【第31回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

← 前作品ページ次 →


「ぼくとヒミコはゴーストタウンのみんなを困らせているドロロンパを懲らしめるために、ドロロンタワーへたどり着いた。そこにはドロロンパの仕掛けた罠がたくさんで、ヒミコがいきなり捕まっちゃったんだ。ぼくがひとりでドロロンタワーを登っていくと、いなくなっていたシバラク先生と虎王に会えた……と思ったらそれもドロロンパのサプライズで、ふたりはゾンビが化けた偽物だったんだ! 追いかけてくるゾンビたちから必死に身を隠していたぼくの前に、ドロロンパは非常口の扉を用意した。そこから今すぐ、逃げ出せばいいって言うんだけど……ぼくは、どうすればいいの!? ハッキシ言って、今日もおもしろカッコいいぜ!」

第16話「あっと驚く、幻龍丸!」Aパート


 ――ドンドンドン!!!

『ワ~タ~ルうううううう~!』

 外でゾンビたちがうめき声を上げながら、乱暴に扉を叩いている。
 扉は怖いぐらいに軋んで、今にも外れちゃいそうだ……!
 絶体絶命のピンチに、ぼくの頭の中は真っ白になった。

『コウモリボーイ、もう答えは決まったでロンパ??』

 ドロロンパはそんなぼくに、勝ち誇るような声で決断を迫ってくる。

「ぼ、ぼくは……」

 ゴーストタウンのみんなのことはもちろん助けたい……
 だけどもう、怖い思いをするのはイヤだ。
 虎王も先生も、ヒミコもいない……ぼくひとりで塔の屋上まで行くなんて、無理に決まってるよ……
 ぼくは悔しさを噛みしめながら、ゆっくりと非常口の扉に向かって行った。

『ケホホホ! さぁ、尻尾を巻いて逃げるがいいでロンパ!!!』

 非常口はもう目の前だ。あとは、ここから逃げるだけ……
 ぼくがドロロンパのサプライズに、くじけそうになったその時――

『オバケさん、ワタルと話してるのか?』

 あれ? この声って、もしかして……

「ヒミコ?」
『こら、娘っ子! いつの間に縄をといたんだ!?」』

 さっきまでとは一転して、声だけでもドロロンパが慌てているのが分かる。

「無事だったんだね、ヒミコ! 今、どこにいるの!?」
『あちしはもう、てっぺんに着いたよー!』

 よかった、ヒミコはとっても元気そうだ。だけど……

「てっぺんってことは、ドロロンパと一緒にいるの!?」
『うん! 虎ちゃんとおっさんもとなりで、ぐるぐる巻きになってるのだ!』
「え? 先生たちも!?」
「ワタルか!? おい、シバラク! 寝てる場合じゃないぞ!」
『ぐぉ~……がぁぁ~……!』

 そうか、みんなタワーの屋上で捕まってたのか。

『ワタルも早く遊びに来るのだ!』
『ええい、やかましいヤツ……このっ、こら、逃げるな!』
『キャハハハ! オバケさんこっちら~! 手っのなっる方へ~~……あ、つかまっちった~!』

 いつもと変わらないヒミコの楽しそうな声を聞いていたら、ぼくの中にあった恐怖心も消えていた。

「ヒミコ……みんな……」

 屋上に行けばみんなが待ってる。
 そう考えると、こんなところでビビッて立ち止まってる場合じゃない!

『さ、さぁコウモリボーイ、さっさと尻尾をまいて……』
「大丈夫…ぼくなら出来る……」

 ぼくは自分を奮い立たせ、七魂の剣を引き抜いた。

『ん? どうしたでロンパ?』
「こんな逃げ道なんて、ぼくには必要……ないんだ!」

 ――シャキーン!

 ぼくは自分の恐怖心を断つように、七魂の剣を振るった。
 非常口の扉は真っ二つに割られ、煙のように消えていく。

『ああああ、何を考えてるでロンパー!?」』

 慌てふためく姿の見えないドロロンパに向けて、ぼくはこの塔に入ってから一番大きな声を上げた。

「どんなに怖くっても逃げたりしないっ! それが救世主、戦部ワタルだーーーーっ!」

 ありったけの想いを叫んだその時、ぼくの体が光に包まれた。

「これって……!」
「ワタル……ワタルよ……」
「龍神丸!」

 龍蒼丸や龍戦丸の時と同じだ。
 きっと、この世界にある龍神丸の欠片が応えてくれたんだ!

「私の意識が少しずつ薄れていく今…この声が、お前に届くことを願う……」
「大丈夫。聞こえてるよ、龍神丸!」

 龍神丸にはたぶん、ぼくの声は届いていない。だけどせめて、想いだけでも伝えたくて、精一杯に返事をした。

「どんなに恐ろしいものを前にしても、己の心を奮い立たせ、逃げずに立ち向かう。それこそが救世主の姿……」
「逃げずに…立ち向かう……!」

 龍神丸が残してくれた言葉に、ぼくの胸が熱くなる。

「お前が求めるなら、呼ぶがいい。神部七龍神がひとり、緑龍みどりりゅうの力を借りたその名は……」

 知るはずのないその名前が、自然とぼくの口をついた。

「げん……りゅう……まる……」

 ぼくがポツリとつぶやいたその時、なんの前触れもなく部屋の壁の一部にヒビが入り、そのまま壁に大きな穴が開いた。
 その向こうには美しい満月が浮かび、ぼくに何かを訴えかけるように光っている。
 ぼくは満月に応えるように七魂の剣を天に掲げ、その名を叫んだ。

「幻龍丸ーーーーーーっ!」

 周囲にぼくの声が轟くと、まるでスポットライトのように満月から光の帯が部屋の中まで伸びてくる。
 ぼくの目の前で月明りはキラキラと幻想的に揺らめくと、その中にゆっくりと魔神のシルエットが浮かび上がり始めた。
 全身が緑色に輝き、顔つきは鋭く、低く身構える姿にはひとつの隙も無い。
 両肩にはふたつに分かれた大きな手裏剣を備えた、忍者のようなこの魔神が……幻龍丸なんだ!
 ぼくが両手を広げると、幻龍丸の額が輝いて中へ導かれる。
 幻龍丸の中に乗り込むと、ぼくの背中からコウモリの羽が消え、服装はいつもの救世主の姿に戻った。

「よし……!」

 ぼくは緑龍に乗って、その角をしっかりと掴む。

「行こう、幻龍丸!」

 幻龍丸はその全身に力を漲らせると、勢いよくその場から跳び上がった。

 ――ドガガガガガ……ガーン!

 次々に天井を突き破り、幻龍丸はあっという間にドロロンタワーの屋上にたどり着いた。

「さぁ来たぞ、ドロロンパ!」 
「その声はまさか……コウモリボーイ!?」

 ドロロンパは驚きのあまり、口をあんぐりと開けた。

「へへんっ、サプライズのお返しさ!」
「ワタル、いらっしゃいませ~なのだ!」

 ぼくがその声に振り向くと、ヒミコ、虎王、シバラク先生が縄でぐるぐる巻きにされた状態で並んでいるのが見えた。

「遅いぞ、ワタル!」
「面目ない、オバケに捕まってしまうとは、一生の不覚じゃ~!」
「大丈夫、待ってて。すぐに助けるから!」

 幻龍丸はドロロンパを力強く見据え、身構えた。

「むむむ~、オドロキングのミーをびっくりさせるとは生意気な!」

 ドロロンパは空を見上げるなり、いきなり大声で叫んだ。

「来ぉい、マスク・ド・スケルバッ~ト!!!」

 その声が夜空に響き渡ると、黄金のドクロ型魔神が勢いよく飛んで来た。

「その魔神は……!」

 顔を真っ赤なマスクで覆っているけど、コイツはこの前、ヒミコが幻神丸と一緒に倒したヤツだ。
 だけど、幻神丸がつけた大きな傷は直っていて、再び全身が美しく黄金に輝いている。

「ケホホホ! 今度は更にパワーアップしてあるでロンパ!」

 魔神に乗り込んだドロロンパは、余裕たっぷりな様子で言った。

「覚悟するがいい、ミーがとびっきりのサプライズを喰らわせてやる!」
「もう驚くもんか!」

 ぼくは相手から目を離さないように、大きく目を見開いた。

(つづく)


← 前作品ページ次 →


著者:小山 真


次回3月12日更新予定


©サンライズ・R


関連コンテンツ


【第113話】ベルコ☆トラベル ▶

◀ 【第65回】MIKA AKITAKA'S MS少女NOTE【書籍化企画・制作進行中!】

カテゴリ