【第08回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第4話「霧の中の大決戦!」Bパート

「ヒミコ、いっちばーん! でんわは、にばーん!」
「待たんか、ヒミコ!」

 戦神丸は先に行ってしまった幻神丸を追いかけるように、土煙を上げながら猛然と駆けて行った。

「……ド…バ…ズ…ダー……」

 ふたりの動きを見ていた黒い霧の化け物の目が、再び凶悪な光を放った。

「ヨッコイショー!」

 幻神丸はさらに加速し、高々と宙を舞った。

「戦神丸、拙者たちも参るぞ……っ!」

 続いて、戦神丸も力強く飛び上がる。

「ヒミコ、ワタルたちへ道を切り開くのだ!!!」
「はいよー!」

 幻神丸と戦神丸は同時に強烈な一撃を見舞って、黒い霧の化け物の両手を消滅させた。

「……ドバ……ズダー……!」

「よし、手ごたえあり!」

 先生が喜んだのもつかの間、黒い霧の化け物が目から放った強烈な光線を空中に残っていた戦神丸と幻神丸に直撃させた。

「うああああああああああああーっ!」

 戦神丸と幻神丸は遠くの方へ吹き飛ばされてしまった。

「先生! ヒミコ!」
「見ろ、ワタル!」

 龍神丸の声を聞いて前を見ると、黒い霧の化け物は両手がまだ元どおりには戻っていなかった。
 先生とヒミコが作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない……!

「いこう龍神丸!」
「おうっ!」

 龍神丸は黒い霧の化け物に向かって力強く飛びかかった。

「今だ、ワタル!」
「いくぞ、必殺!」

 ぼくは背中から勢いよく勇者の剣を引き抜き、頭上に掲げた。

「登、龍……っ!」

「……リュウ……ジン……マル!!!」

「なに……っ!」

 その時、黒い霧の化け物の手が一瞬で復活して龍神丸をガッチリと掴んでしまった。

「龍神丸っ!」
「くっ……凄まじい力だ!」

「リュウ……ジン……マル……!」

 黒い霧の化け物が大きな口から静かに霧を吐き出し、ゆっくりと龍神丸の全身を包み込んでしまった。
 ぼくたちの視界も、見る見るうちに真っ暗になっていく。

「龍神丸、どうなってるの!?」
「ダメだ……まったく動けない!」

「……リュウ……ジン……マル……リュウ……ジン……マル……!」

 黒い霧の化け物は、さっきから明らかに龍神丸のことを呼んでいる。
 そうこうしている間に、ぼくの周りにまで黒い霧が漂い始めた。
 ぼくがなんとか心の中で抑え込んでいた『不安』や『恐れ』みたいなものが、この霧に触れたことでゆっくりと膨れ上がっていくような気がする……!

「……ドバ……ズダー……!!!」
「わかったぞ。ワタル。この黒い霧の化け物の名は……ドバズダーだ!」
「ドバズダー!? そうか……みんなが聞いていた言葉は、こいつの名前だったのか!」

「……リュウ……ジン……マル……!!!」

 黒い霧の化け物がさらに強烈に龍神丸を押さえつけた。
 これは……今までに体験したことがないほどの恐ろしく巨大な力だ。

「なんという力だ……! まるで底知れぬ……悪意のかたまり!」
「がんばれ……龍神丸!!!」

 ぼくがどれだけ一生懸命に声をかけたとしても、黒い霧の中に閉じ込められた龍神丸はもはや身動きひとつとれない。

「……リュウ……ジン……マル……!」

「どうやら、この黒い霧の化け物は私たちを取り込もうとしているようだ……!」
「なんだって……!? それじゃあ、こいつの狙いは初めから……!」

「……リュウ……ジン……マル……!!!!!」

 黒い霧の化け物がさらに力を強めて、龍神丸の体を締め上げてくる。

「ぬおおおおおおお……!」
「龍神丸っ!」

「……リュウ……ジン……マル……!」

 暗闇の中に龍神丸を求める黒い霧の化け物の声が響いたその時、ぼくの全身がギリギリと締め付けられた。

「ううっ、こんな苦しみを……龍神丸は耐えてたのか!」
「ダメだ、ワタル……! お前まで飲み込まれてしまう……!」

 龍神丸は激しい苦しみに耐えながらも、言葉を発し続けた。

「このままでは……ふたりとも……果てしない……闇の中を……」

 ゆっくりと龍神丸の声が力を失っていく。

「永遠に……さまよう……」
「あきらめるな、龍神丸……! ぼくたちはまだ……戦えるよ!!!」

 ぼくはなにも見えない暗闇の中で、苦しみに耐える龍神丸へ精一杯の声をかけた。

「ワタルよ……すまない……!」
「え……?」

 するとぼくの体は優しい光に包まれ、気が付くと龍神丸の外に戻されていた。
 ぼくが恐る恐る顔を上げると、龍神丸はいまだにドバズダーに取り込まれていた。

「なに? どういうこと……?」
「ワタル……お前は生きるのだ……」

 ドバズダーの体内にいる龍神丸が、全身から黄金の光を立ち昇らせた。

「お前だけは……守ってみせるっ!」
「龍神丸、なにをするつもりなの!?」
「うおおおおおおおおおおおーっ!!!」

 龍神丸の魂の叫びが、辺り一面に響き渡った。

「龍神丸……っ!」

 黄金の光に包まれた龍神丸の体に、次々と亀裂が走っていく。
 間違いない、龍神丸は自分を犠牲にしてドバズダーを倒すつもりなんだ。

「イヤだ、そんなのダメだよ……っ!」

 龍神丸の光を受けて、ドバズダーは苦しみ悶えている。

「…リュ…ウ……ジン……マル……!!!」
「うおおおおおおおおおおおーっ!!!」

 龍神丸がドバズダーの体内で、残された命をすべて燃やしつくして光の大爆発を起こした。

「龍神丸――――――――――――――っ!!!」

 爆発の後、いくつもの光の粒が静かに空へと飛び散っていくのが見えた。
 あれはもしかして、龍神丸の……

「……リュウ…ジン……マル!!!」
「そんな!」

 龍神丸が命をかけたにもかかわらず、ドバズダーはまだ完全に消滅してはいなかった。
 空に舞う光の粒を捕まえるために、ドバズダーはその手を伸ばしている。
 そんなこと……させてたまるか!

「くっ……うああああああああーっ!」

 ぼくは思わず勇者の剣を引き抜き、精一杯の力を込めてドバズダーへと投げつけた。
 その切っ先が届くと思ったその時……

「…ド…バ…ズダー……!」

 ドバズダーの目が光り、ぼくの剣は力なく弾き飛ばされて宙を舞った。
 龍神丸が命をかけて守ってくれたっていうのに、ぼくはなにも出来ないって言うのか……!
 ダメだ……もう体に力が入らない……

「ワタルーーーーーっ!」

 ぼくの意識がゆっくりと薄れていく途中に、遠くの方でかすかに聞き覚えのある声が聞こえた。

(つづく)


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著者:小山 真


次回5月29日更新予定


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