【第5回】高橋良輔の言っちゃなんだけど
『言っちゃなんだけど……その5』
前回は修業時代を経て先人に技術の習得を認められた人を、とりあえず職人とする、辺りで終わってたような……。職人のその後はどうなるか、看板上げてやってるうちにやがては習得した技術から好むと好まざるとにかかわらずはみ出るというか外れていかざるを得ない。言っちゃなんだがそれが一本立ちした職人、一人前の職人ってもんなんだなあこれが。つまりは自分が出てくる、出てきてしまう。言い方を変えれば個性と言う奴かな。逆を言えば修業時代からはみ出たものを持たない、教わったものから一歩も出ないような人は職人とは名乗れなくなっちゃうんだいずれ、なぜならだんだん注文が薄くなる、来なくなる。間違いなく来なくなる。つまりは食べていけなくなる。
あたしらの場合は、
「あんたは職人かい?」
と聞かれると、
「うーん、職人じゃないよね」
と答えざるを得ない、あたしらに言わせればそれは修業時代がなかったからだ。強制される、鋳型にはめられる、無理偏に拳骨時代がなかった。無理偏に拳骨は職人に背骨を作る。あたしら技術に背骨が入ってないもんね。これ生涯付きまとうコンプレックス。
職人話が長くなっちまった。はじめは業界で生き抜いていくヒケツ、ヒミツの話だったんだよね。前説が長くなっちゃたので結論を簡単に言っちまう。
多きに付かない
ハヤリを追わない
これが無理やり自分で作ったあたしらの背骨です。もう一つおまけで、
色合いを変えないこと
まあ言い方を変えるとヒケツ、ヒミツは“良輔商店”に徹してきたことだと思うんだよね。どうだろうか。
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