【第9回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

← 前作品ページ次 →


『僕の知ってた同級生たち』

 

「いやぁ~~、またまたお手柄だったね。君たち地球防衛組の活躍には、本当に感謝しているよ。だが一つだけ言わせてもらいたいことがある」

 防衛隊の武田長官は、自慢の髭を撫でながら、僕たちに言った。

「もっとわれわれ防衛隊との連携を密にとってくれないか。今回の出動に関しても、われわれの方にもっと早く情報を送ってくれていれば、われわれとしても迅速な行動を取ることができたんだ。そうすれば君たちを危険な目にあわせるようなことは、きっとなかったはずだ」

 そう話す武田長官の後ろには、ずらりと制服を着た防衛隊の隊員たちが整列している。
 この人がかなり偉い人なのだということが、それだけでもわかる。
 ここは陽昇町の中心部にある、防衛隊の邪悪獣対策本部だ。
 警察署の建物の一部に、大きく『邪悪獣対策本部』との看板がかけられている。
 僕たちは、その建物の中で、長官の話を聞かされていた。
 高森ひろしが、少し困った顔をして言った。

「連絡はちゃんとしておいたはずです。陽昇公園付近に邪悪獣が逃げこんだことは、そちらの方も把握していたはずでしょ。でも僕たちが公園に到着した時には、まだ誰もいませんでたよ。それは、そちらの防衛隊の落ち度じゃないんですか?」

 さすが高森委員長。しっかりしている。
 委員長の指摘に、偉い長官もたじたじだ。

「そ、それは……」
「むしろ僕たちは、大人である防衛隊のみなさんの方にこそ、迅速な行動を取ることができない問題点があるんだと思いますよ。めんどくさい手続きとか、なんとかいろいろあるから、いつも出動が遅れてしまうんじゃないですか」

 武田長官の顔色が、みるみる紅潮していくのがわかった。
 おいおい大人の偉い人にむかって、言い過ぎじゃないか、高森くん……
 僕はハラハラしながらも、委員長のスカッとした言葉に心の中で拍手をした。
 委員長はいたって冷静で微笑みすら浮かべている。

「邪悪獣ワスレンダーのことは、防衛隊におまかせします。あとのことはよろしくお願いします」

 僕たちは、委員長の言葉に続いた。

「お願いしまーす!」
「わ、わかった。あとのことは、まかせなさい。邪悪獣は、われわれの方で詳しく分析させてもらう。これが、われわれの世界を脅かしている敵との戦いの大いなる一歩になることだろう」

 また武田長官が長い演説を始めそうだったのを、ヨッパーがズバッとさえぎった。

「おれたち帰っていいよね、長官」

 ナイスタイミング。
 空気を読まないヨッパーの性格が、こういうときには役にたつ。
 無神経と呼ばれることがあるかもしれないが、ヨッパー、僕はきみの子供っぽくて自由なところを断然支持するぞ。
 僕はまた心の中で拍手した。

「も、もちろんだ。帰ってくれたまえ。おい、おまえたち、地球防衛組の生徒さんたちを、お見送りしなさい」

 と、長官が部下たちに指示を出したけど、高森委員長はそれを丁重に断ったのだった。
 僕はその様子をみながら、自分が五年生の時のことを思い出していた。(今は、外見はその五年生そのものなんだけど)
 そうだ、みんなこんな感じだった……それぞれ個性があって、のびのびしていて、僕たちは間違いなく五年三組にいた小学生だったのだ。
 勉、ヨッパー、高森、大介、あきら、吼児……
 僕の記憶の中にある小学時代のクラスメイトたち。
 ここにいるのは彼らに間違いない。
 ただその中に、日向仁の記憶だけが、ぽっかりと抜け落ちている。
 いったい、どうしてなんだろう……
 またその疑問が、僕の頭のなかをグルグルと駆けめぐりはじめていた。

 

 邪悪獣を防衛隊に引き渡した、地球防衛組はいったん学校に戻ることになった。

「おれ、先にいって撮影したビデオ編集してるッ!」

 と、カメラをかついだあきらが走り出した。

「おれもいくッ!」

 と、まけじとヨッパーがあきらを追っていく。

「あきらも、ヨッパーも元気だよねぇ」

 僕のとなりで吼児がつぶやいた。

「あいつら元気だけがとりえだったもんなぁ」

 僕はつい過去形で言ってしまった。

「だった……?」

 吼児が不思議そうな顔で僕の顔を覗きこんでいる。

「い、いや……なんか、言い間違っただけ。気にしない、気にしない……ヘヘヘ」
「あ、そう」

 吼児はまだ首をかしげている。
 やばかった……。

 

 警察署から学校までの道のりは、僕にとっては懐かしい道のりだ。
 小学生の時に、よくここを歩いて学校に通ったものだった。
 町並みはあまり変わっていない。
 というか、これが元々の姿で、僕が知っている町並みが少し未来のものなのだけれど。
 僕はさっきから口数の少ない近藤ひでのりのことが気になっていた。
 吼児も同じ気持ちだったようだ。

「ひでのりくん、大丈夫?」

 と、吼児がひでのりに話しかけるのが聞こえた。

「うん……大丈夫……」

 ひでのりは、小さくうなずいた。
 あきらかに大丈夫じゃないって言ってるのと同じだ。

「さっきお母さんから、防衛組をやめろって言われてるって話してたけど……やめないよね、防衛組?」
「僕、地球防衛組をやることになってから、まえよりずっと学校が楽しくなりました……だから……だから、やめたくはないんですけど……ママが……」

 そこまで言うと、ひでのりは口を閉じて立ち止まった。

「どうしたらいいんでしょうか? ママは、地球防衛組なんてやる必要ないんじゃないかって、僕に言うんです。地球は、僕がいなくても、他の人たちが守ってくれるはずでしょとかって……」

 ひでのりは思いを吐き出すように一気に喋った。

「僕は……どうしたらいいのかわからないんです」

 ひでのりの切実な思いが伝わってきた。

 

 中学まで同級生だった、僕の知っていた近藤ひでのりは、大金持ちのおぼっちゃんで、世間知らずで、悩みなんてあまり感じさせないやつだった。
 彼の家は、陽昇町でも有数の資産家だった。
 執事が学校の送り迎えをしていたし、自宅にはヘリポートがあり自家用のヘリコプターもあった。
 ひでのりには家庭教師が何人もついていて、勉強のサポートをしていた。
 そのおかげかどうかは知らないが、成績もかなり良かった。
 運動はからきしだめだったけど。
 たしか五年生までは泳げないことを隠していたんだった。
 僕の知っているひでのりは、中学の時に、一度ぐれかけたことがあった。
 あれが彼の初反抗期だったのかもしれない。
 息子の教育に熱心で、なんでも自分の思い通りにしようとする母親に反発して、家を飛び出したことがあった。
 僕らはひでのりのことをすごく心配したものだった。
 悪い仲間と仲良くしはじめて学校を休みがちになったひでのりを、学校に引き戻したのは、吼児だったはずだ。
 その後ひでのりは反抗期もおさまり、優等生に戻った。
 うるさかった母親ともなんとか和解したはずだ。
 今も高校にはあいかわらず運転手付きの車で通っているらしいけど。

 

 今、母親とうまくいかないと悩んでいる小学生のひでのりに、僕は未来で彼の身に起きることを教えてあげたい気持ちになった。
 だけど、やっぱりそれはやめとくことにした。
 そんなことを僕が言い出したら、ますます面倒なことになってしまう。

 

 学校に戻ると、すでに下校の時間になっていた。
 篠田先生はホームルームをさっさと終わらせて、みんなを帰宅させてくれた。

「おい、飛鳥、ちょっと待て」
「はい?」
「おまえはまだ帰っちゃだめだ。これから姫木先生と一緒に病院に行ってこい」
「病院ですか?」
「おまえも邪悪獣の被害にあってるらしいじゃないか。ちゃんと検査してもらえ」
「わかりました……」

 僕は姫木先生に連れられて、病院に行くことになった。

「ちゃんと飛鳥君を精密検査させるようにって校長先生に言われたの。この際だから、頭だけじゃなく、ぜんぶ検査してもらいましょ」

 病院に向かう車の中で、姫木先生が言った。

「ぜんぶですか?」
「そうよ。記憶が戻らないことも心配だけど、もしかして他にどこか悪いところがあったら、これからの防衛組の活動にも支障がきたすかもしれないでしょ」

 姫木先生が本気で心配してくれているのがわかったから、僕は逆らわなかった。
 記憶のことに関しては、みんなを騙していることで、少し悪い気持ちもあったが、この状況を素直に話してさらに事態を悪くするよりはましだと思ったのだ。

 

 陽昇中央病院は、町の外れにある総合病院だ。
 僕も子供の頃からお世話になっているから、何度も来ている所だけれど、なんだか懐かしい感じがした。
 何が懐かしいんだろうと思い、待合室を見回して気がついた。
 すべてが少し古いのだ。
 僕が知ってる病院は、建物が建て代わり、最新鋭のものになっていたけど、今目の前にある待合室は改築前のものだった。
 やはり僕はタイムスリップしたんだろうか……?
 精神だけが……?
 ならば、もともとこの五年生だった、僕の意識はいまどうなっているんだ……?
 そんな疑問の数々を医者に相談してみたかったが、今の僕の状態では、きっと邪悪獣ワスレンダーに襲われた影響で混乱しているんだということで片づけられてしまうに違いない。
 僕は医者には、あまり期待しないことにした。

 

 僕はさまざまな検査を受けることになった。
 問診にはじまり、血液検査、CTスキャン。
 そしてわかったのは、僕の身体にはまったく異常はないということ。
 ただ脳に、少しだけ脳震盪に似た症状が出ているので、予防的な措置として、最低一晩入院するということになった。
 僕としては、家に帰ってゆっくりと考える時間が欲しかったが、医者も姫木先生も許してはくれなかった。
 僕はそのまま病室に連れていかれた。
 そこは二人部屋で、二つのベッドがカーテンでしきられている。
 僕は空いている方のベッドに座らされた。

「ご両親にはわたしの方から連絡しておきますから。あとでご両親もいらっしゃるわ。それまでベッドで大人しくしてるのよ。わたしは、いったん学校に戻って校長に報告してから、また来ますから」
「あ、先生、僕なら大丈夫ですから。どうか心配しないでください。さっさと家に帰っちゃっていいですよ」

 と、僕は言った。
 元はと言えば、僕が適当についた嘘が原因でこうなっているのに、僕のことを本気で心配してくれている先生には、本当に申し訳ない気持ちで一杯だったのだ。

「これがあたしの仕事だから」

 そう言って姫木先生は病室を出ていった。

 

「先生って、いったいなんなんダー?」

 カーテンの向こうの隣のベッドの方から、男の声が聞こえてきた。
 ちょっと濁ったような、つぶれたような不思議声だ。

「え……!?」
「おまえ、先生って言ってたダー?」
「僕に話しかけてるんですか?」
「この部屋には、おまえしかいないんダー」

 語尾にダーとかつけて、かなり怪しい声だ。
 隣のベッドにいるということは入院患者に違いないが、なんだか気味が悪かった。
 かかわらないほうがいいかもしれないと思ったが、もう遅かった。
 ジャッ! っとカーテンが開いて、声の主が顔を出した。
 紫色のモヒカン頭で、黄色い縁のサングラス、口の周りにはたれ下がった髭がある。
 年齢不詳の小太りロックンローラーって感じ……。

「あ!」

 思わず声が出た。
 こんな顔の男を忘れるはずがない。
 そこにいたのは公園で邪悪獣ワスレンダーに襲われていた男だった。
 捕まえたワスレンダーを防衛隊に届けにいった男子とは別に、女子たちは被害者の救護にまわったことを僕は思い出した。
 きっとこの男は、マリアたちがこの病院に連れてきたに違いない。

「おじさん……」
「わしはおじさんじゃないダー」
「あ、ごめんなさい」
「タイダーという名前があるんダー」
「タイダー?」

 外国人だったのか。
 その時の僕は、単純にそう思ったのだった

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回6月20日(火)更新予定


← 前作品ページ次 →


関連トピックス

関連コンテンツ