【第34回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第17話「ワォ~ンと到着! アニマランド」Bパート


 

「ドケドケ建設のヤツらは、好き勝手にこの島を壊し続けてる!」
「ドケドケ建設って……?」
「さっきお前を追いかけてたヤツは、副社長のボンクラーラさ」

 そうか。そういえば、アイツらは木を倒したり、森を崩して大きな工事をしてたっけ。

「ねぇ、ココ。ドケドケ建設は、どうしてあんなことしてるの?」
「社長のトン・カバチョは、アニマランドを自然一つ残らない、コンクリートだらけの島にするつもりなのさ」
「コンクリートだらけ? ひどいや……こんなにキレイな場所なのに!」

「ああ。どんなにアイツらが島を壊したって、獣人はあきらめたりしない。オレたちには、『龍樹の種』があるからな!」
「龍樹の種……?」

 ぼくは『龍』という言葉にピンときた。
 もしかすると、この世界の龍神丸の欠片に関係があるのかも……!

「ねぇ、ココ。龍樹の種のこと、詳しく教えて!」
「さっきからどうした、ワタル? 獣人のくせに、そんなことも知らないのか?」
「え、いや、その……」

 ココの言葉に、ぼくは思わず言葉を飲み込んだ。
 今のぼくはオオカミの獣人の姿をしてるけど、本当は人間。
 ココたちがぼくを受け入れてくれたのも、そのおかげで……

「……まったく、しょうがないヤツだなぁ。勉強不足にもほどがあるぜ」

 呆れたように笑ったココは、まるで出来の悪い生徒を教えるように、かしこまった口調で話し始めた。

「龍樹の種ってのは、アニマランドに伝わるオイラたち獣人の宝物さ」

 戸惑ってるままのぼくに、ココはゆっくりと語り続ける。

「その昔、アニマランドをとんでもない嵐が襲ったんだ。島の自然はめちゃくちゃに破壊されて、獣人たちの生活もボロボロになった。だけど、それでも獣人たちはお互いに助け合って、必死に生き抜いたんだ。その姿に感動したアニマランドの神様『カナマ』が、獣人たちに奇跡の力を持つ龍樹の種を与えたんだよ」
「奇跡の力……?」
「ああ、そのたった一粒の種を植えただけで、すぐに自然豊かな島に戻ったんだ! アニマランドの獣人たちはカナマに感謝して、それからもず~っと力を合わせて生きていくと誓った。オイラたちはそれを、『カナマの絆』と呼んでるのさ」

 ココたち獣人が、こんなに優しくしてくれる理由が分かった気がする。

「カナマの絆か……素敵なお話だね!」
「これからはワタルも、もう少し島の歴史を勉強した方がいいぞ」

 そう言って、クシャっと顔を歪ませココが微笑む。
 ココのまっすぐな目を見て、ぼくは黙っていられなくなった。

「あのねココ、実はぼくは   
『人間が来たぞー!!!』

 突然聞こえた声をきっかけに、村の獣人たちから悲鳴が上がった。
 ココが表情を一変させ、鋭い目つきで言う。

「ドケドケ建設のヤツらか……!」

    ドガガガーン……!!!

 巨大なショベルカーが森の木々を倒しながら姿を現し、その背後から作業服を着たブリキントンたちの集団が一斉に村へなだれ込んできた。

『ドケドケ~! ドケドケドケ~!!!』

 村の獣人たちはみんな、逃げまどっている。

「く……っ!」

 ココがひとりで猛然とショベルカーの前に駆けていった。

「ココ!」

 ショベルカーの前に飛び出したココは、両手を広げて叫んだ。

「オイラの村に手を出すな!」

 向こうも驚いたのか、ショベルカーがその動きを止める。

「えぇ~、ゴホンゴホンッ!」

 大きな咳払いが聞こえた後、クレーン車の運転席に乗った細長い顔の男が拡声器を片手にこちらへ警告してきた。

「わたくし、ドケドケ建設の部長を務めておりますドネガティと申します。これよりこの土地に、わが社専用の大型公衆トイレを建設いたします。あ、いや、みなさんそりゃ、出ていきたくはないでしょうけど……私も仕事でしてね……はぁ~……」

 自信なさげで、イヤイヤ仕事をしている感じなのに、村を壊すだなんてとんでもないことを言ってる。
 ココは毅然とした態度で、ドネガティ部長へ言い返す。

「オイラたちの村に手を出すな!」
「そりゃ抵抗しますよねぇ……ホントにイヤな仕事だなぁ……」

 ドネガティ部長はなんともネガティブなオーラを漂わせながら、ヘルメットに付いたひもをしっかりと顎下に引っ掛けた。
 きっと、ココにかまわず村を襲う気なんだ。

「みんなを助けなきゃ……!」

 ぼくはなにかいいアイデアがないかと、必死に考えた。

「せめて、足止めだけでもできれば……」

    クンッ、クンクンッ。

「ん?」

 こんな時に、なぜかぼくの鼻が甘い匂いを嗅ぎ取った。
 匂いの方向を見て、ハッとなる。
 建物の陰に隠れたプルルちゃんの足元に、つぶされた黄色いバナナがいくつも転がっていた。

「バナナ……そうかっ!」

 ぼくは最高のアイデアを思い付いた。
 この村には今、足止めするのにピッタリのものがあったんだ。

「プルルちゃん!」

 ぼくは建物の陰に隠れていたプルルちゃんのもとに走った。

「お兄ちゃん……?」
「この村には、まだバナナはあるかな?」
「バナナ? 家にたくさんあるけど……」
「あのね   


 ぼくはそれから、プルルちゃんにやってほしいことを伝えた。


「準備が出来たら、ぼくに声をかけて!」
「うん……わかった!」

 プルルちゃんが家に入っていくのを確認して、ぼくはココのもとへ向かった。

「ワタル!? どうして来たんだ!」

 ぼくはココと一緒に、ショベルカーの前に立ちふさがった。

「ココひとりで戦わせたりしないよ!」
「ワタル……!」 

 ドネガティ部長はぼくたちを見て、また大きなため息をついた。

「はぁ~、めんどうだなぁ……でも仕事しないと、怒られるしなぁ……バイトのみなさ~ん、お願いしま~す」

 合図を受けた作業服姿のブリキントンたちが大きなハンマーを肩に担ぎ、ゆっくりとこちらへ向かってきた。
 それでもココは覚悟を決めた様子で、その場を一歩も動かない。
 ぼくの頬を、冷たい汗がタラリと流れ落ちていく。


「大丈夫……きっとうまくいくさ!」

 自分を励ますようにぼくは声を上げた。
 ブリキントンたちはもうそこまで迫ってきている。
 焦るぼくの耳元に、プルルちゃんの声が飛んできた。

「お兄ちゃん! 用意できたよー!」

 振り返ると、村の獣人たちが両手にたくさんのバナナを抱えて集まっていた。

「ブルルちゃん、ありがとう!」 

 これにはさすがに、ココも目を丸くした。


「バナナ? なんでこんな時に……!?」
「みんなで一緒に戦うのさ!」 

 ぼくは村の獣人たちに向けて、大声で合図を送った。

「みんな! バナナを食べて、残った皮をアイツらに」
『ウオオオオオー!!!』 

 獣人たちが声を上げ、その手に持ったバナナを一斉に食べ始めた。

    モグモグモグ……ポーイ! ポーイ!! ポーイ!!!

 ブリキントンたちは必死に立ち上がっても、歩き出したそばからまた滑って転んでいる。

「痛い目にあいたくなかったら、この村から出ていけ!」 

 ひざをすりむいたり、泥だらけになったりしてやる気を失ったドケドケ建設のブリキントンたちが、泣きながらジャングルの中へ帰っていく。

「ちょっと、アナタたち! まだバイトは終わってませんよぉ~!」

 ひとり残されたドネガティが、ショベルカーの横を見てギョッとなる。

「ええっ!?」

 村の獣人たちはショベルカーの横に集まっていた。 

「な、なにをするつもりですか!? やめなさーい!」

 ドネガティ部長の制止も聞かず、みんなで一斉に押し始めた。

『そーれ、カーナマ! カーナマ!』

 力強いみんなの掛け声が村中に響き渡る。

「うわぁ! ちょっと! ああ、ああああ~~~~!」

 遂に、ショベルカーの大きな体が斜めに傾いた。

『カ――――――――――ナマッ!』

    ドテ――――――――――ン!!!

 ショベルカーを見事に横倒しにして、村の獣人たちから歓声が上がった。

「ひえええええええ~! 社長に叱られるうううう~!」 

 ドネガティ部長が、尻尾を巻いて逃げていく。
 それを見送るみんなが、歓喜の雄叫びを上げる。

「やったね、ココ!」
「ワタル……ありがとう!」
「ぼくはただ、みんなを助けたかっただけだよ」 

 ココはぼくの言葉を聞いて、その手を差し出してきた。

「カナマの絆の勝利だな!」
「うん……!」

 ぼくはココの手をしっかりと握り返した。

 だけどまさかこの後、ココとの間に生まれた絆が壊れてしまうなんて、想像もしてなかったんだ。

 

(つづく)


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著者:小山 眞


次回4月23日更新予定


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