【第31回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

← 前作品ページ次 →


『根拠のない自信』

 

「食らえッ!」

 頭の中で、ジャルバンの叫びが響いた。
 まるで脳がしびれるような怒声と同時に、一瞬目の前が暗くなった。
 グガーーーン!!
 ジャークスレンダーが放った黒い稲妻が、獣王を直撃したのだ。

「グァァァァァァァ~~~~~ッ!」

 吼児の叫び声が聞こえた。
 ジャークスレンダーの剣のようにとがった足先が、獣王の顔にまともに当たっていた。
 それはただの蹴りではない。強力な電磁波が相手に衝撃を与えるものだ。
 蹴りと同時に、すさまじい衝撃波が獣王の全身を襲っていた。
 獣王は数十メートルも後方に吹っ飛ばされていく。

「吼児ぃ~~~!」

 僕の声に応える声は聞こえてこなかった。

「吼児、しっかりしろ、返事してくれッ! 仁、返事をしてくれよォ~~~!」

 僕には叫ぶことしかできなかった。
 剣王も獣王もぴくりとも動かない。
 そしてはげしい放電を繰り返していた。

「仁……吼児……」

 今すぐ着陸して二人の安否を確かめに行きたかった。
 しかし危機は、僕にも近づいてきていた。

 

 すぐ目の前に、ジャークスレンダーが浮かんでいる。
 鳳王とジャークスレンダーは、空中で正対していた。
 ジャークスレンダーの頭部に、コクピットのようなものがあり、そこにジャルバンがいるのがかすかに見えた。

「フフフフフ、弱い、弱すぎるぞ、剣王、獣王……なにが地球防衛組だ、きさまらを分断し、合体をできなくしてしまえばライジンオーは現れることもできない。その弱点をつけば、おまえたちを制圧することなどたやすいこと。それは考えなくともわかること」

 ジャルバンの声には余裕が戻っていた。

「きさまは、わたしを卑怯だと言ったな。わたしは、卑怯ではない! わたしは、誇り高き五次元帝国の戦士だ!」
「何が戦士だ、僕たちから記憶を奪って、ライジンオーを忘れさせようとしていたのは、きさまが卑怯だからじゃないかッ!」

 僕はジャークスレンダーが攻撃してくる時に備えて、次の動きを必死でシミュレーションしていた。
 あの攻撃をまともに食らったら、いくら鳳王でも無事にはすまない。
 なんとかかわして、反撃の糸口を見つけなければ……
 しかしジャークスレンダーは攻撃してくる様子はなかった。目の前に浮いたまま、じっとしている。
 それは居合斬りの名手が、狙いを相手にさだめているかのようだった。
 動いたら、次の瞬間斬られてしまう。真っ二つに。
 そんな気がした。

「フフフ、きさまの足りない頭では、そう思うのもしかたがない。だが葬り去る前に、教えてやる。わたしは、おまえたちを助けてやろうとしていたのだぞ」
「僕たちを助けるだと……」

 ジャルバンの言葉の意味が僕にはわからなかった。
 頭のどこをどう通って、助けるなんて言葉が出てくるのか。

「なに言ってるんだ。おまえのやってることに、僕たちを助けるなんてこと、一ミリもないじゃないか!」
「わたしの目的を達成するためには、おまえたちのライジンオーがいる。そのためには、おまえたち地球防衛組が邪魔だった。邪魔なら消してしまえばいいこと。あっさりとな。おまえたちの存在を把握したわたしは、あえておまえたちを抹殺することをしなかったのだ」
「つまり、僕たちを殺さずに生かしてやろうとしていたというのか……」
「やっとわかったようだな。だからこそ、手間をかけてワスレンダーを捕獲し、この世界に連れてきたのだ。わたしがせっかくおまえたちを生かしたままにしてやろうとしていたのに、失った記憶をわざわざ取り戻して、無駄な戦いを挑んでくるとは、人間とは愚かなものよ。ライジンオーのことなど忘れて、何も気づかずに、平穏無事に生きていれば、それで良かったのに、わざわざ問題を大きくし、悲惨な最後を迎えるようにしてしまうとはなぁ。どうしようもない」
「僕たちをばかにするなッ!」
「ばかを、ばかと言って何が悪い。もうおまえは、何をできないではないか。仲間を失い、いまこうして、わたしの前で手も足も出すことができずに、おびえて震えている。まるで小さな子供のようにな。フハハハハハ」

 脳に直接響いてくるジャルバンの声が、僕の体を締めつけ、動かなくしていた。
 まさにジャルバンの言っている通りに。
 ジャルバンの言葉が、僕の頭の中を駆けめぐっていた。
 ライジンオーのことなど忘れて、何も気づかずに、平穏無事に生きていれば、それで良かったのに……
 僕が記憶を取り戻さなければ……
 僕が向こうの世界で、もう一度地球防衛組と会わなければ……
 そうしたら悲惨な最後を迎えることなく、生き続けていけた……
 いや、そんなことはない。
 僕にとって、いや僕たち地球防衛組にとって、ライジンオーと一緒に戦ってきた日々を忘れることなんか、できるはずがない。
 ライジンオーがいたから、僕たちがいた。
 僕たちがいたから、ライジンオーがいたんだ。
 地球防衛組じゃなかったら、僕たちはいないも同然だ。
 僕はジャルバンの言葉に少しぐらついた自分の心の弱さを恥じた。

「ふざけるなーーーッ!」

 頭に取りついているジャルバンの声を振りほどくように、僕は叫んだ。

「僕たちは、地球防衛組だッ! ライジンオーは、僕たちそのものだッ! きさまなんかに渡すものかッ!」
「フン、もう一度情けをかけてやろうとしているのに、まだわたしに反抗するつもりか」
「あたりまえだッ!」
「もう一度だけ言うぞ」

 ジャルバンの声には、最終宣告の気迫がこもっていた。

「鳳王から降りて、わたしに明け渡せ。そうすれば、きさまたちの命まで奪うことはしない。そうしないと言うなら、ここできさまらにとどめを刺すことになる」

 その言葉が嘘は言っていないことはわかった。
 だが鳳王をジャルバンに渡すなんてこと、できるはずもない。
 それに僕には、ここでジャルバンに負けるわけないという不思議な確信があった。
 僕の心には、仁や吼児やマリアたち、防衛組のみんなの顔が浮かんでいた。
 そして仁が、よく言っていた言葉を僕は思い出した。

『俺の自信に、根拠なんてねぇよ。でも、いつもなんだかそう思えるんだ。俺には、できるって』

 僕は仁が持っている、この根拠の無い自信がいつもうらやましかった。
 僕にはない、その楽天的な思考回路が。
 しかし今、僕の中から生まれてきたのは、その根拠のない自信というやつだった。
 やっと仁がいつも言っていたことの意味がわかるような気がした。
 僕は絶対にジャルバンには負けないと、心の底から信じて、思うことができたのだ。

「僕は鳳王を降りない! そしてライジンオーは、きさまになど絶対に渡さない!」
「ならば、斬るッ!」

 ジャークスレンダーが暗黒の光とともに、腕の剣を振ってくるのが見えた。
 その瞬間、僕は鳳王の出力を最大にあげた。
 正面から鳳王は、ジャークスレンダーに向かって飛びこんでいく。
 機首がさがったせいで、ジャークスレンダーの剣は鳳王の頭上すれすれをよぎった。
 ガーン! ジャークスレンダーの体に鳳王が激突した衝撃でコクピットが揺れる。
 僕は鳳王を、ジャークスレンダーの懐に飛びこませていた。
 ボクシングで言うなら、クリンチの状態だ。
 懐に飛び込んで抱きついてしまえば、腕の剣で斬られることはない。

「グヌッ……」

 ジャルバンの歯ぎしりが聞こえてくる気がした。
 僕は相手の虚をつくことに成功したのだ。

「ウイングバルカン!」

 バババババババッ!
 その態勢のまま、鳳王は至近距離でウイングバルカンをジャークスレンダーに撃ちこんでいく。
 相手にダメージを与えているのは間違いなかった。

「ちょこざいなッ!」

 ジャークスレンダーの体が一瞬膨れるようになり、黒い稲妻が全身から放出された。
 ドワーーーン!
 突き放されるように鳳王は、ジャークスレンダーから離れた。

「よしっ!」

 僕はその瞬間、出力を最大にして、鳳王を急上昇させていく。
 いったんジャークスレンダーから離れた方が得策だと思ったのだ。
 やつは追ってくるに違いない。
 それが僕の狙いだ。
 剣王と獣王の中で気絶していると思われる、仁と吼児からジャルバンを引き離し、二人に回復の時間を与えたかった。

「きさま、絶対に殺してやる! この世界から、抹殺してやるッ!」

 そう叫びながら、ジャルバンが追ってきているのがわかった

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回3月6日更新予定


← 前作品ページ次 →


関連トピックス

関連コンテンツ


【ガンイージスMk-Ⅱ】SDガンダム ザ・ラストワールド ステージEX01 ▶

◀ 【第11回】リバイバル連載:サンライズ創業30周年企画「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」


カテゴリ