【第12回】高橋良輔の言っちゃなんだけど

高橋良輔

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『言っちゃなんだけど……その12』

 生きているということは、ある種アミダくじを引き続けることに似ている。いつも選択と決断の連続である。ま、懸案の大小はあるが。あたしら今現在かつてはあまりなかった選択と決断を迫られている。それは何か?
 あたしらの数少ない自慢の一つに体が丈夫なことがある。むろん入院経験などなく、この歳になるまで骨折も手術もなし、それどころか二日と寝込んだこともない。そのあたしらに異変が確認された。異変!? ちょっと大げさか、簡単に言えば喉にポリープができたのである。喉、正確には声帯にである。医者に聞いた。

「声帯にポリ-プって、歌手なんかによく出来る?」
「市場なんかの競り売りの人なんかにも良くできます」
「はあ…」

 声帯を無理使いすると出来やすいそうだ。思い当たることがある。カラオケですか? ってそうじゃありません! 言っちゃなんだけどこれは職業病だな。大学の先生やって今年で11年になる。ま、あたしら授業ではめいっぱいしゃべり倒すからね。放課後同僚の先生方と時間外会議(はい飲み会です)でも人一倍デカい声を張り上げているし。だいたいが本業の監督業というのはしゃべるのが仕事と思っていたし、かれこれ喉の無理使いは4、50年になる。なんとなく声がかすれたり不意にひっくり返ったりするようになったので診てもらったのだが、デキちゃったものはしょうがない。

「で、どうしたらいいんでしょう?」
「まあ、タチが悪そうでもないのでこのままでも…でも気になるようでしたら…」

 気になったから診てもらったんだがねえ、

「五分五分…うーん、そうですねえ」

 と煮え切らない。

「やっぱり切ったほうがいいですか」

 と言うと、

「そうですねえ…六分四部、切ったほうがいいかもしれませんねえ」

 と宣う。

「…そうですかあ」
「ま、少し考えてみてください」

 さ、ここですよ。人生アミダくじというのは、選択と決断! 声帯のポリープごときで大げさなとおっしゃるなかれ、切るともなると4、5日の入院、うち一日は全身麻酔のため近親者が付き添わないといけないとの御宣託。あたしらの人生になかったことだ。
 この展開進展決断は次回に。


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