【第32回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

← 前作品ページ次 →


第16話「あっと驚く、幻龍丸!」Bパート


 マスク・ド・スケルバットがコウモリの羽のような両手を大きく広げた。

「ケホホホ! 驚け、飛び出せ、ビックリ砲―――っ!」

 その両手が激しく振動し、強力な超音波を発生させる。
 マスク・ド・スケルバットが放った一撃が、まわりに並んだ石畳をめくり上げながら、すごい勢いでこっちに向かって来た。

「避けるんだ、幻龍丸!」

 幻龍丸は咄嗟にジャンプして、その攻撃をかわした。

 ――ド―――ン!!!

 マスク・ド・スケルバットの超音波が、屋上にあった石柱を粉々に吹き飛ばしてしまった。
 あんなすごい攻撃、一度でも当たれば大変なことになる……だったら!

「的を絞らせなければいいんだ!」

 幻龍丸が空中を超高速であっちこっちに移動しながら、徐々にドロロンパと距離を縮めていく。
 月明りの中、まるで幻のように残像が現れては消えた。
 これだけ速く動けば、ドロロンパが攻撃するチャンスなんてない!

「ど、ドロロ⁉ あっちか、いや、そっちか……?」

 ぼくの狙い通り、マスク・ド・スケルバットは大慌てでキョロキョロと周りを見回している。

「なな、なんてすばしっこい魔神でロンパ!」
「こっちだ、ドロロンパ!」

 幻龍丸が一瞬で距離を詰め、マスク・ド・スケルバットに蹴りを炸裂させた!

「ロンパああああーっ!!!」

 マスク・ド・スケルバットは吹っ飛び、床に叩きつけられた。

「なんと! 幻龍丸は疾風はやての如き魔神でござるな!」
「このオレ様でも、目で追うのが精一杯だったぜ」
「ワタル、速いっ! ワタル、つおいっ!」

 虎王たちの興奮した声が、ぼくのところまで聞こえて来る。

「どうだ、ドロロンパ! 降参するなら今のうちだぞ!」
「ドロロロ……まだ終わってないでロンパ!」

 マスク・ド・スケルバットは立ち上がって、両手を大きく広げた。

「こうなったら、百鬼夜行モードでロンパ!」
「え? ひややっこーっ⁉」
「百・鬼・夜・行っ!!!」

 ドロロンパの苛立った声が轟くと、マスク・ド・スケルバットの全身がぼんやりと光を放ち、その姿が次々に増え始めた。
 その数は、この前ヒミコが戦った時とは比べ物にならない。

『ドロロ……』『ドロロ……』『ドロロ……』『ドロロ……』

 あっという間に幻龍丸の周りは黄金に輝くドクロ魔神たちで埋め尽くされた。 
 どこを見ても、マスク・ド・スケルバットたちがぼくたちを睨んでいる……いくら幻龍丸が速くても、これじゃどこにも逃げ場が無い!

「「「「「ケホホホホ! これが泣く子も驚く、魔神の百鬼夜行でロンパ!」」」」」

 ドロロンパの声が何重にも重なって、不気味に響き渡る。

「「「「「これでもう、お終いでロンパ!」」」」」

 マスク・ド・スケルバットたちが一斉に両手を広げ、激しく振動させる。
 こんなに数が増えた状態で、一斉にさっきの超音波砲を撃たれたら、いくら幻龍丸だってひとたまりもないはずだ!

「……そうか!」

 ぼくは咄嗟に、幻龍丸が持つ『大きな武器』に気が付いた。

「「「「「パワー100倍! スペシャルビックリ砲~~っ!!」」」」」
「幻龍丸、大手裏剣だ!」

 幻龍丸は両肩に分けて装着していた幻龍大手裏剣をひとつに合体させ、体の前で構えた。

 ――ド――――ン!!!

 超音波砲の衝撃が、大手裏剣を通してこちらまでビリビリと伝わってくる!
 周囲は舞い上がる土煙でなにも見えなくなった。

「ワタルーっ!!!」

 遠くの方で、虎王の叫び声がする。

「ケホホホホ! きっとヤツは粉々になったでロンパ!」

 立ち昇る土煙の向こう側から、ドロロンパの勝ち誇った声が聞こえて来た。

「悪いけど、幻龍丸は粉々になってなんかいないよ!」
「まさか、コウモリボーイ!?」

 幻龍丸が『盾』に使った大手裏剣で周囲の土煙を一振りして、みんなの前に傷一つついていない姿を現した。

「「「「「ええぇぇーっ!?」」」」」

 これにはドロロンパだけじゃなく、虎王たちもビックリしたみたいだ。

「ドロロンパ、もうお前なんて怖くないぞ!」
「「「「「ドロロロ……こ、このくらいで調子に乗るな!」」」」

 マスク・ド・スケルバットたちがもう一度羽を激しく振動させ始めた。
 だけどぼくも、同じ攻撃をもう一度受けるつもりはない。

「幻龍大手裏剣大旋風!」

 幻龍丸は幻龍大手裏剣を手に大きく振りかぶり、マスク・ド・スケルバットたちに向けて鋭く放った。

「なな、なんでロンパ~!?」

 大手裏剣の凄まじい回転力が竜巻を引き起こし、マスク・ド・スケルバットの大群を大空に巻き上げていく。

「「「「「ビックリでロンパーっ!」」」」」

 竜巻の中でマスク・ド・スケルバットの分身たちが次々に消えて行くのが見える。

「どうだ、ドロロンパ!」

 次第に竜巻が収まると、一体だけ残ったマスク・ド・スケルバットが膝をついた状態でこちらを見ていた。

「おのれぃ……オドロキングのミーを、また驚かせたな! 仕返ししてやるでロンパ!」

 ドロロンパの声を受け、マスク・ド・スケルバットが再び立ち上がる。

「いくぞ、幻龍丸!」

 幻龍丸が碧龍剣を素早く逆手で引き抜き、超高速で駆け出す。
 加速に合わせて全身から立ち昇る緑色のオーラが美しい光跡となり、巨大な龍が夜の闇の中を舞うように浮かび上がった。

「必殺……!」

 ぼくのかけ声とともに、構えていた七魂の剣が光に包まれ、みるみるその形を変える!

碧龍剣へきりゅうけん ――――――――――っ!!!」

 幻龍丸は瞬く間にマスク・ド・スケルバットの懐に入ると、逆手に構えた碧龍剣で胴を一閃した。

「あっと驚く、ドロロンパーーーーっ!」

 マスク・ド・スケルバットは大爆発を起こし、ドロロンパは夜空の向こうに勢いよく飛んで行った。

EXマン,魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸


 ドロロンパとの戦いの後、ぼくは捕まっていた虎王たちを助け出した。
 ようやく解放されたシバラク先生は、縄の跡が付いた自分の腕を見ながら、ホッとため息をつく。

「はぁ~、一時はどうなるかと思ったが、一件落着じゃのう」
「よく言うぜ。ワタルが来るまで、ガーガーいびきかいて寝てたくせに」

 虎王にツッコまれたシバラク先生は、キリッとその表情を引き締めた。

「……武士たるもの、いつなんどきでも次なる戦いに備え、休息を怠ってはならんのだ」
「嘘つけ! あれはただの居眠りだろっ」

 もう危険はなくなったし、ぼくは気になっていたことをふたりに聞いてみた。

「そういえば、先生と虎王はどうしてタワーにいたの?」
「それはこっちの世界に来てすぐ、シバラクがドロロンパの罠に捕まって――」
「いやいや、あれは虎王が……」
「いーや、おっさんだ」

 ふたりのこんなやり取りを見ていたら、もうどうでもよくなっちゃったよ。

「この感じ、やっぱり落ち着くなぁ~」

 ぼくが笑顔になると、シバラク先生がニヤッとこちらを見つめてきた。

「あれ? 先生、どうしたの?」
「まさかワタルが、あそこまで怖がりとは知らなかったのう」
「ええっ!?」
「まったく、コンニャクにも悲鳴を上げてたもんな」

 えぇ!? あの時ぼくは、ずっとひとりだったのに……ふたりとも、なんで知ってるの!?

「屋上でドロロンパと一緒に、ワタルの様子を見てたんだ」
「ずいぶんビビってたんじゃないの~? ワタルちゃ~ん」

 ぼくはなんだか一気に恥ずかしくなってきて、顔が真っ赤になった。

「も、もう怖くなんてないもんね!」
「あれま、今度はワタルがオバケなのだ!」

 ヒミコが笑顔でぼくの顔を指さしている。

「ええっ! オバケ!?」

 と、大慌てになったぼくを見て、みんなが笑っている。

「安心せい。ワタルがオバケなら、拙者たちもオバケじゃ」

 先生が笑顔で自分の頭を見せて……って、消え始めてる!
 そうか、ってことは……

「そろそろ出発ってことだな」
「キャハハハ! 出発おしんこ~!」

 ぼくたちみんなの姿が、ゆっくりと消えて行く。
 ドロロンパもきっとこれで改心してくれるだろうし、ゴーストタウンのみんなも、これでもう大丈夫だよね。

 今度はどんな世界が待ってるんだろう。
 待ってて、龍神丸……次の世界でも、必ずキミの欠片を見つけてみせるから!

(つづく)


← 前作品ページ次 →


著者:小山 真


次回4月2日更新予定


©サンライズ・R


関連コンテンツ


【第66回】MIKA AKITAKA'S MS少女NOTE【書籍化企画・制作進行中!】 ▶

◀ 【第114話】ベルコ☆トラベル

カテゴリ