覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第55回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。竜四姉妹による奇跡のシンメトリカルドッキングで覇界幻竜神と覇界強龍神に打ち勝ったGGG。獅子王雷牙を取り戻したことで、ディスクX量産の目処もついた。
 そんな中、ガオガイゴーが覇界の眷族になったという凶報が、オービットベースにもたらされる! 伝説のソムニウムと呼ばれるデウスは、覇界ガオガイゴーを二〇〇五年に送り込み、覇界の眷族に敗北する歴史を改変しようとする。だが、その試みはラミアたちによって阻まれた。
 一方、二〇一七年のGGGオービットベースには覇界王キングジェイダーが襲い来る。GストーンとJジュエルの輝きを重ね合わせたシルバリオンクラッシャーの猛攻を防ぎきったGGG。覇界王キングジェイダーの内部へ突入した凱と戒道は、直接、浄解することでソルダートJとルネを取り戻すことに成功する。だが、覇界王キングジェイダーは止まらない。そこへベターマン・カタフラクトが出現する──鋼鉄の獅子をともなって。

number.08 禽-PHOENIX- 西暦二〇一七年/二〇〇五年(8・完)


9(承前)

 エヴォリュダー・ガイは、ギャレオンとフュージョンすることで、メカノイド<ガイガー>となった!

(これは……やっぱり、あのギャレオンじゃない!)

 フュージョンした凱にとって、その機体は隅々まで自分の肉体も同様となる。外観を見ただけで薄々気づいてはいたが、一心同体となった今、その素性は明らかだった。
 ガイガーの姿はメインオーダールームのメインスクリーンにも映し出されている。

「おいおい、あいつはワームホールの彼方へ押し返したんじゃねえのか!? なんでここにいるんだよッ!」
「いいえ、違います! あれはジェネシック・ギャレオンじゃない……あれは!」

 阿嘉松の疑問に答えたのは、この場にいる者でジェネシック・ギャレオンをもっとも間近に見た経験がある卯都木命だ。

『命の言うとおりだ。これはジェネシック・ギャレオンじゃない。──“ギャレオン”だ!』

 通信モニターから、フュージョン中の凱の声が響いた。

「どういうことだ凱! レプリジンとでもいうのかよ?」

 火麻参謀が問いかける。複製であれば説明はつくが、眼前のギャレオンはレプリジンに起きていたような色素の低下は見受けられない。

「俺にもわからない。でも、一つだけ言える。これは……俺と一緒に戦い抜いた、あのギャレオンなんだ。特務長官、ファイナルフュージョンを!」

 ここで判断に迷うような人物に、GGGの長官たる資格はない。大河幸太郎は即断した。

「いいだろう……私は勇者の判断を信じる。ファイナルフュージョン承認!」
「了解……ファイナルフュージョン・プログラムドラーイブッ!!」

 承認を受けて、命が拳を振り下ろす。保護プラスティックが叩き割られ、その直下のドライブキーが押し込まれた。
 これまで幾人もの長官が承認し、幾人ものオペレーターがプログラムをドライブさせてきた。そして、幾体もの勇者王が誕生した。だが、ここからすべてが始まったのだ。彼らの手による承認とプログラムドライブと──

「ファイナルフュージョンッ!!」

 ガイガーはそう叫ぶと、電磁竜巻を発生させた。オービットベースから射出されたガオーマシン群がその中に突入していく。たとえ予備機であろうと、GGG整備部は常日頃のメンテナンスを怠ったりはしない。普段使用されることのない初代ガオーマシンであろうと、その稼働状況に問題はなかった。

「ガオガイガーッ!!」

 電磁竜巻が晴れると、そこから現れたのは、まさしく勇者王ガオガイガーだった。かつてゾンダリアンから地球を守り抜いたくろがねの巨神。

 はじまりの勇者王が、そこにいた。

「オウ、久しぶりだっぜ……!」
「隊長のあの姿をまた見られるなんて……」
「私たちは映像でしか知らない……でも、なんて素敵……」

 すでに戦う力を失い、見守るしかなかった勇者ロボ軍団が感嘆の声をもらす。かつてともに戦ったGGGグリーンの勇者たちも、記録でしか知らないGGGブルーの後進たちも、超AIが熱くなるのを感じていた。
 そんな彼らのもとに、最新の勇者王が流れてきた。いや、ベターマン・カタフラクトが投げつけてきたのだ。翔超竜神と撃龍神があわてて受け止める。

「ガオガイゴー!」

 翔超竜神は抱きかかえることになったガオガイゴーに、ある違和感を感じた。

(Z0シミラーが検出されない……!)

 連絡途絶する前、ガオガイゴーはたしかに覇界の眷族と化していたはずだ。だが、その痕跡がきれいさっぱりと消えている。
 二〇〇五年から運び出す直前、羅漢のペクトフォレースによって浄解したのだが、カタフラクトはそれを伝えようとはしない。

「乱暴だな! おい、なにしやがる!」

 さらに撃龍神の抗議に応じることもなく、カタフラクトはきびすを返した。あえて無視したわけではない。リミピッドチャンネルを用いるソムニウムは、生体とでなければ意思疎通できないのだ。本来であれば、こうも伝えたかったことだろう。

『その中にいるのは、我らの希望なりし者だ。丁重に扱われたし』

 だが、実際にはそれはかなわず、カタフラクトは無言で戦場へと向かう。覇界王と勇者王が激突する戦場へと──

「大丈夫だ……凱兄ちゃんとギャレオンがそろっていれば、覇界王にだって負けたりしない……」

 そうつぶやきながら護は、わずかな残り稼働時間を駆使して、覚醒人V2をオービットベースの離発着ポートに駐機させた。

『おう護、悪いがやってもらいたいことがある!』

 機体を停止させる間もなく、阿嘉松が通信を入れてきた。

『そろそろ幾巳やゼロ核を乗せた救命艇が戻ってくる。協力して浄解してくれ!』
「わかりました! あ、でもウームヘッドの紗孔羅さんを……」
『戦闘終了後に、すぐ医務室へ運ばせる。お前さんは浄解を急いでくれ! いま機動部隊がガオガイゴーを運んで帰還中なんだ!』
「蛍汰さんと火乃紀さんが……わかりました!」

 ベターマンが引き渡してくれたというガオガイゴー。最後に確認された時は、覇界の眷族になっていたという。であるならば、ヘッドダイバーも含めて、急いで浄解しなければならない。羅漢による浄解を知らない阿嘉松の判断はもっともであり、護の脳裏からもこの時、紗孔羅のことは忘れ去られていた。いや、忘れたわけではないのだが、オービットベースに戻ってきた以上、差し迫った脅威はない。その思い込み故に、彼女を覚醒人V2のウームヘッドに放置することになってしなった。その判断ミスを、阿嘉松も護もすぐに深く後悔することになる。

 

10

「宇宙ノ摂理ノタメ……マダ戦イヲヤメルワケニハ……」

 覇界王キングジェイダーから、トモロ0117の声が響く。ソルダートJとルネが浄解された今もまだ、覇界の眷族として戦い続けているのだ。
 全周波数帯で発せられたその声を聴き、救命艇からオービットベースに降り立ったソルダートJは無力感におのが拳を強く握りしめた。

「頼む、凱……。トモロを、我が友を救い出してくれ……」

 この誇り高き戦士が、他人に何かを頼んだことなど一度もなかった。望むことがあれば、おのが戦いでかなえる──それしか知らない生涯だった。だが、キングジェイダーが敵になってしまっている今、Jにできることは祈ることと願うことしかなかった。

「信じるんだ……勇者たちを」

 Jのかたわらに、ルネが並んでいる。微塵も不安や怖れを感じさせない口調で、彼女は続けた。

「あいつらはこれまで、奇跡を起こし続けてきた。きっと、これからも!」

 その言葉は力を持っていた。戦う術を失った戦士の心に、また熱い炎を燃え上がらせる力を。


 タケハヤ部分──すなわち柄だけとなったシルバリオンクラッシャーを投げ捨てた覇界王キングジェイダーが、オービットベースに向かって身構える。全身の反中間子砲、メーザー砲、ESミサイル、そしてジェイクオースを一斉発射しようというのだ。
 シルバリオンクラッシャーがなくとも、トリプルゼロで強化されたそれらの攻撃を食らえば、オービットベースはひとたまりもない。

「プロテクトリフレクサーの再稼働は!」
「あと六〇二秒を必要とシマス!」

 大河特務長官の問いに、スワン・ホワイトが答える。

「機動部隊の連中は再出撃できねえのか!」
「む、無理です……みんな損傷がひどくて……」

 阿嘉松長官の怒鳴り声に答えたのは、初野華だ。シルバリオンクラッシャーを食い止めたことでダメージを受けた勇者たちは、ガオガイゴーを連れて帰還しばかりだ。修理やメンテナンスをしなければ、とても再出撃などできない。

「となると、いま頼れるのは──」

 大河や阿嘉松がメインスクリーンを見る。そこに映し出されているのは、一機と一体の後ろ姿だった。


 いずこからか現れたギャレオンを中核とする、最初期型のガオガイガー。凱はエヴォリュダー能力を駆使して、その各部を最適化していった。三重連太陽系のGクリスタルで修復を受ける前、ブラックボックスが損傷したギャレオンは、機能に制限が多い。そこを凱自らが補って、二〇一七年バージョンにアップデートされたガオーマシンと適合させているのだ。それでも補いきれない部分はある。ステルスガオーⅡはガオガイゴーに使用されているため、ステルスガオーしか残っていなかったのだが、この全翼機は大気圏内用なのだ。宇宙空間で使用できないわけではないが、その機動性は著しく低下する。エヴォリュダー能力でなんとかできるものではない。
 覇界王キングジェイダーに向かうガオガイガー、加速の足りないその機体のかたわらに、ベターマン・カタフラクトが並んだ。

『エヴォリュダー・ガイ、我らの力を貸そう』
「ベターマン・ラミア……覇界王に勝利するためか!」

 頭のなかに流れ込んできたリミピッドチャンネルに、凱は自分の意志を返した。

「いいだろう、たとえお前が天敵だろうと、今この時だけは!」

 凱の意志に、うなずいたかのような、意識の波がさざめく。次の瞬間、ベターマン・カタフラクトが分解された。いや、合体を解いたのだ。フォルテ、オウグ、トゥルバ、アーリマン、ルーメ、ポンドクス……六体の変身体が、ガオガイガーの全身にまとわりついていく。

『ンー…ペクトフォレース・サンクトゥス!』

 凱が名を知らないベターマンの意志が流れた。続いて、虹色の免疫粒子たちがベターマン変身体に浴びせられる。次の瞬間、彼らはガオガイガーの全身に、増加装甲のように張り付いていた。ユカタン半島で新龍神に合体したように、今度はガオガイガーの新たな力となったのだ。
 夢人たちソムニウムを装いし勇者王──その名は夢装ガオガイガー!

『──往け、勇者の王よ』
「貴様に言われなくても!」

 脚部に融合したポンドゥスの重力制御が、不安定だったガオガイガーの軌道に指向性を与える。圧倒的な機動力で、夢装ガオガオイガーは、虚空を駆け抜けていった。


 そして、実はこの時──密やかな戦いを繰り広げている者もいた。ビッグボルフォッグである。覇界王キングジェイダーがタケハヤを投げ捨てたとき、彼は傷ついた体でオービットベースを飛び出し、その内部に突入していたのである。
 タケハヤ内部でビッグボルフォッグが対峙していたのは、もう一体の最後の眷族──覇界ピギーちゃん。トリプルゼロによって、戦闘力を異常強化されたメイドロボットとの死闘を、単身繰り広げていたのである。

「……あなたは必ず、私が救い出してみせます!」

「……キングジェイダー、全武装、一斉発射……」

 トリプルゼロに浸食されたトモロが、指令を発する。オレンジ色に輝く巨体から、すべての武装が斉射された。エネルギーとミサイルと、そしてジェイクオースが、オービットベースに向かって放たれる。人類防衛の砦も、この攻撃にはひとたまりもないであろう。
 それでもメインオーダールームに詰めている者たちは、誰一人として希望を失わない。みな奇跡を信じて、メインスクリーンを見ている。

「凱……!」

 オペレーター席の卯都木命が、もっとも愛する者……そして、もっとも頼れる者の名をつぶやいた瞬間、奇跡は起きた。すべての攻撃が命中するかと思われた瞬間、オービットベースの前に高速で突入してくる影!

「プロテクトシェードッ!」

 夢装ガオガイガーが、左腕を前方に突き出してバリアーシステムを展開する。次々と着弾した反中間子とメーザーとミサイルは、いずれも軌道を星形に湾曲され、跳ね返されていった。だが、キングジェイダー最大の攻撃であるジェイクオースの突進を止めることはできない。物理的圧力がバリアーシステムを突破して、夢装ガオガイガーに命中する。
 いや、紙一重で命中はしていない。そして、それは紙ではない。ごく薄い細胞層だ。海棲生物のような薄い細胞層が超振動でエネルギーを受け流す。光り輝くベターマン・ルーメがマントのように、夢装ガオガイガーの胴体を保護しているのだ。運動エネルギーを減衰されたジェイクオースを、夢装ガオガイガーの右腕がつかむ。それもフォルテの腕部が融合した、究極の剛腕が!

「覇界王! お返しするぜ!!」

 ジェイクオースをつかんだまま、右の前腕部が高速回転する。

「ブロウクンマグナムッ!」

 そして、そのまま撃ち出された! ジェイクオースをつかんだままの夢装ブロウクンマグナムが宇宙空間を駆ける。一瞬の後に覇界王キングジェイダーに直撃、あたかもプロペラのように機体表面を斬り裂いた。

「アアアアッ!」

 たまらずにトモロが悲鳴をあげる。だが、トリプルゼロの再生力は、そのまま朽ち果てることを許さない。もともとのジェネレイティングアーマーの機能が倍加され、単一構造結晶装甲がみるみるうちに修復されていく。
 だが、覇界王が続く第二撃を放とうとした瞬間、敵はすでに眼前に迫っていた。ポンドゥスの重力制御と、翼に融合したトゥルバの暴風で急加速した夢装ガオガイガーが、覇界王の喉元へと肉薄。背部から伸張したアーリマンが、クラッシュウィッパーとなって覇界王の上半身を連打する。

『それそれそれ!』

 覇界王キングジェイダーの胸部中央に、物質崩壊点──クランブルポイントが浮かび上がる。

『そこへ打ち込むのだ、エヴォリュダー!』
「わかってる、ベターマン!」

 夢装ガオガイガーが、両腕を左右に広げる。

「ヘル・アンド・ヘブンッ!!」

 右の掌から攻撃エネルギーが、左の掌から防御エネルギーが迸る。だが、それだけではない。

『ンー…この力も使うがよい』

 右腕にフォルテが装着されているように、左腕にはオウグの力が宿っていた。夢装ガオガイガーの倍以上にも膨れあがった両腕から、二つのエネルギーがあふれ出る。

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……」

 そして両拳が胸の前で組み合わされ──

「ウィータァァァッ!!」

 夢装ガオガイガーが機体ごと突進、両拳を覇界王キングジェイダーの胸の奥へとねじ込んだ! そして指先が探し求めていたものを抉り出す!!

「はあああああっ!」

 引き抜かれた右手がつかんでいたのは、ジェイアークメインコンピューター<トモロ0117>。そして左手がつかんでいたのは、ジュエルジェネレータ-。頭脳と心臓を失った覇界キングジェイダーの双眸から、光が失われていく。
 そして、オレンジに輝く巨体の全身にヒビが走っていき──トリプルゼロに浸食されていたジャイアントメカノイドは爆発四散した。
 その光景を見守っていたメインオーダールームの面々から、歓喜の声が漏れる。

「それでこそ……勇者だ!」

 大河幸太郎のその言葉が。この場所に響いたのも、十年以上を経てのことになる。

 

 そして、宇宙空間を漂う半壊した機体も、感慨を抱いていた。

(これでまた、ともに戦えるのですね、トモロ0117……)

 ペンチノン、そしてトモロとは数奇な縁で結ばれたビッグボルフォッグならではの思いである。激闘に傷ついた諜報ロボ──その腕にはしっかりと、最後の眷族から摘出したAIブロックが抱きかかえられていた。

 

「J……これでまた、みんなそろったな」
「……ああ」

 戒道幾巳とソルダートJもうなずきあう。もともとアルマとソルダート戦士とジェイアークは、三者で一組の存在だった。だが、赤の星が壊滅したあの日、ほとんどの戦士たちは斃れていき、たまたま地球で出逢った彼らは新たな一組となったのだ。それは偶然にすぎなかったのかもしれない。だが、今となってはそれこそが、おのが運命であったと思える。そう思えるだけの、固い絆を彼らはともに感じていた。長い間、散り散りになっていた一組は、ようやくここに、またひとつになる日が訪れたのだ。
 キングジェイダーは爆散したが、また立ち上がる日は来る。アルマとラティオの浄解を受ければ、友は戦士に戻り、機体の再生も可能となるはずだ。不死鳥は決して、燃えつきることはない。幾度でも幾度でも、炎の中から蘇るのだから──
 そんな戦士たちを見つめるルネに、隣から声がかけられる。

「おやおや、君がそんな温かい目で、他人を見るようになっていたとはね」
「……誰だい、あんた?」
「おいおい、ルネ! まさか記憶障害かい? パートナーを忘れてしまったのか!?」
「ああ、ポルコートか」

 皮肉や意地悪ではない。本当に気づいていなかったのだ。無理もないといえば、無理もない。ビッグポルコートと言葉を交わすのは、初めてだったのだから。
 十年前にルネとGGGが旅立った時、ポルコートはGSライドも変形機能も失った、ただの特捜車だったのだ。その後、ふたたびGSライドを得て、ガンマシンと合体することができるようになったのだが、それらの事情をルネは知る由もなかった。

「ひどい……姿に見覚えがなくたって、声で気づくとか、魂のつながりとか……」
「あんた、魂ないだろーが」
「そんなことはないぞ、ルネ! 僕にだって英国紳士の誇りと魂が……」
「あー、うるさい。また犬の糞踏んづけてから乗るよ!」

 悪態をつきつつも、ルネは楽しそうだった。かつて、シャッセールの捜査官として活動していた頃は、こんな会話を繰り返すのが日常だった。途方もない時間と空間を超える旅を経て、ようやく獅子の女王リオン・レーヌもまた、戻るべきところへ帰還したのだった。


 そんなやりとりのかたわら、デッキの一角ではささやかな、だが重大な事件が起こっていた。駐機状態で放置されている覚醒人V2のウームヘッドには、いまだ昏睡状態の紗孔羅が取り残されている。そこに小柄な影が現れた。

『……ずいぶん待たされたけど、ようやく彼らも帰ってきたようだね』

 リミピッドチャンネルで紗孔羅に語りかけたのはベターマン。伝説のソムニウム、デウスである。もちろん返事を期待してのことではない。

『この時がくるのを待ちわびたよ』

 二〇〇五年に取り残され、テンプスの実を奪われたデウスは、時の大河を渡ってこの二〇一七年のオービットベースへ現れたわけではない。十二年もの間、雌伏を続けていたのだ。そうしてカタフラクトが出現するこの日、この時にやってきたのである。

『ラミアくん、君たちはボクが指摘した決戦の刻を二度までも乗り越えた。でも三度目はそういかない……ボクがもっと、君たちに試練を与えてあげよう』

 額に十字光を瞬かせつつ、少年のように見えるソムニウムは、紗孔羅に手を伸ばした。

 

 ──ガオガイガーから分離したソムニウム変身体たちは、繊維質の塊となって、砂のように崩れ去っていった。その中からは、ヒトにしか見えないソムニウムたちが姿を現す。しかし、真空中に平然と身をさらす彼らが、人間であろうはずがない。ヒトを超えた霊長類ソムニウム──ベターマン。
 彼らと同じく、真空中にも耐えられるエヴォリュダーが、ガオガイガーからフュージョンアウトしてくる。凱とラミアは、宇宙空間において、二度目の対面を果たした。

「……また、助けられたな。ベターマン・ラミア」
『覇界王を斃すのに、移用しただけだ──エヴォリュダー・ガイ』

 リミピッドチャンネルでの対話は、言葉ではなく意志を交わす。それが嘘偽りなど含まない、真実であることが凱にも理解できた。

「………」

 凱は振り向き、背後のガオガイガーを見る。いや、ギャレオンの頭部だ。

「お前たちは……時間を超えることができるのか」

 すでに凱は理解していた。これは、覇界王の一部として、ワームホールの彼方へ消えた鋼鉄の獅子ではない。二〇〇五年から──EI-02との戦闘直後から、ベターマン・カタフラクトが連れてきたギャレオンなのだ。

「だが、あの時にそんなことは起きていない。ギャレオンがどこかへ持ち去られたなんて……」
『左様、この機械仕掛けの獅子はすべてが終わった後、拙者たちがまた、過ぎたる時の彼方に戻すことになります。貴殿の記憶には、残らないのも道理』

 ラミアに代わって、ライが答える。その説明は、凱にも納得できるものだった。

「……そうか、つまりギャレオンを戻すことができないと、タイムパラドックスが起きるというわけか」
『然り! 努々傷つけたりはしないよう、お気を付けめされよ』

 道化た仕草で両手を広げるライの背後で、空間が歪む。彼らが“ソキウスの門”と呼ぶ超空間ゲートだ。次々とゲートの彼方へ消えていくベターマンたちに、凱はこれ以上、問いかけようとはしなかった。彼らは常に伝えたいことだけ伝えて、質問に答えたりはしない。もっとも知りたいことはわかった、今はそれで充分だ。

(まだ、戦いは終わりじゃない──)

 ソムニウムは言い残した。“すべてが終わった後”、と。覇界の眷族にされていた勇者たちとGGG隊員たち、彼らを全員取り戻しても、まだ終わりではないのだ。
 この先に待ち受けているのが何者であるのか──それもまた、凱は悟っていた。

(俺はまた戦うことになるのか──覇界王ジェネシックと……)

 衛星軌道上の宇宙空間。獅子王凱はガオガイガーとともに、地球光に照らし出されている。来たるべき最後の戦いの予感に、その身を震わせながら──

(number.08・完 FINAL of ALLへつづく)


著・竹田裕一郎


次回8月14日更新予定


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