【第05回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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「創界山に現れた謎の黒い霧を調べることになったぼくたちは、オババに教えてもらった『聖水』を手に入れるため、シュワワ村に向かった。すると、ジョン・タンクーガーがみんなの聖水を独り占めしていたんだ。そこでぼくたちは力を合わせて、聖水を村のみんなに取り返した。あとはいよいよ創界山に向かうだけだ。ハッキシ言って、今日もおもしろカッコいいぜ!」

第3話「黒い霧のイヤ~な魔神!」Aパート

「ワタル! おっさん! 置いてっちゃうよ~!」

 ぼくたちはとびきり元気なヒミコを先頭に、長く続く緩やかな坂道を登っていた。
 創界山に近づくにつれて、周りの様子が暗く荒んでいくのがはっきりとわかる。
 もしかしたら、ぼくたちが思っていた以上にこの黒い霧はとんでもないものなのかもしれない。

「おい、ヒミコ! 気をつけろよ。お前だって、いつ黒い霧に襲われるかわからないんだからな?」
「はいなのだぁー!」
「それにしてもワタルよ、シュワルビネガーたちが申しておった『ズンダ』と『ユバ』とはいったい何のことなのだろうな?」

 ぼくは思わずガクッとよろけてしまった。

「先生、ズンダとユバじゃないよ! 『ズダー』と『ドバ!』」
「あらぁ? シバちゃん間違っちゃった~?」

 先生はテヘッと恥ずかしそうに頭を掻いた。
 もう、いい年したおじさんがかわい子ぶったって駄目だっての……

「キャハハハハ! ドンダ、カバー!!!」
「だからゴンタとラバ! ……って、あれ? もぉ~、ぼくまでわからなくなっちゃったじゃないか!」
「あ! まっくろくろ~!」

 ヒミコの声を聞いたシバラク先生の表情がグッと引き締まった。

「ワタル、あれを見てみろ!」
「え……?」

 ぼくが前を向いた瞬間、黒い霧の塊が凄い勢いでこちらへ向かってきた。

「先生、ヒミコ!」

 逃げる間もなく黒い霧は激しく渦を巻き、あっという間にぼくたちの周囲を覆ってしまった。

「なるほど、これが噂の黒い霧なのだな……!」
「すっごい! すっごい!」

 ぼくたちが必死に辺りを見回していると、黒い霧の中に地鳴りのような低い声が響き渡った。

「……ドバ……ズ……」
「この声は……!?」

 黒い霧がいきなり覆いかぶさってぼくたちを飲み込もうとしたその時、みんなの体を光が覆って霧を弾き返した。

「オババの言ってた通りだ。シュワワ村で飲んだ聖水がぼくたちを守ってくれてるんだよ!」
「なるほど、これでなにも案ずることはないようだ。よしワタル、であれば一気にこの黒い霧を抜け出そうではないか!」
「わかったよ、先生!」
「いっくよー! よーい、ドーーーーンッ!」

 三人で一斉に走り出すと、見事に前方の黒い霧が左右に分かれていく。
 すると前方から、わずかな光が差してきた。

「よし、出口が見えて来たぞ!」

 聖水の力のおかげで、ぼくたちはなんとか黒い霧の外に抜け出すことが出来た。
 振り返って見ると、さっきの黒い霧は静かに消えて行った。

「……ド……ズダー……」

 すべてが消える間際にも、また不気味な声が聞こえた。
 シュワルビネガーたちが言っていたのは、やっぱり本当だったんだ。

「先生、ヒミコ、早く行こう! なんだかイヤな予感がするんだ」

 ぼくたちはなにか漠然とした不安を抱えながら、急いで創界山へ向かった。

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「ワタルくんたちはいよいよ、黒い霧に覆われた創界山まであと少し! さてさて、ここからはちょっとだけ聖龍殿にいる翔龍子さんの様子を見てみましょう。それでは、ど~ぞ~!」

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 創界山にあの黒い霧が現れてから、聖龍殿にいる私たちのところにも徐々に不穏な気配が押し寄せていた。
 何者かによる悪しき力の脈動は間違いなく、日に日に大きくなってきている。
 もちろん私は、少し前からワタルたちがこちらへ来ているのを感じ取っていた。
 出来ることなら、今すぐ行って力になってやりたいのだが……私は神部界の皇子として、母上のおそばにいなくてはならない。

「ワタル、またお前には苦労をかけてしまうな……」
「翔龍子よ」
「母上、どうなされたのですか?」

 すると、母上は真剣な様子で下界の様子を眺められた。

「どうやらあの黒い霧は、私たちが思っていた以上に厄介なもののようですね……」
「はい。これほど大きな悪しき力を感じたのは、いつ以来のことか……」
「ワタルたちになにか危機が迫った時には、すぐに助けに行ってあげなさい」
「いえ、わたくしには母上をお守りするという役目がございます」
「構いません。今回はそれだけの『恐ろしい力』が動き始めているということです……」

 不安げに視線を落とす母上を見て、今回の事態がいかに大変なものなのかが私にも伝わってきた。

「わかりました。その時はわたくしも、ワタルたちのもとへ」

 ワタル、お前たちの無事を祈っている……頼んだぞ。

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「おおっと! そうこうしている間に、ワタルくんたちはもうちょっとで創界山に着くみたいです。さてさて、そちらはいったい、ど~なってるんでしょうか!?」

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「ひどいや……これが本当に創界山なの?」

 黒い霧があまりにも濃く立ち込めていて、あの美しかった七色の虹はもちろん、豊かに色づいていた自然の景色は見る影もない。

「まさかここまでの惨状だとは……拙者も予想していなかった」

「……バ……ズダー……」

 黒い霧の中から、またあの不気味な声が聞こえてきた。

「先生、ヒミコ、気をつけて!」
「ねぇ、コネコネしてるよ?」

 ヒミコが指さした方向を見ると、黒い霧がグニャグニャとうごめいていた。

「あれは……なんとも不気味でござるな」
「見てよ、先生! なんか魔神みたいな形になってきてない!?」

「……ドバ……ズダー……!」

 黒い霧はまるでその声に反応したようにぼんやりと黒い光を放ち、ひときわ大きなサイズの魔神へと姿を変えた。
 あれは……ガッタイダーだ!

「なんと! これはいったいどうしたことか!」
「あちしも作るのだー!」

 ヒミコったら、泥遊びを始めちゃったよ!
 悪いけど、今はガッタイダーの方が気がかりだ。

「ねぇ、先生。あの魔神はいったい誰が乗ってるんだろう?」
「よし、ここは拙者が尋ねてみよう……」

 そう言って先生は両手をメガホンのようにして、口元に構えた。

「おーーーーーい! 誰かいますかーーーーー!?」

 シバラク先生のバカでっかい声が響いても、ガッタイダーは一切反応を示さなかった。

「ワタル、どうやらあの魔神には誰も乗っておらんようだぞ?」
「なぁ~んだ、じゃあ動けないんじゃない?」

 しかし予想に反してガッタイダーの目が突然光りだし、手にしていた大きな鎌をゆっくりと構えた。

「ひぃ~動いたっ!」
「ワタル、おぬしは龍神丸を。拙者は戦神丸を呼ぶ!」
「わかったよ、先生!」

 ぼくはすぐさま背中に背負った勇者の剣を引き抜いた。

「龍神丸―――――――――っ!!!!」

 その掛け声とともに、勇者の剣を空へと突き上げる。
 龍神丸はそれに応えて大空から、光と共に姿を現した!

「おおおおおーーーーーーっ!!!」

 その力強い雄叫びが雷鳴の如く轟く。
 ぼくは龍神丸に乗り、いつものように龍の角をしっかりと握りしめた。

「なんだか不気味な相手だ……気をつけて!」
「おうっ!」

 次の瞬間、ガッタイダーが大きな鎌を振り上げて突進してきた。

(つづく)


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著者:小山 真


次回5月8日更新予定


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