SDガンダム ザ・ラストワールド【第5話】
第5話「武人墜つ ―レクイエム―」
ギラーガとの戦いの後、孫尚香を仲間に加えた忍者エクシアと殺駆頭はトチョーを目指して東へと旅を続けていた。
突如前方の街から黒い爆炎が立て続けに上がり、建造物が崩壊する轟音が響く。
急ぎ街――サギノミヤというらしい――に駆け付けた三人が見た光景は、巨大兵器同士による戦いだった。
一方は刀を携えた機械甲冑兵器、黄金機兵アルジャーノン。もう一方は大砲を装備した戦車。
機兵に対し砲撃しつつ距離を取っていた戦車は、突如巨大なサイに姿を変えるや猛然と突撃する。その強靭な角と重量は、振り降ろされた剣もろとも機兵の胴を貫いた。
爆散する機兵から、搭乗者である真紅の騎士が投げ出される。
「……フッ……愛機の仇も討たずに散っては美しくない、な……」
吟遊騎士レッドウォーリアRが傷だらけの身体を起こす前で、愛機はGソウルとなってサイへと吸収されていく。
サイは全身を輝かせ立ち上がると、鋼鉄の長い手足、右肩からは巨大な砲が伸びる異形の巨神へと姿を変えた。
かのGARMS総指揮官コマンドガンダムにも似た彼の名は、ストライクコンラッドガンダム。自身が兵器に変形する能力を持つ戦士だ。
「ククク……これが巨神の力か。これでコマンドとの決着を付けてやる。その前に……目障りだ、消えろ」
満身創痍ながらも剣を構える騎士を見下ろし、巨神の大砲が火を噴いた。
周囲が業火に焼かれる寸前、一陣の青い閃風が騎士を救い出す。
「姫はこの男を頼む! 殺駆頭殿は援護を! 参る、忍法トランザム!」
巨神を相手に忍法で翻弄するエクシアだったが、さらに厄介な男が現れる。
「からくりの巨神とは昔話みたいじゃないか? 俺が相手になってやる!」
以前と異なり、騎士を思わせる白蒼の鎧を纏う亜神体の頑駄無真駆参だった。
必殺の砲撃を見切る亜神体と忍者達に応戦しつつ、コンラッドは考えを巡らせる。
巨神体の自分と渡り合うとは、相当の手練れだ。ならばこちらもさらに強化するまでだが、この場でGソウルを手に入れるには……。
瓦礫の影で騎士を介抱する小娘が目に止まった。即座に照準を合わせ、最大火力で砲撃する。
「くらえっ、パーフェクトランチャー!!」
「えっ――?」突然の砲撃に身動きがとれない孫尚香。だがそこへ――
「Gソウルとやら、ワシは呪いなどに屈しはせん! 力をよこせ!」
後方での大爆発に振り返るエクシア。自分や真駆参じゃない、一体何を狙った!?
「暗黒砲で相殺してこれか……ま、呪いの鎧で人助けというのも洒落が効きすぎだ」
爆煙の中、殺駆頭が立っていた。初めて見る亜神体の鎧は無残に砕け、致命傷は明らかだ。後ろには気を失った騎士、呆然とする孫尚香の無事な姿があった。
「若造、貴様といると古い友人を思い出すせいか、甘さが伝染っていかん……貴様が救おうとした者達、最後まで守り抜いてみせろよ……」
光となって散る殺駆頭。そのGソウルは巨神体の元へ飛んでいく。後には、愛刀だった雷光丸だけが大地に突き立ち、墓標のように残されていた。
想定外の殺駆頭の行動に気を取られたコンラッドがGソウルを吸収する寸前、
「斬り合い中によそ見とはいい度胸だ。セコい手で強くなろうとしやがって」
真駆参のソードが巨神を袈裟懸けに切り裂いた。
「殺駆頭殿……オオオォォーッ!!」
怒りとも悲しみともつかない叫びと共に、七星刃の術で亜神体となるエクシア。虹色の風が荒れ狂い、巨神体と真駆参の見境なく襲い掛かる。
まだ消滅しきらないコンラッドの巨体に視界と行動を遮られた真駆参には、閃風の必殺奥義・虹刃の舞を避けようがなかった。
「ば、馬鹿なッ!」
纏った神器を間一髪で脱ぎ去り、辛うじて自身への直撃だけは避ける真駆参。
破壊された神器は光となって、その場に溢れる大量のGソウルと共にエクシアへと流れ込む。
金色の輝きと共に、エクシアはその両肩、両足に巨大な刃を持った巨神体へと姿を変える。いつの間にか空は黒雲に覆われ、周囲は闇夜のように暗くなっていた。
同じ頃―
「……ほう、オレ様が感じ取れるほどにGソウルを高める者もいるか。丁度いい、有象無象どもを狩るのにも飽きたところよ」
黄金の鎧を纏った男はそう呟き、身の丈よりも巨大な黄金の剣を軽々と担ぎ上げた。
(つづく)
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イラスト:アストレイズ
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