【第23回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

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飛行機雲に誘われて……その23

 アラスカを書いているときりがない。まだ書きたいことがたくさんあるのだが、

「ほかにも行ってるところがあるでしょう」

 の言葉の言外の要求に従うことにして、とりあえず『カンボジア』です。
 通称カンボジアと呼ばれるこの国は正式には『カンボジア王国』という。つまり立憲君主制なのだ。王様がいるということではイギリスなどと同じだ。ちなみにイギリスは正式には『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』という。正式名にはスコットランドが入ってないがスコットランドも同じ連合内の国である、その他にもエリザベス女王を君主に戴く国は世界に多くある。ちゃんとした知識は無いがこういう国家群を"同君連合国"と呼ぶらしい。日本も天皇を戴く国だが、一般には"議会制民主主義"国家を名乗っている。まあ、あやふやな知識を振り回しては齟齬も生じるのでたいがいにしないといけない。
 で、カンボジアだが、ずっと行ってみたかったのだが行けたのはついこないだのことだ。カンボジアもベトナム戦争とは切っても切れない国で、このことに触れているとこれまたきりがない。例えば戦場カメラマンの『一ノ瀬泰造』だ。ベトナム戦争さなかの1973年、

「アンコールワットを撮る」

 といってカンボジアに入って消息不明に、後にクメール・ルージュに処刑されたと判明する。書籍にも映画にもなった『地雷を踏んだらサヨウナラ』は記憶に鮮明だ。しかしこの一世紀ほどのインドシナの歴史は複雑であたしら浅学の輩には手に負えない。でも一ノ瀬泰造の、

「アンコールワットを撮りたい」

 の言葉はずっと脳のどこかに棲み着いていて、

(いずれは…)

 と思っていた。最近やっとカンボジアという国名の次に続く言葉が"シアヌーク"とか"クメール・ルージュ"とか"ポルポト"よりもアンコールワットとかアンコールトムとかの観光誘致の言葉の方が多くなってきた。

(行ってみるかな、世界中の観光客に踏みしめられて地雷も大丈夫そうだし)

 という訳である。
 しかし本当に大丈夫か? カンボジアは世界でも一番の地雷埋設国らしい。まあとにかく観光路から外れて、フラフラ林や原っぱを歩かないことだろう。

▲カンボジアには犬が多い。しかも気楽そうだ。犬くらいの体重では地雷は作動しないのかな。

 

▲どこやらの昔の作品にこんな美術が頻出していたような…ヌケヌケとよくまあであります。

 


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