【第23回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第12話「赤い閃光! ダブル×バツの字斬り!」Aパート


「あいやしばらく! 拙者は世話になった剣乃介殿を守るため、ヒカシボウ・ベンケーなる輩と戦っていた。ベンケーは拙者の一撃を受けて退いたのだが、今度はギューテンカクという魔神に乗って現れたのだ。拙者はスマホの電池が切れているために戦神丸を呼ぶことができず、ギューテンカクの前に倒れてしまった。拙者が意識を失いそうになったその時、ワタルの声が聞こえた気がしたのだが……これはいったい!?」

 拙者は大きな『力』のようなものを感じ取り、ゆっくりと目を覚ました。
 ぼんやりと霞んだ目の前の景色が晴れて行くと、そこには剣乃介殿の後姿があった。
 なにやら、前方には強烈な赤い光が立ち昇っている。
 拙者が意識を失っていた間に、なにが起きたというのだ?

「剣乃介殿……」

 拙者はなんとか半身を起こし、光の前に立ち尽くす剣乃介殿の背中に声をかけた。

「救世主殿!」

 剣乃介殿は嬉しそうに駆けて来て、拙者の体を起こしてくれた。

「あの赤い光は?」
「私にもよくわからないのです。頼もしいお方が来てくださったと思ったら、あっという間に光が立ち昇ったのです」

 拙者が目を凝らしてみると、赤い光の中には陣羽織を纏った長髪の少年が立って。姿こそ違うが、あれはもしや……!

「あのお方は私に、『先生を守ってくれてありがとう』と……」
「先生じゃと!?」

 やはり! 拙者のことをそう呼ぶのは……ワタルしかおらん!
 光の中に佇んだワタルは背中の剣を引き抜いき、高々と頭上に掲げた。

龍戦丸りゅうせんまる―――――――っ!!!」

 ワタルの掲げた剣の先から突如として深紅に輝く二体の光の龍が現れ、渦を巻くように天へ駆け昇った。
 光の龍の全身が空中で燎原りょうげんの火の如く荒れ狂うと、ワタルの眼前で潜る様に地中へと消えて行った。
 一瞬の静けさの後、ワタルを中心に巨大な火炎の渦が発生し、地中から魔神がゆっくりと姿を現し始めた。

「おぉ、あれは!」

 現れた魔神は、龍神丸を思わせる勇ましい顔立ちをしていた。
 武士の甲冑を思わせる巨体は真っ赤に輝き、頭上にはキラリと輝く黄金の立物たてもの、背中には二本の刀がしっかりと収められている――この魔神は、『龍戦丸りゅうせんまる』と申すのか!
 ワタルは両手を広げ、龍戦丸りゅうせんまるの中へ乗り込んだ。
 次の瞬間、龍戦丸りゅうせんまるが二本の刀を素早く引き抜き、黄金の刀身が太陽の光を受けて黄金の輝きを放った。

「なんと、見事な……」

 勇壮な龍戦丸りゅうせんまるの姿に、剣乃介殿も思わず息をんだ。

「あれが真の『救世主』の姿でござるぞ」
「真の……救世主……?」

 剣乃介殿は真剣な表情になり、まっすぐな眼差しを龍戦丸りゅうせんまるへと向けた。

「調子に乗るんじゃないしぃ~!」

 ベンケーの声と共にギューテンカクが大きな薙刀を振りかぶり、猛然と龍戦丸りゅうせんまるに襲い掛かった。

「次から次へと、ミーの邪魔を!」

 ――ガキーンッ!!!

 ギューテンカクが振り下ろした薙刀を、龍戦丸りゅうせんまるは二刀でしっかりと受け止めた。

「たああああーっ!」
「オーノー!」

 ギューテンカクは龍戦丸りゅうせんまるのパワーに押され、勢いよく弾き飛ばされる。
 龍戦丸りゅうせんまるとは、なんと力強い魔神なのだ!

「大変です、救世主殿っ!」

 剣乃介殿の声を受けて周りを見回すと、周囲を大勢のブリキントンたちが取り囲んでいた。

「おのれぇ……!」

 これではまさに、多勢に無勢というものだ。
 さすがに拙者ひとりで剣乃介殿を守りながら、この人数を相手にするのは骨が折れるぞ……
 ブリキントンたちが刀を構え、拙者たちへ向かって来たその時! 勝ち気で頼もしげな少年の声が聞こえてきた。

「オレ様が相手だっ!」

 その少年が上空から降りて来るやいなや、ブリキントンに向けて目にも止まらぬ速さで刀を振りぬいた。すると、ブリキントンたちの着物は散り散りになって飛んで行く。
 丸裸になったブリキントンたちは、一斉に顔を真っ赤にして身をよじらせた。

「まだ悪さがしたいってんなら、このオレ様が相手になるぜ!」

 ブリキントンたちは恐れをなして、その場から逃げ出した。
 金色の髪のこやつは間違いない……

「虎王ではないか!!!」
「大丈夫か、シバラク?」
「なんのこれしき!」
「ササニシキ-!!!」

 元気な声と共に、拙者の肩に飛び乗ったのは   

「ヒミコ! また会えてうれしいぞ!」
「あちしもなのだ! おっさん!」
「みなさん、救世主殿のお仲間なのですね!」

 虎王とヒミコたちの姿を見て、剣乃介殿は安堵したように微笑んだ。

「ああ、これで千人力でござる!」

 ――ドーーーーーン!

「ん!?」

 大きな音に拙者たちが振り向くと、ギューテンカクと戦っていた龍戦丸りゅうせんまるはいつの間にか屋敷の壁を背にしていた。

「危ない……!」
「気を付けろ、ワタル!!」

 ワタルを案じ、剣乃介殿と虎王が必死に声をかける。

「さぁ、これでも喰らうしぃ~! アタタタタタター!!!」

 ギューテンカクは猛烈な薙刀の連撃を龍戦丸りゅうせんまるに放った。
 しかし、龍戦丸りゅうせんまるは太刀筋を見極め、寸前の所で刃先をすべて躱していく。

「ミーの攻撃を、避けるんじゃないしぃ~!」

 ギューテンカクの攻撃をかいくぐり、龍戦丸りゅうせんまるは目にも止まらぬ速さで飛び上がった。
 龍戦丸りゅうせんまるを見失ったギューテンカクが、慌てたように周囲を見渡す。

「どこに行ったんだしぃ~!?」
「ここだ、ベンケー!」

 なんと、龍戦丸りゅうせんまるはギューテンカクの持つ薙刀の刃先に立っていた。
 あの魔神はパワーだけでなく、天狗のような身軽さも兼ね備えておるのか!

「行くぞ、龍戦丸りゅうせんまるっ!」

 龍戦丸りゅうせんまるが薙刀の刃先から颯爽と空中に飛び上がる。そのまま空中で素早く二刀を構え、落下した勢いを利用した強烈な一撃をギューテンカクの頭に叩きこんだ。

「めーーーーん!!!」
「オーマイ・チキン!」

 ギューテンカクは、たまらずその場に片膝を付いた。
 その前に着地した龍戦丸りゅうせんまるは油断なく二刀を構え、ギューテンカクを鋭く見据えている。

「どうだ! これに懲りたら、もう悪いことはやめろ!」

 ワタルがしっかりとした口調でベンケーを諭すも、ギューテンカクは再び立ち上がった。

「ミーに偉そうなマウスをきくなしぃ!」

 ギューテンカクは薙刀を構え、龍戦丸りゅうせんまるに向かって駆け出した。

「喰らえ、ミートのパワー!」

 ギューテンカクが薙刀を勢いよく振るうが、龍戦丸りゅうせんまるは素早く身を屈めてそれをかわす。

「どーーーーーう!!!」

 龍戦丸りゅうせんまるは流れるようにギューテンカクの胴に渾身の一太刀を入れた。

「オーマイ・ポーーーク!!!」

 ギューテンカクは吹っ飛ばされ、仰向けに倒れる。
 ワタルのヤツ、なかなかやりおるわい!

「おのれぃ……ミーの本気を見せてやるしぃ!」

 ベンケーの苛立つ声に続いてギューテンカクの顔に禍々まがまがしい鬼面が装着され、勢いよくその場に立ち上がった。

「ベンケータイフーン!!!」

 鬼面の口から巨大なを生み出し、龍戦丸りゅうせんまるを空へ吹き飛ばした。

「うわあああああーっ!」
「ワタル!」

 ワタルのピンチだと言うのに、拙者はただ見守ることしかできぬのか……!

「……スマホの充電さえできれば、戦神丸を呼べるものをっ!」

 すると、ヒミコの明るい声が拙者の耳に飛び込んで来た。

「あるよ!」
「なに?」

 ヒミコが突然、拙者の顔の前にチョココロネを差し出した。

「はい!」
「はぁ? これがぁ??」

 拙者が戸惑いながらチョココロネを受け取ると、裏には確かに充電ケーブルの差込口があった。

「なんと! ホントに充電器でござったか!」

 拙者のスマホをつないでみると、すぐに電源が入った。

「おお、これは凄い! そういうことなら、でんわ急げじゃ!」

 拙者はメッセージアプリを立ち上げ、若者顔負けのフリック入力でパパっと戦神丸に連絡を入れた。

「戦ちゃん早く来て!っと」

 ――ピコーン。

 あっという間に、戦神丸から『OK』の返信が届いた。

「おぉ、戦ちゃん!」

 拙者が喜んでいると、隣にいた剣乃介殿が驚いて屋敷の門を指さした。

「救世主殿、あれは……っ!」

 そこには戦神丸が勇ましい姿で立っていた。
 さすが戦ちゃん、仕事が早い!

「よーし戦神丸、いざ出陣じゃ!!!」

(つづく)


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著者:小山 真


次回10月2日更新予定


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