覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第51回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。この状況を打開するため、GGGブルーとグリーンは、決死の作戦に打って出る。
 竜四姉妹による奇跡のシンメトリカルドッキングで、竜四兄弟に打ち勝とうというのだ。ガオファイガーとガオガイゴーが決死の戦いで、覇界王キングジェイダーに立ち向かう。そのかたわらで、ついに輝竜神と新龍神が、幻竜神と強龍神を取り戻すことに成功した!
 その中でゼロ核となっていた大河幸太郎、獅子王雷牙、スワン・ホワイト──そして卯都木命を浄解することもでき、いよいよGGGブルーとGGGグリーンは、覇界の眷族との最後の戦いに挑もうとしていた。
 だが、そんな中、ガオガイゴーが覇界の眷族になったという凶報が、オービットベースにもたらされる! さらに覇界の眷族が先手をとって、オービットベースへ攻め入ってきた!

number.08 禽-PHOENIX- 西暦二〇一七年/????年(4)


5

 時系列はさらに遡る──
 ヨハネスブルク市郊外にて、トリプルゼロに浸食された蒼斧蛍汰と彩火乃紀はうちから沸き上がる衝動によって、ガオガイゴーをその地から飛び立たせた。
 倫理観が変質した二人にとって、地球人類を救おうとするGGGブルーの作戦に従事することが苦痛に思えたからだ。だからといって、なにか目的があったわけではない。先日までの大河幸太郎のように、覇界の眷族を導く者もなく、彼らはあてどもなくガオガイゴーを飛翔させ続けた。

「火乃紀よぉ、これからどうすんだ? どこに逃げたってサテライトサーチで監視されてんだろ?」
「うん……」
「なんだかなぁ、俺たちなんであんなに人類のために必死こいてたんだろうなぁ。宇宙の摂理の方がず~~っと大事だってのによぉ」
「ケーちゃん、グチってる余裕ないわよ。このままじゃリンカージェルに稼働限界が来て、一歩も動けなくなる」
「はあ、補給も受けられないなんて、覇界の眷族ってのも、いざなってみると世知辛いよなぁ」
「前方二〇〇〇に群島を発見。とりあえずあそこに降りて、これからの事を考えましょう」
「りょーかい!」

 こうしてガオガイゴーは、南大西洋の小島に着陸した。もっともそこはトリスタンダクーニャ諸島の一角であり、有人のトリスタンダクーニャ島からも遠くない。すぐにでも追っ手がやってくるだろう。
 ガオガイゴーを膝立ちで着地させた蛍汰は、動力をすべて停止させた。

「これでよしっと、後はリンカージェルがどこまで自然回復してくれるか……まったく宇宙の摂理を乱す、こんなもんに頼りたかねぇなー」

 コントロールボックスから両手を引き抜きつつ、つぶやく。人格は以前の蛍汰のままだが、倫理観だけが変質している。それでも変わらない、火乃紀と触れあいたいという欲求だけはそのままに、蛍汰はウームヘッドへの通路をくだっていく。

「おーい、火乃紀ぃ。とりあえずメシにでもしようぜ。たしかウームヘッドにサバイバルキットが……って寝てんのか?」

 蛍汰が見たのは、シートに深く座り込んだまま、意識を失っている火乃紀の姿だ。独り言のような問いに答える者はいないはずだったが──

『眠っているわけじゃないよ。フラウムで麻痺させてもらったんだ』

 それは言葉による返答ではなかった。蛍汰の脳内に、意識の波が伝達されてきたのだ。蛍汰は過去にも、同じような意志伝達を経験したことがあった。

「こ……これってリミチャンか!」
『そうだよ。ソムニウムとの接触経験が豊富なようだね』

 ウームヘッドシートの陰から、小柄な少年が姿を現す。いや、少年に見えてもそうとは限らない。ヒトとは異なる生体構造を有する、霊長類なのだから。その証拠に、額にはリミピッドチャンネルを交わす際に特有の十字光が瞬いている。

「火乃紀を麻痺させたのはお前か! いったい何のために──」

 食ってかかった蛍汰であったが、最後まで言い終えることはできなかった。ソムニウムが左の掌から放った、免疫粒子を浴びせられたからだ。
 体内に侵入したT細胞に神経を麻痺させられ、蛍汰はわずか数秒で意識を失った。シートにぐったりと座り込んでいる火乃紀の膝の上に、折り重なるように倒れ込む。ソムニウムは二人に何の感慨も抱いていない様子で、額の十字光を瞬かせた。

『君たちだって野生の動物を保護するときは、麻酔を使うのだろう。これから起こる出来事から、君たちの脳がダメージを受けないよう、配慮してあげたんだよ』

 先ほど、ペクトフォレース・ウイリデで開放させたままの外部ハッチから、小柄な影が機外へ躍り出る。そして白い薄手の貫頭衣をめくって、なめらかな脇腹の肌を露出させた。そこに存在するのは、艶やかな大輪の花。比喩ではない。ヒトの遺体に咲くというアニムスの花が、この少年のように見えるソムニウム──デウスの肉体に咲いているのだ。
 デウスは花の中心に実っている、小さな豆粒のような果実をもぎとった。

『さあ、テンプスよ──顕現せよ』

 一般的にソムニウムは、アニムスの実を喰らうことで、おのが身体を変身させる。だが、デウスはテンプスと呼んだ実を地面に放り投げた。テンプスの実は孤島の大地に転がり、特殊撮影された映像のように、みるみるうちに根を生やしはじめた。そして、うねうねとのたうちまわりながら、根のサイズにふさわしい幹を天へ伸ばしていく。
 数秒のうちに巨木へと成長したそれは、植物であるはずだが全身を絶えず蠕動させており、どこか意志を持つ動物のようにすら見えた。

『機械人形よ、テンプスの大河を遡れ──』

 デウスは左掌のペクトフォレースから、ふたたび緑色の粒子を放った。デュアルカインドとの接続を断たれ、沈黙していたガオガイゴーが操り人形のようにぎこちなく立ち上がる。そして、巨木の方へ歩き出した。いつしか巨木の表面には、さざ波のような揺らぎが現れていた。三十メートルを超えるスーパーニューロメカノイドが、天をつく巨木に頭から突っ込み──揺らぎの中へ没していく。そう、あたかも木の皮が水面と化したかのように、沈んでいったのである。それはESウインドウやソキウスの路といった超空間ゲートにどこか似ているものの、明らかに異質なものだった。
 水が泡立つような異音とともに、ついにガオガイゴーの全身が消えていった。デウスはその光景を満足そうに見つめている。だが──その脳裏に、響く意志があった。

『それがお前の能力か──デウス』

 常に涼しげな笑みを浮かべていたデウスが、その口元を引き締め、ゆっくりと振り向く。そこには空中に刻まれた“傷口”があった。
 生々しい刺し傷のような“ソキウスの門”を通って、その傷口から現れる者たちがいる。一人、二人──
 六人目が孤島の地面に降り立つと、傷口が裏返ってその主もまた“門”を通過する。ラミア、羅漢、ライ、ヒイラギ、ユーヤ、ガジュマル、そしてシャーラ。先ほどの意志を放ったのは、先頭に立つラミアだった。

『……待っていたのかい? ボクがテンプスを使う刻を』

 デウスがラミアの意志に返答する。もしも意志というものに温度が存在するのなら、氷点下になるほどに冷え切った感情だ。

『ンー…伝説とうたわれたソムニウムの力、見定めておきたかったものでな』

 氷のような意志に答えたのはラミアではなく、その隣にいる羅漢である。どうやら七体の意図は一致しているようだ

『つまり君たちは、ボクの能力を見定めておかないと共には歩めない……そう言いたいようだね』
『当たり前だ! ただ視るだけの者が、未来を識って警告したり、立ち回ったりなどできるものか!』

 ガジュマルが暴風のごとき意志を放つ。背中にかばったシャーラに仇なすものであるならば、伝説のソムニウムといえど容赦はしない……そういう気概に燃える意志だった。

『デウス殿、あなたが実際に戦う力がないのなら、拙者たちを敵に回すのは損なはず。素直に教えてもらえませんかなぁ』
『教えなくても、つきとめるつもりだろう?』

 おどけたようなライの意志につられて、デウスの意志もわずかに温かみを取り戻したようだ。

『悪いけど、急がなくちゃならないんだ。ボクの力を見極めたいのなら、ついてくるといい。暁の霊気に打ち克つ方法を教えてあげよう』

 そんな意志を放つと、デウスは同胞たちに背を向けた。もはや関心を失ったように、テンプスの巨木に向かっていく。そして木肌にさざめく水面に身を投じると、その姿を没していった。

『……ラミア、どうするのだ?』

 ユーヤの問いに、ラミアは無言で答えなかった。いや、意志よりも行動で示すことを選んだのだろう。巨木に向かって歩み出す。

『私は行く。我らソムニウムの未来をあの者がいずこへ導くのか……見極めるために』

 たとえ迷っていた者があろうとも、この瞬間に七体の意志は固まった。彼らはガオガイゴーとデウスを追って、水面に身を投じはじめた。その流れの果てに何が待ち受けているのか……知る者はいない。

 

 ──これが、覇界の眷族と堕したガオガイゴーが、サテライトサーチの追尾からも消え失せた顛末であった。オービットベースから依頼を受けたアメリカGGGの諜報ロボが、南太平洋の孤島で発見したのは、その地域の生物相とは合致しない不思議な大木が枯れ果てた姿であった。
 追跡する手がかりは、何も残されていなかった。いや、残されていたとして、ソムニウムたちが向かっていった先へ追いかける術はない。そして追う余裕も、欠片ほども存在しなかった。ガオガイゴーの消失からわずかな時間を経たのみで、GGGは史上最大の脅威に直面することになったのだから──

 

「ESウインドウ歪曲率一〇〇パーセントに達します!」
「通常空間に出現する艦隊、艦影は四!」
「光学観測により、艦種を確認……ジェイアーク、ツクヨミ、タケハヤ、ヒルメ!」

 GGGオービットベース全域に特S級非常警報が鳴り響く。この時それは、オービットベースに対する直接攻撃が行われていることを示していた。
 ブリーフィング中であったビッグオーダールームがメインオーダールームに移行し、首脳部とオペレーターたちが配置についた。

「全GGG、迎撃態勢発令!」

 大河幸太郎特務長官の号令の下、両GGG長官が指令を下す。

「GGGグリーン機動部隊、発進!」と、獅子王凱GGGグリーン長官はファントムガオーのコクピットから。
「GGGブルー機動部隊、発進だぁッ!」と、メインオーダールームの阿嘉松滋GGGブルー長官。

 だが、GGGブルー機動部隊隊長である天海護は、ただちに従おうとはしなかった。

『長官……本当にいいんですか……?』

 覚醒人V2セリブヘッドからの通信に答えず、阿嘉松はオペレーターに問いかけた。

「華! V2のデュアルインパルスはどうなってる!」
「セリブヘッド、ウームヘッド、ともに規定値を超えています。でも、こんなのって……」
「動かせるなら問題はねえ。お前に託したぞ、護!」

 他ならぬ阿嘉松が決断した以上、護が時を無駄にすることは許されない。

『わかりました……覚醒人V2、発進します!』

 護はコントロールボックスをつかんだ両腕に力を込め、覚醒人V2を宇宙空間へ飛び立たせた。

 この時、オービットベースから発進したのは両GGGの全戦力と言って良い。GGGグリーンはファントムガオーとガオーマシン群、氷竜と炎竜、ボルフォッグとガンマシン、ゴルディーダブルマーグ、マイク・サウンダース十三世、風龍と雷龍、光竜と闇竜。GGGブルーはポルコートとガンマシン、月龍と日龍、翔竜、覚醒人V2。ただガオガイゴーだけがいない。蛍汰と火乃紀の穴を埋めるため、阿嘉松は長官として……そしてそれ以上に父として、苦渋の決断をしたのだ。
 その決断の重さを知っている護は、ウームヘッドに座る人物に語りかけた。

「紗孔羅さん……あなたを危険な目にはあわせないからね……!」

 ニューロノイドは二人のデュアルカインドという能力者がいなければ、起動することすらかなわない。だが今回、戒道幾巳にはダイブするよりも重要な役割があり、ある機体に乗り込んでいる。そして作戦上、ただの一機も欠けるわけにはいかないのだった。

「まさか……こんな方法があったとは……」

 メインスクリーンの一角に映し出される覚醒人V2ウームヘッドの映像を見て、大河が沈痛なつぶやきを漏らした。

「紗孔羅はずっと昏睡状態にあるが、意識を失ってるわけじゃねえ。デュアルインパルスは出続けてるんだ」

 通常、デュアルカインドが意識を失うと、デュアルインパルスも極めて微弱なものとなる。だが紗孔羅の場合、そのようなことは起きないのだ。どうやら脳そのものは正常に覚醒しているらしい。そのことは加療器機であるマニージマシンによって、確認されている。だから、彼女をウームヘッドにダイブさせておけば、護と二人でV2を起動させることができるのだ。

「だが滋よ……本当にこれで良かったのか?」

 獅子王雷牙が、今にも泣き出しそうな声で問いかける。

「公私混同は謹んでもらおう、獅子王スーパーバイザー。俺は長官として、必要な決断をしただけだ」

 ある意味で非情きわまりない決断──それにもっとも心を痛めているであろう、紗孔羅の祖父と父が、心の動揺を隠そうともせずに会話を交わしている。いや、少なくとも阿嘉松の方は、隠しきれているつもりだった。メインオーダールームに詰めている全員が、痛ましい思いを抱えて、阿嘉松の言葉を聞いていた……。

 ESウインドウから衛星軌道上に出現したジェイアークの艦橋に、オービットベースとそこから出撃してくる機体群を見つめる、一組の男女の姿があった。男と女──彼らに共通しているのは、命の宝石をその身に宿したサイボーグの一対であるということだ。

「どうやら戦いの準備はできているようだな、凱。そしてアルマ……」
「あいつらもみんないるね。光竜、闇竜、ポルコート……」

 ソルダートJにとっても、ルネ・カーディフ・獅子王にとっても、眼下の敵は憎い敵手ではない。縁深い相手を多くは持たない二人にとって、心をつないだすべての存在が、そこにいる──そう言えるだろう。
 それでも、トリプルゼロに心を浸食された彼らが、ためらいを覚えることはなかった。

「往くぞ、ルネ」
「ああ、これ以上、あいつらに罪を重ねさせるわけにはいかない」

 Jとルネはそれぞれの手に、小さな物体を握りしめた。かつて、大河とスワンがゴルディオンクラッシャーを発動させた、セーフティデバイスの解除キイである。トリプルゼロによって再生された、この“勝利の鍵”さえあれば、彼らは史上最強のツールを起動させることが可能となる。

「宇宙の摂理のために……メガフュージョンッ!」

 JジュエルとGストーンをその腕に掲げたサイボーグたちは、同時に超弩級戦艦に融合していく。燃えさかるようなオレンジ色に染め上げられた巨艦が、ジャイアントメカノイドに変形した。

「キング……ジェイダーッ!!」

 いま、地球人類を護る砦の眼前に、覇界の王が降臨した!

 

 覇界王キングジェイダーが臨戦態勢になるまでのわずかな間、GGGも時を無駄にはしていない。

「フュージョン……」

 獅子王凱がファントムガオーに融合、メカノイド<ガオファー>となる。

「シンメトリカルドッキング!」

 氷竜と炎竜に率いられた竜の兄弟姉妹たちが、おのが半身と合体していく。

「三身一体!」

 ボルフォッグとポルコートは並んで、それぞれのガンマシンと一つになった。

「システムチェーンジ!」

 バリバリーンで発進したマイク・サウンダース十三世が、コスモロボからブームロボに変形した。

「トリニティドッキング!」

 スレイブモードとなった翔竜が、竜神の一体にドッキング。各勇者ロボたちの合体や変形に続いて、GGGグリーン長官たる凱が自ら承認をくだす。

「ファイナルフュージョン承認ッ!」

 その承認シグナルを受け取ったのは、ついに復帰した卯都木命である。かつて、ガオファイガーのFFプログラムドライブはツクヨミ艦橋で、ジェネシック・ガオガイガーのジェネシックドライブはGクリスタルで、それぞれ行っていた。そのため、メインオーダールームの、慣れ親しんだシートで行うのは、ずいぶん久しぶりのことになる。

(ああ、やっと帰ってきたんだ、私……)

 唯一の違いは、長官が凱に変わったことだろう。かつてない窮地にありながら、最愛の人との共同作業を行っている感慨に胸を熱くしながら、命は右拳を高く掲げた。

「了解! ファイナルフュージョン、プログラムドラーイブッ!」

 正確に振り下ろされた拳が保護プラスティックを叩き割り、その下部のドライブキーを押し込む。久しぶりの動作であっても、身体が覚えている。目をつぶっていても間違うことはない。その流れるような姿を、すぐ近くのオペレーターシートから華とアルエットが見つめている。

(命さん……素敵です……)

 幼い頃から幾度も危ないところをGGG救われてきた華にとって、旧隊員たちはみな憧れの存在だった。命によるプログラムドライブの素敵さを、前任者であり、従姉であるあやめとよく語り合ったものだ。自分だけがその光景を間近で見られなかったと知ったら、あやめはさぞ悔しがることだろう。

(うん、やっぱり凱のプログラムドライブは命でなくっちゃ!)

 GGG隊員になってから知り合った相手のことは“さん”付けで呼ぶアルエットであったが、五歳の時に幼子の無邪気さで呼び捨てにしていた相手には、つい当時のまま接してしまう。
 そんなアルエットにとって、手塩にかけたガオファイガーの面倒を見られることは喜びであったが、凱のオペレートをするのは代役に過ぎないという思いが、ずっと存在した。だからこそ、この日が来るきたことをもっとも喜んでいるのは、凱や命以上にアルエットだったっかもしれない。
 そんなオペレーターたちの想いを受け取り、ガオファーがガオーマシンとともに宇宙空間に舞う。

「ファイナルフュージョンッ!」

 ガオファーがガオーマシンとファイナルフュージョン、ガオファイガーが誕生する。そして、今度は大河幸太郎特務長官による承認がくだされた。

「ゴルディオンダブルハンマー、発動承認!」

 大河の手で二本の発動キイが捻られると、命は二枚のデバイスカードをスロットに通過させる。

「了解! ゴルディオンダブルハンマー、セーフティデバイス、リリーブ!」

 それぞれ二重の認証を受けたゴルディーダブルマーグが変形し、ガオファイガーと合体する。

「ハンマーコネクト……ゴルディオンダブルハンマーッ!!」

 最強装備のガオファイガーを中心に、覚醒人V2とマイク、ビッグボルフォッグ、ビッグポルコート、翔超竜神、撃龍神、天竜神、星龍神がフォーメーションを組んだ。ガオガイゴーを欠くものの、緑と蒼のエムブレムを背負った勇者たちが、いまここに集結したのである。

「頼んだぜ、翔超竜神」

 勇者たちの先頭に立つ長兄に、凱が呼びかける。これから始まる決戦では、彼が仲間や弟妹たちの指揮をとるのだ。

「任せてください、長官」

 背後に続く星龍神も呼びかける。

「お兄様……私たちの翔竜を傷つけたら、赦しませんからね」
「ああ、心しておこう」

 若葉色の翼を背負った青と赤の勇者。思えばこの姿は、原種大戦時に開発を予定されていたものだった。様々な事情から翔竜の開発が遅れ、十年の時を経てようやくいま、現実の姿となったのである。

「キングジェイダーに時間を与えるわけにはいかない……行くぜ、みんな!」

 ガオファイガーと翔超竜神を先頭に、最強勇者ロボ軍団が虚空を駆けていく。その目指す先には。いままさに変形を終えて降臨しようとする最凶最悪の敵──覇界王キングジェイダーの姿があった。

 

「勇者たち全機、キングジェイダーへ向かっていきます!」
「ツクヨミ、タケハヤ、ヒルメ、フォーメーションGに入った模様、ドッキング形態へ遷移していきます!」
「ゴルディオンクラッシャー完成まで一四〇秒!」

 初野華、アルエット・ポミエ、卯都木命の三人が報告の声を挙げる。管制せねばならない勇者たちの数が増えたが、機動部隊オペレーターもフル稼働だ。それぞれに担当を振り分けてオペレートする三人の連携は、見事に息を合わせていた。

「ディビジョンフリートから、観測されている生体反応は二十六人分デス!」
「位置はタケハヤ艦内クシナダ内部です間違いありませんですこれが最後の要救助者です」

 研究部のスワンとタマラも、解析された情報を伝えた。十年前、三重連太陽系に旅立ったGGG隊員たちは覇界の眷族となり、ゼロ核として“人質”のような扱いをされた。彼らを救出するため、たとえばディスクXでゼロロボを一掃するような戦い方は、できずにいたのだ。しかし、それもあと二十六人。クシナダの内部にいる彼らを救出すれば、すべての旧GGG隊員が戻ってくる。後はソルダートJとルネだけになるのだ。

「ディビジョン三艦へのハッキングを試みましたが、失敗……」
「いやー、トリプルゼロのせいで侵入できないっすわ」

 猿頭寺と山じい、諜報部オペレーターたちが悔しそうに報告した。もともとディビジョン艦隊はGGGに所属するものだ。リモートコントロールで制御権を奪えば、正面からの対決を避けられるという読みがあった。だが、トリプルゼロという超高密度のエネルギーをまとっているため、リモート接続が困難になっている。安定した通信でハッキングすることは不可能だった。

「ちぃ、やっぱ直接やりあうしかねえってのか……」

 悔しそうにつぶやく阿嘉松長官。いつもの威勢良い怒鳴り声は影を潜めている。大河特務長官が、背後の席からいたわるような声をかけた。

「阿嘉松長官……気持ちはわかるが、今は護くんを信じよう」

 その言葉に、メインオーダールームにいる全員が、阿嘉松を見た。火麻とアーチンの両参謀、雷牙と楊の両スーパーバイザー、そして整備部オペレーターの牛山三兄弟。みな知っているのだ、意識のない愛娘を覚醒人V2に乗せて送り出さねばならなかった阿嘉松の苦悩を……。
 彼らの視線を受けた阿嘉松は、深く息を吸って、吐いた。長官職とは時に非情を求められる、孤独なものだ。だが、いまは責任や義務を分かち合う大河や凱がいて、支えてくれるスタッフも大勢いる。阿嘉松はごく短い時間で精神的に立ち直ると、いつものように吼えた。

「がっはっは、そうだな! これだけの勇者たちがそろえば、相手が覇界王だろうが怖れる必要はねえなッ! 頼むぜ紗孔羅、覇界王をぶっ飛ばして、ついでにとっととお目覚めしてくれよッ!!」

 メインスクリーンに映し出される、勇者たちのモニタリング映像。その一角に、覚醒人V2のウームヘッド映像もある。心なしか、物言わぬ紗孔羅が微笑んだように、阿嘉松には見えた。

 

 フォーメーションGによって、それぞれに展開したディビジョン三艦が連結していく。原種大戦直後に建造された超翼射出司令艦<ツクヨミ>、最撃多元燃導艦<タケハヤ>、極輝覚醒複胴艦<ヒルメ>は五〇〇メートル級の巨艦でありながら、グラヴィティショックウェーブ・ジェネレーティング・ディビジョンツールを構成するパーツでもあったのだ。だが、ドッキングを終え<ゴルディオンクラッシャー>となった状態でも、唯一、欠けているブロックが存在する。メインスクリーンに映し出された映像からそれを発見したのは、開発者でもある雷牙だった。

「思った通りだ! 制御AIであるゴルディーは再生されておらん!」

 雷牙はスクリーンに映し出されたゴルディオンクラッシャーの基部、タケハヤが変形した“柄”の部分を指さした。本来なら、そこには巨大なゴルディーヘッドが存在した。だが、今は欠落してぽっかりと空洞になっている。

「雷牙博士の予測通り……トリプルゼロの再生力は、心ある者には及ばないというわけですな」

 楊が感心したような声を漏らした。かつて、木星で生命を落とした、獅子王麗雄。彼はザ・パワーによって消滅する寸前の意識を保持され、精神生命体となった。だが、その肉体が再生されることはなかったのだ。人間であれ、勇者ロボであれ、心ある存在の傷ついた体を修復することは、無機物の再生と同じようにできる。だが、心がいずこかに存在する場合、その憑代となる体のみを再生することはかなわない。それが雷牙の予測だった。

「ゴルディーマーグはディビジョンツールの制御AIとしてより、勇者ロボとして暴れ回りたいという意識が強かった。だからその姿で再生し……結果として、ゴルディオンクラッシャーは制御AIを失った……というわけですな」
「楊博士の言う通り! 凱、今ならゴルディオンクラッシャーは重力衝撃波を発生できない、完全に破壊するんだ!」

「わかったぜ、雷牙おじさん!」」
「わっははは、今回も最大のお手柄は俺様だったってことだな!」

 宇宙空間をまっしぐらに進むガオファイガー。その右腕のダブルハンマーが高笑いする。だが、事態は雷牙や楊の予想を超えていた──

 

「……トモロ、我が半身を頼むぞ」
「ああ、任せるがいい、友よ」

 キングジェイダーに融合したままのソルダートJが無二の親友である制御コンピューターに告げた。そして、叫ぶ。

「ヘッドユニット、プラグアウト!」

 次の瞬間、覇界王キングジェイダーの頭部が分離した。そして、まとっていたオーラを炎が一層激しく燃えさかるかのように、噴出する。

「J、なにをする気だ!」

 いまにもゴルディオンクラッシャーのもとへ到達しようとしていたガオファイガー。その眼前で、覇界王キングジェイダーの頭部が巨大化した! いや、実際に膨れあがったわけではない。噴出するオーラが巨大な頭部の形状をなしているのだ。そして、その巨大な頭部は、ゴルディーヘッドが欠落した場所へ合体した。同時に首のない覇界王が、超巨大ハイパーツールの柄にドッキング──トモロ0117が冷静に告げた。

「……クラッシャーコネクト」

 制御AIの代わりとなった頭部のなかで、ルネも叫ぶ。

「私の力も使いなっ!」
「ああ、ともに往こう!」

 フュージョンしたままの状態で、Jとルネは互いの腕を重ねあわせた。JジュエルとGストーンが共振し、銀色の光を放つ。オレンジのオーラと銀色の輝き──それらは捩りあって一つの輝きとなり、全長一キロメートルを超える巨体を染めあげた。

「おいおい、聞いてないぞ!」
「まさか、そんなことが……!」

 ガオファイガーの見る前で、ついに最後の覇界の眷族は、真価を発揮した。トリプルゼロで強化されたジャイアントメカノイドが人類史上最大の発明にコネクト、JジュエルとGストーンの共振によって駆動する──

「シルバリオンクラッシャーッ!!」

 ソルダートJとルネの声が重なり、人類を滅亡へと導く名を告げた。

(つづく)


著・竹田裕一郎


次回6月15日更新予定


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