覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第44回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。
 だが、手をこまねいて滅亡の時を待つ地球人類ではない。浄解によって復活した隊員たちがGGGグリーンに帰還し、GGGブルーと共に新たな戦略を練る。獅子王雷牙を救出することでディスクXを増産し、逆転への望みを繋ぐ作戦が動き出したのだ。
 その鍵を握るのは竜四姉妹。いまだ光竜と闇竜の機体に残留したままのトリプルゼロを活用して、月龍、日龍との奇蹟のシンメトリカルドッキングを敢行。超大なる出力の覇界幻竜神と覇界強龍神に対抗する作戦である。しかしそれは、月龍と日龍がトリプルゼロに浸食されるまでのごくわずかな時間に完遂させねばならない過酷なものだ。わずかでも浸食を遅らせるため、月龍と日竜には護と戒道が乗り込むことになる。
 GGG史上にも例を見ないほどの厳しい決戦が、いま始まろうとしていた……。

number.07 煉-RENGOKU- 西暦二〇一七年(5)

6(承前)

 対地高度を落としていく諜報鏡面遊撃艦<ヤマツミ>の格納庫に、銀と金の大型車輌、そして白と黒の大型カプセルが並んでいる。

「氷竜兄様は、とても頼りになるんです。私たちみんなの長兄ですから、リーダーシップを発揮してくださって……」
「炎竜兄ちゃんは楽しいんだよ! すぐ熱暴走しちゃうけど、ミラーシールドであたしたちを護ってくれるの」
「風龍兄様はすごく優しい方です。戦いの中でも、いつも私たちのことまで気にかけてくださって……」
「雷龍兄ちゃんは、痺れるほど格好いいよ! 電磁荷台デンジャンホーで飛んだり、エレキガンを構えた姿がとってもイケてるの!」

 大気圏に降下中の格納庫で行われていたのは、光竜と闇竜による兄自慢大会だった。カプセル表面のライトが明滅して、内部に保存されている超AIのはしゃぎっぷりを表している。

「うらやましい……」
「私たちはほとんど会う機会もないまま、お旅立ちになってしまったのに……」

 月龍と日龍はそれぞれのヘッドライトを光らせ、羨ましそうな声を出した。だが、落ち込んでいるように聞こえたのは一瞬。すぐに誇らしげな声音で宣言する。

「でも……これから私たちも氷竜先任たちに指導してもらえるのです!」
「そうよ、きっとお兄様方は優秀な妹の登場を喜ばれるはずよ!」
「いやぁん、闇竜~~。あの子たち、妹なのに私たちより自信満々だよぉ」
「仕方ありません。それだけ実戦経験を積んできているのですから」

 そんな会話を耳にして、日龍の運転席に座っている天海護は微笑んだ。

(みんな、氷竜たちを救いたいという想いは同じだ。これならきっといける……!)

 竜シリーズのビークルロボ《青と赤、風といかずち》がシンメトリカルドッキングを果たすには、超AIの同調率……すなわちシンパレートを一〇〇パーセントにしなければならない。シャッフルした《青と雷、風と赤》による奇蹟のシンメトリカルドッキングともなれば、二〇〇パーセントが必要だ。
 なかなかそれが果たせずにいた月龍と日龍は、覇界天竜神と戦った際、最愛の末弟である翔竜が撃破された(……と思い込まされた)怒りに、超AIを同調させた。
 月龍と日龍のロールアウトは、光竜や闇竜が三重連太陽系に旅立つ少し前であり、面識がないわけではない。だが、充分な絆を築いているとは言いがたい。

(そんな状況で心を通じ合わせるには、やっぱり兄たちのことを考えるのが……)

 日龍の運転席でそう考えた護が、竜四姉妹たちにそんな話題を振ってみたのである。

『護くん、対地高度三〇〇〇、作戦開始だよ!』

 機動部隊オペレーターである華に続いて、阿嘉松長官の罵声が回線に響いた。

『よっしゃあ! 竜シリーズだらけの合体戦! 最強兄弟と無敵姉妹、勝つのはどっちだ大作戦発動だァッ!』

 もはや誰もツッコミを入れる余裕もない昭和風な作戦名だが、その開始の大号令とともに、護を乗せた日龍と戒道を乗せた月龍が、ミラーカタパルトに運ばれていく。同時に白と黒のカプセル内部では、GGG全スタッフに緊張を強いる作業が開始された。Gリキッドという粘性の液体に浸された光竜と闇竜の機体に、AIブロックを組み込むのだ。Gリキッドは勇者ロボの血液のようなものであり、危険性はない。問題はいまだトリプルゼロに浸食されたままの機体だ。超AIは凱と護による浄解で元に戻っているが、トリプルゼロに触れることで再浸食されてしまうのは確実だ。作戦を成功させるには、それをどこまで遅らせられるかが、勝利の鍵となる。

「頑張ろうね、闇竜……あたしたちにかかってるんだから!」
「ええ、護くんと戒道くんも力を貸してくれます……きっと成功します!」

 二機の超AIは、ヤマツミ艦内の整備部スタッフの手により、機体に組み込まれていった。だが、次の瞬間、強烈な違和感が襲いかかってくる。

「きゃあああああっ!」

 光竜と闇竜は悲鳴をあげた。かつてオレンジサイトで味わった異様な感覚。宇宙の摂理が、おのが倫理観を強制的に上書きしようとする違和感が、機体から超AIに伝わってきたのだ。

「くっ、負けたくない! もうあたしたちは……」
「ええっ、負けられません! 兄様たちを救い出すまで!」

 あの時、トリプルゼロに浸食されてしまったせいで、自分たちは覇界の眷族となってしまった。それをGGGブルーの勇者たちが、命がけで救ってくれたのだ。今度は自分たちが、救う側になる時だ! 光竜と闇竜がその想いを強くするとともに、GSライドが唸りをあげる! 怖いと思う気持ちを乗り越えるエネルギー……勇気ある限り、Gストーンは無限の力を発揮する。それこそが、終焉へと向かう宇宙の摂理に抵抗するエネルギーだ。圧倒的な圧力の前に一度は屈した光竜と闇竜が、今度は力強く立ち向かう。

「ミラーカタパルト、射角よし……月龍、日龍、イミッションッ!」

 オービットベースからの指令で、銀と金の機体が射出された。続いて、白と黒の機体がミラーカタパルトにセットされる。

「続いて光竜、闇竜、イミッションッ!」

 ユカタン半島上空の空に、ミラー粒子に包まれた光の弾丸が四発撃ち出された。

 

 竜四姉妹が射出される直前、ヤマツミ第二格納庫の艦底部ハッチからは、二機の飛翔体が飛び出していた。

「フュージョン……」
「ユーハブコントロール!」
「アイハブコントロール!」

 ファントムガオーと覚醒人凱号、まったく違うシルエットを持つ二機が変形して、よく似たスタイルのメカノイドとなった。自由落下する彼らの眼下では、ゼロロボたちがチクシュルーブ・クレーターの跡地である牧草地帯の大地を黒化している。その中心に跪いているのは、覇界の眷族のなかでも最強の両将──覇界幻竜神と覇界強龍神だ。彼らの前の地面には、オレンジ色の繭が四個ある。大河幸太郎、獅子王雷牙、スワン・ホワイト、卯都木命の四人が自らをゼロ核化したのだ。GGGが幻竜神と強龍神を見捨てるとは思えないが、万が一にも広域破壊兵器などを使わせないようにするための駆け引きだ。覇界の両将はそれぞれ二個ずつのゼロ核をつかみあげると、自分の両肩の運転席にそれぞれ一つずつ収納した。そして並び立ち、頭上を見上げる。

「来たか……ガオファーとガイゴー」
「凱隊長と護隊長……今度は逃がさないぜ」

 ガイゴーにダイブしているのが護と戒道でないことを知らない覇界幻竜神と破壊強龍神が身構える。その上空で二機のメカノイドは、ファイナルフュージョンの体勢に入った。凱本人と阿嘉松の承認がくだり、オペレーターの二人が拳を振り上げる。

「ファイナルフュージョン……プログラムドラーイブッ!」

 初野華が固く握りあわせた両拳を振り下ろす。

(蛍汰さん、火乃紀さん……護くんをお願いします!)

 その隣で、アルエットがバレリーナのような回転運動のエネルギーを拳に乗せた。

(凱……信じてる、戒道さんを護って……!)

 同時に押し込まれたドライブキーによって、バージョンアップされた最速スピードでのFFプログラムがスタートする。ガイゴーとガオファーは同時にファイナルフュージョンを開始した。

「ファイナルフュージョンッ!!」

 上空で展開された、ふたつの渦巻き。いずれも緑色の電磁竜巻による暴風だ。覇界幻竜神と覇界強龍神のかまえは、その渦巻きに向けられている。

「悪いが初手で決めさせてもらうぜ。吹けよ氷雪、轟け雷光──」
「唸れ疾風、燃えろ灼熱──」

 これまで幾多の敵からの合体妨害を阻んできた電磁竜巻──だが、この二体の最強同時攻撃に耐えられようはずもない。必殺の一撃が放たれんとした、その瞬間──
 虚空からの攻撃が、覇界幻竜神と破壊強龍神の足下を直撃した。

「大回転魔弾!」
「大回転魔輪!」

 それは三身一体の体表を覆ったミラーコーティングの粒子を、散弾銃のように周囲に拡散させるビッグボルフォッグとビッグポルコートの攻撃技だ。彼らはホログラフィックカモフラージュとプロジェクションカモフラージュで、気付かれることなく目標に近づき、先手を取ったのである。いずれも覇界の両将と比べれば、極めて非力な攻撃ではあったが、この時は思いもよらぬ威力を発揮して、覇界の眷族の足下の大地を抉った。

「ぐおおおっ!」

 マキシマムトウロンの発射態勢に入ったところ、その足場を崩されたのだからたまらない。覇界の眷族最強の二体が、たまらずに転倒した。

「イエーイ、大成功だっぜ!」

 快哉の声をあげたのは、空中でスタジオ7に乗ったブームロボ形態のマイク・サウンダース十三世である。その腕にはツインネックのギラギラーンVV。胸部トレイ内部では、ディスクPが回転している。ビッグボルフォッグとビッグポルコートは接近する前、ディスクPの機能でGSライドの出力を一時的に最大値まで高めていたのだ。

「くっ、マイクめ……!」

 覇界強龍神が倒れたまま、右腕の攪拌槽ジャオダンジィから竜巻を放った。暴風の直撃で、スタジオ7がマイクもろとも一瞬にして吹き飛ばされる。

「オウノーーーーッ!」

 ぽちゃん、と音をたてて、マイクはメキシコ湾に没していった。続いて、覇界強龍神が左腕の電磁荷台デンジャンホーをかまえるが、いち早く諜報ロボたちは姿を消し去り、戦闘圏内から離脱していた。

「それを受けるわけにはいきません……!」
「一撃でも食らったら、非力な僕らはおしまいなのでね」
「ちいっ……!」

 狙いを見失い、悔しそうな覇界強龍神。

「むっ……!」

 センサーに新たなる存在を察知し、機体が反応する覇界幻竜神。彼らの背後に、二体の勇者王が降り立つ。ガオファイガーとガオガイゴー……諜報ロボたちと違って、こちらは頑強なコンビだ。
 覇界幻竜神と覇界強龍神は悠然と立ち上がって、出現した強敵に身構える。

「ふっ、こっちはトリプルゼロの無限のパワーが溢れている。マイクやビッグボルフォッグじゃ相手としてあまりにも物足りない」
「それとビッグポルコートとかいう、ちっこいのもいたかな。いずれにせよ勝負にはならない。決着をつけるに相応しいのはやはり……隊長たちでないとな!」

 その言葉にガオガイゴーの蛍汰が目を丸くする。

「へ、隊長? いやいやいや、凱さんは隊長だけど、俺ただの平隊員なんだよね。まあ、オフレコってことで……」
「もう……ケーちゃん、そんなこと言わなくていいのに」

 さらに間の悪い行為が重なった。普段、GGGの隊員の間、機体の間ではスクランブル回線によって通信が行われている。だが、覇界の眷族との戦いにおいては、相手に呼びかけたい時もあれば、傍受されたくない時もある。そのため、いまだ解析されていないであろう暗号コードも用意されていたのだが、新人隊員である蛍汰は間違いをしでかした。

「その声……音声識別では一〇〇パーセント護じゃないな?」
「ああ、この波形パターンは、別の機体を動かしていた新人隊員のようだ」

 既知のGGG専用コードで発せられた通信を傍受した覇界幻竜神と覇界強龍神が、戸惑ったようにAIの状況予測回路をフル稼働させる。そんな二体に、ガオファイガーから凱が呼びかけた。

「幻竜神、強龍神……今日、お前たちの相手をするタッグチームは俺たちじゃない。あいつらだ!」

 その言葉とともに、四発の弾丸が覇界の眷族たちの頭上を通過していった。狙い過たず、光の弾丸は覇界の両将の背後間近の地面に突き刺さる。着弾の爆煙が晴れていくと、そこには四つの影が立っていた。……いや、屹立する二つの影と大地に倒れ伏している二つの影だ。

「痛い……いえ痛覚ではなくビジュアル的に。顔から突っ込んでしまいました……」
「うふふ、まだまだね。私、秀麗な顔貌だけは打ち付けないよう、守り抜きましたわ」

 倒れたまま嘆く闇竜と強がりを言う日龍。

「こんな時でも着地失敗とは緊張感に欠けるわね」
「そうだよぉ、ダメだぞぉ、しっかりしなきゃあ」

 あきれたように、姉妹を見下ろしている月龍と光竜。これが竜四兄弟と四姉妹──総員揃う初めての対面だった。

「大丈夫か、護?」

 月龍の脚部にある運転席から呼びかけたのは戒道幾巳。

「う、うん、予想はしてたからね」

 日龍の運転席から応えたのは天海護だ。当然、自分の方が激しい衝撃にさらされると承知の上で、護は日龍に乗り込んだのだった。だが、こちらの二人は蛍汰と違って、通信回線にも気をつけている。会話は傍受されず、戒道と護の存在を悟られることもない。
 覇界幻竜神と覇界強龍神は二体の勇者王に背を向けると、四姉妹の方へ向き直った。

「ほう、妹たちが相手をするというのか……随分と背伸びをしたな」
「トリプルゼロの力で奇蹟のシンメトリカルドッキングを果たした俺たちに、本気で勝てると思っているのか?」

 間髪なく、覇界強龍神が右腕から竜巻を、同時に覇界幻竜神が左腕から雷撃を放った。いずれも必殺技とは異なり、予備動作はいらない。合体前のビークルロボを制するには、威力よりも素早さだと判断したのだ。歴戦の勇者である氷竜と炎竜の超AIは、GGG機動部隊の中でも特に戦術判断に優れている。この一点においてだけでも、四姉妹は四兄弟より劣っているに等しい。
 四姉妹は、妹たちとて容赦のない兄たちの攻撃が着弾するまでの一瞬、それぞれの個性でそれぞれの思考を巡らせた。

(やだやだやだ、雷龍兄ちゃんの電撃受けたら、お肌焦げちゃう!)
(ここは私のクリスタルシールドで防げば……!)
(プロテクト・プロテクターで受け止めるべきか、ナイン、いま選ぶべきは!)
(ふん……私と同型の姉妹たちなら、いま選ぶべき道は決まっていますわ!)

 GGGオービットベースのメインオーダールーム、初野華の目の前の端末に、驚くべき数値が表示された!

「阿嘉松長官! 光竜と日龍、月龍と闇竜のシ、シ、シ、シンパレートが急上昇しています! 一二〇パーセント…いえ一三〇…一五〇…一八〇…もう、すぐに二〇〇パーセントに達します!」

 その報告を聞いて驚いたのは、GGGブルーの隊員ではない。火麻激、猿頭寺耕助、牛山一男といった、予備要員として詰めているGGGグリーンの面々である。

「おいおい、こんな一瞬でシンパレートを上げられるのか!」
「推測ですが、トリプルゼロの侵食経験が、生物にとっての血清のように、AIにも功を奏す形となって表われているのかもしれませんな……」
「しかし、ザ・パワーを取り込んだ経験を持つ氷竜たちの時は、あんなに苦戦したのに!」

 彼らの驚きを耳にした阿嘉松がニヤリと笑う。

「やるべきことが一致してりゃあな、同調率なんてものは勝手に上がるもんなんだよ!」
「要は勇気で補ったってコトネ」

 横からプリックル参謀がボソリと呟く。

「あー! 一番言いたかったことを先に言っちまいやがったな!」

 一瞬、頭を抱えた阿嘉松だったが、すぐに気を取り直して前方に向けて指をさす。

「おおっし! 妹だらけのシンメトリカルドッキング! 承おおっ! 認んんっ!!」

 オービットベースから送られてきた承認シグナルを受けて、四姉妹は宙に飛んだ。そう、彼女たちの思考はどのようなルートを巡ろうと、全員がただ一つの解答に辿りついていたのである。

『自分たちの団結力で、兄たちを取り戻してみせる!』

 迫る竜巻と電撃……トリプルゼロで強化された激烈な攻撃を紙一重でかわしつつ、四姉妹は同時に叫んだ。

「シンメトリカルドッキングッ!!」

 四体二組のシンパレートはともに二〇〇パーセントに達した。機体が変形して、新たなパートナーと左右合体していく。
 日の光のごとくに輝く竜神が、大地に立つ。その名は──

・竜・神ッ!」

 続いて闇に覆われた新月のような龍神が現れた。その名は──

しん・龍・神……」

 奇蹟のシンメトリカルドッキング、それは設計段階では想定されていなかった組み合わせによる、イレギュラーな合体ビークルロボだ。機動プログラムが存在しないため、当然、なんらかの想定外要素がなければ、実現できない。かつてザ・パワーがそうであったように、現在はトリプルゼロが覇界幻竜神と覇界強龍神を誕生させている。同じように、光竜と闇竜の機体に残留しているトリプルゼロが、この輝竜神と新龍神という新たな勇者を降臨させたのだ。だが──

「あ、あああああっ!」
「こ、これはトリプルゼロの浸食──」

 輝竜神と新龍神は片膝をついて苦しんだ。それぞれの半身である光竜と闇竜の機体から、物理的に接触した月龍と日龍へと、トリプルゼロが猛烈な勢いで浸食してきたのだ。ほとんど瞬間的とすらいえる勢いで。だが、全身のほとんどを浸食されてもなお、抗い続けている部位がある。それぞれの超AIだ。

「負けない……私たちの<ココロ>は、こんなものに……」
「そう……宇宙の摂理に立ち向かえるもの、それは<ココロ>……」

 光竜と日龍、月龍と闇竜の超AIは統合され、それぞれのひとつの輝竜神と新龍神の超AIになっている。ゆえに当然、オレンジサイトでひとたび浸食された際の光竜と闇竜の記憶が、生々しく回路中を駆け巡る。宇宙の摂理が浸食されてきて、自分の倫理観が強制的に上書きされていく恐怖。同時に、それに従ってしまえば何も怖れることはないという誘惑。それらが誕生したばかりの二体の超AIを包み込もうとする。
 本来、ビッグバンによって誕生した宇宙が、熱を失い、冷えきって終焉を迎えるのはごく自然な現象だ。その流れに逆らって、熱を生みだそうというのが知的生命体の活動である。そう、<ココロ>こそが、宇宙の摂理という自然現象に抗う、唯一のエネルギーなのだ。

「私たちの全身がトリプルゼロに浸食されようと……」
「ココロだけは手放さない。兄様たちを救い出すために……!」

 そして、トリプルゼロが圧力を高めてくるなか、超AIに寄りそって防壁を張るエネルギーがあった!

「怖れないで輝竜神! 僕のGストーンと一緒に恐怖を乗り越えるんだ!」

 輝竜神の左肩運転席で、必死にGストーンによる防壁を展開しつつ、護が叫ぶ。

「そうだ新龍神! 僕もJジュエルでともにもがきあがく! 生命の力で立ち向かうんだ!」

 新龍神の右肩運転席では、戒道幾巳がJジュエルから生命の輝きを迸らせていた。すべてを宇宙の摂理に従わせようとする圧力のなか、二体の超AIと二人の命の宝石が抗い続けている。
 オレンジ色に淡く輝く姿で、輝竜神と新龍神が立ち上がる。

「ヤアア! 護くんの力があれば百人力!」
「必ずや任務を達成してみせましょう……」

 それに対峙するのは、やはりオレンジ色に激しく輝く覇界幻竜神と覇界強龍神。

「さすがは我が妹たち、私たちと同等の力を得たというわけか。だが、そのAIもいつまでトリプルゼロに抗い続けていられるかな?」
「時を待つ必要はない。俺たちがそのココロを打ち砕いてやろう……兄として、宇宙の摂理のために!」

 覇界幻竜神と覇界強龍神が、猛然とダッシュする。輝竜神と新龍神も、これを迎え撃つかのように飛び出した。いまここに、竜神シリーズ四体が相まみえる決戦がはじまる!

 その激戦のかたわらで、ガオファイガーとガオガイゴーは、ゼロロボ群に立ち向かっていた。ビッグボルフォッグとビッグポルコートも、悟られぬように戦闘圏内の中心に再来する。しかし彼らとて、トリプルゼロをまとって高出力でぶつかり合う竜神たちの戦いに、下手な手出しはできない。それどころか、足手まといになる可能性すらある。そのため、ゼロロボへの対処を優先するというのが、阿嘉松や凱の判断だ。大地の黒化を防がねばならないし、ゼロロボのなかに組み込まれているであろうGGG隊員のゼロ核も救出しなくてはならないのだから。そして──

(戦いが続けば、ヤツがきっと来る。あいつは俺が止めるしかない……!)

 ゼロロボの群れに対処しつつも、凱は全身で警戒していた。いまだこの戦場に姿を見せていない難敵。だが、きっと現れる──凱のうちには、そんな確信にも近い予感があったのだ。
 乱戦のなか、ガオガイゴーのサブヘッドダイバーである火乃紀は、ガイゴー部に組み込まれたアクセプトセンサーで得た情報をオービットベースに送信していた。

「まだなの? タマラ!」
『おまたせしました解析完了ですデータをこれから転送します全部で四体です!』

 蛍汰の視界に映し出される 百体近いゼロロボの群れ。そのうちの四体にマーキング表示が重なった。凱やビッグボルフォッグ、ビッグポルコートの視界にも同じものが表示される。

「よっしゃ!」
「確認しました! あの四体が、ゼロ核を搭載しています!」
「まずはゼロ核の確保を優先しようか!」

 二体の諜報ロボが連携して、マーキングされたゼロロボの一体を追い詰めていく。

「ビッグポルコート隊員、私が道を切り開きます。その隙にゼロ核を!」
「了解だ!」
「大回転大魔弾!」

 ビッグボルフォッグが光の独楽となって、標的の周囲のゼロロボを蹴散らしていく。切り開かれた空間を、もっとも身軽なビッグポルコートが突破していく。
 彼にとって、一番取り戻したい人物──元相棒である、シャッセールのルネ・カーディフ・獅子王はいまだ覇界の眷族のなかにいる。もしも取り戻せるのなら、彼の手で──それがビッグボルフォッグなりの友情だった。Gアイランドシティでの借りを返したいという想いもあったかもしれない。ビッグポルコートは内心で感謝しつつ、大回転大魔弾によって半壊した標的のゼロロボに突入し、ゼロ核を取り出した。

(もっとも、ルネはこんなところにはいないだろうな。いるとしたら……)

 ガオファイガーとガオガイゴーも、それぞれ力任せにゼロロボを引き裂き、ゼロ核を確保する。圧倒的なパワー差があるため、ヘルアンドヘブンを使うまでもない。そして、最後の一体は年少組ともとれる二体が撃破した。

「イエーイ、マイクたちがゼロ核ゲットだっぜ!」
「やりましたね!」
「ニューフレンドのおかげだっぜ、ナイスだ翔竜!」

 メキシコ湾に没したマイクを翔竜が引き上げ、二人で戦線に復帰したのである。ハンドマイクの形状をしたドカドカーンVによる二連装コーラスで、標的の機体表面を音圧破壊した瞬間を狙って、最速スピードでアクロバット飛行する翔龍が、素早くゼロ核を抜き取る連携をこなした。これで四つすべてのゼロ核を回収したことになる。だが、その時、戦場に暗い影が落ちた。

「!」

 頭上で日差しを遮ったものの正体に、凱は気づいていた。いや知っていたのだ。ヤツは必ず、この戦場に現れると──
 空を見上げたガオファイガー、その視線の先に太陽を覆い隠した巨体がある。厚い雲をも押しのけて力強く降下してくる超弩級戦艦。

「やはり来たか…」

 凱の眉間に力が入る。上空から迫り来る覇界の方舟ジェイアーク。その艦橋から、ふたりの声が響いた。

「へえ、ポルコート……あんた、こんなところにいたんだ」
「凱……ようやく訪れたようだな。我らの決着をつける時が!」

 覇界の眷族──その最大にして最強の王がふたたび降臨した。

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


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