【第30回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

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『合体邪悪獣出現』

 

 あれは向こうの世界で小学生のマリアがジャークサンダーと名付けた邪悪ロボットだ。
 ワスレンダーをこっちの世界に連れてきたのは、このジャークサンダーだった。

「我が名はジャルバン。五次元帝国皇帝ワルーサ様の命により、この世界を支配するために来た戦士である」

 ジャルバンの声は頭の中に直接届いている気がした。
 これは一種のテレパシーに違いない。ジャルバンは僕たちの聴覚にその声を響かせているのだ。
 五次元人の恐るべき力の一つだ。

「ジャルバン……いったい、なんなんだ?」
「どういうことなの?」

 仁と吼児が驚いているのがわかった。
 僕は向こうの世界で会っているのでジャルバンのことは知っているけど、こっちの世界の仁たちは、この五次元人に会うのは初めてなのだ。

「今、五次元人って言ったよな……」

 仁の言葉に吼児が続ける。

「じゃあ、僕たちが小学生の時に戦った五次元帝国ってこと!?」
「たぶんそうだ」

 僕はそうとしか言えなかった。
 確証はなかったが、ジャルバン自身が自分で言っているのだから、おそらく間違いはないだろう。

「あいつらまだ残ってやがったのかよォ……」
「もしかして復活したってことなの……」

 仁と吼児の言葉には、わずかに戸惑いと恐れがあった。

「そしてこいつは邪悪ロボットのジャークサンダー……向こうの世界で小学生のマリアが付けた名前なんだけど……ワスレンダーをこっちの世界に連れてきたのも、こいつなんだ」
「そうだったのか……」
「なんか強そうだよね……」

 仁と吼児はまだ戸惑っている。それに追い打ちをかけるように、ジャルバンの声が響き渡った。

「フハハハハ! おまえたちが今まで倒して来たやつらは、わが五次元帝国の単なる末端にすぎない。われらの力をあなどるでないッ! われわれは強大な力を持っているのだ。まずはおまえたちを、ここで完全に滅ぼしてやるッ!」

 ジャルバンの声は僕たちを威圧しようとしていた。
 僕たちを心底おびえさせることで。
 以前の僕だったら、こんなに圧力をかけられたらひるんでいたかもしれない。
 でも僕の中で確実に何かが変わっていた。
 記憶を消された状態で、時空を超えてもう一つの世界に行き、二回目の小学生時代を体験して、ようやく完全に記憶を取り戻した僕は忘れかけていた『勇気』を取り戻していた。
 地球防衛組の仲間たちに支えられて成長してきた僕は、小学生の時よりも少しだけ勇気を持った高校生になっていたのだ。
 僕はジャルバンの声の中に、微妙な揺れがあるのを感じ取っていた。
 異常に激しく僕たちを威圧してくるのは、逆に不安の現れに違いない。
 ジャルバンはこの世界を制圧する方法として、僕たち地球防衛組から記憶を盗むこと。そしてライジンオーを無かったことにするという作戦を取った。
 それはつまり僕たち地球防衛組を畏れていたからこそではないか。
 僕たちが存在していること自体が、やつにとって最大の脅威に違いないのだ。
 ふいにわきあがったその思いは、しだいに僕の中で確信に変わっていた。

「僕たちが、そんな脅しにひるむと思っていたら大間違いだぞ!」

 鳳王をジャルバンのメカにゆっくりと正対させながら、僕は大きな声で言った。

「僕たちはお前の脅しになんか屈しはしない! お前のような卑怯なやつに、僕たち地球防衛組が負けたりするもんか!」
「な、なんだと……きさま……」

 返ってきたジャルバンの声は、あきらかに動揺していた。
 僕がやつの言葉に対して、まったく予想外の反応をしたからだ。

「飛鳥、いまのセリフ、心のノートに書き留めたぜ!」

 仁の声が弾んでいた。

「いつか俺も使わせてもらわねぇとな」
「飛鳥くん、僕もびっくりした。なんだか飛鳥くんに言われて、もっとしっかりしなきゃと思ったよ。僕、がんばるッ! こんなわけのわかんない五次元人にびびらされてたなんて、恥ずかしいよッ」

 吼児の声をうれしそうだ。
 もうそこにはさっき少しだけびびった二人はいなかった。
 いつも仁や吼児に励まされてきた僕が、逆に二人を励ましたのだ。
 ちょっとうれしかった。
 だがまだ喜ぶのは早い。目の前には、強大な五次元人と敵のロボットがいるのだ。
 本当に仲間と喜びあうのは、こいつを倒してからだ。

 

「わたしを怒らせたことを後悔させてやるッ!」

 ジャルバンの声が頭のなかでふくれあがった。
 やつは本気だ。

「おまえたちを、今日を限りにこの世界から消滅させてやるッ! ジャークパワー照射ッ!!」

 その声とともに、ジャークサンダーの胴体部分が黒い光を放った。
 稲妻のような黒い光は、泡立つ海面に向かっていく。
 そこはワスレンダーが沈んだあたりだ。
 一瞬、海が黒く染まった気がした。
 そして次の瞬間、海が盛り上がり、そこから巨大化したワスレンダーが飛び出して来た。

「ワスォーーーーーーッ!」

 ワスレンダーは巨大化しただけでなく、その形状も変化していた。
 さっきまではシマシマのドラゴンだったのが、いまや格子縞模様の体表をした、巨大な双頭の竜だ。

「わーっ、でっかい頭が二つになってるぜッ!」

 仁が驚きの声をあげた。

「大きさも、五倍以上だよ! そんなぁ……!」

 吼児がコクピットの中で目を丸くしているのが見えるようだった。
 ワスレンダーは死んではいなかった、それどころかジャークパワーを受けて、さらにパワーアップしていた。

「フハハハ、驚いたか。だが本番はまだまだこれからだぞッ!」

 ジャルバンはそう言うと、ジャークサンダーを巨大化したワスレンダーに向かって突進させていく。

「ワスレンダー! ジャーク合体!!」

 その叫び声と同時に、ジャークサンダーがワスレンダーにめり込んでいく。
 そして一瞬にして、邪悪ロボットと邪悪獣は一つになった。

「これが、ジャークスレンダーだ!」

 双頭の竜だったものの両手足が、さらに鋭い剣に変わり、凶悪この上ない形態の合体邪悪獣になっている。

「ジャークスレンダー……」
「嘘だろ……」
「合体するなんて……」

 仁と吼児は明らかに動揺している。
 さっき少しだけ自信を取り戻したのを、このジャークサンダーとワスレンダーが合体したジャークスレンダーに打ち砕かれそうになっていた。
 ジャークスレンダー、ただ二つの名前をつなげただけなのだが、めちゃくちゃ怖そうな姿をしている。

「フハハハハハ! 驚いたようだな、地球防衛組のパイロットども」

 ジャルバンの声には自信がみなぎっていた。

「わたしの本気を出させたことは、ほめてやってもよい。だがそのことがお前たちにとっては、最大の悲劇となるのだ」
「ふざけるな、俺たちは、これくらいのことでびびったりしねぇッ!」

 仁が強気で言い返した。
 しかしそんな言葉が、ジャルバンに通じるわけもなかった。

「まずはおまえからつぶしてやるッ!」

 合体邪悪獣の姿が黒い光の影となり、一瞬のうちに、剣王の目の前に移動していた。
 ズバーーーッ!
 二本の黒い稲妻が、剣王の正面できらめいた。
 それは剣王の肩口から胴体にかけて振り下ろされた合体邪悪獣の技だ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 仁の悲鳴が聞こえ、コクピットの中が放電する音だけが聞こえてきた。
 剣王は、砂浜にゆっくりと倒れていく。

「仁!」
「仁くんッ!」

 僕と吼児の呼びかけに返事はない。
 コクピットの中で仁がダメージを受けているのが見えるようだった。

「次は、おまえだ!」

 ジャークスレンダーは、ゆっくりと獣王の方に向き直った。

「あわわわわ……」

 さっきまで落ち着いていた吼児が、取り乱している。
 目の前で剣王があっさり倒されたのだ無理もない。

「吼児、気をつけろ。こいつ、強いぞ!」

 僕は、そんな声をかけることしかできなかった。

「フハハハ、いまごろ慌てても、もう遅い。おまえたちを完全に消滅させてやると言ったはずだ」

 どうしたらいいんだ!?
 鳳王のコクピットの中で操縦桿を握っている自分の手が、汗でびっしょりなのがわかった

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回2月13日更新予定


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