【第03回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

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飛行機雲に誘われて……その3『アラスカ』

 縁は異なものというが、ほんとにそうであたしらがアラスカなんて地の果てに行ったのもその縁てやつである。ふた昔半ぐらい前『紺碧の艦隊』なんてビデオシリーズがあって関わった。その時の駆け出しプロデューサーとなんだか気が合って仕事も飲み食いもよくしたのだが、これがよく失恋する男で、いやあたしらからすると気立ても能力も見てくれもいい男なのになんでそんなに失恋するのかが分からなかったが、男と女とは見るところも価値観も違うから仕方がないかと思っていたのだが、それが失恋するたびに旅に出るん。それも決まって北に。なんであれ失意と北は相性がいいんでしょう。ばんたび東北を旅し北海道を彷徨っているうち、何度目かの失恋でアリューシャンを超えちまったんだそうで、気が付いたらユーコンをカヌーで一人で下ってたんだってえから、根っからのロマンチストなんだね。それで威力を発揮したのが縁は異なものってことで。詳しくは聞いていないが同じようにアラスカを彷徨っていた日本人娘と出会っちまって、あれよあれよの結果、あっちで暮らし始めちまったのである。間を飛ばしちまうが今ではアラスカも北極圏を縄張りにする唯一の日本人ツアーガイドの看板を二人で掲げているん。そんなこんなであたしらとしては何はともあれ行かざあなるめえとなったのが9年前かな、なんだかんだでこのかん都合7回アラスカ参りをしているという次第。よく聞かれるのが、

「なんでそんなに行くの? 何がいいの、あんな寒そうなとこ」
「うーん……」

 答えらしい答えにならないんだが、しいて言えば彼がいるからだろうね、まあ縁ってやつです。そこに彼が、河内牧栄っていうんですがね、何の因果かいるんですよ。

 アラスカというのはアメリカ合衆国の49番目の州で最北に位置し、しかも間にカナダが入る飛び地になっていて、広さはおよそ日本の四倍、人口は70万をほんの少しこすだけ。どこもかしこも野ッパラばっかまあスッカスカで“ラストフロンティア”なんて呼ばれているのもむべなるかな、なんてムダに難しい言い回しも出てしまうほど、ほんに何~にもないところである。
 州都はジュノーというのだけれど、一番大きな町はアンカレッジでおよそ人口30万、あたしらが棲んでいる埼玉の所沢とほぼ一緒だ。彼、河内牧栄が住んでいるのがアラスカ中央部の第二の都市フェアバンクスで人口3万人強、街の中央部から50キロほど離れた原生林の中のログハウスである。
 我々のアラスカの旅は彼の家からまさに文字通り一路(この道一本しかない)、ただ北極圏を車で800キロほど走り、北極海に突き当たりそして帰ってくるという、ばんたびそれだけの旅である。
 まあどれだけ何にもないか、とりあえず写真の数枚も見ていただこう。


『道はおおむね未舗装でパイプラインがひたすら並んで走っている。北極海に突き当たるまで見渡せる限り人工物はこの二つだけ』
『少し高いところから見ればこのような感じ、ひたすら並んで走るパイプラインとダートロード』
『左右に岩山が迫るとこんな表情である』

 どうです。何もないところでしょう。でもです、この空漠とした大地にとてつもない豊穣と魅力が潜んでいるのですよ。次回からそこのところをおいおいと……。

 


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