【第27回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

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飛行機雲に誘われて……その27

 気象条件が良ければ日本から肉眼で見える外国がある。その一つが台湾だ。あたしらが生まれて初めて外国に行ったのがこの台湾と香港だった。もう記憶が薄れ正確な月日を書くことができないがたぶん1968年ではなかったかと思う。船で行った。北の端の基隆港に着きそこから鉄道で台北市に入った。驚きました。台北は中華民国の首都と聞いていたのに、直下の印象は、

「北千住じゃん!?」

 と言うものでした。北千住と言っても今の北千住ではありません、1968年の北千住ですぞ! もう本当のところ、

(しょっぼっ!)

 と思いましたねえ。あれから五十年、世界も変わりましたが台北もすっかり様変わり、ちょっと見てくださいこれが今の台北の地下鉄です。

▲綺麗でしょう! おまけに路線の詳細が分かりやすく便利、なおかつ安い。

 

 およそ台北市内であればどこへもストレスなしで行けます。まあこれも昔話になりますが、あたしらが公共交通機関内で席を譲られたのが中国の北京の地下鉄だった。目の前に座っていた女子学生とおぼしき乙女がチラチラとあたしらの顔を盗み見ている。はて何だろう? 顔になんかついているかなと思ったのだが、あにはからんや思い切ったように立ち上がり、

「どうぞ」

 と席を譲られた。もちろん日本語ではありませんよ。

(あれま、お爺ちゃんかよ!)

 と初めてのことで驚きましたが、ここでモジモジしないのがあたしらのいいところ、

「シエイシエイ」

 とありがたく席を頂戴した。あれから十六年、最近は日本でも年に4、5回はそんなことがある。さてお立合い! 日本では年に4、5回でありますがぁ、これが台北の地下鉄に乗っておるとです、まず立っていたくても立ってはおれません。目の前の少年青年壮年が男女にかかわらず、さっと席を立って、

「どうぞ」

 ときます。儒教思想が骨身に入っております。そんなこんなで台北の移動は地下鉄が快適。
 台湾とは観光の前にあたしらにとっては仕事の仲間としての歴史も長い。動画仕上げ共に本当に長い。あたしらにとって掛け替えのない盟友だった『塩山紀生』も一時台湾に駐在していた。確かダグラムの作画監督がなかなか決まらず困り果てていた時プロデューサーでサンライズ役員だった岩崎正美氏が、さもとっておきという口ぶりで、

「いい人がいるんだけどね……今台湾に行ってもらっているんだ。台湾の仕事もあの人がいなくなるとなあ……」

 ともったいをつけた。

「何を言ってるのっ! そもそもこのダグラムって仕事はあたしらの言うことを何でも聞くって言うから引き受けたんじゃないっ!」

 あたしらの剣幕に押されたか、プロデューサーもその他諸々に条件を付ける含みがあったのか、もう細かいことは忘れたが、塩山さんを台湾から引き揚げてきてくれた。それが二人の出会い。以来シオさんとの酒のうちに台湾の良き思い出を多く聞いた。それもこれも今や昔……。
 台北観光を紹介すればキリがない。で、あたしらの選りすぐりを2つ3つ……。
 まずはぁ、やっぱり食いしん坊のあたしらとしては『士林夜市(スーリンイエスー)』かな。まあ夜市というくらいだから行くのは夜です。地下鉄降りたらいきなり楽しいですから、もう"安い!""美味い!""クサイ!"の三所攻め、クサイはよけいか。でも食べ物屋があれだけひしめいていれば匂いが密なるはいたしかたない。ここの楽しさは行って人波にもまれてみなければ分からないと思うのでこれ以上はクドクド語りませんが、この中にあたしらにとっては懐かしくて涙ものの光景が、

▲映画館です。あたしらの少年時代は映画が娯楽の王様。町内には必ず3軒から四軒の映画館があった。それがドンピシャこんな感じ、いやー懐かしかったあ。

 

 さてもう一つ、お土産を買うならここと教えられて行った『抽化街(ディーホアジエ)』。ここは本来問屋街だからなんでも安い。あらゆる乾物類、海のもの山のもの畑のものぜーんぶ安い。あたしらの狙いは日本では三大珍味の一つと言われ酒のつまみに最高の"カラスミ"。ボラの卵巣を塩漬けにし圧縮乾燥させたもので、日本ではメチャ高い。この店のものが特に良いと言うので探し探し探しやっと探し当てゲット。ところがお店の人の言うことにゃホレ言うことにゃ、

「これは上物よおー! ニッポン製だからねぇー」

 って、ええーっ! よく聞いてみるとカラスミのほとんどは日本からの輸入品なんだそう。聞いてないよーっ! の一幕はあったのですが、まあそんなこんなも旅の味、ということで。しかしそこここに古い建物も残っている風情ある街並みなで、疲れたらこんなシャレたカフェもあり、買い物に散策にはもってこいであるんであります。

▲カフェの窓から見えるのは表通り、この通りの左右に無数の問屋が軒を並べる。

 

 おまけでもう一つ。『龍山寺(ロンシャンスー)』という台北で一番古いお寺。あたりの賑わいは日本で言えば浅草ってところでしょうか。祀られているのは観音様お釈迦様現地の媽祖様、受験の願い美容の願いお金儲けの願いも一つおまけに縁結び、となんでもござれのその大らかなこと。あたしらも何か一つ願いをと境内に入ってみたら、

「あら懐かしやアトム君」

 ということで、日本アニメ界のいやますますの発展をば祈願いたしました。

▲あれれ龍山寺の全景を現す写真がない、で仕方なくこれです。賑わいを偲んでください。

 

▲あたしらには今でもアトムが一番。

 

 実を言うと台北は『故宮博物館』をはじめとして名所旧跡目白押し、見てよく食べてよく歩いてさらに良し! 人が優しいし、癒されますよおー。

▲台北名物『タイペイ101』やっぱり中華文化なのですね高層ビルも竹を象っています。

 

 追伸
 実は文中の『抽化街』の抽は―――手偏でなくしんにゅうなのです。字が出ません。探してみていただけませんか。お願いします。

 


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