【第19回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

← 前作品ページ次 →


『いくぜ、無敵合体!』

 

 こっちに来るのは二回目だったから、ある程度の覚悟はあったけど、この事態は僕の予想をはるかに超えていた。
 ブラックアウトの状態から、次に視界に飛びこんで来たのは、真っ青な空だった。
 そして重力がシートに僕の身体を押しつけている感触。
 僕は空中にいた。
 正確にはコクピットの中だった。目の前のウィンドウ越しに、空が見えていたのだ。
 飛んでる!
 僕は今、鳳王に乗って空を飛んでいるんだ!
 すぐにそう確信した。
 自分の手は操縦桿を握っている。それはパイロットスーツをまとった小学生の手だった。

「あっ、ああッ! あーっ! あーーーーっ!!」

 状況を理解しようとして、僕の頭は高速で稼働していたけど、喉から出て来るのはわけのわからない叫び声だけだった。
 僕が再び黒い影に引き込まれるまでの間に、こっちではいったい何が起きていたんだ!? きっと地球防衛組が緊急出動しなきゃならない事態が起きたに違いない。

「どうしたの!? 飛鳥くん!?」
「なにやってんだよ!? 飛鳥!」

 通信装置のスピーカーから吼児と仁の声が聞こえた。

「あー、いま、僕たち、なにやってたんだっけ!?」

 懸命に鳳王の態勢をととのえながら、僕は叫んだ。

「なに寝ぼけたこと言ってんだ!」

 と、仁の声はかなり怒っている。

「ジャルバンを逃がしちまうぞッ!」
「ジャルバン……!?」

 その名前に聞き覚えがあった。
 さっき……といってもこっちの世界のことじゃないけど、謎のサングラス男の会話の中に出てきた名前だ。
 それをここで聞くことになろうとは!
 ぞわっと鳥肌がたった。
 それが今の僕にとって、ものすごく重要な意味を持つ名前だということは本能が教えてくれている。

「ジャルバンが、ここにいるわけ……!?」
「飛鳥くん、具合が悪いの?」

 吼児の心配そうな声が、僕を現実に引き戻した。
 とても現実とは思えない状況だったけど。

「具合は悪くない、大丈夫!」

 僕はなんとか声を絞りだした。
 吼児や仁には嘘をついてもうしわけなかったけど、今は本当のことを話している暇はない。

「ちょっと操縦をミスして、あわててただけ……!」

 心は動転していたけど、僕の身体はまるで鳳王の操縦方法を熟知しているかのようにスムースに動いていた。
 歯を磨いてる時みたいな感じだ。意識しなくても、身体が全てを覚えているようだった。
 操縦桿を引き上げたり下げたりして、角度と方向を微調整していく。鳳王の自動操縦機能が、僕の操縦を補ってくれているのがわかった。
 なぜこんなことが出来るのかは、自分でもまったくわからない。
 とにかく出来ていた。

「ジャルバンは、いまどこだ? おまえのところからは、見えるはずだぞ!?」

 仁の声に苛立ちが混じっている。
 僕は操縦桿の前にある計器に目をやった。
 レーダーモニターに赤い光点が追跡している存在の位置を示している。
 それは鳳王の位置のすぐ側だ。
 僕は機体を少し斜めにした。下方前方に、何かがいるのが目視できた。
 それは人型に近いフォルムをしている。
 両腕と両足にあたる部分は、まるで鋭利な刃物のようにとがっている。頭部にあたる所には、禍々しい赤い二つの目のようなものがある。
 その目にあたる部分に、人影のようなものが見えた。
 人だ……まちがいない!
 これは乗り込み型のロボットなんだ!
 そしてあのコクピットらしき場所にいるのが、ジャルバンと呼ばれている者に違いない。
 僕はその人影を凝視した。
 そいつがこっちを見つめているのがわかった。
 年齢はわからないが、まだ若い。ゆたかな金髪が逆立っている。
 特徴的なのは、凶悪に鋭い目つきだ。それはかなりの距離を隔てていても、こちらに鋭さが届くほどの殺気に満ちている。全身から妖気のようなものを立ちのぼらせているのがわかった。
 五次元人……!
 直感が、そう教えてくれていた。

「ジャルバンを目視した。僕のすぐ真下にいる!」

 そうきっぱりと言う自分の声に、僕は自分でも驚いた。
 根拠のない自信は、仁の専売特許だったはずだ……。
 でも今の僕の声は、まさに根拠のない自信にあふれていたからだ。

「あいつに、まちがいない!」

 

「いくぞ、飛鳥、吼児!」

 スピーカーから仁の思いっきり元気な声が響いた。

「無敵合体いくぞーーッ!」

 無敵合体……!?
 はじめて聞く言葉だったが、なんだか懐かしい気持ちがした。
 何度も何度も聞いてきたような気がする。
 それも仁の声で。
 でも実際にはどうしていいのかわからなかった。
 僕はコクピットの中で一瞬固まってしまった。

「おうっ!」

 と、仁の声に応える吼児の声が聞こえてくる。
 だけど僕は何も言えなかった。
 僕が返事をしないことに、吼児はすぐに気づいてくれたようだった。

「飛鳥くん、さっきからなんだか調子が悪いみたいだけど、本当に大丈夫なの!?」

 いつも吼児は優しい。こういう気配りのできるやつなんだ。
 僕は正直に言うことにした。

「わからないんだ! 何をしたらいいのか……」
「おいおい、またふざけてんじゃないのかァ。こんなときに冗談がすぎるぞ、飛鳥!」

 仁の声はあきらかに僕を責めている。

「さっき出動するとき、もう記憶喪失は治ったって言ってたじゃないか!」

 記憶喪失が治った!?
 僕が仁に言ったとすると、それはきっと今僕がその席を押し退けてしまっている、この身体の本当の持ち主に違いない。
 心の中の部屋であった、もう一人の僕、小学五年生の飛鳥だ。
 僕が元の世界に戻ったんで、彼は本来の自分の身体を取り戻して、いつものように地球防衛組として出動したのだろう。
 みんなには記憶喪失が治って、元にもどったと言って。
 それなのに、肝心のところで、また僕が割り込んでしまったんだ。
 身体の中で何が起きていたのかを知っているのは、僕と小学生の飛鳥だけだ。他のみんなには、僕が記憶喪失になったとごまかしていたから……。
 また記憶喪失がぶり返したと言っても信じてもらえるかどうかはわからない。
 それより、もう僕は嘘をつきたくはなかった。
 いまこうして一生懸命、地球を守ろうと闘っている五年三組の仲間たちに対して。

「司令室で聞いているみんなも聞いてくれ!」
「どうしたの、飛鳥くん?」

 と、通信担当のきららの声が聞こえてくる。

「もたもたしてたら、せっかく追いつめた犯人を逃がしちゃうことになるわよ!」

 マリアの声はほとんど叫びに近かった。

「話だったら、あとで聞くからッ! 早く、合体してッ!」
「僕の話を信じてよッ!」
「いつも信じてるじゃない!」
「そうじゃなくて、僕は、君たちの知ってる月城飛鳥じゃないんだ! 飛鳥は飛鳥だけど、ちがう飛鳥なんだよ!」

 僕は思い切って告白したつもりだった。
 だが僕の言葉は、逆にみんなを混乱させることになってしまった。

「もう、飛鳥くん! ごちゃごちゃ言ってないで、ちゃんと闘って! ほんと見かけだおしなんだからッ!」
「飛鳥くんを悪く言わないで!」

 司令室の中でクッキーが声を張り上げるのが聞こえてきた。

「飛鳥くんは、飛鳥くんよッ!」

 そう叫んだのはポテトだ。

「ちゃんと飛鳥くんの話を聞いてあげようよ」

 今の声は、島田愛子だ。

「お腹痛いの?」

 そうつぶやいたのは泉ゆうだ。
 司令室の中の女子たちが、騒ぎだして収拾がつかなくなりそうなのがわかった。

「静かにーーーッ!」

 そんな女子たちを、マリアがひと声で鎮めた。

「わかった、話はちゃんと後で聞いてあげるから、今は目の前の五次元帝国と闘って!」

 この切羽詰まった状況のなかで、今まで僕のしてきたことを全部説明するのは、到底無理だし、よけいに信じてもらうのは無理に思えた。
 もう開き直るしかない。

「僕が、どうしていいのかわからないのは、本当のことなんだ! 仁、マリア、吼児、そしてみんな! 信じてくれ! 僕に、どうしたらいいのか教えてくれッ!」

 僕は全力で叫んだ。
 それしかないと思ったから。

「仁くん、マリア、どうやら飛鳥くん、本当みたいだよ……」

 さすが吼児はわかってくれた。

「ああ、嘘は言ってねぇみてぇだな」

 仁はとまどっているが、信じてくれたようだった。

「わからないのは、無敵合体の手順のことだよね?」
「そう、その通り! 吼児、教えてくれッ!」
「まずは、腕につけてるライジンブレスを開いて」
「ライジンブレス……」

 僕は左腕につけているライジンブレスのカバーを開けた。
 そこには三角形のメダルが入っていた。メダルの中央には、くっきりと鳳王のレリーフが刻まれている。

「開けたよ」
「メダルがあるでしょ」
「ある!」
「転送ボタンを押して!」
「転送ボタン……?」
「押して!」

 僕はメダルの側にあるボタンを押した。
 キラッ! と、メダルが光ると、ふいに消えた。

「あっ、メダルが……」
「メダルは、仁くんのところにあるライジンコマンダーに転送されるんだよ」

 そのときスピーカーから仁の声が響き渡った。

「行くぜ! 無敵合体!!」

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回9月19日更新予定


← 前作品ページ次 →


関連トピックス

関連コンテンツ

カテゴリ