【第11回】運び屋椿

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Episode1 (11)

「ほらっ、カエデ! 起きな!」

 ツバキの声で、目が覚めた。
 眠い目をこすりながら、車外を見るとそこは美しい水の国だった。
 いくつもの塔のような自然石が天を突いている。
 そこからこぼれ出た水が、滝を作っている。
 白い鳥が群れを作って羽ばたいて行った。
 窓を開けると、すがすがしい香りを胸いっぱいに吸う。
 水面で赤い魚がはねた。

「うわぁ」

 さっきまでの眠気も、見ていた夢も全部吹き飛んでしまった。

「ここ、フロギ星?」
「じゃなかったら、大変でしょうが」
「だよね! きれな星だね! 初めてだよ!」
「終わったらゆっくりしたいところだね」
「だねだね!」

 思わず顔を見合わせて、笑顔が込み上げる。

「ほら、目的地も見えてきた」

 進行方向には巨大な建物が見えてくる。
 青い煉瓦れんがの屋根に、透き通るほど白い壁のお城。
 その下には情緒あふれる街並みが広がっている。
 すごくいい!
 こんなところで、のんびり暮らしてみたいなぁ。

 トラックは真っ直ぐ城に向かって、進んで行く。
 街の中はお祭りのような飾りつけでいっぱいだった。
 そう、これからそれが始まるんだから。
 トラックは城の敷地に入る。
 すると、旧世紀を思わせる古風な格好をした衛兵たちが飛び出してきた。
 その中に、飾り気がないながらも凛とした青年が心配そうにこちらを見ていた。
 依頼主――なのだろう。

「お待たせ! ご注文の品、お届けに参りましたぁ!」

 言いながらツバキは、荷台のロックを解除。
 荷台の扉が開く。
 そこにはさっきまでボクがチクチク裁縫していたウェディングドレスが姿を現す。
 その瞬間、集まった者全員が溜息を漏らした。
 フロギ星の清浄な空気と光に照らされて、ウェディングドレスにつけられた宝石が七色に輝いたからだ。
 なるほど、これは値打ちがあるね。
 先ほどの依頼主――おそらくはこれから結婚式を控えていた王子がこちらにやって来る。

「ありがとう。本当に届けてくれるとは」

 ツバキはあいまいに笑って返した。

「まあ、早くて確実なのが、あたしの売りだからね」
「なにか礼をさせて欲しい」
「礼なんていらないよ。ちゃんとバローニのオッサンから料金はせしめるから」
「しかし、彼に無理を言ったのは私だ」
「う~ん、そういうことなら………ひとつ欲しいものがあるんだけど」

 ツバキと王子様(?)はなにやらこそこそ話をしだす。
 さてなんの話をしてるのか……。
 さてさて、これからすぐに帰るのかなって思ったけど、そうではなかった。
 なにしろ、この五日間はかなりの強行スケジュールだった。
 ツバキなんかは、たまにちょっと仮眠を取るだけでずっとハンドルを握ってたのだ。
 一日、二日くらい羽を伸ばしたっていいよね?

 そんなわけでボクとツバキは、ホテルを取る事にした。
 ――のだけど、どうやら王族の側から手を回してくれたらしい。
 すでにボクたちの泊まる高級ホテルが用意されちゃっていたのだ!
 やった!

 その日はお風呂にゆっくりつかって、足の伸ばせるベッドでぐっすり睡眠。
 そして結婚式を控えてお祭りムードの街へと飛び出す。
 観光気分で街を周って、ご当地名物を食べて。
 でもまあ、次の仕事があるから、あんまりゆっくりって訳にもいかない。
 のんびりしてると帰りの道が渋滞しちゃうのだ。

 ほら、こういう風光明媚なフロギ星でしょ。
 この星の一番の収入源は観光。
 しかも王族の結婚式とお祭りがあるのだ。
 街のお祭りは一週間行われて、そのあいだはすごいたくさん人が来る。
 そうなると帰りの道はたいへんな事になるでしょ?
 ボクらはちょっと見てから、そのまま、帰途につく事にした。

「あーあ、あっという間だったね」
「いいんじゃないの。旨いものも食べたし」
「そっだね」

 そんな話をしながら、トラックの止まる駐車場に向かう。
 すると、後ろから誰かが追ってくる靴音が聞こえてきた。
 なにかと思って振り向く。
 そこにはあのウェディングドレスを身に纏った、花嫁の姿があった。

「あれ、これからパレードでしょ? いいのこんなとこにいて」

 ボクがそういうと、花嫁はモジモジしながら満面の笑みを浮かべる。

「あの、どうしてもお礼が言いたくて」

 そう言うと彼女はボクとツバキの前に歩み出る。

「本当にありがとうございました。こんなステキなウェディングドレスで結婚式を挙げられるなんて……あなた方にどんなお礼を言っていいのか」

 するとツバキは視線を逸らしながら、

「い、いや、仕事だし、べつに……」

 などとボソボソいう。
 なになに?
 もしかしてテレてんの?
 そんなボクの視線に気が付いたツバキは、ムッとしながら、

「ほら、行くよ」

 と言って歩き出してしまう。
 素直じゃないなぁ。

「じゃあ、よい結婚生活を」

 ボクは花嫁に笑顔を向けてツバキの後を追う。
 彼女も深く頭を下げて見送ってくれた。
 あーあ、もう少しゆっくりしたかったなあ。
 テレてるツバキをちょっとからかいながら、帰るとしよう!
 そんな事を考えながら、助手席に乗る。

「よし、行くよ」

 ツバキの言葉に「はいはい」と返しながら、ふと冷蔵庫の隣に見慣れない物があるのが目に留まる。
 それはフロギ王家の紋章が入ったティーセットだった。
 え? え?
 もしかして、これって?
 そう思って、ツバキに目を向ける。
 彼女はこちらを見ようともせずにエンジンに火を入れ走り出す。

「えへへー、ありがとね、ツバキ」
「はぁ? なにが?」

 別に。
 なにがとは言わないけどさ!
 あーあ、でもこれじゃ、帰り道にツバキをからかえなくなっちゃったな。
 ボクは上機嫌で、さっそくポットのお湯を沸かしたのだった。

(つづく)


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次回3月28日更新予定


著者:内堀優一
原作:Original Star-IP Office
デザインコンセプト:斎藤純一郎、赤根健良
アニメーションキャラクターデザイン:鈴木竜也
アニメーションメカデザイン:田口栄司
企画協力:松田泰昭


©OSO


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