【第13回】運び屋椿

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Episode2 壺と令嬢とハイウェイレース(2)

 堂島財閥といえば、宇宙開発業者の中で三指に入る大財閥だ。
 いまだ全てが開拓されていない宇宙空間を切り拓く巨大な企業。
 STRIX社、河沙公司フェイシャカンパニー、そして堂島財閥。
 この三社は、圧倒的な財力と企業としての力を持っている。
 ある意味では、最高権力を持っていると言ってもいい。

 各星々、宙域を統べる政治家たちは、その範囲内でしか事を動かせない。
 だが企業は違う。
 あらゆる星、手の届く宙域において商売をし、今やその力は一国などを凌駕するほどに膨れ上がってしまった。
 と、まあ、そんな具合なわけで、それら三社は雲上人なわけ。

「ま、まさか、あの堂島財閥の令嬢が、トラックを転がしてるって……想像つくわけないじゃない! ってか、ものを知ってる知らないじゃなくて、なんでそんな大企業の令嬢が、こんな所でトラック乗りしてんのよ!」
「趣味らしいよ」

 ……マジで。

「そんなことって……あるの?」
「まあ、ランコとは小学校からの付き合いだからね」
「え? なに? ツバキってもしかしてお嬢様?」
「あははは! んなわけないじゃん」
「……だよね」
「あいつんとこの教育方針なんだって」
「教育方針?」
「そもそもがケタはずれな金を動かしちゃう家で生まれ育ったら、感覚がおかしくなるでしょ」
「ま、まあね」
「だから普通の一般市民が通う学校に行って、そういう普通の人たちの感覚を養うんだってさ」

 はぁ、なるほど。
 まあ、理に適っていると言えなくはない。

「で、それでなんでツバキと仲が悪いのかってのが全然見えてこないんだけど」

 するとツバキはまたおかしそうにケラケラ笑った。

「そりゃあんた、学校の頃からランコはあんな調子だからさ、まあ……あたしとぶつかる、ぶつかる!」
「ああ、なんかわかる気がする」
「あいつも気が強いだろ」
「うん」
「んで、あたしも気が強いでしょ」
「うん、すごく!」
「そりゃもう、取っ組み合いのケンカもしたし、なにかにつけて突っかかって来るんだよね」
「ははぁ、なるほど、因縁浅からぬ仲ってことね」
「そんなとこ。まあ、あれかな……」

 ツバキは軽く息を吐いて、懐かしそうに目を細める。

「そんなぶつかってばかりだから、あいつトラック乗りになっちゃったのかな」
「え?」
「あたしに勝てば、案外あっさり辞めちゃうのかもね」

 うーん……そっか、そうなのかな?
 ボクにはそういう相手っていたことがない。
 だからあんまり想像がつかなかった。
 でもちょっとうらやましい、とも思った。

 さて、もう間もなく太陽系を出ようとした頃である。
 異変が静かに始まっていた。
 なんとランコさんのトラックを取り巻くように、次々と別のトラックがやって来たのである。
 気が付くと、ランコさんとその取り巻きが道を塞ぐように大挙していた。
 さすがにこれに気が付いたツバキが舌打ちをした。

「チッ! ランコめ、やりやがった!」
「え? なにを?」
「よく見ろ、あのトラックのクレジット」

 言われて道を塞ぐトラックの後ろに書かれている小さな文字に目をやる。

『堂島運輸』

 そう、堂島財閥が抱えるトラックだ。
 つまり、ランコさんを取り囲むように合流してきたトラックは、偶然ではなくランコさんを守るようにやって来たのである。

「えええ! なんで?」
「あいつはそういうやつなんだよ」
「でも、おかしくない?」
「なにが?」
「だって……! あんなにトラックを投入したら、赤字でしょ!」

 今回の報酬、決して悪くない。
 だけど、それはトラック一台で運ぶから。
 それなら十分な報酬。
 でもこんな何台もトラックを引き連れていたら、人件費からなにから掛かりすぎて、完全な赤字だ。
 しかしツバキは不敵に笑ってこう言った。

「赤字なんてどうでもいいのよ」
「どうでもいいの?」
「だってあいつは堂島財閥の令嬢、堂島ランコなんだから。赤字だろうが、黒字だろうが、負けちゃならないのよ」

 うぇぇぇ!
 そういうスタンスなの、ランコさんって?
 でもまあ、わかる気もする。
 だって、本来ランコさんはトラックなんかやる必要がない。
 将来、堂島財閥を背負って立つ人間なんだから。
 それこそトラック乗りなんてやってる場合じゃないのだ。
 じゃ、なんでやってるの?
 ツバキに勝つため、ってだけでそこまでする?
 ボクはその時は単純にそう思った。

 これは後から聞いた話である。
 ランコさんとツバキの小学校の頃の話。
 彼女の学校での行動は、すべて使用人から彼女の父の耳に入る。
 成績や授業態度、交友関係まで。
 そこでツバキとの勝負事の話も全て両親は聞き知っていたのだ。
 そして彼女の父はこう言ったそうである。

『堂島家に敗北はない! 勝ってこい! 勝って堂島の名を知らしめよ!』

 かくいうランコさんの方も意気揚々と、

『当然ですわ!』

 と返したというのだから、けっこう血の気の多い家族である。
 それで今に至るまで彼女はツバキをへし折るためにトラックに乗っているらしい。
 なんという執念……。

 さて話は戻って、二人のレースの行方は―――。
 前方に大挙した堂島運輸のトラック。
 ラインマーカーが引かれた道幅いっぱいに広がっている。
 しかも全員が歩調を合わせている。
 当然、大輪丸は前に出られない。
 こうなってしまっては手も足も出ないのだ。
 このまま目的地まで、これが続いたら勝ち目がないじゃん!

「どうすんのツバキ?」

(つづく)


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次回4月11日更新予定


著者:内堀優一
原作:Original Star-IP Office
デザインコンセプト:斎藤純一郎、赤根健良
アニメーションキャラクターデザイン:鈴木竜也
アニメーションメカデザイン:田口栄司
企画協力:松田泰昭


©OSO


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