【第16回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸
第8話「龍蒼丸、空中大決戦!」Bパート
「ワイを捕まえてみるがいいワイ!」
セカンドガンⅡは、逃げるように空中へ飛び上がった。
「待てっ!」
龍蒼丸も一気に上昇して、セカンドガンⅡの後を追いかける。
しかし、この街を知り尽くしたワーイ=ファーイが乗るセカンドガンⅡはビルの隙間を器用に逃げ回った。
いくら追いかけても、あとちょっとのところで逃げられてしまう。
「がんばれ、龍蒼丸!」
龍蒼丸はさらにスピードを上げて、セカンドガンⅡを追いかけた。
「まったく、バカなヤツだワイ……!」
すると、前を飛んでいたセカンドガンⅡが大きく急旋回し、龍蒼丸の後にぴたりと付いた。
「しまった……!」
セカンドガンⅡは龍蒼丸の背後からピタリとガトリングガンで狙いを定めた。
「こいつをくらうがいいワイ!」
――ダダダダダダダダダ!!!
「よけて、龍蒼丸……っ!」
龍蒼丸は猛スピードで必死に飛び回り、向かってくる弾丸をかわし続けた。
「なにぃ……!?」
でも、このままじゃアイツを倒せない……!
「行くぞ、ワーイ=ファーイ!」
龍蒼丸が急停止し、蒼龍剣を構えて背後から迫るセカンドガンⅡへ振り向いた。
「ブヘェ!!!」
ワーイ=ファーイの驚いた声が響くと、セカンドガンⅡは大慌てで空中へ飛び上がってしまった。
「逃がすもんか……!」
必死に逃げ回るセカンドガンⅡを追って、龍蒼丸が空を縦横無尽に駆け回る。
龍蒼丸の翼から生まれた飛行機雲は、まるで龍が大空を駆け巡るような軌跡を描いた。
「ええい! ワイの動きについてくるとは、ただ者ではないワイ!」
さすがに、ワーイ=ファーイもイライラしてきたみたいだ。
後は、なんとか動きを止めることが出来ればいいんだけど……
――キラッ!
ぼくは空の上に輝く太陽に気が付いた。
「そうか!」
とびっきりの作戦を思いついたぞ……!
「龍蒼丸、パワー全開だ!」
龍蒼丸はフルパワーで加速し、上昇するセカンドガンⅡの後を追いかける。
龍蒼丸はそのままセカンドガンⅡを一気に追い越した。
「な、なんのつもりだワイ!?」
セカンドガンⅡは戸惑いながらもぼくたちの後を追いかけて来る。
龍蒼丸はすかさず太陽を背にして振り向いた。
――キラッ!
「ま、まぶしいワイ!!!」
セカンドガンⅡは両腕で目を覆い隠して動きを止めた。
「よし! いまだ、龍蒼丸!」
ぼくは七魂の剣を勢いよく引き抜いて、頭上に構えた。
「必殺……!」
ぼくのかけ声とともに、光に包まれた七魂の剣がみるみるその形を変える!
「蒼龍剣 ――――――――――っ!!!」
龍蒼丸が掲げた蒼龍剣から青い光が力強く立ち昇る。
渾身の力を込めて蒼龍剣を振り下ろすと、強烈な閃光がセカンドガンⅡの頭から真下に向かって一直線に走った。
セカンドガンⅡの体は真っ二つに斬り裂かれ――
「かなわんワ――――――――――イ!!!」
セカンドガンⅡが空中で大爆発すると、ワーイ=ファーイは吹っ飛んで行った。
「やったね、龍蒼丸!」
意地悪なワーイファーイがいなくなり、アップダウンシティは平和を取り戻した。
「キャハハハ! でっかいきゅーきゅしゃだねぇ!」
ヒミコの楽しそうな声が、アップダウンシティの広場に響き渡る。
あの迷惑な電波を出していた銅像の代わりに、倒されていた救世主の銅像がその場に立てられたんだ。
広場に集まった街の人たちは、みんなとても嬉しそうにしてる。
「龍神丸……力を貸してくれてありがとう」
「ワタル、どうかしたのか?」
虎王がぼくのところへ声をかけに来た。
「実はぼく、龍神丸の声を聞いたんだ」
「え? 龍神丸の?」
「うん……虎王たちを助けようとした時にね」
「なんだよ、それ!?」
「わからない。でもあの時、龍神丸が声をかけてくれたおかげで龍蒼丸を呼び出すことが出来たんだ」
「そっか……きっと、龍神丸が力を貸してくれたんだな」
「……うん」
あの時、龍神丸はぼくに語り掛けてくれた。
救世主でいてくれてありがとうって。
「龍神丸……ぼくは必ず、すべての欠片を集めてみせるからね」
ぼくが龍神丸に改めて誓うと、後ろから元気な声が聞こえてきた。
「ワタルくーん!」
「ん……?」
ぼくが振り返ると、手を振りながら駆け寄って来るメルの姿が見えた。
「メル!」
「ワタルくんたちが、ワーイ=ファーイを倒してくれたんだね!」
「そっか、メルも見てたんだ」
「うん! 飛行機雲がまるで龍の神様みたいになって……とってもすごかった!」
「へぇ、龍の神様か……」
メルは興奮気味にぼくの手を掴んだ。
「ワタルくん、ありがとう! おかげで、メールもドローンもふつうに使えるようになったの!」
「よかったね、メル」
「うん! お母さんにもプレゼントが届けられるよ!」
「そうか! じゃあ――」
ぼくはメルがお母さんのために書いた手紙を、カバンの中から取り出した。
「この手紙は……」
「ちょうだい、ワタルくん」
メルはワクワクした表情で両手をこちらに差し出した。
「私、自分でお母さんに届けてみたいの!」
「もちろん! その方が絶対お母さんも喜ぶよ」
「うん、ありがとう!」
メルはとってもうれしそうに手紙を受け取った。
「じゃあ、行ってくる! またあとでね」
メルは急ぎ足で駆けだしたと思ったら、笑顔でこっちに振り向いた。
「ワタルくん! その服、すっごく似合ってるよ!」
そう言って、メルは再び走り始めた。
ぼくが着ているこの世界の救世主の服装が似合ってるってことは……少しはみんなの役に立てたってことかな?
「ワタル、その服すごく似合ってるのだ!」
「似合ってるってさ」
ヒミコと虎王がからかうようにぼくの方を見てきた。
「なんだよ、ふたりして……」
「ありゃりゃ!」
ヒミコが驚いたように目を大きく見開いて、ぼくの頭を指さしてきた。
「ワタル、頭が薄くなってるのだ!」
「え!? うそぉ! まだぼく、小学四年生なのにぃ!?」
もしかして、がんばりすぎちゃったせいで髪の毛が!?
大慌てになってると、横から虎王がぼくの頭や自分の手を見て叫んだ。
「違うぞ、オレ様たちの体が消えかかってるんだ!」
ホントだ、みんな頭から消えて行ってる!
「ええっ!? どどど、どういうことーーーーーっ!?」
(つづく)
著者:小山 真
次回8月14日更新予定
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