覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第60回】

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《前回までのあらすじ》

 覇界の眷族によって、全世界にトリプルゼロが拡散された! ゼロロボが大量発生し、地球全土が制圧されるまでの猶予はあとわずか。だが、GGGブルーは死力を尽くして戦い、覇界幻竜神、覇界強龍神、覇界王キングジェイダーという難敵を攻略、取り戻すことに成功する。いまここに、十年前、全宇宙を救うために旅立ったガッツィ・ギャラクシー・ガードの勇者と隊員たちが、すべて帰還したのだ!
 さらにベターマン軍団が二〇〇五年の過去からギャレオンを運んできたことにより、初代ガオガイガーも凱の新たな力として加わった。
 いよいよ最終決戦に挑むGGGグリーンとGGGブルー。覇界王が選んだ決戦の地は南極大陸。極点の空で、凱のガオガイガー、ルネのガオファイガー、戒道と護のガオガイゴーが、同時にファイナルフュージョンを敢行する。だが、ソムニウム・デウスの奸計により、覇界王の内部には行方不明だった紗孔羅が封じられていた。

FINAL of ALL 対-VERSUS- 西暦二〇一七年(5)


7(承前)

 咆哮とともに、百獣の王たる獅子が氷雪を蒸発させながら空を舞う。そして、円錐と渦巻の回転衝撃波を放つ、覇界の轟獣二体も極寒の大地を駆ける。さらに、覇界の猛禽が大きく広げた黒き翼で、厚い雲をも蹴散らすように天を斬り裂く。最後に、攻撃と防御を担う覇界の海獣二頭が、何者にも捉えられぬ素早さで宙を泳ぐ。全部で六機の獣たちはオレンジのオーラを放ち、世界を震わせる勢いで旋回していた。
 やがて、覇界ストレイトガオーと覇界スパイラルガオーは、尖端のドリルを唸らせ、覚醒人V2に突貫してきた。

「ひいいいい、おっかねえっ!」

 トリプルゼロに威力を強化された尖角を避けようと、蛍汰は必死にニューロノイドを跳躍させた。恐竜の尾を模したスタビライザーが危うく削り取られそうになる。下手に抵抗しようとはせず、回避に専念した蛍汰の判断が功を奏した。
 鋭い爪で氷原を疾走した覇界ジェネシック・ギャレオンは、ゴルディオンダブルハンマーとコネクトしたガオガイガーの首元に、鋭い牙を突き立てようとする。だが、一瞬早く身を捩った胸部の顎門が、それを正面から受け止めた。交錯する牙と牙!

「──ギャレオンッ!」

 思わず凱が呼んだのは、どちらの鋼鉄の獅子か。我が身を呈して、自分を護ってくれた過去の獅子。それとも、自分を屠ろうと飛び込んできた、オレンジ色のオーラをまといし、現在の獅子。凱にとっては、いずれも大切な戦友であるメカライオン同士が、眼前で激突していた。
 巨大な黒鳥は、大地に倒れ伏していた護と戒道の勇者王に襲いかかる。上空から急降下した覇界ガジェットガオーは、その頭部を鋭い刃に変化させた。緑に輝く切っ先が、ガオガイゴーの背に迫る。

「プロテクトウォールッ!」

 実体型のウォールリングを左腕に装着させ、護は強固な防御壁を展開させた。ウィルナイフの刃といえど、空間を湾曲させたバリアーを突破することはかなわない。激突に弾かれ、宙に逃れた黒鳥は、素早い機動で上空を旋回する。再度の攻撃の機会をうかがっているようだ。

「助かった、護!」

 相棒の咄嗟の行動に感謝しつつ、戒道は素早くガオガイゴーを立ち上がらせた。頭上からの第二撃に備えて、身構える。
 そのかたわらで身を起こしたガオファイガーに襲いかかったのは、覇界ブロウクンガオーと覇界プロテクトガオー。凍てつく大気が液状化したかのように、海棲生物を摸した覇界の眷族たちはその中を泳ぎ、今まさに体当たりを仕掛けようとしていた。ルネの闘志を反映したかのごとく、ガオファイガーは避けようとはしない。両腕でしっかりと掴んでいた巨大で尖った得物を勢いよく振り回し、前方に突き出した。

「うおおおおっ!」

 サメとイルカの突進を受け止めたのは、白銀の錨──ジェイクオースである。鋭い刃が勢いにまかせて、二体を両断するかに見えたが、そうはならない。覇界プロテクトガオーが鼻先にバリアーを展開していたのだ。非実体の障壁が緩衝となり、海獣たちは激突に耐えきった。次の瞬間、覇界ブロウクンガオーが全身を急速回転させる。錐もみ状の回転突進がゼロ距離から、ジェイクオースを弾き飛ばす!

「なにっ!」

 無防備になったガオファイガーに、バリアーを展開したままの覇界プロテクトガオーが突っ込んだ。無敵の楯が打突武器となり、ファイティングメカノイドの全身を痛打する。

「うわあああっ!」

 全身を苛む苦痛に、ルネは悲鳴をあげた。

 

 勇者王たちの苦闘は、オービットベースのメインオーダールームに余すところなく伝えられている。それらを見守る、悲痛な表情のスタッフたち。なかでも身を引き裂かれんばかりの痛切を感じているのは、獅子王雷牙と阿嘉松滋だ。愛しい孫であり、娘である紗孔羅が囚われの身である上、そのために仲間たちが全力で反撃することもできず、苦戦しているのだから。
 GGGブルー長官席から立ち上がった阿嘉松が、思わず……といった口調で叫ぶ。

「おおぉいっ!……頼む! みんな全力で戦ってくれっ! 覇界王相手に手加減なんぞする余裕はねえはずだ!」

 その言葉の意味するところは、愛娘を見捨ててくれと言っているに等しい。だが、偽らざる本心でもあった。阿嘉松は両の目から涙をあふれさせつつ、必死に言葉をつむいだ。

「紗孔羅のために犠牲が出たら……そのために人類が滅ぼされちまったら……俺にはその方が耐えられねえ! GGG長官としてでなく、あいつのオヤジとして頼む! みんな戦ってくれぇっ!」

 阿嘉松の叫びに、雷牙ががっくりとうなだれる。普段は衝突ばかりしている親子だが、根っこのところで想いは通じているのだろう。息子の言葉に、丸まった背が無言で同意していた。
 この時、全隊員の胸のうちに浮かんだ言葉がある。それを代表して、大河幸太郎が口を開こうとした時──

「社長っ! いんや、所長っ! じゃなくて……長官っ! それが本心っすかぁっ!?」

 オペレーターの一人が叫んだ。阿嘉松滋という人物が、有限会社を起こした時から隣にいて、その野心と夢を支え続けてきた男──山じいである。信頼する上司がアカマツ工業社長からGGGマリンレフュージ基地所長となり、GGGブルー長官と肩書きが変わっても常に変わらず、支え続けてきたのがこの山じい(本名不詳)だ。

「わしゃ、ずっと見せてもらってきたんですよ。奥さんの事故があってから、長官がどんな想いで紗孔羅ちゃんを育ててきたか! こんなところで、あきらめられるのが本心ってわけがないでしょう! わしゃ知ってるんすわ!」

 いつになく長い言葉を振り絞りながらも、山じいの視線はコンソールから離れない。両の手はキーボードを叩き続けている。いまこの瞬間も、山じいは紗孔羅の居場所を解析し続けているのだ。それはメインオーダールームにいる全員が同じだった。みなが解析作業を続けながら、無言でうなずく。誰一人として、あきらめの表情など浮かべてはいない。それは南極で戦う者たちも同じだ。

 

 空中で覇界ガジェットガオーと高機動戦闘を繰り広げるガオガイゴーから、護が叫ぶ。

「阿嘉松長官、僕たちはまだまだやれます! 紗孔羅さんを救い出すまで、倒れたりしません!」

 覇界ジェネシック・ギャレオンの猛攻に、ゴルディオンダブルハンマーを振るうこともできず、防戦一方のガオガイガー。だが、凱の闘志も失われてはいない。

「そうだ! 紗孔羅ちゃんもギャレオンも、俺たちはあきらめない!」

 覇界ブロウクンガオーと覇界プロテクトガオーによる連携攻撃を、ガオファイガーが巨大なジェイクオースを楯代わりに耐える。

「そうだぜ、おっさんアニキ! あたしを姪っ子に会わせてくれないとな!」

 阿嘉松の異母妹であるルネが叫ぶ。それは遠い昔に交わされた約束。兄妹の最初の約束がかなうまで、倒れるわけにはいかない!
 だが、どれほど想いの強さを込めていようと、敵は強大。宇宙の摂理を司る無限のエネルギーをまとっているのだ。覇界の海獣たちが、前後から猛烈な勢いでガオファイガーに迫る。

「プロテクトウォール!」

 ウォールリングをまとわせた防御壁で、前方のブロウクンガオーの突進を阻む。が、背後に迫るプロテクトガオーへの対処は追いつかない。
 回避は不可能──ルネがそう悟った瞬間、頼もしい声が響いてきた。

「背中はまかせろ、ルネ!」

 ガオファイガーの背後に飛び込む、一回り小柄な超高速の影。

「プラズマソード!」

 両腕から光の剣を発生させたジェイダーが、ガオファイガーと背中合わせの位置につく。無防備なガオファイガーの背部に突っ込もうとしていた覇界プロテクトガオーに、高速の斬撃が刻まれる。バリアーで体当たりしようとしていた覇界の海獣もこれにはたまらず、氷原に激しく不時着せざるを得なかった。

「……J!」
「礼なら、戦いが終わった後で聞こう」

 破損した胸部を修復中のキングジェイダー本体を置き去りにして、プラグアウトした頭部を変形させたジェイダーとなり、その戦士は駆けつけてきたのだ。姿は見ずとも、声だけでわかる。自分の背中が頼もしき味方に護られている……そう感じながらもルネは、間髪入れずに光のリングを勇者王の右腕にまとわせた。

「ファントムリング・プラス! ブロウクンファントムッ!」

 高速回転によって、プロテクトウォールを突破しようとしていた覇界ブロウクンガオーを、同じく高速回転する右腕が斜め横から迎え撃つ。正面からのぶつかり合いなら、トリプルゼロの出力が上回っていたかもしれないが、激しく激突したブロウクンエネルギー同士は弾けあい、攻撃を司る覇界の眷族がたまらずに吹き飛ばされた。

「どわーっ! 俺だって紗孔羅ちゃんを助け出すまでは……!」

 ルネと同じく、二体の眷族に追い立てられていた蛍汰は、腹をくくった。回避行動をやめた覚醒人V2が、その暴龍のような脚爪で氷原を踏みしめる。

「ブレイクシンセイサイズ!」

 V2胸部のTMシステムが唸りをあげた。一か八か、シナプス弾撃で反撃に転ずる策である。その行為を気に留める様子も見せず、二列に並んだ土竜たちは、それぞれのドリルを高速回転させて、突貫してくる。

「ジーセット!」

 蛍汰が差し違える覚悟で、シナプス弾撃を放とうとした瞬間──

『ヒトよ……覇界の眷族を滅するため、我らと合力すべし……!』

 巨大な姿が、V2のかたわらに降り立った。空中から急降下してきたソムニウム変身態の融合した姿、ベターマン・カタフラクトである。

「うおおおっ! 来たよ来た来た、待ってたぜ!」

 蛍汰の声が喜びに躍る。その目的がいかなるものであれ、かつてソムニウムは常に、蛍汰の危機に現れ、救いの主となったのだ。この時もまた、攻撃態勢にあるV2の楯となるかのように、カタフラクトは防御姿勢をとった。そこへ覇界ストレイトガオーと覇界スパイラルガオーによる高速回転ドリルが激突。覇界ストレイトガオーはカタフラクトの剛腕に阻まれたものの、もう一体はそのガードを突破して、頑強な胸板に激突する。だが、その時すでにV2は、両腕に合成した化学物質の充填を終えていた。

「うりゃああああああっ、シナプス弾撃イイイィィッ!」

 両腕から射出された二種類の液状物質は、カタフラクトの胸郭を貫きかけていたドリルに浴びせられた。次の瞬間、混合された物質は硬化して、ドリルの回転運動を阻害する!
 シナプス弾撃でドリルが固着されたと見たカタフラクトは、全身を捩るようにして、覇界ストレイトガオーを後方へ投げ飛ばす。ベターマンと覚醒人──十年前にも幾度か見せた無言の連携、それがいま再現されていた。

 

 ソムニウムのそんな戦いを、見つめる小さな影がある。いや、その影は、もはや何も見てはいない。氷原にうずくまるデウスの目は、うつろな硝子球のようになって、何も映してはいないのだ。無限に等しい時を生きてきたと伝えられる、伝説のソムニウム。その生命の火はいま燃えつきようとしている。小さな体の中央には大穴が空き、上半身と下半身は皮一枚でつながっているだけ。同胞であるラミアの、怒りを込めた一撃によるものだった。

(愚かだよ、キミたちは……ボクのような特異な固体たる変数値は一度喪われたら、もう二度と現れることはないだろうに……)

 おのが肉体にアニムスの実──それも時間移動を可能とするテンプスの実を宿す特異体質の持ち主は、嘲弄の笑みを浮かべた。

(これでもう、この時の流れにいるキミたちは、他の時間枝に逃れることはできない……滅ぶべき世界とともに、滅するしかないのさ……)

 そんな想いを浮かべながら、デウスは力尽きていく。その弱々しい意思が、リミピッドチャンネルで他者に伝わることも、もうない。だが、悔いはなかった。デウスはこれまで、世界の大樹に無数の干渉を加えてきた。時間枝のひとつひとつにおのが分身を残してきたと言ってよい。

(この固体の滅びは、そのひとつが喪われるというだけにすぎない──)

 伝説のソムニウム──そう呼ばれていた固体は、物質としての維持力を失い、全身が繊維化するとともに、極点の風雪によって塵として吹き崩されていった……。

 

 覇界の眷族と化したジェネシック・ギャレオン、ガジェットガオー、ブロウクンガオー、プロテクトガオー、ストレイトガオー、スパイラルガオー。
 これに立ち向かうのはガオガイガー、ガオガイゴー、ガオファイガー、ジェイダー、覚醒人V2、ベターマン・カタフラクト。
 六対六の戦いは、永遠に続くかとも思えた。ヒトとソムニウムの連携によって、相手に決定機を与えず、かといって勝利の鍵も見いだせない。南極の天と地に繰り広げられる眷族と勇者の戦いは、膠着状態に陥っていた。だが、果てしないその死闘にも、ついに転機が訪れる。

「見つけマシタ!」
「紗孔羅さんがいるのは……ストレイトガオーの胴体中央……おそらくコクピット部です!」

 スワンと猿頭寺が、覇界ストレイトガオーのエネルギー分布を模式図としてサブスクリーンに投映した。明らかに、他のジェネシックマシンよりも出力が高い。ベターマン・カタフラクトが覚醒人V2の楯となった時、スパイラルガオーを弾き返しつつも、ストレイトガオーの突貫を食らってしまった。それは紗孔羅の<勇気>なる想いを変換した力によって発生した、エネルギー総量の差によるものだったのだ。

「覇界王ジェネシックのいずこに彼女がいるのか、特定することは困難だった。だが、奴が分離してくれたことで、Gストーンがもっとも活性化しているのがどの機体か、解析できたのだ!」

 いつになく、楊の声も高揚している。ここまで苦闘を強いられてきた勇者たちが反撃に転じるきっかけを、メインオーダールームのスタッフの手で見つけだしたのだから。

「どうするんすか、阿嘉松のダンナ! あんたの気持ちを聴かせておくんなせえ!」

 山じいが必死に訴える。長官でも所長でも社長でもなく、もしかしたら出逢った頃に使っていたのかもしれない呼び方で、必死に訴える。
 長年の片腕のような存在だった男の言葉に、阿嘉松の涙腺が決壊した。滝のような涙をあふれさせつつ、正直な気持ちを言葉にする。

「うおおおっ、ちくしょう頼む! みんな……紗孔羅を、俺の紗孔羅を助け出してくれぇぇっ!」
『そのセリフが聞きたかったぜぇっ!』

 通信ウインドウの中で、真っ先に叫んだのは覚醒人V2にダイブしている蛍汰だ。

『俺なんか頼りねえけどさ、勇者王がこんだけ揃ってるんだ! ぜってー紗孔羅ちゃんを助け出してみせるぜ! 任せておけって!』

 いつになく頼もしげな、蛍汰の鼻息荒い表情。研究部オペレーターシートについていた火乃紀の胸に、甘酸っぱい感情が満たされる。

(ケーちゃん、はりきっちゃって…でも、素敵……)

 

 ヘッドダイバーの気合いが乗り移ったのか、覚醒人V2も全力を振り絞る。氷原を駆ける覇界ストレイトガオーに、V2が必死にしがみついた。両脚の巨大な爪でしっかりと。機体の全長は同程度だが、トリプルゼロに強化されたパワーは凄まじい。重しを加えられたことを苦にするでもなく、ドリル戦車は猛然と走り続ける。逆さ状態でひっついているV2は振り落とされないようにするだけで、精一杯だ。それでも、覇界ストレイトガオーの機動性を殺しているのは確かである。

「み、みんな! いまのうちに紗孔羅ちゃんを助け出してくれっ! 長くはもたねえよ!」

 蛍汰の必死の叫びに、仲間たちが応える。

「おう、いま行くぞ!」
「離すんじゃないよ!」

 凱とルネの声が重なった。ゴルディオンダブルハンマーをかまえたガオガイガーと、ジェイクオースを抱えたガオファイガーが、空中から急襲する。だが、それらに触れさせることなく、覇界ストレイトガオーは、鼻先のドリルを猛回転させると、それをそのまま氷原に叩きつけた。いや、地中に潜行したのである──覚醒人V2を引きずったまま。

「ふぎゃああああああっ!」

 通信回線に蛍汰の悲鳴が響く。地中を進む覇界ストレイトガオーにしがみついたV2の状態は、地上からもオービットベースからもわからない。両腕のプラズマソードをかまえたまま、ジェイダーも戸惑った。

「くっ、これでは捕捉できん!」

 他の覇界ジェネシックマシンの相手をしながらも、ガオガイガーとガオファイガー、そしてガオガイゴーもジェイダーもベターマン・カタフラクトも、氷原の広大な大地を見つめる。眼下の地中のいずこかに、覇界ストレイトガオーはいる。だが、氷と土の中を高速移動する覇界の眷族を見つけ出すのは、至難の業である。


「いいえ、位置なら特定できます!」

 メインオーダールームのメインスクリーンに光点が表示される。火乃紀の操作によるものだ。

「デュアルインパルスの反応を、図示しました! 蒼斧隊員は、このために無茶をしたんです!」

 自らをマーカーとするため、身を挺して、覇界ストレイトガオーにとりついたのだ……と、火乃紀が誇らしげな表情で告げる。本当かな……と首をかしげる者もいたかもしれないが、異論を口に出すことはない。移動する光点を追いかけるガオガイゴーから、護からの通信が飛び込む。

『華ちゃん、ディバイディングドライバーを!』
「わかった、了解! 長官、09でいきます!」

 言葉の後半は、阿嘉松に承認を求めたものだ。先ほど、豪快に涙を振り絞ったGGGブルー長官はうなずくのが精一杯で、承認の言葉が出ない。
 だが、幾多の戦いを切り抜けてきたスタッフの連携には、なんの問題もなかった。牛山末男が、南極上空の機動要塞完遂艦<ワダツミ>のミラーカタパルトをリモート起動させる。すかさず華が両の拳を握りあわせた。

「ディバイディングドライバー! キットナンバー09……イミッション!」

 コントロールパッドに両拳が叩きつけられると、ミラーコーティングされたハイパーツールは電磁加速で射出され、ガオガイゴーの左腕に装着された。

「ディバイディングドライバーッ!」

 戒道の操縦で、ハイパーツールが氷原に叩きつけられる。瞬間的に開放されたレプリションフィールドとアレスティングフィールドは、地中で相互作用を引き起こす。その結果、直径二十キロメートルほどの広大なディバイディングフィールドを形成した。
 フィールド内部の北側に、一瞬前までは地中潜行していたはずの覇界ストレイトガオーの姿が露出する。護の読み通りだった。そして、形成持続時間が短くても、フィールド半径が長大なキットを選んだ華の判断も、的確だったといえる。覇界ストレイトガオーの四脚は、虚しく宙を掻き、その場に激しく転倒した。

「み、見たか、これぞGGGの連携プレイだぜぇ~~」

 ふらふらになった覚醒人V2が力尽きたように、覇界ストレイトガオーから両脚爪を外し、その横に転がる。いくつかのパーツが破損して、脱落していることから、地中で受けた衝撃の凄まじさがうかがえた。
 しかし、覇界ストレイトガオーはすぐさま態勢を立て直し、またドリルを氷原に打ち付けようとする。だが、再度の潜行はかなわない。何者かの見えざる力が、土竜をその場に抑えつけている。

『ヒトよ……いまのうちだ』

 リミピッドチャンネルで、ラミアの意思がその場に流れる。覇界ストレイトガオーを抑え込んでいたのは、ポンドゥスが発生させた超重力である。ヒイラギが変身したポンドゥスは、ベターマン・カタフラクトの両脚となっている。だが、この時は合体を解かぬまま、オブジェ状に変形して、離れた位置から指向性重力波を覇界ストレイトガオーに放っていたのである。

「助かったぜ、ベターマン!」

 ガオガイガーが背部スラスターを全開にして、ディバイディングフィールド内に飛び込む。ゴルディオンダブルハンマーで機動力が落ちていようと、超重力で捉えられた覇界ストレイトガオーならば、逃すことはない。

「ハンマーヘルッ!」

 マーグハンドから引き抜いた光の釘をかまえるガオガイガー。目指すは、覇界ストレイトガオーの中央部だ。そこに紗孔羅がいることは、メインオーダールームによって、すでに特定されている。GGGの勇者たちとスタッフ、そしてソムニウム……生きとし生ける者たちの連携が、いま囚われた紗孔羅を救いだそうとしていた。
 その時──
 ガオガイガーよりも遅れて、その場に飛び込んできた影が、一気に追い抜いていった。その全身から放たれるオレンジ色のオーラ。トリプルゼロの衝撃波が、ガオガイガーをダブルハンマーごと弾き飛ばす。

「ぐわああっ!」

 影は覇界ストレイトガオーに向けて、強烈な蹴りを叩き込む。いや、それは攻撃ではなく、再合体だ!
 ガオガイガーを弾き飛ばした影の正体は、覇界ジェネシック・ガイガーだった。いや、その背中には覇界ガジェットガオー、両脇に覇界ブロウクンガオーと覇界プロテクトガオー、右脚には覇界スパイラルガオーが既に合体した姿である。覇界ストレイトガオーに接近した瞬間、そのドリル部がスライドして、開口部が覇界ジェネシック・ガイガーの左脚を呑み込む。
 瞬く間に、覇界王は再降臨を果たしていた──

『グオオオオ……ッ!』

 南極大陸の氷原に形成されたディバイディングフィールド、そこにふたたび覇界王が屹立する。体勢を立て直したガオガイガーが、その正面に着地した。

「くっ、自在にファイナルフュージョンできるのか……」

 凱が驚愕の声を漏らす。

『ヒトよ……力を結集せよ……』

 対照的に冷静な意思を返しつつ、ベターマン・カタフラクトが覇界王ジェネシックの後方に降り立った。続いて、ガオファイガーとジェイダー、覚醒人V2も周囲に並び立つ。

「わかってるよ、ラミア……僕たちは覇界王に抗い続ける。決して、あきらめたりはしない……!」

 護の声とともに、最後にガオガイゴーも着地する。一体の覇界王を取り囲む、六体の勇者王と仲間たち、そしてベターマン。
 凱とフュージョンせずとも、膨大なパワーと巧みな戦術に長けた、トリプルゼロの魔神である覇界王ジェネシック。しかし、今すぐに動じようとする気配はない。元より、意思のある存在とは言いがたいが、もし感情があったとしても、たじろいだりはしないだろう。たとえ一対六という数の差があっても、それほどに覇界王の力は強大だった。

 

「楊博士、例のアレは……」

 メインオーダールームで、獅子王雷牙が楊龍里に囁く。勝利の鍵として用意したものは、発動に時間がかかる。タイミングを緻密に図って、準備する必要があった。

「いつでもいけます」

 緊張しつつ、楊が答える。メインオーダールームにいるスタッフたちも、みな悟っていた。いよいよ覇界王との決戦が、最終局面を迎えようとしている、と。勝利するにせよ、敗北するにせよ、それは遠い未来のことではない。もうすぐその瞬間が訪れるのだと、誰もがそう感じていた。
 メインスクリーンに映し出される、六体の勇者による包囲網。だが、固唾を吞んでその光景を見守る一同を襲ったのは、物理的な衝撃だった。激しい轟音と震動。そして明らかに一定方向を志向する強烈な慣性。オービットベースになにかが起きていた。
 素早く情報を拾い集めたスワン・ホワイトが緊迫した声をあげる。

「ノー! オービットベースの軌道速度が急速低下していマス! このままでは、地上に墜落シマス!」

 その場にいた誰もが、予期しなかった事態に戦慄した。
 地上と宇宙──二つの場所で、同時に事態は最終局面を迎えようとしていたのだ。

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


次回10月30日更新予定


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