覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第49回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。この状況を打開するため、GGGブルーとGGGグリーンは、決死の作戦に打って出る。
 竜四姉妹による奇跡のシンメトリカルドッキングで、竜四兄弟に打ち勝とうというのだ。ガオファイガーとガオガイゴーが決死の戦いで、覇界王キングジェイダーを足止めする。そのかたわらで、ついに輝竜神と新龍神が、幻竜神と強龍神を取り戻すことに成功した!
 その中でゼロ核となっていた大河幸太郎、獅子王雷牙、スワン・ホワイト──そして卯都木命を浄解することもでき、いよいよ両GGGは、覇界の眷族との最後の戦いに挑む。
 そして決戦を間近に控えたその夜、獅子王凱は卯都木命に告げるのだった──「結婚しよう」と。

number.08 禽-PHOENIX- 西暦二〇一七年/????年(2)


2(承前)

「……うん」

 ほとんど間も置かずに、命はうなずいた。凱もまた、その答えを疑ってはいなかった様子で、うなずき返す。二人にとって、これは人生の岐路ではない。これまで歩んできた道の延長として、当然続いていくであろう一本道だったのだから。そして──
 凱の瞳を見つめながら、命はささやいた。

「……で、まだあるんでしょ、話の続き」

 お互いをよく知っているからこそ、気づいたのだ。

(凱のこの顔……まだ本題じゃないんだね……)

 凱はうなずいて、左の拳を顔の前に掲げた。そこには<G>の紋章が光っている。全身の細胞に、微小サイズのGストーンが融合した超進化人類──エヴォリュダーの証し。その淡い緑の輝きに照らし出されながら、凱はつぶやいた。

「覚えてるか? 三重連太陽系に旅立つ前、スワンやパピヨンに俺の身体を調べてもらったこと」
「うん、遺伝子検査とか色々やってたよね」

 言葉ではそう言ったものの、スワン・ホワイトや故パピヨン・ノワールが凱を調べ尽くしたわけではない。エヴォリュダーの肉体には未知の要因が多く、高度な検査が必要となる。そのため、彼女たちが採取した献体やデータは、複数の生化学の権威に送られ、徹底的に研究されたのだ。その結果、判明した結論は──

「俺の遺伝子は、顕性が非常に高いらしい」
「それって、チョー優性ってこと?」
「ああ、早い話……俺に子供ができた場合、必ずエヴォリュダーになるんだそうだ」

 有性生殖において、形質の現れやすい遺伝子を優性、もしくは顕性という。凱の肉体が持つ様々な特殊能力は、母体の遺伝子に関係なく必ず受け継がれるのだ。

「でも、それってすごいことじゃない? 人類がみんなエヴォリュダーになったら、どんな敵が来ても、怖いものなしだし」
「確かにな……」

 凱は苦笑した。しかし、その未来は良いことばかりとは言えないのだ。たとえば、まだ解明されていない未知の弱点があったとしたら、それもすべて受け継がれてしまうのだから。

「もしも特定の疾病に非常に弱いという形質があったとしたら、それが俺の子孫全体に受け継がれてしまう」
「そっか、それはまずいね……」

 他にもいくつか理由はある。命の耳に入れたくはないが、差別といった問題も起きるだろう。エヴォリュダーが総人口のうちに占める割合が無視できなくなった時代、人類とエヴォリュダーは共存できるのか? 一方がもう一方を弾圧したりする可能性がないと、誰に言い切れるだろう。
 そして、この遺伝形質こそが、“元凶なりし者”──ソムニウムが、凱をそう呼ぶ所以なのだろう。

(奴らは、人類をアニムスの花の苗床だと考えているらしい。アニムスの花畑にふさわしくない土壌は排除するということか……)

 千々に乱れる思いを露わにはせず、凱は別の話題を切り出した。

「それに俺は……命以外の女性ひとと子孫を残すつもりはない」

 命はうなずいた。さすがにここで「やだ、なに言ってんの!」などと、混ぜっ返すつもりはない。代わりに口にしたのは、苦い認識だ。

「ああ、そうか……私もセミエヴォリュダーだもんね」

 凱の肉体がGストーンによってエヴォリュダーとなったように、命の肉体もまた通常のものではなくなっている。それは機界新種の種子を埋め込まれたことによるもので、Gストーンとは関係がない。セミエヴォリュダーという名称は、あくまで暫定的なものであって、凱のそれと同系統を意味するわけではないのだ。

「そうだ……もし俺たちの遺伝子が交配した場合、GストーンとZの種子が融合することになる。そこに何が起こるか、生化学の世界的権威たちにも予測不可能だった」
「じゃあ、私たちは子供を作ることが許されないんだね……」
「誰かに許されるとか、許されないとか、そういう問題じゃないんだ。俺は自分の意志で、そうすべきじゃないと思ってるし、それを命ともきちんと相談しておきたかった……」
「うん、ありがとう……」

 命は素直に感謝の気持ちを伝えた。凱の言うことはもっともだ。命自身も、その考えが正しいと思う。しかし、凱は「そうしない」ではなく、「そうすべきじゃないと思ってる」と口にしたのだ。決断の前に、二人で考えたい──そう言っているのだ。

「私も、凱と同じ気持ちだよ。その上で、凱と一緒になりたい……結婚したいって思ってる」
「まだ覇界の眷族に残ってるみんなを助け出したら、できるだけ早く……な」
「そうだね。全員に式に出てもらいたいもんね」

 そうつぶやいて、命は吹きだしそうになった。正装で参列しているソルダートJや、ブーケを争っているルネの姿を想像してしまったのだ。

「おいおい、命。話をまとめに入ってるっぽいけど、相談したい事、まだ終わってないんだぜ」
「え、まだなんかあるの?」
「ああ……」

 凱はそう言うと、遠くを見るような目になった。そんな顔を見て、命は思い出す。高校時代、宇宙への夢を語るとき、いつも凱はこんな目をしていた──

「子供を作ることはできないと言ったけど、子供を持つことが許されないわけじゃないんだぜ、俺たち」

 その言葉を聞いて、命の顔にも理解の色が浮かんでくる。

「そっか! 身寄りのない子供たちの親になってあげればいいんだ!」
「ああ、家族を作るのに必要なのは、遺伝子のつながりだけじゃないって、俺たちは知ってるからな」

 この時、凱と命の脳裏に浮かんでいたのは、天海家の姿であり、戒道家の姿だった。

「いつか、子供たちに『パパとママは、本当のパパとママじゃないの?』って聞かれたら、言ってやるのさ」
「『他の子と、ちょっと授かり方が違っただけさ』って!」

 凱と命は狭いベッドの上で、笑い合った。それは、護が自分の出生を知ったとき、父である天海勇から言われた言葉だ。護からその話を聞かされた時、凱も命も深く胸を打たれたものだ。
 笑顔を絶やさぬまま、命は凱の胸に顔をうずめた。

「凱、いっぱい子供育てようね! 野球チーム作れるくらい……ううん、サッカーチームでもいいよ!」

 

 ──ゴルディオンクラッシャーを装備した覇界王キングジェイダーとの、最終決戦。想像しただけでも恐怖に捕らわれそうなその日は、なかなか訪れなかった。
 それでも獅子王雷牙たちによるディスクXの増産体制は進められており、ゼロロボも世界各所に出現する。黒化の拡大を阻止するため、GGGグリーンとGGGブルーは連日の出動を余儀なくされていた。

 そんな日々の中、九色の竜たちが入り乱れた戦闘を行っていた。風龍と雷龍、月龍と日龍が積極的な攻撃をしかけ、氷竜と炎竜、光竜と闇竜がそれらを防御する。翔竜は戦場上空を縦横無尽に飛び交って、兄や姉たちの戦いを支援する。
 見事な連携プレイのように見えたが突然、赤と黄の勇者ロボがキレはじめた。

「だーっ! いつまでこんなことやってなきゃいけないんだ!」
「まったくだ! 仮想空間での模擬戦なんて、飽き飽きだぜ!」

 その言葉を合図のようにシミュレーションが終了すると、後に残されたのはビッグオーダールームに並べられた、九個のAIボックスのみだった。

「ワガママを言うんじゃない、炎竜、雷龍。いかなる時も、今後への準備を怠らない……それが我々の使命だ」

 兄弟姉妹の長兄たる氷竜のAIボックスの表面で、インジケーターランプが明滅する。いまのところ、彼らにできる数少ないボディランゲージだ。
 ユカタン半島での戦いで、覇界幻竜神と覇界強龍神からはAIボックスが摘出され、翔輝竜神と新龍神はトリプルゼロに浸食された機体を捨てて、自らAIボックスをパージした。残念ながら、トリプルゼロに一度浸食された機体は爆発処理するしかない。浄解された九個のAIボックスは、代わりとなる新たな機体が再建されるまでの間、待機を余儀なくされていたのである。
 世界各地にゼロロボが出現する日々、他の勇者ロボたちが連日出撃している中、待機が続くのは心地よいものではない。だが、他にできることがないのも事実だ。彼らは新たな体が完成する日に備えて、シミュレーションを繰り返しかなかった。そんな中でも有意義だったのは、超竜神、撃龍神、天竜神と翔竜の、トリニティドッキングの訓練だ。もともと翔竜は<GBR-5>として、超竜神と合体すべく開発された経緯もあり、竜神シリーズのいずれとも合体できるように設計されている。

「それにしても、トリニティドッキングは魅力的でしたね」
「ああ、あんなに気持ちよく空が飛べるとは思わなかったぜ。風や電磁の力で無理やり浮き上がるのとは大違いだ」

 風龍と雷龍がランプを明滅させながら語り合う。どうやら三体合体が思いの外、楽しかったらしい。体があれば、唇をとがらせるような語勢で、日龍と月龍が口を挟む。

「あら、もともと翔竜は私たちと実戦経験を積んできた子でしてよ」
「ヤー、我々との教練経験が豊富である以上、翔星龍神として運用するのがもっとも効率的と判断します」

 そうなると、黙っていられないのは光竜と闇竜だ。

「ズルーイ、あたしたちだって自由に空を飛びたいのにぃ!」
「それに……可愛い弟というのも新鮮で……」
「妹たちは可愛げないもんねー」

 頬を染めた闇竜に、光竜がすかさず同意する。

「おーっほっほ、実力が上の後輩というのは、さぞ目障りでしょうねぇ」
「ほら可愛げない!」

 危なくドバイでの女神同士の対決が再現されるところであったが、幸いAIボックスたちにできるのは、口ゲンカだけである。妹たちの諍いを呆れたように聞いていた氷竜が、落ち着いた声で諭す。

「みんな冷静になるんだ。どの組み合わせでトリニティドッキングするかは、メインオーダールームが判断することだ。私たちはそれに従えばいい」
「氷竜兄様がそうおっしゃるのでしたら……」
「ごめんなさい、氷竜兄ちゃん……」

 日龍も光竜も、尊敬する長兄の前では大人しい。

「さすがです、氷竜兄様! ああ、こんなリーダーシップのある兄様が帰ってきてくれて、僕嬉しいです!」

 翔竜が末っ子らしい、無邪気で素直な感嘆の声を上げる。

「こ、こほん、まあオービットベースと通信途絶の場合などは、兄妹の長兄たる私の指示に従ってもらうのが良いと思うが……」
「おい氷竜、そんなこと言って、抜け駆けはなしだぞ!」

 手足がないにも関わらず、赤いAIボックスが、何故かガタガタと揺れて抗議した。

「炎竜、お前は何を言ってるんだ。私と合体するということは、お前とも合体することになるんだぞ」
「あ、そうか。最近ずっと、相方が風龍だったんで忘れてた!」

 呆れたような氷竜の指摘に、我に返る炎竜。激戦と死闘が繰り返される日々の中、彼らにもわずかながら、心和む時間が与えられたようだ。
 ──覇界王キングジェイダーとの決戦を前にして。

 

 ビッグオーダールームでささやかな兄妹ゲンカが繰り広げられてより数日後のオービットベースで、ダイビングチャンバーに珍しい人物が訪れた。この部屋は凱、護、戒道、蛍汰、火乃紀といった人間の機動部隊隊員のために用意された待機室であり、部署の異なる人間がやってくることは滅多にない。
 この日は蛍汰と火乃紀が出撃中で、残る三人が待機状態にあった。

「……雷牙おじさん、どうしたんですか?」
「ん、まーその、なんだ……たまには諸君を激励にと思ってな」
「……火乃紀さんなら、ガオガイゴーで南アフリカに降りたところですよ」
「お、おお、そうじゃったか。残念だなー、火乃紀くんのダイブスーツ姿、見たかったのになぁ、あはははは……」

 普段であったら、護のツッコミは的確なものであり、図星をつかれた雷牙の反応もまったく違うものになっていただろう。だが、気もそぞろといった具合のごまかし方は、それが本心でないことを、如実に語っている。

「まあ、せっかくだし座ってくださいよ。ディスクXの方はどうなんです?」

 凱は雷牙に椅子を勧めつつ、別の話題を振ってみた。もともと雷牙は露悪的な傾向があり、素直に本心を見せるような人物ではない。

「あ、ああ、順調だよ、うん。僕ちゃんの天才的頭脳にかかれば、このくらいどうってことないない」

 言葉の内容に反して、口調は気弱なものである。空元気といったところが正確だろうか。そんな雷牙の様子に、護と戒道は顔を見合わせた。雷牙とのつきあいが深くない二人にも、今日の彼がどうも不自然な物腰であることはわかる。「ここは凱兄ちゃんに任せて、黙っていよう」「そうだな」という暗黙の了解が成立した。そんな二人の様子に気づいたのか、雷牙に別の問いを向けてみる凱。

「そういえば、紗孔羅ちゃんには?」
「ああ、会ってきたよ。まさかあんなことになってるとはのう……」

 紗孔羅はGGGブルーの阿嘉松長官の娘……すなわち、雷牙にとっては孫である。だが、十年前から昏睡状態のまま、歳もとっていない紗孔羅は、このオービットベースで治療を受け続けていた。もっとも、治療と言っても現代医学で原因を特定できたわけではなく、栄養の摂取などを補助しながら、経過観察しているだけに過ぎない。時折、リミピッドチャンネルで受信した情報を口にするのが、外界との唯一のコミュニケーションだった。

 紗孔羅が現在のような状態になったのは、凱や雷牙が三重連太陽系に旅立つ数か月前のことだ。しかし、もともと父を毛嫌いしている阿嘉松は、密に連絡をとったりしてはいなかった。そのため、雷牙は可愛い孫娘の状況を知らないままだったのである。十年を経てようやく知ることになったのだから、落ち込んでいたのも無理はない。

「世界十大頭脳だの持ち上げられていても、専門外のことにはただの素人だからな。紗孔羅のことをなんとかしてやりたいが、僕ちゃんにできることは何もない……」
「雷牙おじさん……」
「そして、あのバカ娘のことも……」

 雷牙が“バカ娘”と呼ぶのが、ルネであることは明らかだった。彼女は三重連太陽系で出逢ったソルダートJに通じるものを感じ、ともにキングジェイダーにフュージョンしたまま、今に至っている。覇界の眷族となった今でも……。

「凱、お前もわかっとるんだろ。あの子がキングジェイダーとともにあるということが、何を意味するのか……」
「ええ……」

 凱はうなずいた。レプリジン・地球でJとルネがともにフュージョンした事によって、キングジェイダーは驚異的な力を発揮した。JジュエルとGストーンの共振が、赤の星や緑の星の開発者たちも想定していなかったパワーを引き出したのだ。あの時はその力がGGGに味方して、勝利の鍵となった。だが、次は覇界の眷族として牙を剥いてくる。しかも、そこにトリプルゼロやゴルディオンクラッシャーという要素も加わるのだ。覇界幻竜神と覇界強龍神でさえ、あれほど苦戦させられたのに、それ以上の死闘となるであろう事は間違いない。

「もしあの子のせいで、人類が滅びるというなら……凱、お前の手であの子を……」
「そんな頼みなら、聞けません」

 雷牙に最後まで言わせず、凱は断った。これまで優しい声音で語りかけていたが、そんな様子は微塵もない。

「雷牙おじさんだって、わかってるでしょう。覇界の眷族として活動しているのは、本人の意志じゃない。トリプルゼロに浸食されて一時的にそうなってるだけで、元に戻すことは可能なんだ。命や雷牙おじさんたちのように──」
「だが凱、わかっとるのか? そんな感情論で、人類全体を危機にさらすわけには……」
「……人類全体のことを考えるからですよ」

 その言葉に、無言で聞き入っていた護と戒道も、驚かされた。雷牙だけでなく、三人に説明するように、凱は言葉を続ける。

「これはただの予感でしかないけれど……キングジェイダーとの戦いですべてが終わるような気がしないんだ。きっとまだ大きな試練が、俺たちを待ってる……」
「覇界王よりも大きな試練……」
「いったい何が……」

 護と戒道が呆然とつぶやいた。

「わからない。だけど、それに立ち向かうには、Jやルネの力もきっと必要なんだ。俺にはそんな気がする。雷牙おじさん、あいつらを取り戻すのは、人類が生き残るためなんですよ……」
「………」

 雷牙の表情に、理解の色が広がっていく。そして、大きく息を吸い、吐く。そうして、そこにいるのは、いつもの不良老人に他ならなかった。

「わかった……僕ちゃんが浅はかだったようだな。いやー、まいったまいった」
「雷牙博士、僕たちも全力を尽くします。最後まであきらめないでください」
「ああ、僕にとってもJやトモロを救い出すため、負けられない戦いだ」

 そうつぶやいた戒道は、十年前のルネの言葉を思い出す。三重連太陽系からESミサイルで送り出される時、彼女は言ったのだ。「親を大切にな」──と。
 その時はピンと来なかったが、雷牙とルネの関係なども知った今では、少しわかったような気がする。彼女がどんな気持ちで、戒道にその言葉を贈ったのか。そして──

(あのルネは……自分の気持ちを僕にじゃなくて、相手雷牙に直接言うべきなんだ……)

 青年たちの言葉は、雷牙の胸にも響いたようだ。

「いやー、こりゃまいったな。僕ちゃん、本当なら自分で乗り込んでいって、あの子をぶん殴ってやるつもりだったんだが、君たちに任せた方がいいみたいだの~~」

 そんな照れ隠しの言葉を口にしながらも、緑色のゴーグルの奥にある雷牙の瞳は、涙に濡れていた。

 

 セカンドオーダールームに向かう雷牙とともに、凱もダイビングチャンバーを出て行った後、護と戒道はしみじみと語り合った。

「雷牙博士、泣いてたね……」
「……あの人、本気でキングジェイダーに乗り込んで、ルネさんを殴るつもりだったのかな?」
「無茶だとは思うけど……本心なんじゃないかな」
「そうか……父親っていうのは、そういうものなのか……」

 戒道はピンと来ない様子で、小さくつぶやいた。幼い頃から養母と二人暮らしだった戒道は、父親というものを知らない。もちろん殴られた経験もなく、実感を持てなかった。

「そうだね……みんなそうかはわからないけど、うちの父さんもあんな気持ちだったかな……」

 護の言葉に、戒道はひどく驚いた。

「へえ! 君でも父親に殴られたことあるのか!」
「君でもって、なんだよ」
「いや、悪いことなんてしなさそうな、いい子だと思っていたからな」
「悪いことしたってわけじゃなくてさ……」

 護は小さい頃の思い出を語った。近所で飼われている小型犬と遊びたくて、安全を確認せずに道路を渡ってしまった時のことだ。危なく、通りかかった車に轢かれそうになったことがある。幸い、護の姿に気づいた車が停まってくれたものの、大事故になってもおかしくはなかった。
 その様子を見ていた天海勇は護を道路脇に連れて行くと、運転手に何度も何度も頭を下げて──護の頬を叩いたのだ。

「あの時の父さん、叩きながら泣いてた。さっきの雷牙博士みたいに……」

 怒られ、叩かれた思い出なのに、それを語る護の表情は、どこか嬉しそうだった。戒道は普段、養母と二人暮らしである自分の境遇を、不満に思ったりはしない。だが、この時はちょっとだけ──護のことを羨ましく思った。

 

 ──覇界王キングジェイダーとの戦いを目前に控えた、その日。決戦はもうしばらく先かと思われていた。だが凶報は、意外な形でもたらされる。南アフリカに現れたゼロロボの群れに、ガオガイゴーとともに対処していたビッグボルフォッグから、オービットベースに緊急通信が入ったのだ。

『──こちらビッグボルフォッグ、緊急事態です。ガオガイゴーが……トリプルゼロの浸食を受けました。繰り返します、ガオガイゴーがトリプルゼロの浸食を受け、覇界の眷族と化しました──』

(つづく)


著・竹田裕一郎


次回2020年5月更新予定


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