【第27回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

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『阿吽の呼吸』

 

 酒屋の裏の倉庫に着くまでに、僕は仁にワスレンダーについて簡単に説明した。
 すべてはこの邪悪獣から始まっていたのだ。

「邪悪獣が出たのは久しぶりだよな、三年ぶりくらいじゃねぇか」

 記憶を消されてなかった仁は、今までの誰よりも理解が早かった。

「どんなやつなのか、見るのがちょっと楽しみだぜ……なんてな、こんなこと言ってたら、またマリアに怒られちまいそうだけどな」

 と、仁は笑った。

「わかってるんだったら、そういうことは言わないの!」

 すかさずマリアが突っこんでいく。

「ヘイヘイ、そうくると思ってたよ」

 二人のやりとりは阿吽の呼吸ってやつだ。
 僕はちょっとだけ寂しい気持ちになった。
 少し前までは、僕がマリアと阿吽の呼吸で喋っていた相手のはずだった……
 変えられた記憶とはいえ、それは僕にとって心地よいものだったから。
 しかし本来の仁とマリアの掛け合いをこうしてじかに聞いていて、それが僕には本当に気持ちが良かった。
 僕はこれが好きだったのだ。
 あこがれていたのかもしれない。
 たぶん何年も身近で二人が小気味よく言い争うのを聞いてきたから、きっと僕もやってみたいと思っていたんだ……。

「あたしたち邪悪獣のせいで記憶を変えられちゃってたのよ、あたしの記憶も、まだちょっとはっきりしてないし……きっと他の防衛組のメンバーたちだって、仁のこと忘れさせられてるのよ」

 とたんに仁の顔から微笑みが消えた。

「そっか……みんな、俺のこと忘れてんのか……お前たちも、そうだったの?」

 と、仁はあらためて勉や吼児、れい子を見つめた。
 三人は同時にうなずいた。

「完全に忘れてた」
「ひでぇなぁ……」

 仁は少しすねたような顔をした。

「俺のこと忘れちまうなんてよォ……」
「でも思い出しました!」

 と、珍しく勉が大きな声を出した。

「そうだよ、仁くん。僕たちが、仁くんを忘れてしまうなんてこと、あるわけないじゃない」

 吼児もあわててつけ加える。
 二人の慌てぶりが、僕にはすこし面白かった。
 仁はすぐに笑顔に戻った。

「ありがとうな……俺のこと、忘れないでいてくれて」

 急に仁が真面目なことを言ったので、勉と吼児はふいをつかれて黙ってしまう。

「俺も何があったって、絶対にお前らのこと忘れたりしないから」
「あ、うん」
「お願いします」

 と、吼児と勉はうなずいた。

「あたしは? あたしは忘れちゃうの?」

 れい子が不満そうに言う。

「忘れるわけないじゃんかァ!」
「あー、よかった」

 れい子が笑い、そしてみんなも笑った。

「よし、開けるぞ……いいな!」

 仁は着ている野球部のジャージを腕まくりをして、倉庫の扉に手をかけようとした。
 中にはあいつがいるはずなのだ。
 次の瞬間、ドーン! 轟音とともに、扉が外に弾き飛ばされた。
 木製の扉は粉々に飛び散り、僕たちは強烈な衝撃波を受けて倒されてしまっていた。

 

 吹き飛んだ倉庫のドアの向こうに立っていたのは赤白のストライプ模様をした異形の怪物だった。
 邪悪獣ワスレンダーに違いない。ただ僕が見たことのある邪悪獣とはかなり違っていた。
 僕がもう一つの世界で見たワスレンダーは、体長は約50センチほどの小動物サイズだった。
 それが今や体長はゆうに2メートルは超えている。超大型サイズになっている。
 ドラゴンに似た身体の背中には、大きな翼がついている。
 吹っ飛ばされて地面に転がった僕たちは、ほとんど声も出すことができずに邪悪獣を見上げるだけだった。
 ワスーーーッ!!
 ワスレンダーが奇怪な叫び声を上げて、ふわっと飛び上がった。
 バサッ!! バサッ!! バサッ!! 大きな翼を羽ばたかせて、邪悪獣は舞い上がったのだ。
 地面に這いつくばっていた僕は、それを見送るしかない。
 ワスレンダーは、あっという間に仁の家の二階の屋根の上に降り立っていた。
 そこから地面に倒れている僕たちを見下ろしている。
 ワスーーーーッ!!
 叫び声をあげて、僕たちを威嚇しているようだ。
 僕は懸命に立ち上がって周りを見渡した。
 仁はすでに立ち上がってマリアを抱き起こそうとしている。
 吼児は、れい子に立ち上がらせてもらっている。
 勉はまだ腰を抜かしたような格好で尻餅をついたままだ。

「みんな無事か!?」

 仁が叫んだ。
 僕は改めて自分の身体を確認した。
 どこも痛いところはない。

「僕は大丈夫!」
「僕も!」
「あたしも!」
「僕も平気です」

 吼児、れい子、勉が同時に答えた。
 マリアはうなずいている。大丈夫そうだ。

「飛鳥、こいつがワスレンダーなのか!?」

 と、仁が訊いた。

「ああ……たぶん」
「たぶんて、なんだよ!?」
「僕が向こうの世界で見たのよりも、ずいぶん大きくなってるんだ……五倍くらいの大きさになってる」
「成長しているんです……」

 と、勉が言った。

「こちらの世界で、僕たちの記憶を吸いとったりすることで大きくなったんです」
「まぁ、そういうことだろうな……勉に言われなくても、だいたい想像できるぜ」
「手がつけられなくなるまえに、倒さなくちゃ……」

 吼児が続けた。

「仁くん、マリア、どうする……?」
「どうするって……」

 マリアはワスレンダーを見上げてきっぱりと言った。

「地球防衛組、出動よッ!!」

 その声には、いつもの力がみなぎっている。

「なんか、ちょー久しぶりに言った気がする……」

 なんだかすっきりしたようにマリアが言った。

「だってマリア、おまえ忘れてたんだろ……俺のことも、地球防衛組のこともよ……?」

 すこし意地悪そうに仁が言い返す。

「仁! いいかげんにしないと、怒るわよッ!」

 言いながら、すでにマリアの手は動いていた。
 ドスッ!
 マリアのストレートパンチが仁のボディに決まっていた。
 ぬうっ! そう言ったきり、仁はもう何も言わなかった。

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。目の前の邪悪獣をやっつけることだけ考えて!」
「……わかってるさ……あいたぁ……」

 ようやく仁が文句を言いかけたとき、ワスレンダーが動いた。
 ワスーーーーーッ!!
 僕たちに向かって叫ぶと同時に、口から炎を吐いたのだ。
 ゴーーーーッ!!
 すさまじい勢いでオレンジ色の炎の帯が近づいてくる。
 とっさに僕は叫んでいた。

「危ないーーッ!!」

 身体は自動的に動いていた。
 僕は扉が無くなっている倉庫の中に飛びこんだ。
 仁、マリア、吼児、勉、れいこたちも僕に続いて倉庫の中に転がりこんでくる。
 ワスレンダーが吐き出した炎は、倉庫の入り口付近の地面を焦がしてすぐに消えた。
 だが炎が当たったあたりは真っ黒に焦げている。
 あの炎をまともにくらっていたら火傷するくらいじゃすまない。
 そう思うと、ぞっとした。
 バーン! バリバリーーーッ!!
 すさまじい破壊音が続いて聞こえてきた。
 そして焦げた地面の上に、破壊された家の一部が崩れ落ちてくるのが見えた。

「あんにゃろう、なにやったんだ!?」

 仁が飛び出そうとするのを、僕は飛びついて止めた。

「いま出ちゃだめだよ、仁! 焼かれちゃうッ!!」
「でも……!」

 僕を引きずりながら外に飛び出す勢いだった仁が、やっと冷静さを取り戻した。

「あいつ、俺の家を……父ちゃん、母ちゃん! 逃げろーーッ!!」

 仁の叫び声が届いたらしく、遠くで仁の両親の声が聞こえた。

「もう逃げてるよーーーッ! 俺たちは大丈夫だーーッ!」
「仁、おまえたちも逃げるんだよーーーッ!」

 その声はかなり遠くからだった。
 さすが仁の両親。
 いち早く避難していたようだ。
 しばらくするとワスレンダーの叫び声が聞こえなくなった。
 恐る恐る倉庫から外を覗くと、もうワスレンダーの姿はそこにはなかった。
 そして仁の家の二階部分が屋根の半分を破壊されているのが見えた。

「ああ……」

 壊された自分の家を見上げて、仁は呆然としていた。

「あの野郎……やりやがったな……」

 握りしめた拳が震えている。

「あッ、ジャルバンは……!?」

 僕は二階にジャルバンがいたのを思い出した。
 仁はもう何も言わずに駆けだしていた

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回12月12日更新予定


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