【SS04】オリオンレイン 薔薇の小部屋
2018年3月ホワイトデーその2「雪也/みんな大好き」
『Happy White’s Day for You』
雪也は騎士の間で黙々とカードを書いている。
「マメだよなあ」
ソファに寝転んでそれを見ていた遠矢が感心して呟いた。
「だって、直接届けには行けないからねー」
それはそうだろう。
3年前や4年前の同級生が当時と同じ姿で現れたら、相手も驚く。
だから、雪也からのお返しは郵送と決まっている。
「今の学校の友達くらい、手渡しでもいいんじゃね?」
「そしたら会える子と会えない子と、差が出ちゃうでしょ。ボクはみんな大好きだから、差が出来るのは駄目――あっ」
話しながらペンを走らせていた雪也が天を仰いだ。
「遠矢が話しかけるから綴り間違えちゃったよー」
「へーへー」
遠矢は適当に相槌を入れて、手元の雑誌に視線を戻した。
雪也は何もない空間に手を閃かせる。
銀の薔薇の意匠が施された、真新しい綺麗なカードが数枚、テーブルの上に現れた。
「印刷済みのカードを出してもらえばいいんじゃね?」
「せめて手書きにするのが誠意でしょ」
雪也には雪也なりの理屈があるらしい。
キラキラと輝く新しいカードを前に、けれど雪也の手は止まったままだ。
「double-upしたら年相応なんだけどなあ」
「オリオンだってバレるだろ」
「永遠の少年の代理です……とか」
雪也が珍しく食い下がるので、遠矢は少し心配になる。
「お前それ、とこまで本気で言ってる?」
「もちろん、全部冗談だよー」
茶化すように言うと、雪也は鼻歌交じりに作業を再開した。
「バレンタインやホワイトデーは、気持ちを届ける魔法だからー」
弾みをつけて呟く雪也の前に、飴を入れた籠が出現する。
「ボクの【大好き】が伝われば、それでいいと思うんだー」
彼は歌うのをやめると、書き上げたばかりのカードを1枚、籠の上に置いて微笑んだ。
「いつもありがとう。君のことも、大好きだよ」
著者:司月透
イラスト:伊咲ウタ
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