【第36回】絶対無敵ライジンオー 五次元帝国の逆襲

ライジンオー

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『僕は地球防衛組を選んだ』

 

 僕たちは普通の日常生活に戻っていった。
 それまでの日々と同じように。
 ただし一つだけ変わったのは、僕たちが完全に地球防衛組として復活したということだった。
 五次元帝国がまだ世界のどこかに存在しており、邪悪獣がいつ出てきてもおかしくない状況だということがわかったいま、僕たちは僕たちの事情だけで地球防衛組を引退するわけにはいかなくなったのだ。
 国の防衛隊からの要請もあった。
 邪悪獣対策は、国家的な危機として認定され、そのための防衛対策もそれなりに取られてはいるのだが、今回の事件を通して地球防衛組の存在意義があらためて認められてしまったのも、政府を大きく動かした要因だったようだ。
 僕たちのところに総理大臣から直々の連絡があり、僕たち地球防衛組は全員で官邸に呼びだされて、対邪悪獣としての民間ボランティア団体としてこれからも働いていくことを要請されたのだ。
 僕たちがまだ高校生で未成年だということで、政府もかなり慎重だったようだが、マスコミをふくめて国民的な要請があるということで、政府の決定が下りたらしかった。
 もちろんボランティアなので報奨金が出るわけではない。
 僕たちもそんなことはどうでも良かった。
 僕たちは、僕たちが地球防衛組で居続けられるということが嬉しかった。
 だから全員がこの要請を受けいれたのだった。
 いつもは普通の高校生としてそれぞれ生活をしつつ、いざ邪悪獣が出現したときには、陽昇学園に集合して地球防衛組としての仕事する。
 それが僕たちの日常になったのだ。

 

 ただ高校を卒業して、それぞれがこの町を離れることになったときには、また事態は変わるかもしれない。
 地球防衛組で居続けるのかどうか。
 そのことは何度もみんなで話し合うことになった。
 大人になっても、僕たちは地球防衛組で居続けられるのか。

「俺たちは、永遠に地球防衛組だぜ!」

 仁はいつもこう言う。
 もちろん僕も地球防衛組でいたいと思う気持ちはある。
 現実問題として、それができるのかどうかというのには、正直少し不安がある。
 でもそれは目の前に現実が押し寄せてきたときに考えればいいんだというポジティブな気持ちになっていた。
 これは以前の僕にはなかった思いだった。
 もしかしたら仁の影響かもしれない。
 いや、たぶん仁の影響だ。
 まちがいない。
 起きてもいないことを心配するより、目の前に起きていることに集中して生きていこう。
 今の僕は、そう思うようになっていた。

 

 小学校五年生の時に、僕たちはエルドランに導かれて地球防衛組になってしまった。
 それはほんの偶然のことだった。
 僕たち以外の子供たちに起きていたことかもしれなかったのだ。
 だが僕たちに起きてしまったからには、それは必然だったのかもしれない。
 僕たちの運命が、そのとき動きだしたのだ。
 そう、あのとき、メダルを掴んだのは、僕たち自身だ。
 僕たちが、僕たちの運命を決め、掴み取った。
 選んだのは、僕たちだったんだ。
 目の前の瞬間、瞬間を、自分で決めてきた。
 だからこそ僕たちは、いまここにいるんだ。

 

 邪悪獣ワスレンダーとの闘いが終わってしばらくして、僕は一度だけもう一つの世界の僕に再会した。
 いや再会というのは、ちがうかもしれない。
 夢の中で、彼に出会った気がしただけだから。
 僕はまた小学生の月城飛鳥になっていた。
 部屋の中で机に座って勉強をしている僕と、ベッドに座って僕を見ている僕がいた。
 いや、逆だったかもしれない。
 とにかく僕に僕が話しかけてきたのだ。

「あなたは、高校生の僕ですよね?」

 僕は、少し懐かしかった。
 自分に会って懐かしいと言うのは、なんだかおかしな気もするけど、そう思ったのだ。

「うん、たぶんそうだと思うよ」
「また僕の身体を借りにきたんですか?」
「いや、そうじゃない。もう、充分だから」
「良かった。また僕が、眠ってなきゃならないのかと思いましたよ」
「そっちは、どうだい? みんな元気かい?」
「ええ。元気です。邪悪獣が頻繁に出て来るんで、けっこう忙しくしてます」
「そっか、そっちはまだ小学生なんだもんな。小学生のときは、僕らも忙しかったもん」
「高校生になったら、あんまり闘わなくても良くなるんですか?」
「ああ、邪悪獣があんまり出なくなるからね」
「そうなんだ……」

 小学生の飛鳥は、すこしほっとしたように微笑んだ。

「もっと未来のことを教えてくれませんか。僕たちが、どうなっていくのか?」
「えっ?」
「だって、あなたは未来の僕なんでしょ?」

 小学生の飛鳥は、僕のことをタイムトラベラーだと思っているようだった。
 でもそうじゃないことを、僕はもう知っている。
 僕が彼の身体を借りて体験したことは、実際に僕が小学生の時に体験したことと、少しずつ違っていたからだ。

「いや、たぶんそうじゃない。僕は、未来の君じゃないと思う……」
「えっ、じゃあ、あなたはなんなんですか?」
「もちろん、僕は君だし、君は僕だよ」
「言っている意味がわかりづらいんですけど?」
「うん、そうだね。僕にもはっきりとわかってるわけじゃないんだけど……今の君が、僕の過去じゃないということだけは、なんとなくわかるんだ……」
「もう少しわかりやすく言ってください」
「おそらく時間軸は一つじゃないってことなんだと思うんだ」
「時間軸は一つじゃない……」

 僕は懸命にこのことを小学生の飛鳥に説明しようとした。
 その内容は勉や吼児とも話して、いちおう僕なりの結論をつけたことだった。

「僕たちは、いろんな瞬間、いろんな決断をするだろ。朝、目を覚まして、歯を磨くのか、顔を洗うのか、どっちを先にするか? それも一つの決断だよね」
「ええ……」
「歯を磨くか、顔を洗うかの決断は、あまり人生に大きな違いは生み出さない。でも、その後の人生に大きく影響を与える決断って、きっとあると思うんだ」
「そうかもしれません……」
「たとえば、誰かを好きになったとき、それを告白するか、告白しないかとかね。告白したら、もしかしたら、その相手との関係性は変わっていくかもしれないだろ。しなかったら、何も起きなかったこととして、それまでと変わらない日々が続くだけだけど」
「告白と、僕たちのことは、あんまり関係ないような気がしますけど」
「関係があるんだよ。人生には、分岐点があるってことさ」
「分岐点……」
「告白したあとの人生と、告白しなかった人生と、二つに分かれるってこと」
「それってパラレルワールドってことですよね」
「そう、それが言いたかったの」
「だったら、はじめからそう言えばいいのに。僕とあなたの世界は、パラレルワールドかもしれないってことでしょ。過去と未来じゃなくて」
「そう、さすが、僕。頭がいいね」
「自分にほめられても、あんまりうれしくないなぁ」

 と、小学生の飛鳥は笑って言った。

「きっと僕たち以外にも、選んだ僕と、選ばなかった僕が、それぞれの世界に生きているかもしれないってことですね」
「うん、僕はそう思ってるんだ」
「選んだ僕と、選ばなかった僕か……」

 そう言ったのは小学生の僕だったのか、高校生の自分が言ったのか、今でははっきりしていない。
 でもそれはどうでもいいような気がしている。
 小学生の僕と夢の中で話したのは、そこまでだった。

 

 僕は、地球防衛組でいることを選んだ。
 それを後悔しないし、後悔することはないだろう。
 けっして。
 だって、僕たちはいつもどこでも絶対無敵の地球防衛組なんだから。

(おしまい)


著者:園田英樹

キャライラスト:武内啓
メカイラスト:やまだたかひろ
仕上:甲斐けいこ
特効:八木寛文(旭プロダクション)


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