【第1話】SDガンダム ザ・ラストワールド ステージ2
ステージ2
第1話「龍帝激突!!-ドラゴンエンペラー-」
閃風忍者エクシアたちが戦ったサギノミヤから遠く離れたウエノの街。この地でも、Gソウルを秘めた戦士たちの戦いが繰り広げられていた。
漆黒の蛇を思わせる巨神に対し、自身もその姿を巨神体へと変貌させる戦士――その名は龍帝ユニコーン。
それはまさしく伝説の時代、魔神・蚩尤との戦いで発現させた天神の姿。
「取り戻したぞ、天の龍王たる力……邪悪を滅ぼす神たる力! 待っていろ蚩尤、こいつを倒したら次は貴様の番だ!」
本来の姿となった龍帝の剣技が漆黒の巨神に放たれる。しかしその凄まじい力は、周囲の街すら巻き込んで崩壊させていく。
「いかん、このままでは街全体が壊滅する! 今は民を逃がすのが先だ、急げ!」
戦えぬ者たちを誘導しながら、龍帝を止めるべく双龍刀を構える白龍頑駄無。
「あれが俺たちの祖、伝説の龍帝だというのか? 民を犠牲にしてまで勝つことに、何の正義があるというんだ!」
自身と龍帝の正義の違いに戸惑いながらも、剣を龍帝に向ける劉備ガンダム。
「邪魔をするな! 我は何としてもこいつを倒し、三璃紗に帰って蚩尤を倒さなければならないんだ!」
龍帝と、その魂を受け継いだはずの二人。時空を超え、三人の“龍帝”それぞれの正義がウエノの地で激突する!
* * *
「一体どうなってるんだ、この世界は何なんだ! 何で神たる我があんなちっぽけな妖怪ごときに追い回されなきゃならないんだ! 雀瞬と虎暁はどこ行ったんだ!」
龍帝ユニコーンは、両肩に砲を持つ黄金の戦士に向かって怒鳴っていた。
蚩尤を倒すべく、仲間と共に最後の戦いを繰り広げていた龍帝は、突如強烈な光に包まれ、気が付くとこの地――トーキョーの東に位置するアサクサ――にいたのだ。
しかも神であるはずの自分が、どういう訳か修行を始める前の姿に戻っており、目の前に現れた小妖怪の体当たり程度で倒れる始末。黄金の戦士は、その一部始終を見ていたという。
「まあまあ、最初から強かったら面白くないだろ? 敵を倒し、そのGソウルを己の力とする、それがこの世界のルールってヤツでね。あんたもGソウルを集めれば、力が戻るかもしれねえぜ」
「龍帝たる我が何でそんな事を……我には三璃紗に倒すべき敵がいるんだ。どうすれば元の世界に帰れる?」
「……。この世界で最強になれば神も同然だし、帰れるかもな?」
「随分詳しいな。じゃあ……仮に貴様を倒したら、どれだけの力が手に入る?」
一瞬の緊迫。しかし黄金の戦士が態度を変えることはなかった。
「おお、怖いねえ。ま、何にしてもまずは強くなるこったな、一本角のダンナ」
そこへ、一人の町娘が走って来た。真っ赤な髪を左右で結った少女は、寧那と名乗る。
「すっごく悪ーいヤツに追われてるの! 何とかしてよ、一本角のお兄さん」
すぐに追手らしい大男が姿を現した。骸骨をあしらった帽子、真っ赤なボディに黒マントを羽織っている。それを見るや龍帝の背後に身を隠す少女。
「その娘を渡してもらおうか。悪いことは言わねえ、このキャプテンブラッディ様とやり合おうなんて思わんほうがいいぜ」
「なあ、こいつを倒せばGなんとかが手に入るんだな?」
黄金の戦士に問おうと振り返る龍帝。だが、すでに彼の姿はそこにはなかった。
「……まあいいか。こんなヤツはとっとと倒して、一刻も早く三璃紗に戻らないとな! 行くぜ、龍牙斬!!」
しかし閃光双龍刀の一撃は何故か威力を発揮せず、大男にあっさり弾かれてしまう。
「おいおい……この程度で俺様と戦おうってのか? 笑わせるな、コマンドの野郎の部下どもの方がまだ骨があるわ!」
手にした大振りのナイフ、ネオ・キルマスターで斬りかかるブラッディ。辛くもかわす龍帝だが、次いで繰り出された豪快なキックに蹴り飛ばされてしまう。
「これは……参ったな」
龍帝の力は、彼が思った以上に弱くなっていた。黄金の戦士曰く、力を取り戻すには敵を倒す必要があるとのこと。だが、目の前の男は強敵で、今の状態では勝てるかどうかわからない。さらに、事情はどうあれ助けを求める少女を見捨てるなど、神の、侠の矜持が許さない。
自身の陥った状況に呆れつつも龍帝は寧那を庇い、再び立ち上がった。
「度胸だけはあるようだな。だが、それだけじゃこの世界では生きていけねえぜ!」
ブラッディが背負った巨大な機関砲“ハイパーメガ・スマート・ガトリングガン”を前に回し、その銃口を龍帝に向けたその時、突如けたたましいサイレンが鳴り響いてきた。
警光灯を輝かせてサイレンと共に現れたのは、車両型の機動メカに乗った戦士――。
「ボクはタイムパトロールのトライガンボイです! あなた方海賊団の中に、時空犯罪者がいるとの情報を得ました。双方直ちに戦闘を中止し、捜査への協力を要請します!」
龍帝の背後で、寧那が薄く笑う。それに気づく者はいなかった。
(続く)
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イラスト:牟田口裕基
©創通・サンライズ