【第14回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

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飛行機雲に誘われて……その14

 前回に続き、千年の都チェコ。
 あたしらにとってチェコと言えばチャフラフスカ、というのは前述したが、もう一つイジー・トルンカがある。トルンカと言えば世界的なアニメーション作家。最初はセルアニメで出発したがその後人形アニメで名を成した。そのトルンカに師事したのが我らがアニメーション協会の第二代会長故『川本喜八郎』氏で彼はこのチェコで修業を積んだのである。
 そんなこんなのチェコであるが、今回のチェコ滞在にはドキュメンタリーの撮影班が同行した。むろんNHKの記念的作品であるところの手塚治虫原作の火の鳥の番宣の為である。その撮影班の演出の中に、

《チェコの国立美大生に手塚治虫の絵を見せてあたしらと意見交換をする》

 というのがあった。あたしらはそれを聞いたとたんいやな予感がして、

「やめた方がよくない」

 と提言した。訳は、相手はチェコ国立の美大生である。絵には一家言あるに決まっている。漫画の絵に肯定的とは限らない。もし期待するような意見が得られないとしたら厄介だなと思ったのだ。まあだがドキュメンタリー班には班の思惑がありプランは実行された。結果は案の定美大生の大方の反応は鈍いものだった。中にははっきりこの絵のどこがそんなに素晴らしいのかという意見を言うものもいた。誤算は火の鳥という漫画作品の魅力のうちの絵について強調してしまったことである。

(さあ困った。何とか挽回しなければ)

 と思いましたよ。でも急に火の鳥という作品のスケールやテーマ、その他の素晴らしさを理解させるには時間的にも無理がある。そこでもうここは脅すしかないと、

「この火の鳥というコミックはおよそ単行本にして15巻ぐらいあるんだけど…」

 と切り出した。もうここで、ホオー! とかヘエー! とかの声が漏れたのだが、追い打ちをかけるように、

「このオサム・テヅカはこのスケールのコミックをおよそ800タイトル創作しているんだよ」

 とブチかました。

「!? !? !? !?」

 一瞬何を言ってるんだ? という顔をしましたよ。むろん追い打ちを掛けてやった。

「学生の頃からプロとして活躍をし、60歳で亡くなるまで800タイトルのコミックを書き上げ、その上テレビのアニメーションシリーズも劇場アニメーションも数々作っているんだ」

 どうよ! である。

「うっそー!! 信じられなーい!?」

 である。彼らは一斉に持ち込んだコミックをパラパラやり始めた。で、

「ワアーオー!!!」

 である。……である。である。ばっかりだが、これホントの話であーる。
 素直な美大生たちの想像力にスタッフ一同面目を施し、街中へ出たのだが、さすがにトルンカの国、

▲街のいたるところにこんな人形劇の常打ち館がさりげなく点在する。この環境からあの素晴らしい作品群が生み出されているのだなとしみじみと思った。

 チェコはプラハだけで、その外には出なかったのだが、それでもさすがに千年の都――

▲カレル橋からプラハ城を望む。観光案内には世界最大の城とあるが、何をもって世界最大かは不明なれど、ま、ともかくも素晴らしい。

▲ヴルタバァ川に架かるカレル橋も楽しいところで、いたるところにパフォーマーが技を競っている。

 中でもあたしらが楽しんだのは旧市街広場だろうか。カラクリが楽しい天文時計台や、壮
麗なゴルツ・キンスキー宮殿、貫禄のティーン教会、広場中央のヤン・フス像等々見どころ
満載なのだが、それとは別に妙に記憶に残っているのがこの街全体を覆う石畳。

▲旧市街広場の一角なのだが、左下隅を見ていただきたい。積み上げてあるのは補修用の石畳用の石材である。

 プラハの街は石畳の街と言ってよい。石畳を守り通している。いたるところで常に補修工事が行われている。石畳はアスファルトと比べると人にも車両にも当たりが優しいとは言いかねるが、しかし風情は抜群である。プラハは石畳が代表するように、新しきに流れない流されない。いい意味で頑固な街と見受けられる。もちろん現代を呼吸しているモダーンな一角もちゃーんとあります。


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次回8月14日更新予定


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