【第32回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

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『宇宙へ』

 

「行けーーーッ、鳳王! おまえの全力を、僕に見せてくれーーーーッ!」

 コクピットの中で僕は叫んでいた。
 鳳王が返事をしてくれることはないのはわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
 しかし僕の声に応えるかのように、鳳王は今までの限界スピードを超えて急上昇をし続けていた。
 ものすごい重力が僕の体をシートに押しつけてくる。
 パイロットスーツを身につけていなければ肋骨が折れてしまうかもしれないと思うほどの圧力だ。
 機体は激しく振動している。
 僕が重力に耐えている以上に、鳳王が空気抵抗と闘っているのがわかる。
 厚い空気の壁を切り裂きながら鳳王は空の高みへと舞い上がっていくのだった。
 背後からジャークスレンダーが追尾して来ている。
 レーダーには、接近してきているジャークスレンダーの影が赤い点滅として示されていた。
 鳳王はそれを引き離すことができずにいる。ジャークスレンダーも、さらにスピードを上げているのだ。
 警報音がコクピット内に鳴り響いた。
 背後から追尾ビームが発射されている。
 これにつかまっている限り、逃げることはできない。

「鳳王! 振り切れッ!」

 僕は握っている操縦桿の角度をさらにつけて、ほとんど直角にした。
 とにかくスピードで振り切るんだ。
 ドーン! 音速を突き抜ける時の音が聞こえた。
 もう高度はゆうに一万メートルは超えているにちがいない。
 僕はこのまま行けるところまで行くことを決めた。

「もっとだ、もっと! 鳳王、限界まで行くんだーーーーッ!!」

 鳳王の機体が摩擦熱でまるで燃えているかのように赤く染まっていた。

 

 視界がふいに変わった。
 そこには宇宙空間が広がっていたのだ。
 目の前に、無数の星が見えている。
 昼間なのに、そこは何もさえぎるものがない星の海だった。
 僕は操縦桿の角度をゆるめて、エンジンを止めた。
 それまで僕をシートに押しつけていた圧力がふいに消えて、逆に何も感じなくなる。
 重力が弱い。まだ完全に無重力ではなかったが、重さをほとんど感じなかった。
 そして静かだ。
 音が何も聞こえない。さっきまで鳴っていた警報音も消えている。
 どうやらジャークスレンダーを振り切ることができたようだった。
 ゆっくりと鳳王の機体は回転をしている。
 ここでは時間がゆっくりと流れているように感じた。
 視界に地球が入ってきた。はるか眼下に雲に覆われた日本が見えている。
 さっきまであそこで戦っていたのが嘘のように思えてくる。
 だが事態は最悪だ。
 仁や吼児の状態もまだわからない。
 地球防衛組のみんなとの連絡もまだ取れていない。
 ここで僕が感傷に浸っている時間はないのだ。
 ジャークスレンダーはどうしたのだろうか……?
 鳳王を追跡するのは諦めたのだろうか。それならやつは、どこに行ったんだ!?
 僕は機体を旋回させて、地球へと機首を向けた。
 やつが戻ったとしたら、剣王と獣王に攻撃を矛先を向けるに違いない。もしそうなっていたとしたら、僕がここまで引きつけた意味がなくなってしまう。
 宇宙の美しさに見とれて、一瞬だけ警戒心を忘れた自分の甘さが嫌になった。
 次の瞬間、何かが背後にいるのに気づいた。
 不気味な悪寒が背筋を走り抜けたのだ。
 警報音が消えていたことで、僕は油断していた。その隙をジャルバンに突かれたのだ。
 ズシュッ!
 激しい衝撃と同時に、おぞましい音がコクピットに響き渡った。
 鳳王の背後から、ジャークスレンダーの腕の剣が機体を貫いていた。
 バシッ、バシッ、バシッ……!
 放電と火花がコクピットを走り、うっすらと煙が充満し始める。
 ふいに警報音が戻り、危険な状態であることを教えてくる。
 それは鳳王の悲鳴に聞こえた。

「フフフフ、この私から逃げられると思ったのか。甘いぞ、月城飛鳥」
「ジャルバン……」

 僕は反射的にジャット噴射装置を作動させようとしたが、作動不能のランプが点くだけだった。
 機体を貫かれたために、鳳王の神経回路が切断されたようだ。
 いくつもの箇所が動かなくなってしまっていた。
 操縦桿を動かしても、機体はほとんど反応してくれない。
 鳳王が反応できないのを見て、ジャルバンは嘲るように話しかけてくる。

「フフフフ、いいざまだな。このまま宇宙のゴミにしてやろうか」
「クッ……!」
「動かない機体は、きさまにとっては柩でしかない。永遠にこの宇宙をただようがいい。まぁ、酸素がどこまでもつかだろうがな。ここでとどめは刺さないでいてやろう。酸素が切れて、呼吸ができない苦しさのなかで、自分を呪いながら死んでいくがいい。おまえの仲間たちも、すぐにおまえと一緒のところに送ってやるよ。きさまが一人で寂しくないようにな。フハハハハハ」

 高らかな勝利宣言と同時に、ジャルバンを鳳王に突きたてていた剣の腕を引き抜いた。
 再び衝撃音と放電がコクピットに響き渡った。
 僕は何をすることもできない。
 振り返ると、そこにはもうジャークスレンダーは居なかった。
 また静けさが戻ってくる。
 耳を澄ますと、小さなシューーッという音だけが聞こえている。
 機体のどこからかエアーが漏れているのだ。
 だとしたら空気が無くなるのは、予定よりもさらに早くなるはずだ。
 どうしたらいいんだ……?
 僕はパニックに陥りそうになるのを必死に耐えていた。
 美しい星々に囲まれていたが、僕は宇宙で孤独だった。

 

 長い時間が経ったようにも思えたが、実際はほんの数分が過ぎただけだった。
 ふいにスピーカーから耳慣れた声がした。

「飛鳥くん、しっかりして」
「マリア……」

 落ち着いたマリアの声を聞いた瞬間、涙がこぼれそうになった。
 僕は孤独ではなかったのだ。

「鳳王の状態は、把握してるから」
「司令室で鳳王のダメージはモニタリングしています」

 そう言うのは勉だ。

「勉!」
「ジャルバンは鳳王に決定的なダメージを負わせたと思ったようですが、そうではありません。安心してください」
「そうなのか……」
「いま、鳳王の中で自動修復機能が働いています。ダメージを負った箇所を、なんとか動けるようにするために鳳王が必死で闘ってくれてるんです」

 僕は絶望を一瞬でも抱いたことを恥じた。
 鳳王は僕を守るためにこの瞬間も闘ってくれていたのだ。

「鳳王……」

 僕は操縦桿とその前にあるディスプレイにそっと手を当てた。
 鳳王に対する感謝の気持ちを、それで伝えたかったのだ。
 たしかにさっきまで聞こえていたシューッという空気が漏れる音も消えている。
 修復機能が、空気漏れの箇所を塞いでくれたに違いない。

「仁と吼児の状態はどうなんだ?」
「大丈夫です。ダメージは追っていますが、そこまで深刻なものではありません。飛鳥くんが、ジャークスレンダーを引きつけてくれたおかげで、さらなるダメージを負うのを回避できましたから」
「良かった……」
「でも、あいつまた襲ってくるわよ」

 そう言ったのは春野きららだ。

「きらら……」
「飛鳥くんがいてくれなきゃ、鳳王がいてくれなきゃ、剣王と獣王だけじゃライジンオーにはなれないわ。早く、こっちに戻ってきて!」
「わかってる。動けるようになったら、すぐに戻る!」
「お願いよ。飛鳥くん!」

 まだ危機的状況から脱したわけではないのに、きららの声を聞いていたら、一瞬にして小学校時代を思い出した。
 放送委員で毎日校内放送を担当していたきららの声を聞きながら、僕たちは昼御飯を食べたり、遊んだりしていたんだ。
 きららは今も高校で放送部に所属している。本物のアナウンサーになる日も近いだろう。
 小学生の時から自分がなりたい仕事を見つけて、それに向かって邁進を続けてきたきららって、けっこうすごいやつなんだなと、ふと思ったりした。

「飛鳥くん、なにぼんやりしてんのよ。しっかりして!」

 そうきららに言われて、僕は目の前にモニターに目をやった。
 そこには地球防衛組の司令室に集まっているみんなの姿が映っていた。
 全員高校生になっている。その姿に、ちょっと前まで僕が一緒にいた小学生時代の彼らの姿がダブって見えた。
 みんな成長して大きくなっているが、おもかげはしっかり残っている。
 いつものみんなだ。
 みんなが僕を待っていてくれる。
 そう思ったら、なんだか涙がこぼれそうになった。
 自動修復が終わったことを知らせるモニターランプがグリーンに変わった。

「よーし、今から反撃開始だッ!」

 僕は操縦桿を地球に向けた。

(つづく)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


次回3月20日更新予定


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