【第36回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第18話「帰って来た、クールな男」Bパート

 唖然としている俺にめがけて、ダンプカーのような魔神が轟音と共に迫り来る。

「く……っ!!!」
 
 俺は咄嗟に飛び退き、難を逃れた。

   キキィィィーーーーーーッ!!!!!

 豪快なブレーキ音と共に急停止した魔神に向け、俺は叫ぶ 。

「てめぇが、ボンクラーラか!」

 黒く輝く魔神が、その視線をギラリとこちらに向ける。

「汚い獣人が、いったい何の用でちゅか~?」
「村から奪った龍樹の種を返せ!」
「残念でちた! あれはもうドケドケ建設のもんでちゅ~!」

 ボンクラーラはなおも俺の気持ちを逆なでるように、声をかけてくる。

「獣人たちの泣き叫ぶ姿は、最高でちたよ! バブバブバブーっ!」
「この野郎……ふざけやがって!」
「文句があるなら、このブルコンボスで相手になりまちゅよ?」

   ブルルンッ! ブルルンッ!!

 ブルコンボスはド派手なエンジン音と共に、背中に伸びた二本の排気管から真っ黒な煙を勢いよく吐き出した。

「この俺を……なめるんじゃねぇ!」

 俺は空に向かって相棒の名前を叫んだ。

「空、神、丸―――――――っ!!!」

 俺の声に応えて、空の彼方からつむじ風が勢いよくこっちに向かって来る。
 荒ぶるつむじ風の中から現れたのは、俺の自慢の相棒  空神丸だ!
 真っ白に輝くボディに、美しい紺碧の翼を持つ鳥型の魔神さ。
 空神丸の操縦桿に手をかけると、ふつふつと力が漲って来る。

「ボンクラーラ、さっさと種を返したほうが利口だと思うぜ?」
「そんな魔神、ブルコンボスの相手じゃありまちぇんよ~だ!」

 ボンクラーラはブルコンボスを発進させ、ビルの屋上から飛び降りた!

「逃げようったってそうはいかねぇ! 追うぞ、空神丸!」

 空神丸も続けて、ビルの屋上から飛び立つ。
 視線を落とすとブルコンボスは遠くの方で道路上に着地し、車体を大きく左右に揺らしながらもそのまま走り続けた。

「へっ、そんなんじゃ追いかけっこにもならねぇぜ!」

 空神丸のスピードを上げ、一気にブルコンボスとの距離を縮める。

「覚悟しろ、ボンクラーラ!」
「バブゥー! テンション上がってきまちたよ~!!!」

 ブルコンボスは猛スピードで開発地域の道路に入る。
 俺は空神丸の機体を地面スレスレのところで滑空させ、ブルコンボスの真横につけた。

「空神丸から逃げられるとでも思ったか!」
「誰も逃げてなんかいまちぇんよ~~?」

 ボンクラーラの甲高い声が響くと、ブルコンボスは超高速で走りながら、手にした真っ赤なハンマーを振り下ろしてきた。

「あらよっと!」

 俺は咄嗟に空神丸とブルコンボスの距離をあけ、華麗にハンマーをかわした。

「そんなハンマー、空神丸には届かねぇよ!」

 横を見ると、今度はブルコンボスがハンマーの先端をこちらへ向けていた。

「バブバブバブ! 喰らえ、ドカチャンハンマー!!!」

   ドーーーーーーーーーン!!!

 ハンマーの先端からミサイルが発射され、こっちに迫って来る。

「なにぃ……っ!?」

 咄嗟に空神丸を旋回させると、ミサイルが寸前のところをすり抜けていく。

「脅かしやがって。今度も無駄打ちだったな!」

 俺が余裕の笑みを浮かべたその時、ボンクラーラの嬉しそうな声が聞こえた。

「バブー! ひっかかったでちゅー!」
「なんだと……?」

 気が付いた時には、建築途中のビルが目の前に迫っていた。

「マズい!!!」

 俺は考えるより先に、空神丸を組まれた鉄骨の隙間に突入させる。

「く……っ!!!」

 ヤツの狙いは、俺をこの入り組んだ鉄骨の中に誘い入れることだったのか!
 あちらこちらから複雑に飛び出した鉄骨に、このスピードで当たったらひとたまりもない。
 少しでも操縦を誤ればお終いだ……空神丸を、信じるしかねぇ!
 狭く薄暗い鉄骨の隙間に、空神丸のエンジン音が激しく反響する。
 数分にも感じるほどの時間が過ぎ、空神丸はようやく鉄骨をくぐり抜けた。

「よくやったぞ、空神丸!」

 しかし、ようやく見えた大空にボンクラーラの甲高い声が響き渡る。
 
「がんばったごほうびを、あげま~ちゅ!」

 飛び上がったブルコンボスが空神丸の前方に現れた。
 まさかこいつ、俺がさっきのをくぐり抜けるところまで想定してやがったのかっ!?

「バブゥー!!!」

 ブルコンボスが空中で勢いよくハンマーを振り上げる。

「ドカチャンハンマー!」

 振り下ろされたハンマーが、まるでスローモーションのようにこちらに迫って来るのが見えて  

「うわああああああーっ!!!」  

 ブルコンボスの強烈な一撃に、コックピットが激しく揺れる!
 俺は機体を制御できず、空神丸がまっ逆さまに墜落していく。

   ズガガガガガ……

 空神丸は道路のアスファルトを削りながら、何とか止まった。
 俺たちの目の前にドスーンと豪快な音を立てて、ブルコンボスが着地する。
 倒れ伏せた空神丸を嘲るように、ボンクラーラはご機嫌な声で言った。

「バブバブバブ! 残念ながら、やられちゃいまちたね~!」
「くぅ……っ!」

 俺はこんなところでくたばっちまうのか……まだワタルたちにも会えてないってのによ……!

「……そうか」

 忘れちゃいけねぇ大事なことを思い出したぜ。

「俺は……ワタルに会うまで、負けるわけにはいかねぇんだ!」
「バブ? なにを言ってるんでちゅか~?」

 俺は操縦桿を強く握りしめ、空神丸を立ち上がらせ る。

「知ってるか? 勝負ってのは、最後まで諦めねぇヤツが勝つんだぜ!!!」
「そんなボロボロの魔神じゃ、ブルコンボスには勝てまちぇんよ~?」
「そいつはどうかな!」

 俺は空神丸と共に再び大空へ向かって、勢いよく飛び立つ。

「あらら、まだ遊んでくれるんでちゅか~?」

 ブルコンボスはドカチャンハンマーを肩に乗せ、余裕の様子で空を見上げていた。
 まったく、なめられたもんだぜ……

「お望み通り、本気で遊んでやるよ!」

 俺は空神丸が上空にたどり着いたところで機体をぐるりとUターンさせ、地上に向かって真っ逆さまに降下した。
 コックピットの中にいる俺も、全身にビシビシ重力を感じる……だが、相棒と一緒ならちっとも怖くはねぇ!

「頼むぞ、空神丸!」

 覚悟を決めて、そのままブルコンボスに向かう。

「今度こそ、ぶっ壊ちてあげまちゅよ!」

 ボンクラーラの声に続いて、ブルコンボスはバットを構えるようにドカチャンハンマーを持って、俺たちを待ち構えた。
 そうだ、それでいい……

「これが俺と空神丸の戦い方だ !!!」

 ブルコンボスとの距離がどんどん近づいていく。
 まだだ…まだ我慢しろ……!

「バカな鳥でちゅねーっ!」

 コンボスが力を蓄えるように体重をグッと後ろへ移動させるのが見えた。
 準備はOKだ……いくぞ!

「空神丸!!!」

   キキイイイイ――――ンッ!!!

 俺は急ブレーキかけて空神丸の速度を一気に落とした。

「バブーーーー!?」

 タイミングをずらされたブルコンボスは、盛大にハンマーを空振りして尻もちをついた。

「なんなんでちゅか!!!」

 空神丸は空中で水平に浮遊し、ブルコンボスと相対した。

「終わりだ、ボンクラーラ……!」

 空神丸が両肩に備えた鷹波銃スーパーソニックウェーブガンを勢いよく発射していく。

   ダダダダダダダダダ!!!!!

 俺は鷹波銃スーパーソニックウェーブガンを、ブルコンボスの背後に聳え立つ建設中のビルへ撃ち込んだ。

「バブバブバブ! どこを狙って撃ってるんでちゅか ~?」
「へっ、おこちゃまにはわからねぇだろうな!」

   ゴゴゴゴゴゴゴ……

 狙い通り、周囲に地鳴りのような音が響き始める。

「ボンクラーラ、工事中は『頭上注意』だぜ?」
「え……?」

 俺のひと言で、ブルコンボスが真上を見たその時  バラバラになった鉄骨が雨のように降り注いだ。

「バブうううーーーーーーーっ!!!」

 瓦礫の下敷きになり、ブルコンボスは身動き一つとれない状況になった。
 空神丸は倒れたブルコンボスの前に悠然と着地する。

「さぁ、龍樹の種を返してもらおうか!」
 
 返って来たボンクラーラの答えは、思いもよらないものだった。

「……無駄でちゅよ。あれならとっくに、パパちゃまにあげまちた!」
「なんだと……!?」
「バブバブバブ! あの種があれば、この島を支配したも同じでちゅからねぇ~!」

 勝ち誇ったその声を聞く限り、ボンクラーラの言ってることは嘘とは思えない……龍樹の種ってのにはいったい、どんな『力』が隠されてるんだ!?

 

(つづく)


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著者:小山 真


次回5月7日更新予定


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