【第12回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第6話「ヘンテコ街のヘンテコ市長?」Bパート


「あ……っ!!!」

 サイレンを聞いた女の子は不安いっぱいの表情になって、近くにあった建物の中に大慌てで入って行った。

「なんなのこのサイレン!?」

 戸惑うぼくたちに、女の子は慌てた様子で声をかけた。

「そこにいたら危ないよ、早く逃げて!」
「え……?」

 なにかが動き出す大きな音がしたと思ったら、ぼくたちの後ろでワーイ=ファーイの銅像が街全体を見下ろすほどの高さまで上がって行った。

「あれは……市長の銅像?」

 ぼくが圧倒されながら見上げていると、銅像の後頭部に付いたアンテナのようなものが突然、真っ赤に光りだした。
 すると、周囲を飛んでいた配達用のドローンが一斉に荷物を投げだして色んな方向に飛んで暴れ始めた。

「いったいどうなってやがる……っ!」
「一気に壊れちゃったのかな!?」

 ぼくと虎王はあちこちから迫ってくるドローンを必死にかわし続けた。
 そこへ追い打ちをかけるように、街中に並んだ高層ビルが右へ左へ、上に下にとデタラメに動き始めた。

「今度はなんなのさ~っ!?」

 そうこう言ってる間に、ぼくたちのいる場所も突然グラグラと揺れ始めた。
 様子を見ていた女の子は心配そうにこちらへ声をかけてきた。

「あのね、これはワーイ=ファーイが……!」

 ぼくたちになにか伝えようとした瞬間、女の子がいるビルが一気に後ろへと動き始めた。

「私たちを困らせるためにやっているのよーっ!!!」

 あっという間に女の子の姿が遠くへ行ってしまった。
 それに続くかのように、ぼくたちのいるビルも一気に上昇した。

「うわぁ……っ!!!」
「気を付けろ、ワタル!」

 今度はビルが右へ左へと大きく移動を始めた。
 気を付けないと、ぼくたちも振り落とされそうだ。

「キャハハハ! すごいすごい!」

 激しく動き回るビルの屋上でも、ヒミコだけは楽しそうにバランスを取っている。

「チャチャチャッ! チャチャチャッ!」

 リズムに合わせて扇子を振ったり、逆立ちをしたりと好き放題だ。
 まったく、こっちはそれどころじゃないっての~!!!

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 しばらくすると暴れまわっていたドローンは落ち着きを取り戻し、あれほど動き回っていた高層ビルも嘘みたいに大人しくなった。
 先ほど出会った女の子は『メル』と言って、なにも知らないぼくたちを家まで招待してくれた。

「今、お茶を出すね」

 メルが壁に掛けられたモニターのボタンを押すと、ドローンが紅茶とカップケーキを乗せたおぼんを運んで来る。

「すっげ~! 家の中のことも、ドローンが手伝ってくれるんだ!」
「なぁ……こいつら、さっきブンブン飛んでたヤツの仲間じゃねぇのか?」

 虎王は疑いの眼差しを向けながら、恐る恐るドローンから紅茶を受け取った。

「大丈夫よ。あのサイレンさえ鳴らなければ、このアップダウンシティはなんの問題もないから」
「さっき、あれはワーイ=ファーイがみんなを困らせるためにやってるって言ってたよね?」
「うん……あの銅像から悪い電波を出して、街にある機械をめちゃくちゃに操っちゃうのよ」
「市長のくせに、どうしてそんなひどいことをするの?」
「ワーイ=ファーイは自分が街のみんなから人気がないことが許せないの。だから、ああやってイヤがらせをして私たちに無理やり言うことを聞かせているのよ」
「そんなんじゃ、みんなが安心して暮らせないじゃないか……」

 ぼくがテーブルに視線を落とすと、そこにはメルとお母さんらしき人が写った写真があった。
 それを入れた写真立ては手作りのもので、なんだかとてもあたたかい感じがする。

「これはメルが作ったの?」
「そうだよ。入院してるお母さんにプレゼントしようと思ってるんだけど……」

 ――――ファーン! ファーン! ファーン!

 いきなり、またあの迷惑なサイレンが街中に鳴り響いた。
 窓の外に見えていたドローンが一斉に暴れ始めたと思ったら、部屋の中にいたドローンたちも猛スピードで室内を飛び回り始めた。

「またかよ……っ!」

 虎王はドローンを避けた拍子に、持っていた紅茶を頭から見事にかぶってしまった。

「あっちいいいい~っ!!!」
「キャハハハ! 虎ちゃん、びっしょびしょー!」

 虎王にタオルを渡しながら、メルはまるで諦めたみたいに笑みを浮かべた。

「ね? こんな状況じゃ、安心して大切なものを届けられないでしょ?」

 きっとこの街には、こんな風に困っている人がたくさんいるんだ。
 意地悪な市長のせいで普通の生活が出来ないなんて、ひどすぎるよ!
 救世主として、ぼくにもなにか出来ることがあるはず……

「そうだ! だったらぼくが届けてあげるよ。どんな所でもこれでひとっ飛びだから!」

 ぼくはメルにドローンブーツを指さして見せた。

「ホント!?」
「うん。せっかくだから、手紙も一緒に入れたらどうかな?」
「てがみ……?」

 メルはキョトンとして、わかっていない様子だ。

「もしかして、手紙を知らないの?」
「あちしが教えてあげるのだ!」

 ヒミコがいきなり黒いヤギのコスチュームに変化して、メルに手紙を渡した。

「黒ヤギさんからお手紙どーぞっ!」
「そうか……機械が使えないなら、手書きで渡せばいいんだ! ワタルくん、すっごーい!!!」

 メルは感動したように、ぼくのことを見てきた。

「あはは、それほどでもぉ~……」
「きっと、みんなも喜ぶと思うよ!」
「え? みんな?」

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 街の広場には、すでに多くの人だかりができていた。
 みんなワーイ=ファーイの嫌がらせに困り果てた人たちだ。
 その人たちの中央に、送りたくても送れなかったままの荷物が山のように置かれていた。

「ありがとうワタルくん。じゃあ、お願いね」

 メルがキラキラした眼差しでぼくを見つめている。
 あはは……これは大変なことになっちゃったな。

「こんなことしてる場合か、ワタル?」

 虎王が不機嫌そうにぼくを見てきた。

「オレ様たちは、バラバラになった龍神丸を探さなくちゃいけないんだぞ!?」
「わかってるよ、でも……困ってる人を放っとけない!」
「そんな面倒、オレ様はお断りだ!」

 虎王は不愉快そうに言って、ぷいと顔をそむけた。

「ついてこい、ヒミコ! 龍神丸の情報を集めに行くぞ」
「あいあいさー!!!」

 ふたりは一緒に街の中へと消えて行った。
 この様子を見ていたメルが、心配そうにぼくの所にやって来た。

「ワタルくん、いいの?」
「うん、大丈夫だよ」

 虎王は龍神丸のことを真剣に考えてくれている。
 なにより、ぼくにはその気持ちが伝わっていたんだ。
 ぼくはメルに安心させるように微笑みかけた。

「メルはお母さんに手紙を書いておいて。その間に、ぼくはこの荷物を配っちゃうから」

 広場に集まっていた人たちが、ぼくの言葉を聞いてとてもうれしそうな表情を見せた。
 こうなってくるとぼくも、ハッキシ言って気合十分だぜ!

「よーし、がんばるぞぉー!!!」

 ぼくの言葉に応えるように、ドローンブーツのプロペラが勢いよく回り始めた。

(つづく)


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著者:小山 真


次回6月26日更新予定


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