【第17回】運び屋椿

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Episode2 壺と令嬢とハイウェイレース(6)

「仕方ないけど、今回の報酬はランコの全取りかぁ……タダ働きになっちゃったねえ」

 苦笑いをしながらツバキが言うと、ランコさんが急に顔を上げた。
 そしていつも通りのシャンとした気品ある態度に戻る。

「こ、これは、ノーカウントですわ」
「ノーカン?」
「そうです。なにより……」

 そうランコさんが言いかけた時だった。
 一台の車両の影からガサッと何かが動いた。
 まさかと振り向いた時には遅かった。
 盗賊団の一人が小銃を構えて立っていた。
 さっきの電極砲の影響を受けていない人間がいたのだ。
 しかも持っているのはレーザー式小銃。
 加えて出力はそこそこのやつだ。
 当たれば腕くらい簡単に持っていかれる。
 まずい!

「動くなっ! 動いた瞬間に、ぶっぱなすぞ!」

 銃口を向けられたボクらは抵抗できない。
 さっきの電極砲で、小銃内部の電気系統が壊れていてくれれば……。
 そう願いながら、ボクは彼の持ち手のランプを確認。
 残念ながら、ランプは点灯している。
 システムダウンしていない証拠だ。
 壊れていない以上、彼の言う通りいつでも発射できる。
 ここはあいつの言いなりになるしかないのか?

「手を上げて、そのまま下がれ」

 言われた通り、ボクらは手を上げ、ゆっくり後退する。
 下手に抵抗はできない。
 あっちは照準を合わせているのは確かだから。
 ボクらはひとかたまりになり抵抗の意志はないことを示す。
 盗賊は様子を見ながら車の影から出てくる。
 その瞬間――。

 パンッ!

 一発の銃声が鳴り響く。
 どこから――??
 目を移すと、それはランコさんのトラックの方角からだった。
 荷台の扉からハロルドさんが銃を構えていたのだ。
 銃口からは薄く煙がたなびく。

「ハロルド!」
「すみません、出るのに時間がかかりました」

 後で聞いた話――。
 ボクの撃った電極砲の影響で、ハロルドさんは荷台に閉じ込められていたらしい。
 まあ、運転席と荷台の行き来は、油圧式で動くからね。
 大型トラックは、その大きさから雷撃を逃がすアースが、普通の車よりしっかりしている。
 ランコさんの席のエアバッグは開かなかったでしょ?
 とはいえそれは運転席に限ったこと。
 後部の荷台スペース以外の銃座とかは、けっこう影響が大きいと思うけど……。
 ……まさか、ハロルドさん、あの雷撃に耐えて、脱出して銃まで正確に撃ったのかな?
 だとしたら、特殊部隊の訓練を受けた人並みなんですけど……。

 さて話は戻って――。
 ハロルドさんが撃った銃弾は盗賊の手の甲を貫き、彼は小銃を取り落とす。
 小口径の拳銃みたいだけど、よくあの距離から当てられたね!
 プロのスナイパーだってこうはいかない。
 すかさず、飛び出したランコさんは、盗賊の小銃を蹴り飛ばす。
 そして両腕を後ろに縛り上げた。

「ツバキ!」
「なに?」
「これでおあいこですわ!」
「え?」
「わたくしたちも武装を使用しましたので!」

 ああ、まあ、たしかにそうだね。
 やっぱランコさん、助けられたの気にしてたのね。
 結局、勝負はつかずってことなのかな?
 すると、ツバキはニンマリ笑う。

「ええっと、それはつまり……?」
「今回の勝負は引き分けです。それに邪魔が入ったのですから、正式な勝負じゃありません!」
「ほほう、ってことは、報酬はそのまま?」

 するとランコさんは毅然と胸を張る。

「堂島の言の葉に、二言はなしっ! つまらぬ横槍で汚された我らが聖戦は、相打ちで結構! これで報奨を得るなら、堂島家の名誉に傷が付きますわっ! だけど! 次は――」

 凛として言い放つランコさん。
 それに対して、ツバキは……。

「オッケーオッケー! ああ、そう。まあ仕方ないよね。くくく……」

 ねえツバキさん?
 今、一瞬すごい悪い笑顔が見えたけど……。
 するとランコさんは急にしおらしくなってしまう。

「そ、それに……ですね……その、助けていただいたわけですし……」

 モジモジとしながら視線を逸らす。

「……その……ありがとう」

 最後の方は声が小さすぎてよく聞こえないくらいだった。
 まあ、ボクとしてはケンカにならないのなら、別段なんでもいいんだけどね。
 時をおかずして、すぐにCPOの人たちが駆けつけ、盗賊団『アオヘビ』の全員の引き渡しがされた。
 先ほど転送輪の前にいた進藤マコトさんたちもこちらに応援に駆け付けている。
 彼はツバキを見つけると、やれやれとでも言いたげな顔をした。

「やっぱり……」
「やっぱりってなによ?」
「おまえはすぐにそういうことに巻き込まれる……わかってて飛び込んでんのか?」
「そんなわけないでしょ。まあちゃんと備えはしてるけどね」
「だからって……」
「なに、文句あるの? あたしのおかげで検挙できたんだから、文句より先にお礼じゃないの?」
「はいはい、ご苦労様」
「ちょっと! …………あ、それより」
「なんだ?」

 なにやらツバキと進藤さんはこそこそ話を始めてしまった。
 なに話してんのかはわかんないけど、まあいいか。
 事後処理とか補償とか、そういう話でしょう。
 ランコさんの方はというと、相変わらずしおらしい様子のまんま。
 まあ、たいへんな目に遭ったわけだしね。
 どちらにしても積み荷が無事でよかったよかった。
 勝負がご破算になったおかげで、その後の道中はのんびり快適な旅になった。
 気になるのは………。

「ふふ~んふ~ん♪」

 ずっと上機嫌のツバキの様子が気になったくらい。
 なに?
 なんかいいことでもあった?
 ボクはツバキがいつから上機嫌になったのか思い出してみる。
 どうも、あの進藤マコトさんと話してからなのだ。

 ………はっ! まさか!
 つまりそこでの会話がきっかけで、上機嫌になったということ。
 男と女がボーイミーツガールで、ウキウキになるのだ。
 ボクだって年頃の女の子である訳だから、わからないわけがない。
 いやむしろ、これだけお膳立てがそろえば、バカでもわかる。
 つまりツバキと進藤さんは………

(つづく)


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次回5月9日更新予定


著者:内堀優一
原作:Original Star-IP Office
デザインコンセプト:斎藤純一郎、赤根健良
アニメーションキャラクターデザイン:鈴木竜也
アニメーションメカデザイン:田口栄司
企画協力:松田泰昭


©OSO


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