覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第46回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。この状況を打開するため、GGGブルーとグリーンは、決死の作戦に打って出る。
 いまだ光竜と闇竜の機体に残留したままのトリプルゼロを活用して、月龍、日龍との奇蹟のシンメトリカルドッキングを敢行。超大なる出力の覇界幻竜神と覇界強龍神に対抗する作戦である。しかしそれは、機体がトリプルゼロに浸食されるまでのごくわずかな時間に完遂させねばならない過酷なものだ。わずかでも浸食を遅らせるため、月龍と日龍には護と戒道が乗り込むことになる。
 そして、メキシコのユカタン半島、チクシュルーブ・クレーターでついに始まる死闘。覇界王キングジェイダーを介入させまいと、凱、蛍汰、火乃紀が決死の戦いを挑む。その一方、光竜、日龍、翔竜がトリニティドッキングで翔輝竜神となり、覇界幻竜神と覇界強龍神に空中戦を挑む。さらに月龍と闇竜がシンメトリカルドッキングした新龍神に力を貸すべく、ベターマンが現れた……。

number.07 煉-RENGOKU- 西暦二〇一七年(7)

8(承前)

 新龍神の全身に、ベターマンたちの変身体が鎧のごとく装着された。その光景は、ワダツミからも確認され、メインオーダールームへも映像が転送されていた。

「おいおい、いったいなんだありゃ! またベターメンになるのかと思ったらよ!」

 大スクリーンに映し出されたその姿に驚愕したのは阿嘉松だけではなかった。

「おそらくあれが、現状彼らが選択しえる、もっともベターな選択だったのだろう」
「あいつら……新龍神の装甲にベタベタへばりつきやがって…名付けてベタベターメン承認ってか!?」

 冷静な楊に対して、ベタベタなダジャレを口にする阿嘉松。しかし、勇者たちの絶体絶命の危機に際して、オペレーターたちにはツッコミの声をあげる余裕などなかった。

「戒道さん……」

 得体の知れない姿となった新龍神を見て、その内部にいる戒道幾巳のことが心配になり、不安げな声をこぼしたアルエット。間髪入れずに華が励ます。

「大丈夫、アルエットちゃん。戒道くんと護くんを信じよう」

 天海護が乗り込んでいる翔輝竜神こそ、覇界幻竜神と覇界強龍神に捕らわれて、今まさに絶体絶命の危地にいる。それでも心を強く持とうとする華の姿──それは長年、護や戒道とともに、GGGの仲間とともに、そして勇気ある誓いとともに、戦いの経験を積んできたが故だ。そんな華に先輩としての頼もしさを感じ、アルエットは不安な気持ちを落ちつかせた。

「ええ、初野先輩……いまは、私たちにできることを全力でやり遂げるわ!」

 アルエットはそう答えると、浮かびかけた涙を拭うように、コンソールの方へ向き直った。そして、思う。

(よかった、私には初野先輩がいてくれて……)

 いま自分たちが座っている、メインオーダールームの機動部隊オペレーターシート。かつてこのポジションで活躍した卯都木命は、なんて強い女性ひとだったのか……と想いを馳せる。愛する人の危機を幾度も幾度も目の当たりにして、それでも悲しみにひたったりすることは許されない。

(私一人だったら、きっと耐えられない……)

 隣にまったく同じ想いを抱きつつ、それでも頑張ろうとする女性ひとがいるから、自分も頑張れるのだ。時には、華の方が挫けそうになることもあるだろう。そんな時は、自分が支えになってあげたい。華への共感や命への尊敬を感じつつ、アルエットはオペレートに神経を集中させた。それが現時点において自分にできる精一杯の戦いであり、戒道幾巳を全力で支える、勇気ある誓いに他ならないのだから──

『闇なる者よ……これよりポンドゥスにより重力を制御する。……光なる者を救うのだ!』
 ──そんなラミアの意思が、戒道の脳裏に響いていた。

(リミピッドチャンネル……)

 以前、彩火乃紀からも聞いたことがあった。ベターマンたちは音声言語を発しないと。おのが意思を、場に存在する意識の波に乗せて伝達するのだと。彼らはこう言っているのだ──新龍神と合体したベターマンの重力制御により、一気に護たちの元へ飛翔する、と。
 リミピッドチャンネルを受信できるのは、現状では生体のみ。勇者ロボたちの超AIでは意思疎通の手段を持たないため、自分をメッセンジャーに選んだのだろう。そう悟った戒道は、伝えたい言葉を強く念じ返した。

(わかった……だが、ひとつ条件がある)

『………』

 言葉にならずとも、耳を傾けるような気配が伝わってきた。戒道は、このやり方でこちらもリミピッドチャンネルに意思を乗せられることを理解した。

(答えてくれ……なぜオーストラリアで獅子王凱を襲った? “元凶なりし者”とはなんだ? それがわからなければ、信じて共に戦うことなどできない)

『………』

 今度も、言語化された明確な意思は返ってこない。だがその直後、自分の体重が消失していくのを、戒道は感じた。

(一刻を争う状況だから、行動で示したということか……?)

「宇宙空間のような感覚……ボディが軽量化していきます……」

 同じ感覚にとらわれたらしい新龍神も戸惑いの声をあげる。

「心配するな、新龍神。ベターマンが重力制御しているんだ」
「すごい……これがベターマンの能力……」
「どこまで使いこなせるか、腕の見せ所だ。プロテクトプロテクターの推進力で上昇!」
「やってみます……!」

 おずおずと、といった物腰で、新龍神は六基のパーツをバランスよく配置し、スラスターを下方に向けて噴射した。次の瞬間、ロケットのような爆発的な勢いで、スタジオ7をその場に残し、ベターマンと合体した機体が大空へ飛翔する。

『それでいい……』

 ふたたびラミアの意思が、戒道の脳内に響いてくる。

『いまは元凶なりし者と相争う時ではない。暁の霊気を斃すため、総力を結集すべし──』

 勝手な言い分だ、と思ったものの、戒道は頭の中で明確な意思として発しないよう、気をつけた。それぞれにどんな目的と思惑があろうと、こだわっている場合ではないのだから。そう、少なくとも今だけは──

「ああああっ!」

 覇界幻竜神と覇界強龍神に挟まれ、身動きのとれない翔輝竜神が悲鳴をあげた。兄たちが締め付けているわけではない。トリプルゼロの浸食がいよいよ全身に及び、超AIにも侵入を始めようとしているのだ。
 今は敵であるはずの兄たちもつらそうな声を絞り出す。

「すまない、妹よ……だが、もうすぐだ」
「ああ、こちら側に来れば、もう苦しみはなくなる。ともに宇宙の摂理に従おう」
「──本当にそれが望みなの……幻竜神、強龍神」

 静かに語りかけたのは、翔輝竜神ではない。その右肩運転席内で、トリプルゼロに抗い続けている天海護だった。勇気の力をGストーンに込め、心と身体に侵入しようとしてくるトリプルゼロを拒みつつ、護の声は通信回線越しに呼びかける。

「まさか……」
「その声は護!」

彼らが良く知っていた頃からは、成長し声変わりもしている。だが、忘れるはずがない。

「思い出して……機界四天王…機界31原種…機界新種……。僕たちはなんのために、世界を…地球を…宇宙を守って、機界昇華と戦ったの? こんな結末のためじゃなかったはずだ!」

 護の強い声が、彼らの超AIに響く。

「なぜ……」
「そんなところに……」

 しばしの驚きと戸惑いの後、覇界幻竜神と覇界強龍神は悟った。

「そうか……妹たちがいつまでも頑強に抵抗すると思ったら……」
「護たちがGストーンで支えてたってわけか……」
「だと知って、どうするの? 僕を斃すの?」
「それが……宇宙の摂理なら……」
「やら…なければ……」

 護の問いかけに、覇界幻竜神と覇界強龍神の声が揺れた。かつての思い出──ともにゾンダーや原種と戦った日々の記憶は、覇界の眷族となった今でも、彼らの超AIのメモリーから消去されたわけではないのだ。
 人でいう<動揺>なる迷いによって、彼らが翔輝竜神を抑えつける力が弱まった瞬間! 眼下から急上昇してきた新龍神が、翔輝竜神の機体を抱きかかえて、覇界幻竜神と覇界強龍神を撥ね飛ばした!

「ぬううっ!」
「なんだっっ!?」

 トリプルゼロにより強化されているとはいえ、今の新龍神はベターマンを纏っているのだ。フォルテの剛腕力で体当たりを喰らい、ルーメの電磁力でセンサーを狂わされ、トゥルバの推進力で瞬時に消え去られては、さすがの覇界の両将も不意を突かれた。
 そんな兄たちから充分に距離をとった空中。

「無事か、護!」
「うわっはーっ! 助かったよ、幾巳!」
「しっかりして……翔輝竜神」
「ありがとう新龍神……って、OH!NO! それはなんですのッ!?」

翔輝竜神の声が裏返ったのも無理はない。その姿は、有機体が混ざった異様なものにしか見えなかったのだ。

「合体ベターマン…それに……」

 翔輝竜神内の護は、新龍神に合体しているベターマンの中にラミアの意思を感じとった。

『………』

 ラミアの意思が何かを伝えてくる事はなかった。だが、護は信じた。

(凱兄ちゃんを狙ったラミア……でも今は、そのことを考えるのはやめよう。覇界の眷族に打ち勝つ……同じ地球の命として……)

 一瞬の動揺から我に返った覇界幻竜神と覇界強龍神も、これまでの戦いでソムニウムの情報は把握している。

「ベターマン……仲間同士で合体することは知っていたが、まさか勇者ロボともそれが可能だったとはな」
「合体によって飛行できるとなると、片腕が塞がっている我々の方が不利か……」

 そう判断すると、覇界幻竜神と覇界強龍神は、地上へ降下していった。たしかに覇界幻竜神左腕の電磁荷台デンジャンホーと、覇界強龍神右腕の攪転槽ジャオダンジィが自由になる地上戦の方が、分が良い道理だ。
 その様子を確認した翔輝竜神と新龍神も目を見交わしてうなずきあい、兄たちの後を追っていった。これ以上時間をかけるわけにはいかない。カウントダウンは、すでに一〇〇を割っていた。

 

 五連メーザー砲と反中間子砲、ESミサイルの連射──というよりも無限乱射の中、ガオファイガーとガオガイゴーは避け続けるだけで精一杯の状況だった。

「くっ、このままじゃ……やはりゴルディーとコネクトしないと!」
「はやくはやく! ややややってください、凱さんッ!」

 凱の苦渋の声に応えたのは、ガオガイゴーのメインコントロールを担う蛍汰である。戦闘開始直後こそ、覇界王キングジェイダーの威圧感に?まれていたが、その後は凱の助けを借りるまでもなく、自力で防御と回避を続け、生き残っていた。

「しかし──」
「ハンマーコネクトしてる間は、俺と火乃紀で防御します! だから凱さんは早くッ!」
「私と蛍ちゃんが楯になるから……早くっ! 凱さん!」

 セリブヘッド内の蛍汰とウームヘッド内の火乃紀からの必死の叫びに、ついに凱は迷いを振り切った。これまで、心の片隅からどうしても“蛍汰と火乃紀を護らなくてはならない”という想いが、消えずにいたのだ。つい先日まで一般の会社員だった蛍汰と、オペレーターだった火乃紀。デュアルカインドという能力者であっても、肉体的には凱や護、戒道のような特殊な存在ではない。護るべき対象という目でしか、見ていなかった。
 だが、蛍汰も火乃紀も高校生の頃から、幾多の修羅場をくぐってきた。そして今も、おのが意志で覇界王の前に立ち、抗おうという勇気を見せている。そう、彼らは護られるべき存在ではなく、肩を並べてともに戦う勇者なのだ!

「わかった! 君たちを信じるッ!! 来い、ゴルディーダブルマーグッ!!」

 そう叫ぶと、ガオファイガーはガオガイゴーの背後に回り込んだ。

「おう、待ちくたびれたぜいっ!」

 そう叫び返したゴルディーが、ワダツミの格納庫ハッチから飛び降りてきた。

「へえ、おでましだよ、新型ツールだ……J!」
「わかっている、ルネ……おとなしく使わせはしない!」

 ソルダートJとルネは呼吸をあわせて、覇界王キングジェイダー全身の武装を一点に集中した──ガオファイガーの盾となっているガオガイゴーに向かって!

「蛍ちゃん!」
「おうよ、火乃紀!……こなくそぉッッ! ウォールリング・プラースッ!」

 ステルスガオーⅡにマウントされていたウォールリングが、ガオガイゴーの左腕に装着される。

「プロテクトウォールッ!」

 覇界王キングジェイダーの一斉攻撃が着弾する寸前、強化されたバリアーシステムが展開された。歪曲された空間の向こうで、メーザーが無効化され、反中間子が中和され、ESミサイルの爆圧が拡散されていく。蛍汰と火乃紀の眼前で展開されるそれは、眩い花火のように炸裂を続けた。

「うおーッ、最大出力でもギリッギリじゃんか! 綺麗だけどおっかねえ!」
「前方周辺の温度は四〇〇〇度を超えてる……! でも、意外と余裕あるじゃない、蛍ちゃん」
「へへっ! …そうでもねーよ!」

 ホレた女の前でくらい、強がってみせねえとな……という言葉は、口に出さずに耐えた。Gアイランドシティでの公開プロポーズを、ウッシーたちに散々からかわれたからだ。代わりに口にしたのは──

「火乃紀、わりぃがバリアの方、頼めるか?」
「え? う、うん」
「ユー・ハブ・レフトコントロール!」
「アイ・ハブ・レフトコントロール!」

 ガオガイゴー左半身の操縦権を受け取った火乃紀は、プロテクトウォールを制御することに専念する。

「……アナライズッ!」

 手が空いた蛍汰は、意外なものの解析を始める。

「ケーちゃん、それって……!」
「へへ、黙って見てろって……ブレイクシンセサイズッ!」

 ガオガイゴー胸部のTMシステムが、大気中の物質を吸収、合成を開始した。
 一方、その後方でゴルディーダブルマーグが降下してきた姿を視認した凱は、長官代理権限で自ら承認をくだした。

「ゴルディオンダブルハンマー、発動承認!」

 ゴルディオンハンマー以上の威力を有するダブルハンマーでは、国連事務総長から託された解除システムも二重認証になっている。凱は仮想空間の中で二本の鍵を捻るようにして、最初のプロテクトを解除した。
 その認証は瞬時にして、GGGオービットベースに転送され、アルエットの眼前に専用コンソールを出現させた。アルエットはすかさず、二枚のカードキイを取り出す。

「ウイ! ゴルディオンダブルハンマー、セーフティデバイス、リリーブ!」

 アルエットのように胆力のある少女にも、この巨大な力を自分が開放するのだと思うと、緊張が走る。それでも両の手のしなやかな指先に挟まれたそれぞれのカードキイは、寸分のくるいもなくモニターの左右に設置されたスロットを通過した。モニターにはセーフティを解除されたことを示す表示とともに、CONNECTの文字が輝く。

「システムチェーンジッ!!」

 ガオファイガーの待つ戦場に到着したゴルディーダブルマーグが吼えた。
 だが即座にルネの声が響く。

「凱っ! 無駄だよっ!」
「ジェイ…クオースッ!!」

 覇界王キングジェイダーはついに、右腕に装着されていた錨状の武器を発射した! トリプルゼロのオーラに包まれたジェイクオースは、燃えるフェニックスとなりゴルディーダブルマーグに向かって突進する。それを阻むように割って入るガオガイゴーのプロテクトウォール。オレンジ色の火の鳥は、空間湾曲の領域を直撃した!

「ぃやああああっ!」

 その衝撃は火乃紀の全身に襲いかかった。高度なショックアブソーバに守られたマニピュレイトBOXだが、プロテクトウォールを展開中のガオガイゴーが軋むほどの強い激震が走る。それでも火乃紀は気力を振り絞って、前方をにらむ。

「骨が砕かれたって、勇気は砕けない!……私だって!」

 ガオガイゴー左腕部のプロテクトエネルギーを限界まで集中する。

「私だって……GGGの勇者なんだから!」

 だが、いかに火乃紀がGSライドに勇気を注ぎ込もうと、物質にはおのずとその限界がある。ジェイクオースの圧力を受け止め続けたウォールリングに、一筋のヒビ割れが走った。あとわずかで、リングが形状を保てず、粉砕に至る事は間違いなかった。

「むぁたせたな、火乃紀ッ! ジーセットッ!」

 ガオガイゴーの両肩から背部に向けて折りたたまれていたガイゴーの両腕が、その声とともに前方に展開する。“ジーセット”とは、ブレイクシンセサイズで合成された物質を装填するボイスコマンドだ。

「うおおおおっ、シナプス弾撃ッ!」

 二本のガイゴーハンドから、二種の化学物質が放出された! それらは覇界王キングジェイダーを狙ったわけではない。左腕から射出された液状物質はヒビ割れに染み込み、瞬時に硬化していく。そして、右腕から射出された化学物質はリング内部に浸透し、寸断されたリジッドフレキシブル基板を再生していく。

「すごい、プロテクトウォールの機能が回復した!」
「へへ、どんどん繰り返すからへこたれんなよ、火乃紀! ブレイクシンセサイズッ!」

 蛍汰は、ウォールリング修復に必要な化学物質の合成を繰り返した。

 メインオーダールームにもその様子は転送され、楊が驚きの声をあげる。

「なるほど……ウォールリングを壊れる端から修復しているのか! しかし、理屈では可能でも、そんな離れ技を実現できてしまうとは……」

 阿嘉松がニヤリと笑う。

「蛍汰の才能をなめんじゃねえぞ。あいつの構造解析と物質合成の速度は、歴代デュアルカインドの中でもグンバツなんだ。ヘルアンドヘブンじゃ幾巳たちに負けても、シナプス弾撃なら右に出るヤツぁいねえぜ!」

 それは出来の良い弟を、やや誇張気味に自慢するかのような、満面の笑みだった。

 蛍汰と火乃紀のガオガイゴーが、必死に覇界王キングジェイダーの攻撃に耐え抜いている間、ゴルディーダブルマーグが変型しつつ、三つの部位に分離する。胴体はマーグハンドに。頭部と背部は巨大なゴルディオンハンマーに。そして手に持っていた小型のゴルディオンハンマーが、大型のそれと柄の部分で連結された!

「ハンマーコネクトッ!」

 ステルスガオーⅢにマウントした右前腕部に代わって、ガオファイガーがマーグハンドをコネクトする。そして、その巨大な剛腕で大小のゴルディオンハンマーが連結した部位をガッシリとつかんだ。

「ゴルディオンダブルハンマーッ!!」

 ガオファイガーとゴルディーダブルマーグのGSライドが連動して、一時的に規格外の大出力を発生させる。その余剰エネルギーは、ダブルハンマーとコネクトしたガオファイガーの全身を金色に輝かせた。

「うおお、カッケー、本物の金色の勇者王だ……」

 後方の様子を映し出したモニターで、その勇姿を確認し、目を輝かせる蛍汰。だが、その声は枯れ、息は荒く、見るからに疲労困憊した様子である。いくら蛍汰が優れたデュアルカインドであっても、ここまでシナプス弾撃を連発したことはない。合成媒体となるリンカージェルの劣化も著しく、ガオガイゴーの稼働限界も目前に迫っていた。

「よく耐えてくれた、蛍汰、火乃紀! 後は任せてくれ!」
「ふぁ、ふぁい~……」

 そう答えたものの、蛍汰の声にはすでに覇気も生気もない。

「ちょっと蛍ちゃん! ばかっ! がんばって!!」

 自分も疲労の限界にあったが、必死に蛍汰を励ます火乃紀。だが、すでに蛍汰の意識は途切れかけていた。限界を超えたプロテクトウォールが砕け散り、ジェイクオースに粉砕される! そのままガオガイゴーも運命をともにしようとした瞬間──

「させません!」
「退くんだ!」

 そう叫んで、勇者王の両脚に飛びついたのは、ビッグボルフォッグとビッグポルコートである。数千度の熱量の中、二機がかりでなんとかガオガイゴーを引き倒した次の瞬間、燃えるジェイクオースが、轟々とその場を駆け抜けていった。その火の鳥は、後方に立つもう一体の勇者王に向かっていく!

(蛍汰、火乃紀……君たちの勇気、無駄にはしない!)

 ダブルハンマーの両端から、二つの球形部位が分離する。いや、物理的に分離しても、それはプラズマホールドで空中に保持されたままだ。二つの球体は空中で激突し、加速していく。

「行くぞ、クラッカーモード!」

 トリプルゼロで強化された火の鳥を、クラッカーが迎え撃つ。次の瞬間、あの頑強なジェイクオースに、二つの丸い穴が空いた。いや、それは穴ではない。球形に空間が削り取られたのだ──光の粒子を放ちつつ。

「光よ廻れっ! ゴルディオンクラッカー!」

 ガオファイガーが剛腕でダブルハンマーを振り回し、その度にクラッカーはジェイクオースに直撃していく。二度、三度! その度に宇宙最強の錨は重力衝撃波に削り取られ、ついに消滅した。

「J……! 光にされたぞ…! トリプルゼロをまとったジェイクオースが……!」
「……あれがゴルディオンハンマーの新型…その威力か!」

 ルネが驚愕し、Jが看破した通りだった。グラビティショックウェーブ・ジェネレイティングツールとしての機能は、ハンマー部ではなくこの一対のダブルクラッカー部に備わっている。一撃の出力は以前のゴルディオンハンマーにかなわずとも、小回りの利くクラッカーによる連続攻撃が可能であるため、より使い勝手の良いツールへと進化していたのだ。

「やるよ、J。パワーはこっちの方が上……格闘戦だ!」
「そうだな、ルネ。覇界王たる宇宙の摂理…見せつけてやろう!」

 戦士としての誇りと、好敵手と戦えることへの歓び。トリプルゼロとともにある今のルネとJの声には、そんな余裕すら感じられた。オレンジ色のオーラを超絶なる勢いで全身から噴き出させつつ、覇界王キングジェイダーが、ゴルディオンダブルハンマーを携えたガオファイガーに向かって突進する。かつて、レプリ地球の衛星軌道上でキングジェイダーとレプリジン・ガオファイガーが激突して以来、凱やJの感覚ではほんの数日後だが──攻守を入れ変えて同じような戦いが再現されようとしていた。

「凱っ! カーペンターズはいないぜ! そっちは砕けたらもう再生できないぞ!」
「ルネ! その前にお前たちを砕いて勝利をつかんでやるさっ!」

 ルネと凱、獅子王の咆吼が交錯する。

「光になるのは貴様だ! 今日こそ決着をつけるぞ、凱っ!」
「J、勝負だっ!……スライサーモード!」

 クラッカーがふたたびダブルハンマーの両端に接続される。そしてハンマー部に設置されたベルト状部位が高速回転を始める。グラビティショックウェーブ・キャンセラーが始動したのだ!

「ゴルディオンスライサー!」

 今にもつかみかかろうとする覇界王キングジェイダーに向かって、光の刃が放たれる。クラッカーが放った重力衝撃波が、ハンマー部に内蔵されたゴルディオンモーターによって薄く偏向させられたのだ。触れるものすべてを光に変換する光の刃が、覇界王キングジェイダーの両手の指先を切り落とした。

「!!」

 Jとルネが驚愕している間すらなく、続く光の刃が両腕の反中間子砲塔を、そして脚部のESミサイル発射管をズタズタに斬り裂いていった。しかし、全身を刻まれつつも、覇界王キングジェイダーは膝をつかない。まるで勝者であるかのように、ガオファイガーの眼前に屹立している。

「……凱、貴様が言うように、やはり私は間違っていたようだ」
「なに?」
「決着をつけるべきは……今日、この場ではない…」

 巨大な体躯をズタズタに斬り裂かれながらも、覇界王は勇者王の眼前で身じろぎもしていない。いや、各所の破損も、すでにトリプルゼロによる修復が始まっていた。

「また会おう……エヴォリュダー」

 そう言い残すと、覇界王キングジェイダーは一気に天へ飛翔した。覇界の方舟ジェイアークへと変形、インパルスドライブを最大出力で噴射する。たちまち蒼穹の彼方へ消えていくその姿を追う余裕のある者も、速度を有する者も、この場にはいなかった。
 だが、ダブルハンマーをかまえたガオファイガーの姿を、この上なく頼もしげに見る者はいた。

「へへ、さすが凱さんだ……俺なんかより、ずっとカッコいいや……」

 二体の諜報ロボによって退避させられたガオガイゴー、そのセリブヘッドで、意識を取り戻した蛍汰である。
 その言葉を聞いて、ウームヘッドの火乃紀も微笑んだ。本当は(ケーちゃんだって、カッコよかったよ)と声をかけてあげたかったのだが、オービットベースのみんなに聞かれてしまう。帰還したらたっぷり言ってあげよう……そう思うのだった。

「火乃紀ィ…だいじょぶかぁ?」

 声を掛けてきた蛍汰に、火乃紀がゆっくりと返す。

「大丈夫だよ、蛍ちゃん……ホントにバカなんだから」
「へ……?」

火乃紀にとって蛍汰の存在は、もうとっくに心も含めたデュアルカインドだった。

(J、なぜだ……)

 ガオファイガーは、ゴルディオンダブルハンマーを手にしたまま立ち尽くしていた。ジェイクオースや各部の武装を失っても、敵の機体はトリプルゼロによって瞬時に再生する。さらに覇界王キングジェイダーは奥の手も有している。レプリ地球で使用したジェイフェニックス──全身を巨大な火の鳥と化して、敵に体当たりする最強の大技。凱はその技が使われるところを見たわけではない。しかし、あの時すべてのGストーンがリンクしたことにより、ルネを通じて感知していた。
 だが、いまは覇界王キングジェイダーが撤退した理由を探る時ではない。竜姉妹の戦いも終局に向かっているはずなのだから──そして、その先に来たるべきはずの卯都木命との再会も。

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


次回2020年2月更新予定


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