【第36回】高橋良輔監督旅行記「飛行機雲に誘われて」

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飛行機雲に誘われて……その36

 兵馬俑を見れば、むろん圧倒される。

「なんとまあ! まあ、まあ、まあ……まあ…」

 ちゃんとした言葉にならない。とにかく驚く、驚きそのものだ。
 現在1号抗2号抗3号抗と発掘が進みおよそ8000体の俑が立ち並んでいる。目の前に立つ俑全てに色は無い、茶褐色の土の色が剥き出しだ。だがかつての俑はその強壮な肉体の肌色も生き生きと、また衣服もその上の鎧も色鮮やかに着色されていたそうなのである。なおかつである。俑一体一体は現在手ぶらだが、実は一体一体全てが手に何かを持っていたのである。刀、矛、斧、弓、旗、幟、手綱――そう手綱、兵馬俑と言うからには馬もむろんある。騎馬だけでなく戦車もあった。だが現在の俑達の手には一物も無い。つまり付属物は破損欠損してしまったのだ、残念だが修復はそこまで追いついていない。

▲このように馬も発掘されている。

▲発掘されたそのままの兵馬俑はこのようにある。放っておけば土にかえるだろう。

▲バラバラになった一体一体をこのように修復している。

▲修復された兵士は隊列に戻される。兵士の右手を見て欲しい。全ての兵士が何かを持っていた形跡があるだろう。それは剣か矛か弓か?

▲この細身の兵士の両手は前に差し出されている何をしているのか? どうやら彼は戦車の御者らしい。つまり持っていたのは手綱という訳だ。馬を操る者は太っていてはいけない。

▲この兵士の手には何があったか? どうやら水平に構えられた弩であるらしい、つまり石弓。

▲ガイドの説明によれば隠れた手のひらには掌紋が刻まれているという。つまりは徹底したリアリズム。

▲この兵士も実は縦弓を構えていた。痩せているうえに鎧を身に着けていないのが分かるだろう。つまりは下級兵士で前面に押し出されて死傷率が高かったということである。

 先にも書いたが現在8000体が修復を終え立ち並んでいるが、これで全部とは言い切れないらしいのである。この後4号抗5号抗の発見がないとは言い切れなく、いやむしろあたしらとしては在るという方の可能性を楽しみたい。というのも、発見された直後の兵馬俑の幾つかは制作当時の色彩を保っていたものがあったというのである(現実にその折の色鮮やかな数葉の写真がある)。しかし外気に当たったその瞬間からみるみる退色を始めたらしいのだ、あわてて発掘者が埋め戻したというが時すでに遅しであった。
 何らかの科学的な方法で地下に眠る大軍団が手付かずで発見され、その色鮮やかな姿をコーティングし退色を防いでから発掘されたとしたら!? いやあーその壮観!

「見たい! ぜーったい見たい!」

 と思わず声に出さざるを得ない。

 


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