの肩が震える。二人とも、大切に想う人が冒さねばならぬ危険の巨大さを悟ったのだろう。しかし、同時にそれをやらねばならぬ事を理解しているが故の無言だった。かつての機動部隊オペレーター卯都木命がそうだったように──

「君たちも、この作戦でいいんだね?」

 護は隊長として、月龍と日龍、そして光竜と闇竜に問いかけた。

「ヤー、それが勇者としての任務ならば」
「あの先輩方もなかなかやるってわかりましたから。私たちと組めば、失敗などありえませんわ!」
『ねえ、闇竜。あの子たち妹なのに、あたしたちより自信たっぷりだよ~~』
『仕方ありません。先輩である私たちよりも稼働時間がずっと長いのですから』

 姉妹たちはそれぞれの個性で、作戦に異存のないことを示した。そんな仲間たちの様子を見て、阿嘉松は満足げにうなずく。

「ようし、作戦決行は次に幻竜神と強龍神が現れた時! 作戦名は……『竜シリーズだらけの合体戦! 最強兄弟と無敵姉妹、勝つのはどっちだ大作戦』だッ!」
「アウチ……」

 阿嘉松の叫びに、プリックルが絶望したような声をもらす。その場の全員が言葉を失くしたが、少なくとも重々しい絶望感は一瞬で霧散したようだ。

「ええっと…竜……」

 いくらなんでも長すぎると感じた凱が、別の作戦名を提案しようと口を開いたその瞬間──

 サテライトサーチが警報音を奏でた。それはメキシコのチクシュルーブ・クレーター付近に、覇界の眷族とゼロロボの群れが出現したことを報じるものだ。狡猾なる大河幸太郎率いる敵が、何の策もなく現れるはずはない。確実な勝算あっての進撃であることは間違いないのだ。警報音は、あたかも終焉を知らせる警鐘のように鳴り響いた。勇者たちが危険な賭けに身を投じなければならない作戦──その開幕を告げる鐘である

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


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