覇界王~ガオガイガー対ベターマン~【第66回】

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《前回までのあらすじ》

 十年前、全宇宙を救うために旅立ったガッツィ・ギャラクシー・ガードの勇者と隊員たちが、すべて帰還した! さらにベターマン軍団により二〇〇五年の過去から運ばれてきたギャレオンが初代ガオガイガーとなり、凱の新たな力として加わった。
 南極における激戦の末、トリプルゼロは次元ゲートの彼方へ消え去り、ジェネシックも解放された。
 長く続いた戦いは遂に終わったのだ……。
 そしてオービットベースは、祝福ムードに包まれる。獅子王凱と卯都木命、天海護と初野華の、合同結婚式の発表。そして護と華の間にはもうすぐ第一子が産まれるのだ。ベターマンによって、ギャレオンも元の時代に戻された。戦いの終わりと新たな未来への希望──だが、数奇なる運命の御伽噺ジュブナイルはまだ終わりを迎えてはいない。

FINAL of ALL 対-VERSUS- 西暦二〇一七年(2)


4

ラシャード・シンはインドに生まれ、成人後に渡米、アメリカGGGのスタッフとなった。現在は国連アルプス基地に勤務しているが、その“異変”に最初に気づいたのが、このラシャードである。
 彼の勤務地はアルプス山脈の北側に位置することから名付けられたのだが、そこはスイスやドイツの領内というわけではない。いずこの国にも属さない、人類共有の土地である。なぜなら、その山脈は地球ではなく月面に存在する、“もうひとつのアルプス”なのだ。
 かつて――
 二〇〇五年・原種大戦のさなか、この地に機界31原種が降り立った。それは、GGGオービットベースを襲撃した機界最強七原種のうち六体が、軍用艦を素体として合体した姿であった。GGGやキングジェイダーとの激戦の末に撃破された合体原種だったが、その際に月面の地形は大きく変化した。辺り一帯が巨大な更地となったのである。
 二〇〇九年になって、国連がこの更地にアルプス基地を建設したのは、<プロジェクトZ>の一環である。木星から採取してきたザ・パワーの貯蔵中継地として月面が選ばれたわけだが、二〇一〇年のインビジブルバーストによって、プロジェクトZは凍結。以後、木星を定点観測する基地として、少人数の駐留スタッフのみで運営されてきた。

「おい、あれはなんだ?」

 強化ガラスの向こうに、なにかを見つけたラシャードが、不審そうな声を出す。地球光に照らされた、静かな平原。そこに見慣れぬ輝きの、光点群を発見したのだ。夕焼け空のような、鮮やかなオレンジ色の光の群れ。数か月前まで、月の空までをも覆い尽くしていたオーラによく似た色合いである。

「覇界王の色に似てるな……」

 周囲のスタッフたちも、ラシャードが指す方向を見つめている。彼らとともに、目をこらしていたラシャードには、やがて事態が飲み込めてきた。

「似てるなんてものじゃない! あれは……!」

 国連アルプス基地のスタッフたちが遭遇した異変──それが、終わったと思われていた事態の残り火であるのか。それとも、新たなる業火の種火であるのか。この時点で判断し得る者はいなかった。

 

 時を同じくして、戒道幾巳はジェイアークの艦橋を訪れていた。南極決戦の損傷からも完全修復を果たした超弩級戦艦は、オービットベースの外部ハンガーにドッキングするスペースがなく、繋留用ボラードに有線固定され停泊している。
 1Gの重力が存在する艦内のありがたさ、戒道は手にした湯飲みで日本茶を飲んでいた。隣に並び立つソルダートJも同様である。サイボーグ戦士とはいえ、生体部分も多い以上、栄養も水分も摂取しなければならない。必要な要素を満たせればいいのだが、艦内の合成システムはアルマの味覚にあわせて調整されており、結果としてソルダートJも日本食につきあう機会が増えていた。

「……美味いな」
「ああ、美味しい」

 ソルダートJと戒道が玉露をすすって、同じ感想をもらした。オービットベースから提供された新茶をサンプリングして合成された、新メニューである。

「このような茶を飲める星……失われずにすんで、僥倖であったな」

 原種や遊星主、覇界の眷族による滅亡の危機に幾度も瀕した地球が、赤の星と同じ運命をたどらなかったことに、ソルダートJは率直な喜びを口にした。

「……なのに、行ってしまうのか?」

 戒道が寂しそうに問いかける。トモロがいれてくれた茶で中断されるまで、二人はこれからについて、話をしていたのだ。

「もう、この星からあらゆる脅威は去った。平和な星に、戦士の居場所はない」

 数分前と同じ言葉を、Jは繰り返した。決意は揺るがないようだ。

「僕は地球に残るよ。今までありがとう……J」

 戒道の言葉は、Jにとって予想外のものではなかった。三重連太陽系の生体兵器<アルマ>としてやってきた彼は、いまでは地球人の戒道幾巳となった。ここが帰る場所であり、守るべき場所であり、いつか年老いて永眠する場所となるだろう。

「またいつか、アルマと肩を並べ、ともに戦う日も来るだろう」

 肩を並べて休む日があってもいいんじゃないのか……そう考えたが、戒道が口にすることはなかった。鳥が飛ぶことを、魚が泳ぐことをやめられぬように、戦士は戦うことしかできないのだ。そういう意味では、やはり自分はもう戦士ではないのかもしれない。勇者の顔になったな……と言った再会した時のJの言葉が、戒道の胸のうちに蘇る。
 誇らしさと寂しさを同時に感じている青年に、戦士は語りかけた。

「アルマ、道は違えても……我らは永遠に仲間だ」
「J……」

 二人の間に、穏やかな空気が流れていた。
 だが、それは木っ端微塵に打ち砕かれた。刺激的な警報音が、あたかも新たな戦いの始まりを告げるゴングのように、ジェイアーク艦内に鳴り響いていた。

 

 その音はメインオーダールームにも響き渡る。GGGとジェイアークは、有線により互いの警戒網をリンクさせ、非常事態が発生した際には、ただちに情報を共有するシステムを構築していた。

「国連アルプス基地からの緊急警報、レベル5です!」
「……ああ! 警報が途絶しました。解除されたわけではありません! 通信、データリンク、すべてが断絶しました!」

 ラシャード観測員が目撃した異変は、ただちにGGGやジェイアークにも伝達されていた。だが、その詳細はわからない。観測基地として機能しているはずのセンサーやデータ網が、すべて沈黙しているのだ。スワンや火乃紀が告げる緊急事態に、大河特務長官はただちに指令を発した。

「諜報部は探査プローブを射出、現地の状況を把握せよ!」
「もう発進させています。あと百四十秒で、光学観測可能範囲に到達します」

 猿頭寺の素早い対処は、さすがベテラン……とGGGブルーの若き隊員たちを唸らせるものだった。阿嘉松も感心したように、アゴをなでる。

「うーん、さすがの貫禄だなぁ」

 だが、うちのオペレーターだって負けちゃいねえぞ……と、阿嘉松が胸を張ろうとした瞬間。

「ちょ、ちょちょちょ長官! こ、ここれ見てくださいっすわ!」

 声の裏返った古参のオペレーター山じいがメインスクリーンに、データを表示する。

「こ、国連アルプス基地から、超高密度のZ0シミラーが検出されています!」

 ちっとは落ち着け!と、部下を怒鳴りつけようとした阿嘉松だが、表示された状況の禍々しさに、顔色を失った。

「こ、こいつはいったい……」
「Z0シミラー、なおも増加中。このパターン分布は……」

 報告の途中で火乃紀が息を吞んだ瞬間、メインスクリーンがデータ表示からカメラ映像に切り替わった。

「データプローブからの望遠映像が入りました。投映します!」

 猿頭寺の操作で映し出されたのは、探査機から送られたオレンジ色の地獄絵図であった。月面の平原に建設された観測基地は、暁色のオーラを放つ異形に変わり果てている。いや、今も変貌しつつある。

「パターン分布……ゼロロボの大量発生時と一致しています……」

 再開された火乃紀の報告は、映し出された状況と、まさしく合致するものであった。国連アルプス基地はトリプルゼロに浸食され、ゼロロボを大量発生させているのだ!
 大河や阿嘉松の隣に立つ凱が、拳を強く握りしめていた。

「なぜこんなことに……もう覇界の眷族はいないはずなのに……」

 終わったはずの戦いが、また繰り広げられるのか。手に入れたはずの平和が、もう破られてしまうのか。凱の鋭い視線は、メインスクリーンに注がれている。映像のごく一点、望遠撮影であるため、小さな揺らぎにしか見えない、その影に──

「猿頭寺くん、あれはなんだ! 拡大処理はできないか!」

 同じく影に気づいた大河の指示で、猿頭寺が映像に補正処理をかけようとした瞬間──

「ダメです! データプローブ、破壊されました。何者かの攻撃です!」

 猿頭寺が悔しそうな声を出す。だが、途絶する直前、映像は映し出していた。国連アルプス基地に立つオレンジ色の影が、片腕を振り上げて、攻撃を放つ瞬間を。

(あれが……あいつが、覇界の眷族なのか──)

 凱の脳裏に、正体のわからぬ相手への敵意が燃え上がる。たとえ何者であろうと、ようやく訪れたかけがえのない時間を、踏みにじらせるわけにはいかない──

 

「クルヨ……クルヨ……」

 細く、今にも途切れそうな、か弱い声。だが、その声は不思議と、メインオーダールームに詰めている全員の耳目を引きつけた。メインシャフトから現れた紗孔羅は、自分の足で歩み、何も映していないノイズまみれのメインスクリーンを見つめながら、続く言葉を紡いだ。

「すべてを終わらせるために…キタヨ……青の星の覇界王──!」

 次の瞬間、整備部の牛山兄弟から緊急回線がつながる。

「大変です! メンテナンス中のガオーマシンと覚醒人が……!」

 サブスクリーンに投影されたのは、格納庫で黒煙が上がっている光景だった。

「ノー!」

 スワンが悲痛な声を上げる。

「おい、嘘だろ?」

 火麻が目を疑った。

「凱号が……!!」

 護が叫ぶ。

「ファントムガオーが……!」

 アルエットも叫んだ。

「V2も……!?」

 火乃紀も愕然とした。

「セカンドオーダールームの機動部隊は無事ですが、超AIのない機体は……」

 命が各所の確認をしながら報告する。

「ガオーマシンが全部……!?」

 凱が息を呑んだ。

「まさか……」

 阿嘉松の脳裏には、プリックルとタマラの顔が浮かんでいた。アルジャーノンを発症し、いまも隔離病棟で昏睡状態にあるはずの二人の顔が。

  

 単なる事故ではなかった。
 この緊急時に、覚醒人凱号、ファントムガオー、そしてそれらとファイナルフュージョン可能なすべてのガオーマシン、更には覚醒人V2までもが、Gリキッドやリンカ―ジェルに混入していた強撚物質によって内部爆発を引き起こし、機体に重大な損害を負ってしまったのだ。オービットベースが墜落の危機に陥った前例もあるため、アルジャーノンの発症者が、内部で破壊活動を行ったと推測するのが妥当な事件だ。現状、ガオガイゴー、ガオファイガー、覚醒人V2は、大規模な修復作業が必要となり、出撃は不可能であった。だが、それだけでない。同時に万能力作驚愕艦カナヤゴにも同じことが起き、カーペンターズ全機が起動不能状態に陥っていた。つまりは、何が壊れても短時間で修理を行うことすらままならない状況になったのだ。監視カメラやセンサーも切られ、すぐに犯人を特定することも叶わない。
 事態は急を要していた――

「……ビッグボルフォッグよりトモロ0117へ。GGG機動部隊及び諜報部各員、ジェイアーク甲板への固定を完了しました」

 GGG機動部隊に所属する翔超竜神、撃龍神、天竜神、星龍神、マイク・サウンダース13世。そして諜報部のビッグボルフォッグとビッグポルコートは、超鋼ケーブルによってその機体を、ジェイアークの甲板に固定していた。

「J、いつでも出航可能だ」

 メインコンピューターがしっかりと告げた。

「よし! ジェイアーク発進!!」

 艦橋でソルダートJが右手を振り上げると、超弩級戦艦はインパルスドライブをフル稼働させ、月へ向けて加速を開始した。常人では耐えられない急加速も、サイボーグ戦士と勇者ロボたちには、苦にならない。たちまち巨大戦艦が、オービットベースからも星屑のひとつにしか見えないサイズに、遠ざかっていった。

「ジェイアークに続いて、機動完遂要塞艦<ワダツミ>、諜報鏡面遊撃艦<ヤマツミ>、分離発進ッ!」

 阿嘉松の発令により、ディビジョン艦二隻がオービットベースから離岸していく。レプトントラベラー搭載艦とはいえ、最大加速はジェイアークにはかなわない。そのため、月面・国連アルプス基地へ、勇者ロボたちを連れての先行を依頼したのである。ワダツミ艦内に移動したブランチオーダールームで発進指揮を終えた阿嘉松は、ただちにその場を後にした……。

 

「こら遅いぞ滋!」
「うるせえ、長官職にゃやらなきゃなんねえ仕事が多いんだよ!」

 阿嘉松が実父である獅子王雷牙に怒鳴り返したのも、無理はない。国連アルプス基地の通信が途絶、高密度のZゼロシミラーが観測されたという事実が導き出す結論は、新たな覇界の眷族による浸食活動が始まったということだ。GGGとしては直ちに行動し、基地スタッフの救助に当たらねばならない。だが、この非常事態に大河特務長官と獅子王凱GGGグリーン長官は、ワダツミ主格納庫の方に詰めていて、阿嘉松が一人で指揮を執らねばならなかったのだ。
 主格納庫に隣接する制御室にようやくたどりついた阿嘉松を、招集をかけた大河特務長官がねぎらう。

「すまんな、阿嘉松長官。だがこういう時、長官が三人いるという体制は助かる」
「いや特務長官、それはいいとして、この非常事態にこのメンツ集めて、何か策でもあるんすか?」

 そう言って、阿嘉松は辺りを見回した。大河と凱、両長官の他に、獅子王雷牙、天海護、戒道幾巳、卯都木命、ルネ・カーディフ・獅子王、蒼斧蛍汰、彩火乃紀といった面々がこの場に集められている。

「プリックル参謀とタマラですが……」

 火乃紀が会話に割って入った。

「……隔離病棟から抜け出した形跡は、見受けられませんでした」
「…おう、そうか……俺のアルジャーノン見張り番26号も反応してねえから、とりあえずココに犯人はいないようだがな……」

 阿嘉松の重い表情に蛍汰がつっこむ。

「とかいって、発症した社長が自分で偽装したとかいうオチはナシっすよ」
「ばーろー! こんな時につまらねえ冗談かますんじゃねえ!」

 阿嘉松の怒鳴り声に、蛍汰は半ば安心したように縮こまる。

「さーせん……」
「いま、スワンの指揮で全員のアルジャーノン検査を実施中です」

 命が報告するが、表情は暗い。

「ただ…こんな状況ということもあって、まだ二十六パーセントは追い付いてないんですが……」

 その数字を聴いた蛍汰も、不安な目つきでボソボソとつぶやく。

「二十六…二十六…二十六パーセントかぁ……」

 そこで阿嘉松はあることに気づいた。

「さっきは楊の旦那も呼び出されてたようだが……」
「楊博士には僕ちゃんが頼んでることがあるんでな。野崎、犬吠崎、平田の三博士や整備部のみんなと共に、向こうで頑張ってもらっとる!」

 雷牙が指し示したのは、制御室の窓ガラス越しに見下ろせる、巨大な主格納庫の様子である。南極で回収されたジェネシックマシン──緑の星の大いなる遺産に、増員態勢で改修作業を進めているようだ。

「おおう、なぁるほど、今はガオガイゴーもガオファイガーもV2も使えねえ。青の星の覇界王とやらに、ジェネシック・ガオガイガーで立ち向かおうってわけだな!」

 得心したように、阿嘉松は両手をあわせて打ち鳴らした。だが、周囲の者たちの表情は暗い。一同を代表するように口を開いたのは、ジェネシックとフュージョンする立場にある凱だ。

「滋さん……実は大きな問題があるんです。ギャレオンやジェネシックマシンは、制御中枢に深刻なダメージを受けていて、起動できないんです」
「制御中枢ってのは、要するに勇者ロボでいえば、超AIだろ! マジかよ!?」
「他のみんなに比べて、ジェネシックはトリプルゼロに浸食されていた時間が、とてつもなく長かった……それが原因でもあると、雷牙おじさんや楊博士は推測しているそうです」
「なんてこった……」

 阿嘉松は呆然として、天を仰いだ。だが、すぐに雷牙の胸ぐらを締め上げる。

「おいクソじじい! どうにかなんねえのか、主戦力抜きで覇界王とやりあわなきゃなんねえぞ! いくらみんなが勇者でも無茶ぶりがすぎるってもんだぜ!」
「く、苦しい! ちょうど僕ちゃんが対策を説明しようとしてたところに、お前がやってきて、話が中断しとったんだ!」
「あるのか、対策……!」

 呆然とした阿嘉松が手を放つ。半ば持ち上げられ、つま先が床から離れかけていた雷牙は解放されるとすぐに、手袋に内蔵されたジェットを噴かし、宙を舞いながら猛然と説明を開始した。

「ジェネシックマシンの制御中枢は、三重連太陽系の高度なテクノロジーで構成されておる。今も彼らは、内部の自己修復と再構成を行っているとみて、間違いはない! しかるに…」
「彼らが人工的なニューラルネットワークを持ち、生命体の脳を擬似的に再現……いえ、むしろ遥かに高度な次元に達しているという推論は理解できます」

 雷牙の説明を、そう言って肯定したのは、生体医工学者でもある火乃紀だ。

「ですが、システムが高度であればあるほど、幾何級数的に必要とする時間は増えていくのではないでしょうか?」
「火乃紀くんの言う通り……それが数日で終わるものなのか、数か月か、はたまたそれ以上かかるのか、僕ちゃんにも皆目見当がつかん……」
「……ギャレオンはこのまま、目覚めないかもしれない……」

 そうつぶやいたのは、ギャレオンと深い縁で結ばれた護である。そんな神妙な顔を見ていられず、阿嘉松は護の両肩に手を置いて、励ましの言葉をかける。

「心配すんな、護。このキノコ雲頭のジジイは、こう見えても世界十大頭脳の一人だ。パパッと解決策を教えてくれるだろうぜ。たとえば、動かねえギャレオンやジェネシックマシンに一人ずつフュージョンして、制御中枢の代わりをさせるとかな、どうだぁ?」
「ほっほぉ~~! なんでわかったんだ!?」

 キノコ雲頭の雷牙が目を剥いて、両手を振り回した。

「なぬぅ? テキトーに言ったのが、ジャストミートだったのか?」
「せっかく劇的に盛り上げて発表しようと思っとったのに……」

 へそを曲げたような表情の雷牙に、凱が真剣な表情で問いかける。

「雷牙おじさん、ギャレオンはともかく、ジェネシックマシンにもフュージョンが……?」
「うむ、ここに集まってもらったことでわかるように……天海護くん、戒道幾巳くん、卯都木命くん、ルネ……そして蒼斧蛍汰くん、彩火乃紀くんなら可能ということだ」

 護と戒道、命、ルネは覚悟していた……という表情で、それぞれにうなずいた。いずれもGストーンやJジュエルの申し子であり、命はセミエヴォリュダーだ。自分たちにしかできないことがあると、それぞれに自覚はしていた。

「ふう…やっぱり私もなんですね……!」

 覚悟はしていたつもりでも、命は動揺を隠せずに深呼吸した。

「この中で一番丈夫なのは、サイボーグの私かもね」

 ルネは余裕の笑みを浮かべ、両手を開いておどけてみせる。だが、覚悟とも自覚とも無縁だった二人もいる。

「えええ~~! お、俺と火乃紀もっすか!」
「ヘッドダイバーではあっても、身体能力的に劣る私たちが……?」
「そうそう! デュアルカインドって言っても、脳神経が特別ってだけで、体は普通ですよ!」

 蛍汰の言葉に納得したような笑みを浮かべたのは、ニューロノイドの開発者でもある阿嘉松だ。

「ははーん、その脳神経が重要なんだな」

 我が意を得たりという表情で、隣の雷牙もうなずく。指摘されたら、本人たちは必死で否定するだろうが、こういう時、この親子の表情はとてもよく似たものになる。

「そういうこと! みんなにはジェネシックマシンにフュージョンして、再構築中の制御中枢との間にニューラルネットワークを構築してほしいんだな」
「たしかにそいつはデュアルカインドの得意技だなぁ」

 息をあわせたようにうなずいている雷牙と阿嘉松の前で、戒道が独り言をつぶやく。

「GストーンやJジュエルの無限情報サーキットで果たせるなら……Jにもできるということか……」
「うむ、その通りだ。まあ、彼にはキングジェイダーの戦力を十二分に発揮してもらう方が得策だがのぉ」
「あいつは戦士だから…な」

 ルネが少し反応した。その様子を見た戒道だったが、あえて別のことに触れる。

「Jは言っていた。蒼斧蛍汰という地球人も、立派な戦士だ…と」
「へ? 俺のことを……ソルJの旦那が?」

 その言葉に目を丸くしたのは、蛍汰当人だ。南極の戦いで肩を並べて戦ったJには、なにか感じ入るところがあったのだろう。

「いや~、そんな風に言われたら、俺燃えてきちゃうっすよ。なあ火乃紀、やったろうぜ。俺たちみたいな一般人でもできることがあるって、証明してやろうぜ!」
「うん……自信はないけど…やってみる……」
「君たちにはドリルモグラズにフュージョンしてもらうゾイ」

 雷牙の言葉にずっこける蛍汰。

「なんすか? モグラ…ズって?」
「スパイラルガオーと、ストレイトガオーのこと……?」
「あ、なるほど……」

 火乃紀の言葉に納得した蛍汰だが、内心ではいろいろと思いがよぎる。

(なはは、俺たちゃ合体ロボの脚がお似合いってことかな。でも、火乃紀とおそろいの左右のポジション、他の誰にも渡したくねえから、いっかな!)

 一同の決意に満ちた表情を見回してから、大河は壁面に設置されたコミュニケーターに語りかけた。

「楊博士、ジェネシックマシンの改修作業はどうですか?」

 窓ガラスの向こうでは、整備部員に指示を出しつつ、手を止めようともしない楊の姿が見える。口元のインカムを通じての返事が、コミュニケーターから出力されてきた。

「……まあまあ順調だ。レプトントラベラーの最大加速で、ワダツミが月に到着するまで、あと四十分。それまでには、すべての作業を終えないと……いや、終わらせてみせる」

 遠景の楊が右手の親指を立てている。周囲で、同じく作業に当たっている野崎、犬吠崎、平田の三博士や整備部員たちも同様だ。すべての戦いが終わったという空気に包まれていたGGGであったが、彼らはやはり人類精鋭のプロフェッショナル集団である。ひとたび有事が起きれば、即座に最適な行動をとる。それがGGG隊員としての矜恃だった。
 言葉以上に頼もしい、行動による返答を目の当たりにした大河は、制御室の一同を見回した。そして、重々しく告げる。

「……君たちには、正体のわからぬ覇界王と、いきなり戦ってもらわなければならない。だが、私は信じている。君たちなら、今度こそ最後であろう試練を乗り越えてくれると」

 護、戒道、ルネ、命、蛍汰、火乃紀……そして凱がうなずく。

「ジェネシック・ギャレオンには天海護! ガジェットガオーには戒道幾巳! ブロウクンガオーにはルネ・カーディフ・獅子王! プロテクトガオーには卯都木命! スパイラルガオーに蒼斧蛍汰! ストレイトガオーに彩火乃紀! そして、全体を統括するのは獅子王凱! これがファイナル・ガオガイガーのフュージョン要員だ!!」
「ファイナル・ガオガイガー!?」

 驚いた凱の言葉に、大河が答える。

「そうだ……三重連太陽系で蘇ったのは起源ジェネシックのガオガイガー、いま誕生するのはすべての戦いを終わらせる終局ファイナルのガオガイガー! それがこの機体に込めた我々の願いだ! そしてあれを見たまえ!」

 大河は主格納庫で改修されている、ガジェットガオーの翼を指さした。

「私はファイナル・ガオガイガーの翼に、このマークを刻むことにした。GGGギャザリングマークを!」

 それは特務長官となった大河の左腕につけられているバッジと同じマークだった。

 ガッツィー・ジオイド・ガード──
 ガッツィー・ギャラクシー・ガード──
 ガッツィー・グローバル・ガード──

 象られた三つのGが金と緑と青に輝いている、すべてのGGGを背負ったエムブレム──それがGGGギャザリングマーク!

「特務長官! 俺はこのエムブレムを背に、すべての戦いを終局に導きます。ここにいる仲間たちとともに!」
「ああ、頼むぞ……勇者!」

 大河が差し出した手を、凱が握った。そこに仲間たちの手が、次々と重ねられていく。
 護の手が──
 戒道の手が──
 命の手が──
 ルネの手が──
 蛍汰と火乃紀の手が──
 そして雷牙と阿嘉松の親子ががっしりと肩を組んだ。

(これだけの仲間が結集しているんだ……負けるわけがない!)

 心の中で、まだ見ぬ敵手に向けて、凱はつぶやいた。

 (覇界王…いや……相手がお前でも……!)

 まだ見ぬ敵──
 というわけではない。先刻、データプローブから転送されてきた映像を見ている時、凱は小さな光点の敵手、その姿を目撃している。理屈ではなく、直感によって凱は感じていた。その敵手もまた、凱の方を見つめ返していると。
 そう、両者はすでに互いを敵として、感じとっていたのだ……。

 

 恒星間空間を疾駆する超弩級戦艦の最大戦速は、ディビジョン艦の速度とは次元を異にする。地球の衛星軌道上から、月面への距離を数分で駆け抜けたジェイアークはいち早く、国連アルプス基地の上空に到達していた。

「……なんだあれは!」

 驚愕の叫びをあげたのは、甲板上にしがみついていた翔超竜神である。生身の人間なら耐えられない超加速も、頑強勇者ロボ軍団であれば、ものともしない。そんな勇者ロボたちを愕然とさせたのは、国連アルプス基地の変わり果てた様子であった。
 まるで業火に包まれているような、暁色の輝き。いや、真空の月面で炎が燃えることはない。それは基地を埋め尽くしたゼロロボたちが放つ、オーラの幻炎げんえんだ。

「基地のスタッフはいったいどこに!」

 生体反応を捉えようと、センサーをフル稼働させているのは、ビッグボルフォッグだ。だが、濃密なZ0シミラーとトリプルゼロのオーラに妨害され、探査は不可能である。一同がジェイアークから機体固定用ワイヤーを切り離し、調査を開始しようとした瞬間──

「勇者たちよ、緊急離脱だ!」

 ソルダートJの鋭い警告が響く。勇者たちがそれぞれにスラスター噴射で飛び退くと同時に、ジェイアークは分厚い艦底部装甲を基地の方へ向ける。その直後、飛来した高熱源体が炸裂した!

「超圧縮酸素弾感知!」

 ただちに警告を発したトモロが、装甲にジェネレイティングアーマーを起動させ迎撃態勢に転ずる。

「やはりな……奴ら流の挨拶といったところか」

 Jにも敵の正体が理解できていた。この程度の攻撃で、損傷を受けるようなジェイアークではないことを、敵も承知しているはずである。ソルダートJはオーラの向こうに立つ、超圧縮酸素弾を放った者の姿を見据える。
 ──すなわち、青の星の覇界王。
 終局のガオガイガーを待ち受ける最大最強最後の敵。暁色の幻炎をまといし、ベターマン・カタフラクトの姿を!

(つづく)


著・竹田裕一郎
監修・米たにヨシトモ


次回2月15日更新予定


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