【第19回】リバイバル連載:サンライズ創業30周年企画「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」

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その19「サンライズの細胞分裂第一号、そのナはボンズ」
ゲストは南 雅彦さん

 ヒット作[カウボーイビバップ]のプロデューサー南雅彦氏が社長を務める[株式会社ボンズ]を訪ねるため西武新宿線井荻の駅に降りた。この井荻は四半世紀も前に[サイボーグ009]の製作現場が置かれた場所であり、当時監督をしていた私にとっては懐かしい場所である。しかしその著しい変容にはいささか驚かされた。新宿線と環状8号線が交差する開かずの踏切が立体交差になったのは知っていたが、その他の変化にも激しいものがあり、ずいぶんと時が経ったのを思い知らされた。ボンズは009の現場とは反対の駅の北側を新宿に少し戻るところにあった。訪れたスタジオも新興のプロダクションではあるが、かってのサンライズ創業当時のスタジオに比べ数段広く綺麗なのにも時代を感じてしまう。南氏とはレイズナーで一緒に仕事をしたことがあり、むろん私とは顔なじみである。私はこの[ボンズ]は真の意味でのサンライズの細胞分裂第一号と言う捉え方をしておるのでありますが‥‥。インタビューはボンズ到着後ほどなく始まった。

“演出志望”だったけど“プロデュース”に興味が湧いた

高橋「この業界に入ったところから聞きたいんですが、学校から直ぐですか?」
南「そうですね。一応サンライズの入社試験受けて、保留だったんです。補欠。で、どうしようかなって東京に出てきて2ヶ月ぐらいバイトしてたらまたサンライズに呼ばれて入ったっていうか‥」
高橋「学校がそっち方面だった?」
南「学校は大阪芸大の映像計画学科で」
高橋「それでは、方向のうちの1つということ、ですよね」
南「そうですね。“演出志望”だったんです。で、初めて会った監督が神田(武幸)さん」
高橋「それ、作品的には?」
南「[バイファム]の終わり頃に入って」
高橋「バイファムの途中なんだ」
南「最後の方で、つぎに進行やったのは[ガラット]の2話。神田さんがいつも(スタジオの)裏口に靴を置いといてふっと見ると裏から出て‥(笑)」
高橋「神田さんの一番良い頃じゃなくて‥‥ちょっと疲れがでてきてるところかな(笑)。バイファムの最後ぐらいというとスタジオとしては一番盛り上がっている時かもしれないね。次の[ガラット]では少々息切れしてたように見えたけど」
南「ガラットはアミノ(テツロー)さんがチーフ演出って形でたってましたから」
高橋「最初は演出志望だったんだ」
南「2ヶ月で制作進行に変わったんです」
高橋「それは何で変わったんですか? 普通だと、制作から演出志望に変わるってあるけど‥‥」
南「多分ですね、上司でプロデューサーだった植田(益朗)さんが一番元気な頃だったんですね。で、植田さんが企画を自分で動かして芦田(豊雄)さんとか、美樹本(晴彦)さん、河森(正治)さんなどのその時期の若い人たちといろんな企画をやっていたんです。アニメーションの場合、多くのスタッフの中に入って1本作る場合“ディレクション”と“プロデュース”で比較すると“プロデュース”に興味がいったということが大きいですね」
高橋「植田プロデューサーの影響って大きかったんですね」
南「“いろんな”(大きめの声で‥)意味で大きかったです。良いところも悪いところも(笑)」

ボンズへの道その1

南「プロデューサーの植田さんと制作デスクの望月(真人)さんのペアですよね。植田さんてその頃からあんまりスタジオにいる感じじゃなくて、スタジオの方は望月さんが‥。給与形態でいうと、私が日本サンライズからサンライズになった時に正社員っていう形になって、“デスク”っていう辞令っていうの初めて貰った。デスクが係長待遇。で、縦の組織になってるんですよね。係長、課長、部長みたいになってるんで、デスクのプロフェッショナルっていうのは“これは課長止まりですよ”って。‥プロデューサーっていうのは営業的な部分、スタッフ管理とかそういう部分は“下の仕事”って位置づけてるっていう感じがあった。植田さんと何度か話をしたんですけど‥、本来なら植田さんは営業プロデューサーで、僕は制作プロデューサーやるから、という話をしていたの。作品を作るうえでの制作の部分、そこのところをどういうふうに会社の中で位置づけるかというのは作っても良かったのではないかと思ってます」
高橋「アニメーションで“デスク”やっていくって気力も体力も必要だけど、モチベーションもち続けるのが難しく、もてないと衰えがはげしいよね」
南「特にどんどん落ちていく方向でしたね。私が居た時は‥」
高橋「今でもそれは解決がついていないと思うけど」
南「今の若い人ははっきりしているんで、制作進行っていうのは下働きだと‥。デスクっていうのはプロデューサーへのステップアップのためにやらなければいけない仕事だという考え方でやっているのでは? そうなると、そこで本来やらなければいけないことが疎かになってくるっていうのを感じてはいました」
高橋「サンライズに都合何年居ました?」
南「都合15年です」
高橋「そんなに居たんだ。15年って結構な年月なんだよね」

南「そうですね。自分が29か30の時に[SDガンダム]で神田さんと一緒に[ガンダムF91]のおまけの方の[SDガンダム緊急出撃]を1本やってる時にプロデューサーっていう仕事も勉強させてもらって」
高橋「サンライズの印象っていうか自分で語るとどういうことになります?」
南「入社した時は、日本サンライズだったじゃないですか。サンライズになってからより日本サンライズってイメージが強いですね。日本サンライズとは契約でサンライズでは正社員だったんですけどね。ちょうど自分が入った時に一番下り坂だったような・・」
高橋「下り坂・・・・」
南「(笑)ガンダム景気が終わった後なんですよね。バス旅行が無くなった時なんです。話だけナベ(渡辺努:先輩の進行)さんから聞いていて『南、制作進行はつらいけど秋のバス旅行は楽しいぞ』って(笑)。バス旅行か‥楽しみだなあって思っていたら“今年から無し!”って年ですね」
高橋「実際に景気悪くなったのかなあ。そうでもないんじゃないかな。むしろ人数が多くなりすぎて旅行なんていっても収拾つかなくなったんじゃないのかな」
南「[ガラット][ガリアン]の頃なんですよ。4スタとかは他社の仕事を受けていたし、1スタが[ガリアン]ですよね。2スタが[エルガイム]」
高橋「お金はともかくちょっと作品的に目立ったヒットが無く意気が上がらない時だね」
南「ただ、やっぱりあの頃が面白かった。1スタから4スタまでしかなかったし。結構スタジオごとに個性的っていうか自分たちのスタジオは“これを作ってるぞ”みたいなプライド持ってやってた。制作進行も‥‥。[レイズナー]終わって[バツ&テリー]の劇場用を。1スタの[ダーティペア]が併映で、やっぱり張り合ってましたね。全然違う作品、原作もので片や青春野球漫画で片やどちらかというとサンライズのSFものでという全く毛色が違うんだけど初号の日を競ったり‥。同時上映だから同じに完成しなきゃならないのに(笑)。オールラッシュの時どれだけ色が付いてるかとかそういうスタジオ同士の張り合いってありましたね」
高橋「僕はもう現場が分からなくなってね。今はどうなんだろう? 現場の中ではそういう張り合いってあるのかしら」
南「どうなんでしょう。私、事業部制が嫌で辞めた人間なんで‥。上から仕事が降りてくるって感覚がどんどん強くなってきてる感じがして。入って来た人たちはそういう感覚で仕事やってるのかなあっていう。」

TVアニメを創っている制作としてくやしい事は‥(笑)

高橋「南君が入った時のサンライズの位置付けって他のプロダクションと比べてどうだったのかしら?」
南「自分は映画館とかでバイトしてて[ガンダム]とか[イデオン]とか松竹系のモノとか見てたんです。[イデオン]が大爆笑で‥」
高橋「爆笑なの?」
南「接触編と発動編。特に発動編ってイカレ具合というか、自分はカメラの方もやってたんで、すごい自由度があって、演出的にというか思考的な広がりがすごい強い気がしたんですよね」
高橋「サンライズの作品の中でも[イデオン]が一番特殊なんじゃない。ちょっと見た時にね、イッてると思ったね・・‥これは作ってる人が相当ハイになってるんだって(笑)。言ってみれば富野さんが一番テンション高い時だよね。回したばかりのコマっていうかさ、ギューンって唸ってると言うかね」
南「いろんな思考が飛び散っているみたいな感じで」
廣瀬「(笑)山浦さんも評価できないって言ってましたね。[イデオン]だけは‥って」
南「テレビシリーズも面白かったけどやっぱ発動編が‥。(昔は“打ち切り”って多かったじゃないですか[ガラット]も路線変更&打ち切りですから‥。[レイズナー]も途中で‥。)テレビでやりきれなかった分‥。[ガラット]はちょっと敵はやっぱリアルにしなければいけないんじゃないかって‥で、新しい敵はドリアル星人でわけわからない終わり方で‥(笑)。そういう途中で終わったものが、もやもやしたエネルギーが発動編で爆発した(笑)」

高橋「あの頃入ったナベシン(渡辺信一郎:監督)なんかは、僕は[イデオン]ですって言ってるもんね。今はどうか知らないけど、あの頃はそう言っていた。東映とかタツノコとかムービー(東京ムービー)とかはあまり目がいかなかった?」
南「東京ムービーは行かなかったですね(笑)。日アニ(日本アニメーション)受けたんですよ。日アニ受けて演出志望でいったら演出とってないからって言われて帰ってきた」
高橋「映像の中でも大雑把にいって実写とアニメがあるけど、“実写とアニメどっちにする”って言われたらどっちにいってた?」
南「実写の方ですね」
高橋「今はその志向は?」
南「いやあ、たまに8ミリ回して青春映画撮りたいなとか、個人的には思いますけど。今はやっぱアニメーションが面白いです。日本サンライズに入って仕事していく中で、やっぱ自分のなかで確実に映像に対するキャパ拡げてもらっているっていう感じはしていたんですよ。TVアニメをつくっている制作としてくやしい事は、東京ムービーの吉岡さんとシンエイの茂木さんと3人で飲みに行った時に、片や[名探偵コナン]、片や[クレヨンしんちゃん]。俺その時やってたのが[ヒヲウ戦記]‥」
高橋「圧倒的に向こうが有利だね(笑)」
南「店の人が、“あー知ってる”とか、“お店に来る前に見てる”というんですが‥あっちは‥、[ラーゼフォン]は、深夜にやってますって言っても‥(笑)」
浅井「[ビバップ]とかは?」
南「ビバップは全然知らないって」
高橋「ビバップ知ってるファンは逆に言うと、もっとガッと“ビバップですか!?!?”って(笑)うざったいぐらいににじり寄られてしまうでしょう」

ボンズへの道その2

高橋「ちょっと早めにサンライズ辞めた理由を聞きたいんだけれど、1番大きいのは事業部制?」
南「あの時、自分自身も疲れている部分があって事業部制自体もあんまり・・‥。反対していた方で、“頼むから独立部隊にしてくれ”って。“営業母体は事業部長がやる”と。“プロデューサーは制作部隊だ”という言われ方をして、“いや、それだったら嫌だ”って話をして。1人ずつ訊いてもらったんですよ。“南どう思う?”ってことだったんで、“あんまりよくないんじゃないですか”と‥。プロデューサー同士の競争っていうか、ライバル意識っていうのも逆になくなってくるし、モノを生み出す力はって感じはしてたんですね。5人、6人プロデューサーがいるとすれば、その中で自分が何をすべきかということを考えたし、海外へ持っていけるようなタイトルを意識して企画をやっていた矢先に“制作プロデューサーだけやれ”って。やっぱ、評価的には“南はスタッフを押さえてくれ”みたいな感じがあったんで、それでそのシステムでの制作を“続けていってもあんまり面白くないな‥”と。スタッフが大事な部分があったのと、一緒にやってきてるアニメーターが、当然フリーなんですけど、会社が当然面倒みるわけでもないし、別メディア、漫画とかにいく人もいるだろうけど、アニメーションの中に携わっていく人が今後どうしていくのかということは、ここまで大きくなったサンライズの中では考えづらいところがあったんで、“場所を作りたい”と」

高橋「うっすらと分かるんだけど、どういうことなのかな? 結局、事業部制が敷かれて現場プロデュースっていうと現場プロデュースに固定されちゃうってこと?」
南「幅が狭くなるということですね。カテゴリー分けされたじゃないですか。“バンダイ”“タカラ”って。それも、意味があるのかなあ‥?って、あんまり‥。で、サンライズといろいろ話し合ってきたんですが、[事業部制]が1年ぐらいして、富岡(サンライズ第1制作事業部長:当時)さんと一緒に吉井社長といろいろ話をしていた時、富岡さんがいきなり“南はやめるって言ってるんですよ”って言っちゃって‥(笑)。吉井さんはああいう人だから、じゃあ“やめろ”って‥。この2人で決まっちゃったみたいな(笑)。その言葉‥、俺が言うんだったらいいけど、“あんたが、なんで言うねん?”みたいな‥(笑)。そういう、ちょっと楽しい話が・・‥(笑)。で、独立するっていうことにしたんです(大爆笑!!)」
高橋「あの頃も今もあるんだけど、“分家するか”っていう話はよくあってね。じゃあ、サンライズの資本は入っているんですね」
南「入ってます」
高橋「この間、I.Gの石川(光久)さんと話をしていて南君の独立は年令的にはギリギリのところだと言ってましたが。やっぱり年令は感じる? 今だったら体力的にはキツイなあとか気力的にはキツイなあとか、やらなかったかもしれないなあとか」
南「結果論として、あの時で良かったって感じですね。今であれば、たぶん独立するのはむずかしいと思いますね。今、41なんですけど41だからっていうのではなくて、やっぱ考え方の部分と今のこの業界を取り巻く環境をみると、今だったら独立する意味を見出せるかと? 今、5年目に入ったところなんですけど、制作会社としてのスタッフが固まってきたんです」
高橋「サンライズの創業者たちも会社起こしたのは30そこそこなんですよね。だから、あの頃創業者って相当上のようにみえたけど、すごい若いんですよ。やっぱり、それぐらいの年令じゃないと、所詮は人間は生き物だから、体力が基本にあるからね。体力ないと気力湧いてこないものね」
南「独立した時に、岩崎さんは、“ああがんばれよ”みたいな‥。山浦さんにご挨拶した時、“一から苦労するよ。会社として体力つけるためにコツコツとやっていくんだよ”って言われて‥。今それをやってたら追いつかない(笑)。電話1本から始めたサンライズの話を延々聞かされました‥(笑)」

監督はフリーの方がいい!

高橋「モノを作る仲間はいるんだけど、会社を維持していく仲間っているんですか?」
南「役員は、逢坂浩司と川元利浩」
高橋「それは経営的にも?」
南「そうですね。制作管理に関しては自分だけです。サンライズにいた時の外の人たちに諸々相談とか支えてもらっているっていうのが大きいですね、バンダイの鵜之澤さんとかバンダイビジュアルの渡辺さんとか、ビクターエンタテインメントの佐々木さんとかが相談にのってくれますし。サンライズの時にお世話になった外部の人に支えられているという。おかげさまで業界は仕事だけはある時期じゃないですか。その中で、[ボンズ]のブランドとしてベストなものをどう適応していくかっていうところが一番なんで」
高橋「経営者3人のうちの2人が絵描きっていうのはサンライズとは全然違う。ここは非常に面白い。サンライズの経営陣には伝統的に絵描きや演出家はいないわけですよ。何故いないかっていうと、虫プロの崩壊を見てここが原因の一つだと言う判断があるわけですよ、つまり反面教師。きっと南君なんかはサンライズでやってて、逆にここが足りないからこの連中って、そういうことでしょう。だから、同じように反面教師って言えば反面教師なんだね」
南「監督はフリーの方がいい、はっきり言って(良輔さんへ(笑))」
高橋「サンライズは絵描き出身でないディレクターが多いけど、存外珍しいんですよ、これは」
南「多いですね。やっぱり、その伝統で若手ではナベシンとか赤根(和樹)とか」
高橋「杉島(邦久)、高松(信司)‥全部絵描きじゃないよね。描ける描けないはおいといて、表芸でアニメーションやっていたって人はいない。古いところで長浜さん、富野さん神田さんも違ってたから。そういうことでいうと、サンライズが一番絵描きじゃない監督を輩出しているんだ」
南「そうですね。アミノさんもそうです」

高橋「1人1人挙げていくとものすごく特徴的で、そうなる」
南「アニメーターの人と話をすると、ヤマト世代、ガンダム世代、アキラ世代・・‥、で次にくるのがエヴァ世代。アニメーターとか演出とか若い人の業界への入り方ってやっぱ作品が好きで、私らの時代からはそう入ってきてるんで、今活躍している人たちはアキラ世代中心で34、5歳で活躍してる。だから、レイアウト重視みたいなところあって、そうなると、絵コンテでどういうカメラレンズ、レイアウトカメラ位置が分かるんじゃないと描けないっていう話とかが出てくる。でもレイアウト先行、原図先行って一番最初にやりだしたのはレイズナーですよね(笑)」
高橋「そういう意味でやりだしたわけじゃないけどね」
南「背景が遅れちゃうから先に原図出してくれって(笑)。原図を先に上げて演出が原図チェックする。で、チェックができるとなると演出の欲がでてカメラ位置もうちょっと上げてとか・・‥」
高橋「たぶん、レイアウトに関していうと実質的には安彦さんがずいぶん前からレイアウトは見ていた。だけれど、それは表立ってレイアウト先行だとかレイアウト優先なんて言っていないから言葉として出てこない。きっと、アキラ世代からだと思うけれども、アニメーションの絵の魅力がどんどん増していったよね。絵的なクオリティを追って行くっていうか」
南「それこそ、I.Gの作品とかね。私としても大きく影響されてるなって気がしますね。ちょっと話が戻るんですけど、石川さんが“南ギリギリだった”っていうのはギリギリでなおかつ一番下っ端なんですよね。自分より歳下の人もいるけど、ジーベックの下地(志直)さんがたぶん今まで一番若手だったのかな? 下地さんから始まってマッドハウスの丸山さんとか先輩方がいるっていうのが私にとって仕事をする上で大きいかな」
高橋「プロデューサーの魅力と言うのは?」
廣瀬「会社から“この作品のプロデューサーをやりなさい”という指示で任される社員プロデューサーと“この作品作りたい”っていって資金集めやスタッフ集めするいわゆる個人プロデューサーって、全然違うと思うんですけど、どの辺りを目指してているのかっていうことと‥。ディレクターになることは“もう諦めたのか?”ってことも含めて訊きたいんですが‥」
南「今の気分としたら、[サンライズ]、[タック]からデスククラスの20代後半の人に来て貰って、この3、4年一緒にスタジオ作ってもらったところでいうと、制作プロデューサーから含めてプロデュースしていくことが今“面白いな”って思ってやってます。いろんな才能の出て来方が個人個人によって・・‥それが好きなんですよね。“絵が上手い”っていったらはっきりしますし、演出でも“ここ、こいつ面白いな”とか、フィルム見ると“面白いじゃないか”とか、コンテ見てもね。脚本も“ダイアローグ構成はいいもっていき方してる”とかそういうとこも含めて1本の作品になっていくのが好きなんでしょうね。自分が良輔さんみたいに1人でモノを1本作り上げるっていう力を持っているかっていうのはやったことはないんですけど、今はそっちの方が寧ろいい。でもやりたいって思ってるんですよ、実は“演出”」
高橋「でも、アニメーションってある程度キャリアがいっちゃうと、プロデューサーからディレクターって言う、そういう例が少ないよね。実写だとままあるけど余り成功例は聞かないね。言っとくけど、コンテ面倒くさいよー!!(笑)。真剣に描くと(一段と大きな声で)大変!!(笑)」
南「(やはり大きな声で)切りますよ!コンテも(笑)」

プロデューサー育ってくれれば
自分で監督やりたい‥

高橋「サンライズの事業部制がどうのこうの言う前に、今やってることは結局企画もしなきゃいけないし営業もしなくちゃいけないじゃない。現場だけやるとか企画だけやるとか営業だけやるっていうのは多少イビツであるっていう考えがあの頃はあった?」
南「そうですね」
高橋「そういうことだよね。作りたいものがあってそのためには企画があるでしょう。次は営業も手伝わなきゃいけないだろうと。そういうリスクも背負って作る段取りが出来たら、それを誰に作らせるっていった時には現場も知らなければいけないしって、そういうことが現場プロデューサーだとか縦の中に固定されちゃうのがイヤだと」
南「うん、まあ、この業界で仕事をしているかぎり、つまんないなと思ったんです」
高橋「これから[ボンズ]はどういう風に‥。だいたいの望みとしてはどうなります?」
南「あと2年ぐらいは体制つくるのに、もうちょっとかかるかなってあるんです。原作ものとオリジナル、当然うちの軸になっているオリジナルのものと2ラインを作っていける会社にしていこうとは思ってるんですけど。どういうジャンルを作っていきたいとかたまに訊かれるんですけど、それはないですと。手法とかも3Dにしていくとか特にないですけど、オリジナルであろうと原作であろうと映像ビジネスのところはキッチリ押さえていくというふうにはしたいです」
高橋「作品的な傾向というのは決めていない?」
南「決めてないですね」
高橋「サンライズも決めこんでやったんじゃないらしいんです」
南「気持ちはわかりますね。今、[ロボットもの]と[ファンタジィ]の仕事の話は多いですけど‥。例えばいまうちでやってる[ウルフズレイン]って作品なんですけど、成功・不成功おいておいて、他のプロダクションでは“絶対発想できず、作れないだろうこれ”って‥。それを成功させる為には(すごく純粋なところから出てきてる企画を)どうシリーズにしてどうヒット作に持っていけるか?ってプロデュースする感じなンですよ。来年の企画はどういうものになるのかいろいろやってるんですけど、新しい切り口の作品を制作する体制をつくっていきたいと。うちに来てくれた制作スタッフも数年後にはプロデューサーで、今自分がどう考えてプロデュースしていくか作品を創れる会社になっていくといいなと。そう育ってくれれば、やっと自分が監督やりたいですね(笑)」

高橋「最後になるけどハングリーっていうのはある? 自分が何か足りないとか、欲しいとか、あれ捕まえるんだ、とか言葉になり易いことは」
南「まだまだアニメーション作りたいですね。具体的に言うと映画もちゃんと作れてない会社なんで、まあ[エスカフローネ]とか[カウボーイビバップ]の劇場やりましたけど、あれはテレビの2ですから劇場映画として作ってはないと思うんで作っていきたいと」

 先週の[プロダクション I.G]の石川さんに続いて南君と言う新進のアニメーション製作者に会っての感想は“若いって良いことだなあ”と言うごくシンプルなものでした。南君と南君が率いる[ボンズ]と言うプロダクションの未来にどんな困難が潜んでいるかそれは誰にも分かりませんが、同時にどんな大きな成果が待ち受けているかも分かりません。いずれにしても“これから”と言う白紙の部分が多いというのが若さだと思います。落書きばかりしてしまい余白部分が見渡せるようになってしまった私としてはまったくうらやましい限りです。南君の大いなる健闘を祈ります

 

【予告】

写真は、おじいさんを囲んだ孫達と飲み屋で一家団欒の記念写真のようですが‥。“リョースケさんからみれば若手演出家”(若いようで若くない!)なる方々の5人のご登場でごわす!2回続けて「THE座談会」をお送りします。好評の連載も最終回まであとわずか!!‥乞うご期待!

 

※サンライズの創業30周年企画として2002年に連載された『アトムの遺伝子 ガンダムの夢』を期間限定でリバイバル掲載しています。

 


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