【第21回】リバイバル連載:サンライズ創業30周年企画「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」

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その21「今が旬です、この5人。」
ゲストは、加瀬充子・杉島邦久・高松信司・赤根和樹・渡辺信一郎さん

 集まってくれた諸君はさすがにみんな現役バリバリでありまして、それぞれに活躍の場を広げており、それだけに最近のサンライズ事情には多少疎くなっているようでありました。久方ぶりの再会はやはり昔話が楽しいもので、その方面に話が偏りがちなのは平にご容赦を・・・・・・。

ガムテープの新品もらうんなら
使い終わった芯の部分を持っていかないと駄目(笑)

赤根和樹「でも、今みたいに巨大化したサンライズだと、隣のスタジオで何してるかわからない」
加瀬充子「今そうだよね」
渡辺信一郎「今スタジオいくつあるの?」
高橋良輔「10スタまでは聞いてるけど、まだあるかもしれない」
赤根「昔だったら本社に鉛筆もらいにいったじゃないですか(笑)。ちびた鉛筆もっていって新しいのと・・」
高松信司「もっていかないと新しいものをくれない(笑)」
高橋「僕はそれ知らなくて、ガムテープの“新しいの貰うんなら前の芯持っていかないと駄目ですよ”って(笑)言われて」
加瀬「未だにやってるんですか? 結構昔からやってて、で、習慣づいちゃってて。他のスタジオに行った時に(笑)」
高橋「他の会社はどうなんだろう? そんなことないのかな」
加瀬「私が行ったところは制作が備品用の棚の“鍵”持ってましたね」
高橋「それまでは分かるけど、“芯を持っていったら交換してくれる”って、特許与えたいぐらいに凄い管理の知恵だと思うよね」
加瀬「数は絶対間違わないし」
高松「マジックが書けなくなると中のインクだけ入れてくれるんですよ(笑)」

高橋「いやね、サンライズって昔ホントに貧しかったからそういうこといっぱいあったわけだよ。でも進行さんが私用で『明日、車借りていいですか』っていうと、初代社長の岸本さんが『いいけど、ガソリン代は自分で払えよ』。同人誌なんかを会社のコピー機でやってると、横目で見てボソっと『紙代はちゃんと払えよ』・・とかさ、せこいような、切ないような、血が通っているような・・・・・・」
杉島久「そこまでの時代は知らないな、僕たちは」
赤根「俺達の時代はものすごく締め付けられてたよね。コピー何枚やったか全部ノートに書かなきゃいけない」
高橋「今は、そういう“芯と引き換え”みたいなことも生きているかと思うと逆に、コンテのコピーなんてもうダーッとできちゃうから、“あ、刷りすぎちゃった”とか言ってこのぐらいのコピーをドサっと捨てるみたいな・・。昔はいちいちチェックされてさ、部署によっては使い回しだものね。だからね、緩んでいるところはすごく緩んでいる。でもサンライズの根本は・・・・・・」
杉島「せこいところで生き延びているんですかね」
赤根「そのせこさがさ大事なんだ。アニメーションなんか儲からないんだから」

好き勝手な事言っても、なんとなく許されるような、
あんまり上下関係うるさくないみたいな感じはもうないんですかね?

渡辺「[アトムの遺伝子‥]のWEBで虫プロの話(編注:安彦良和さんの回)をちょっと見たんですけど、下っ端の奴等も平等に、作品に意見したりとかとか手塚治虫を悪く言ったりとかいうそういう気風があった、みたいなことが書いてあって、僕らのいたころのサンライズもまだそんな風だったような気がするんですけど。大体僕も入って1年目の時から好き勝手な事言ってたし(笑)。でも、なんとなく許されるような、あんまり上下関係うるさくないみたいな感じがあって。もう、そういう感じはないんですかね」

▲「ガサラキ」('98)

高橋「僕ね、さすがに現場が分からなくなってきてる。もう現場行ってないしね。[ガサラキ]で最後だし。ガサラキで言えば僕偉かったからね(笑)。監督だし飛びぬけて年上なんだからエライエライ(笑)。だから分からなくなっちゃうんだよ。自分の現場は自由があると思っても、それは僕が“お山の大将”みたいなものだから見えない部分がいっぱいあって、他のスタッフにとっては不自由なところもいっぱいあるんだろうっていうふうに、想像するんだよね。他のスタジオのことはちょっと分からないし・・」
渡辺「良輔さんに対して文句言ってくる制作進行とかはいない?」
高橋「いるいる、それはいる。[ガサラキ]の時にも、“文句は言うだけは言いました。でも、監督の貴方が言うんだから直します。だけどこれは貴方のミスですよ”って・・。ま、昔から僕の場合はそう言うことは一杯あった。それと、結構演出は自由にやってたよ、ガサラキは」
加瀬「演出はね(笑)」
赤根「反対に吃驚したのは、富野さんの[Zガンダム]の時にいつも制作現場はピーンと張りつめている状態だったのに、[ターンA]の時にスタジオに行ったら富野さんにタメ口きいてる進行がいて(笑)」
高松「私らの知ってる富野さんは、Zガンダムの富野さんで、こういう時の(なんか身振りから察するに物凄く、言うなれば異能発熱緊張体とでも言う感じか)富野さんだから・・」
赤根「あの緊張感っていうのは面白かったなあって。俺は進行だから、あんまりやってないからかもしんないけど」

▲「∀ガンダム」('99)

渡辺「スタジオによって違うのか、僕は良輔班だったから、そんな感じはなかったですね」
高橋「僕の場合は緊張感は駄目なんだよなあ。醸し出せないんだよ」
加瀬「あっちは痩せるよ(笑)」
高橋「僕ね、上下間の緊張感ってつくれたことない。年も身分の上下も関係ない対等のというか横位置の勝負の勝ち負けっていう緊張感は出せるんだけど。上下の緊張感っていうのは瞬間じゃないから、毎日の過ごし方だから無理だよ、僕には。上下の緊張感って、自分を常にちゃんと高いレベルにおいとかなきゃけないんだから。生産性でも内容でも立ち居振る舞いでもね。そんなの僕には無理、それはしないの。出来ないから(笑)」
杉島「作業一緒にやらせていただいて、僕は良輔さんにはまた富野さんとは違った怖さを感じて(笑)。確かにそういうとこは凄くくだけてらっしゃるんだけど、ものすごく“人を冷静に観てる”ところがあって、すごく怖かったですね(笑)。あっ、この人はそんなに言わないけど人のことすごい観察してる人だなあとか思って」
高橋「ハハハハ」

 富野さんと僕の違いは、富野さんが自分の持分で‥‥つまり自分の才能や知識や努力などで仕事を賄っていくタイプだとすれば、私は自分以外のスタッフの才能や知識や努力にかなりのところ寄りかかっていくタイプである。ま、どちらも特殊と言うわけでなくアニメの監督には普通に見かけられる。ただ、監督になりたての頃は『富野型』を志向し、年やら疲れやら才能の限界やらを知ると『高橋型』になる人は多い。あえて言うとすれば富野さんはいまだに『富野型』であり、私は最初から『高橋型』であると言うだけである。言うなれば2人とも“天然”‥ナチュラルと言うことですか。

全てのシステムがマニュアル通りに動けるような
長年の蓄積をサンライズは長年の間に作り上げてる

▲メインメカの設定画は足の裏から肩回りまでつくるのが常識・・

高橋「そうか・・。サンライズは多少はまだ他のスタジオと違うっていうのはあるんだね」
赤根「少なくとも外から見ると巨大なものに見えてますよね」
杉島「システムがやっぱりちゃんとできあがってるんですよね。他の会社で仕事してるとそういう制作のシステムみたいなのは確立されてない。特に設定に関してはサンライズはちょっと確立されすぎてるぐらい確立されてますね」
赤根「他へ行くと、『えっ、設定いないの!?』『??? 設定って?』みたいな。サンライズはアニメーションではホントにマンモス企業ですよ。もう[TOYOTA]って感じだよね(笑)」
杉島「ああ」
赤根「ホントに専門的な知識からそういう細かい設定まできちんと要求したものを作ってくれるっていうことは他のスタジオでは、まず、ありえない」
加瀬「私がこの間居た所はプロっていえるような制作進行がほんの一握り」
赤根「違うんですよ。システムがあるんですよ、サンライズっていうのは上から下まで。だから、もう全てのシステムがマニュアル通りに動けるような長年の蓄積があるんですよ。新人を上手くはめ込んでいくシステムをサンライズは長年の間に作り上げてる。それ以外のことやらないから、上のトップも迷わないですむというものあるかもしれない。他の会社は手探りでやってる」
高橋「それが逆にいうと閉塞感にも繋がってるわけだよね、システムの確立っていうことが」

“設定ありき”みたいになっちゃってるんじゃないかなあ
先ずドラマがありきじゃないですか。

▲宇宙を旅する13人の子供たちを描いた[銀河漂流バイファム]

杉島「こんなこと言っちゃうとあれなんですけど、システムが先にきちゃってる、先に“設定ありき”みたいになっちゃってるんじゃないかなあっていう気がするんですよ。普通アニメーションって先ずドラマがありきじゃないですか。“こういうドラマが”・・っていうのが大事なのに、なんだろう、設定とか、メカはこうでなくてはいけないとか、こういう社会情勢とか、メカをみせるためにこんな話をっていうのは・・・・順番が逆なんじゃないか?って・・。そういうところがちょっと最近あるんじゃないかっていう気がするんですよ・・」
高橋「ナベシンはサンライズ以外の仕事は?」
渡辺「いろいろやってます。それはいいんですけど、みんなはサンライズのシステムはきっちりしてるっていうんですけど、そんなにしてましたかね(笑)。極めて、僕の印象ではいい加減だったような・・(笑)」
赤根「植田さんとこにずっといたから(笑)」
高橋「キッチリしてるかしてないかって、ある部分では比較の問題だから」
渡辺「今のサンライズは、新人が入っても研修期間とかが半年ぐらいあるじゃないですか。僕らの時は確か、入っていきなり、右も左も分からないうちに一本持たされて、みたいな感じだったんですけど・・」
赤根「だから、歴史があるからそれを徐々にマニュアル化していって今があるわけですよ」
渡辺「『仕事なんて、やってりゃあ覚えるよ』とか言われて(笑)。」
赤根「だから、1人か2人しか残らないんですね」
渡辺「だから、片っ端からやめちゃって」
杉島「俺達が作ってきたんだけどね。最初の頃はなかったもんね。『ロボットの足の裏の設定くれ』って(笑)言われてさ。そんな・・(笑)」

サンライズのサをだしたら電話切られてたんです(笑)。
大変だわ、安いわで‥

高松「80年代まではあんまりなかった気がする。最近のような気がする、システムができたの」
赤根「やっぱ、それと一緒にサンライズってブランドも出来ちゃった感じがする。俺達の頃は、まだブランドじゃなかったじゃない」
渡辺「全然ブランドじゃなかったよ。今でこそ偉そうにしてるけど」
赤根「今はもう、サンライズってブランド」
渡辺「昔はサンライズっていったら、何か品質悪いみたいな(笑)イメージがずっとあったでしょう」
加瀬「言われてた」
赤根「サンライズのサをだしたら電話切られてたんです(笑)。大変だわ、安いわで・・」
渡辺「『ロボットが暴れてて大変なやつでしょう』みたいなこと言われて、動画お断りされるみたいな・・」

▲「ロボットが10台ぐらいガチャガチャと・・」
[機甲界ガリアン]登場のケンタウロス型ロボットは作画さん泣かせ・・

赤根「騙して動画撒いて(笑)。『そんなことないですから』って」
渡辺「そうそう。そんな嘘ばかりついてさ」
赤根「持って行くと1画面にロボットが10台ぐらいガチャガチャと(笑)」
渡辺「(笑)まあ、僕らが制作やってた頃までは、かなりいい加減だったと思うんですけど」
赤根「今、大企業ですよね。今、サンライズは」
高橋「まあ業績は年々上がっているらしいけど」
渡辺「大体、初任給がひとケタしかなかったんですよ(笑)。全然良い会社じゃなかったですね」
赤根「来月潰れるかもしれないとか言われたんだよね」
高松「ボーナスが今年はないとか」
加瀬「私が一番良いときにいたんだ」
渡辺「バブルがあったのって僕らの前の世代で、散々良い話聞かされて・・」

ガンダムバブルの時代はみんなこんな札束貰ったって本当なんですか?

高松「[聚楽]とか行ってるんですよね」
杉島「行ってないよ」
高松「行ってないんですか」
赤根「[ハトヤ]を借り切ったっていう伝説を聞きましたけど」
高松「私が入った年は大磯の[プリンス]で貸し切り状態でドンチャン騒ぎしまして・・」
高橋「大磯は確かに豊かだったよね。テニス班だとかゴルフ班だとか」
高松「みんな施設が使い放題で、テニスする人、釣りに行く人とか酔っぱらって温水プールで溺れながら泳いでいる人とか(笑)」
赤根「自分ら、全くそれ知らないじゃないですか」
渡辺「そんな景気のいい話は何処吹く風って・・。金がない、金がないとか言われてて(笑)、ボーナスは出ない。餅代しかもらえない(笑)」

高松「ガンダムバブルの時代はみんなこんな札束貰ったって本当なんですか?」
高橋「僕は知らない。その頃離れてたもの」
加瀬「1回だけ貰った」
赤根「進行車だってディーゼルでエアコンもついてなかったんだから(笑)」
杉島「その後も、またバブルがきたじゃん。俺、演出になっちゃってて(演出は基本的にフリーランスなのです)制作の古沢君が同期なんだけど、古沢君はボーナスで180万だか200万だか貰ったって(笑)。あー、しまった。俺、演出にならなきゃよかったって(笑)」
高橋「僕は一貫してただの演出のフリーだから、そういう恩恵にあずからなかったね。だから、記憶にないの」
加瀬「貰って、親にどうしようって。月々5万円ぐらいしかギャラ貰っていないときに、いきなりどうしたらいいんだろうかっていうのが1回だけあって」
赤根「そんなの1回もない。“進行じゃあ飢え死ぬな”って思ってたもんな」
高松「あの時ね、初任給が毎年下がっていった(笑)」
赤根「やっぱりなあ」
高松「進行同士で初任給の話をしてて、えっ、今年の新人5千円安いなって(笑)」
赤根「それも、3ヶ月は研修期間っていって1万円カットされた(笑)。で、3ヶ月経ったら上がるかなって思ったら上がらないんだよね。おかしいなと思って本社に電話したら、『えっ、そんなこと言った?』って(笑)」
高松「(笑)詐欺のような・・」
加瀬「可哀想に」

 みんなの話を聞いているとほんの数年の差でずいぶんと吸った空気が違うのが分かります。まあ、それだけサンライズの変化も大きかったと言うことになりますか‥‥。前々回のボンズの南氏の回で、南氏の先輩進行が『南、(毎日の作業は)つらいけど、バス旅行は楽しいぞ』と言ったというくだりがありましたが、あの言葉がここのところ妙に繰り返し蘇ってきます。その言葉を発した進行さんの人柄を知っていると言うこともありますが、胸がこうなんとも切なくなります。あのセリフの中にアニメつくりの楽しさの相当量が表現されているような気がするからです。もっと大げさに言えば人生の幸せなときというものがどんな瞬間なのかと言うことも含まれているような気がしてなりません。でも時はまた非情でもあり、同じ時間で留まると言うことがありません。

“いままでのサンライズと違うことをやりたい”
プロデューサーはみんな独立しちゃいましたよね

高橋「まあ、経営の話をしてもしょうがないと思うんだけど。ここから先のサンライズって大雑把に明るいのかね、暗いのかね」
赤根「これだけ権利があれば・・過去の遺産で」
高松「過去の遺産で(笑)」
渡辺「明るくないじゃん」
高松「タツノコしかり円谷プロしかり、食っていけると」
渡辺「でも、何か今までのサンライズと違う新しい事をやりたい、みたいなプロデューサーはみんな独立しちゃいましたよね」
高橋「それは、やれない状況っていうのがみえてきたのかしら」
渡辺「それは知らないんですけど、とりあえず革新系みたいな人はやめちゃって、そうじゃない保守系の人が今残ってるわけですよね。会社も大手になって、安定してるし。で、現場の若いスタッフは、わりと、まあ昔のガンダムみたいなのをやりたいとかそういう人が多いような感じがする。でも、昔のサンライズはそんなふうではなかったと思うんですけど。何かみんな勝手なことやってるし、システムもちゃんと出来てないけど(笑)、何か無茶しても許されるような雰囲気があったし・・」
高橋「明確にその雰囲気が薄れてきてる?」
渡辺「じゃないですかね」
杉島「分からないけど、どうなんだろう。ビバップブランドから作ったりとか・・そういうブランドでもう一丁みたいな話はないの?」
赤根「サンライズには明確にガンダムブランドがあるから、だから鬼っ子みたいなもんですね、俺が作ったのは。サンライズはキャパシティはあったですね。そういう無茶な変なものをやらせてくれるっていうところが。今はどうか分からないですけど」
高橋「僕はね、ホントは今でもあると思うんだよね。で、錯覚してると思うんだよ。無くなっちゃってるように全員が、中も外も」
赤根「だって資金力は猛烈にあるじゃないですか」
高橋「あるよ。しかも、新しいことをしなければいけないともみんな思ってるね。だけど、一歩踏み出すのは面倒くさいというだけであって。で、なにかやれば結果においては責任取らなきゃいけないでしょう。失敗してその責任を取るってことにまた幻想があるわけ。責任ったって自分のお金払うわけでもないし、失敗したって言ったって2年も眼をつぶってればね(笑)。放逐されるわけでもなければ永久に染みがつくわけでもない。実はたかが知れているんだ」

ガンダムみたいなものを作りたいっでいう気風からは新しいガンダムは出来ない

渡辺「ガンダムみたいなものを作りたいっていう気風からは新しいガンダムは出来ないですね」
高橋「これは、サンライズということだけじゃなくてアニメーション全体のことでもあるんだけど、宮崎(駿)さんを作りたいとか、富野さんのガンダムを作りたいとか自分のものっていうんじゃないところに入ってきちゃってるって思うんだよね。直近の模倣の時代っていうか‥‥。で、何か作るっていうのは、実は意識したってしなくたって模倣なんだよね。自分が見たものやその蓄積が、こっちの方からでてくるか、あっちの方からでてくるかの違いで。でも今目の前にあるものをそのまま作りたいというのとは違うと思うんだよね。で、今は目の前のものをそのまま作りたいと言う時代に入っちゃっているのかも、という危険を感じるね。嘘でも目の前のものを否定して、実は何かの模倣かもしれないんだけれども、さも自分が目指すのはこれですみたいな、山師のような詐欺師のような、いかがわしいエネルギー必要な気がする」
高松「サンライズ騙して‥‥」
高橋「そう、騙す。騙せるよ。騙されたがっているプロデューサーっていると思うよ」
杉島「巨大な企業になったけど、やっぱサンライズってまだまだ可能性はすごいありますよね。どなたかが叫んでいた“滅んでしまえ、商業アニメ”っていうのを(笑)大上段に掲げてやってるのがサンライズじゃないですか」
高橋「だったんだよね、前は」

二流の作り手なんだからロボットを中心に置かなかったら
モノだって創造できないし、商売だって成立しない

杉島「だから、そういう切り口って絶対あるわけで商業アニメのどこがいけないんだよって。ロボットさえだしときゃ何やったっていいんだろうっみたいな開き直りみたいなのが、まだまだ出てきたっていいと思うんですよ」
高橋「お杉は僕が“冷たい観察者”って言うけど、山浦さんはもっと冷たいのよ。ちょっと見が“着ぐるみのタヌキ”みたいだから暖かそうに見えるけど、僕らが我侭言ってロボットのことを云々言うと最後には『貴方達は二流の作り手なんだからロボットを中心に置かなかったらものだって創造できないし、商売だって成立しない』ってはっきり面と向って言うものね。今それを言う人がいないから逆に危険なんだよね。何でもいいですよって丸投げでしょう。ホントに何でもいいからって作れるほど俺達は才能あるかっていうところをもう一回検証してみないと、自分の何が武器で何が作りたいのか真剣に考えないと‥‥わからなくなっちゃうよね。今、わからないけど、仮にサンライズブランドというものがあるとすればそれを利用しないとしょうがないでしょう。お金はあるし、ナベシンは認めてないけどもしかしたらシステムも出来上がっているかもしれない。これ全部利用出来ることなんだよね。利用すべき気概と利用しての目的がはっきりすれば利用しがいはあると思うな。それに、サンライズは利用されたがっていると思うな」

サンライズの金なんかいっぱい使って会社潰してやるぜとか
そんな事ばっかり言ってたんですんですけど
でも、他所の人間にサンライズの悪口言われるとムッとするんですよ(笑)

渡辺「みんながサンライズを誉めてるのが意外だったんですけど」
高橋「意外かな」
赤根「外へ行ってみんな苦労するんだよ(笑)」
杉島「悪口ばっかり言ってた気がするんだが(笑)」
渡辺「やっぱ、いる時は悪口ばっかりで(笑)」
高橋「そうそうそう。わりあい、そういうとこが人間的だと思うんだよね。人間って中にいるとそういうもんなんだよね。自分の親父ってあんまり誉めないじゃない」
渡辺「それは、ちょっと分かりますね。サンライズに対してはなんか愛憎入り混じった感じがあって(笑)。だんだん会社も大きくなって、現場以外の場所にも、本社とかに、どんどん何をやってるか分からないような人が増えてきてさ。で、薄給で、連日酷い制作状況で作ってるわけですよ。そうすると、俺達はあんな連中を食わすために(笑)毎日徹夜してんじゃねえぜ、そんな金あったら現場の俺たちにくれ、とか吠えたりして。サンライズの金なんかいっぱい使って、会社潰してやるぜとか、そんな事ばっかり言ってたんですけど。でも、なんか他の会社行って、他所の人間にサンライズの悪口言われるとムッとするんですよ(笑)」
杉島「俺に言わせりゃ、それは贅沢だな。俺はここにホントにいていいのかどうか分からないような人で・・。僕だけ唯一サンライズブランド持ってない監督で(笑)」
高橋「サンライズで監督やってないってこと?」
杉島「ええ。僕はサンライズブランドがないので、この先とても心配なんですけど(笑)。サンライズ杉島、WHO?ですから、世間では(笑)」
高橋「お杉特有の理論だね(笑)」
赤根「好きだからこそ憎いってあるじゃないですか。やっぱり、サンライズに入ってきたからにはサンライズに憧れて入って来てる部分があって・・。でも、そこでやってきていろいろ思惑と違うところもあって」
高橋「一応ブランド生かすっていうのも、理性っていうかさ、戦略が結構必要になってくるよね。最終的にブランドを生かせるか生かせないかの要は忍耐だと思ってるんだけど‥。 今日はね出来レースふうにすれば、サンライズで育って、それから外も知ったけども、本当はね、サンライズ騙してでも仕掛けて、サンライズに逆襲をかけて、サンライズでものを作ることで一矢報いるぞというような話が出来れば一番記事にはし易かったんだけどさ」
加瀬「できないね(笑)」
高橋「えーやってよう!(笑)」

 と言うようなことで座談会はいつものように唐突に終わった。むろんこの後もう1軒お馴染みの店に流れたのは言うまでもないが、ま、とにもかくにもみんな元気でがんばっている様子がありありだったのが私としてはホントにうれしい。最後に皆さんに一言づつ。

加瀬ちゃんへ‥‥
育児しながらの演出稼業大変でしょうが、がんばってください。もう少しして旦那様にお子さんを預けられるようになったら、きっちり飲みましょう。

お杉へ‥‥
車をイタ車の[アルファロメオ]から独逸車の[ポルシェ]に替えたっていってたけど、どういう魂胆、私ら未だに英国車党よ。でも今度一回乗せて。

高松君へ‥‥
偏食は直らないんだろうねえ‥‥でも生来の人を楽しませるサービス精神は衰えていないと聞いています。いつまでもそのままでいてください。

赤根君へ‥‥
君だけが私と神田監督との仕事がないんだね、つまりは“虫プロの遺伝子”のまあ、その、劣性部分に触れていないわけです。これちょっと問題なんです。虫プロ菌と言ってもいいんですが、これを体内にもっていると不遇時代に強いんですよ。今度機会があったら感染してあげます。

ナベシンへ‥‥
うーん、僕と一緒にダイエットしましょう。

で、次週は‥‥。

 

【予告】

「お便りが減った」と書いたらかけ込みのお便りが舞い込んでます(哀笑)。でも終わるんです‥。残念です。終わらないような斬新なアイデアがあったらメール下さい。担当浅井まで(笑)。で、‥次回は、いよいよサンライズ代表取締役社長:吉井孝幸さんのご登場です。乞うご期待!

 

※サンライズの創業30周年企画として2002年に連載された『アトムの遺伝子 ガンダムの夢』を期間限定でリバイバル掲載しています。現在はお便りは募集しておりません。

 


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