【第25回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

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『嫉妬』

 

 僕は仁に今までのことをできるだけ簡潔に伝えようとした。
 五次元帝国は仁を拉致したあと、邪悪獣ワスレンダーを使って地球防衛組全員の記憶を書き換えてしまったこと。
 そして僕は意識だけをパラレルワールドと思われる世界に飛ばされ、もう一つの地球防衛組のメンバーたちと会うことで、本当の記憶を取り戻すことができたということ。
 こっちの世界に仁が必ずいることを信じてくれた吼児や勉やれい子と、謎の黒服男を尾行してここまでたどりついたのだがジャルバンに見つかってしまい、捕まってしまったということ。

「で、マリアはどうなったんだよ、今の話じゃ、どこにもマリアが出てきてねぇじゃん」
「あ、いや、マリアは黒服に見つかったあとに、僕と偶然会って巻きこまれたんだ……」
「無事なのか!?」
「それは……」
「はっきりしろよ」
「無事だとは思うけど、どこにいるのかは、わかんない」
「飛鳥、おまえなぁ、マリアになんかあったら許さねぇぞッ!」

 仁の顔色がみるみる紅潮していく。
 仁がマリアには特別な思いを抱いていることが伝わってきて、僕の胸は少し痛んだ。

「でも、なんでおまえだけをここに連れてきたんだ……?」
「さぁ……?」
「さぁって、はっきりしろよ」
「そう言われても、僕にも本当にわからないんだ」

 仁は少し冷静になった。

「そっか……ところで、おまえのその格好と、今までの話はどう関係があるんだ?」

 仁にそう指摘されて、僕は自分の格好を改めて見た。
 ウィッグは脱いでいたけど、まだ女装したままだった。
 あー、なんてこった……!
 冷や汗がどっと背中を流れ落ちた。

「これは……」
「まぁ、深くは聞かないけどよ」

 と、仁は唇の端で笑っている。

「聞けよッ!」

 僕はつい大きな声を出してしまった。

 

 僕が黒服を尾行するために女装したことを話すと、仁は少し笑った。

「まぁ、そんなことだろうとは思ってたぜ。案外似合ってんな、おまえのその格好」
「なんか服、貸してくれ」
「おめぇに似合う服は持ってねぇけどいいか?」
「いいに決まってるだろ。なんでもいいから、貸せよ」

 仁は何かを考えながら、青いジャージを出してくれた。
 上着の袖と、パンツの横に白いラインが入ったやつだ。
 中学の時に使っていた体操服だ。

「なんか懐かしいだろ、このジャージ」
「ああ」
「中学の時は、毎日、これだったしな」

 仁の言葉と懐かしい体操服で、中学時代の記憶がまた甦ってきた。
 僕たちはほとんど地球防衛組として出動することなく普通の中学生として生活していたのだ。
 ジャーク帝国の攻撃がおさまっていたので、僕たち地球防衛組の出動は、ほとんど無くなっていた。ほぼ三年間なかった。
 ときおりメンテナンスの意味あいで、小学校に戻って学校を起動させたりはしていたけど、その他の時はそれぞれの時間を過ごしていた。
 仁や吼児たちとも、小学生の時のように密に会っていたわけではなかった。
 仁は野球部、マリアはテニス部、吼児は文芸部と演劇部、僕はバスケ部に入って中学生活を思う存分楽しんだのだった。
 僕はその三年間で、仁とマリアとの距離がどんどん近くなっていくのを感じて、うらやましく思っていたのだった。
 もちろん地球防衛組としてときおりは集まってはいたけど、防衛組としての意識は低くなっていたかもしれない。

「時間は、あっと言う間に流れるもんだよなぁ、中坊だったおれらが、いまじゃ高校生なんだもんな……」

 仁は、ハッとしたように顔をあげた。

「おっと、懐かしがってる場合じゃなかったぜ。この状況をなんとかしなきゃな……肝心のお前たちが捕まっちまったからには、もう誰かが助けにきてくれる可能性はほとんどないと思ったほうがいいな……」
「どうする……?」

 僕には何もアイディアが無かった。

「どうするって……脱出するっきゃねぇだろ」
「でも、どうやって?」
「それを今考えてんじゃねぇか」

 そう言って仁は椅子に座りこんだ。
 あいかわらず仁は、へこまないやつだった。
 こんな絶体絶命の状態なのに、まったく落ちこんだりしていない。
 あきれるほど前向きな性格。
 それが日向仁だ。
 その性格は小学生の時から一貫している。高校生になった今、もっと前向きになっているかもしれない。
 こんな仁だからこそ、マリアも惹かれたんだと思う……。

「脱出させるわけにはいかないぞ!」

 野太い声がしてドアが開いた。
 そこに金髪を立てたジャルバンの姿があった。

「ジャルバン……」

 仁が小さくつぶやいた。
 二メートルを超える長身のジャルバンは、身をかがめるようにして部屋の中に入って来た。
 僕たちを威圧するように見下ろしている。
 僕と仁が二人がかりで飛びかかったとしても、この大男にかなうかどうかは極めて難しいものに思えた。
 それほどジャルバンの威圧感は圧倒的だった。
 ジャルバンの身体が入り口をほとんど塞いでいるのだ。

「まぁ、座れ。おまえたちに、わざわざ会いにきてやったのだからな。フフフフ」

 不気味に笑うジャルバンが、何を考えているのか、僕には想像もつかなかった。
 この男は地球防衛組を消滅させようとしているのだ。どうせ良からぬことを考えているに違いない。

「抵抗をしても無駄なこと……どうだ、このままもう一度、記憶を失くしてみないか?」
「なにィ!?」

 仁は、今にもジャルバンに飛び掛かろうという体勢だ。

「日向仁を、きれいさっぱり忘れてしまったほうがいいだろう……なぁ、月城飛鳥君? そのほうが、君にとってもいいことがあるんじゃないか。フフフフフ」

 ジャルバンは僕を見つめて笑っている。
 僕はこの男が何を言おうとしているのかに気づいた。

「仁がいない世界の方が、飛鳥、君にとっては良かったんじゃないか?」
「やめろ、そんなことがあるわけないじゃないか!」
「どうかな……私には、おまえの心の中がよく見えるぞ」

 仁が、僕を見つめていた。

「飛鳥、こいつ、何のこと言ってんだ?」

 仁の問いかけに、僕はすぐに答えることができなかった。

「フフフ、飛鳥君は、マリアのことが好きなんだよ。鈍感な君は、何も気づいていなかっただろうけどね。日向仁、君がこの世界にいなければ彼はマリアと付き合っていたのさ……現にさっきまで、彼はそう思っていた……君さえいなければ、彼は幸せにマリアと付き合うことができたとね」

 ジャルバンはまるで僕の心を見通していたかのように言った。
 僕はそれをすぐに否定できなかった。
 たしかにほんのちょっと前まで、それに近い思いを抱いていたのだ。
 仁は信じられないという目で、僕を見つめている。
 何か罪悪感のようなものを感じて、僕はその視線が痛かった。

「飛鳥、おまえ……こいつの言うことは本当なのか……本当に俺がいないほうがいいと思ってたのか……?」
「それは……」

 僕が違うと言おうとするのを、ジャルバンが遮った。

「日向仁、おまえがいない世界を彼らに選択させてあげるんだ……そうすれば俺もあえてお前たちを抹殺しないですむんだからな。おまえたちの記憶を消すだけですませてやろうとした、俺の優しさをわかってくれないか。フフフフフ」

 まるでゲームでも楽しんでいるかのようにジャルバンは笑って言った。

「この世界には地球防衛組など、はじめから無かった。すべてを忘れて、そう思って生活を続けたほうがよっぽど楽じゃないのか、月城飛鳥。そして日向仁、君も防衛組のことなど忘れて、なにものでもない野球好きの青年として生きたほうが楽だろう? 好きな女の子の一人くらい、友だちに譲ってあげても構わないだろ、またすぐ別の女の子が現れてくれるよ、君には。フフフフフ」

 ジャルバンはあえて僕と仁の心をえぐるのを楽しんでいるとしか思えない。
 僕にはこの五次元人の狙いがわからなかった。

「てめぇ、かってなことばかり言いやがって! そんなこと、俺たちができるわけねぇだろッ!」

 仁が立ち上がった。その勢いで椅子が倒れた。

「ふざけんなッ!」

 そして仁はジャルバンに掴みかかった。
 仁の動きは素早かったが、ジャルバンの動きは、それ以上に早かった。
 仁の腕がジャルバンに届く前に、五次元人の姿はそこからフッと消えた。
 次の瞬間、ジャルバンは仁の背後に出現した。
 僕にはジャルバンが一瞬消えたようにしか見えなかった。
 五次元人は長い腕を仁の首に巻きつけていた。
 格闘技で「裸絞め」と呼ばれる締め技だ。仁の頸動脈をジャルバンの腕が締めつけている。
 仁は身動き取れなくなっていた。
 もがけばもがくほど仁の首に巻きついたジャルバンの腕は首に食い込んでいく。
 仁は失神寸前だ。

「無駄なことを……フフフフ」

 ジャルバンの赤い目が、僕を睨みつけていた。

「月城飛鳥、動くなよ……動くと、きみの友だちの首が折れる……フフフフ」
「やめろ、ジャルバン……!」
「やめてあげてもいい。だが、それは君の答えしだいだ」
「僕の答え……?」
「さっきの質問にまだ君は答えていない……地球防衛組などいなかった世界を選んだほうがいいんじゃないのかい? フフフフ」

 ジャルバンの笑い声が僕の動きを止めていた

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回11月14日更新予定


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