【第37回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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「ぼく、戦部ワタル。龍神丸の欠片を探して逆さ創界山を旅していると、獣人たちが暮らす『アニマランド』という島で、ぼくは白いオオカミの姿になっちゃったんだ! 島の森を切り開いていた工事現場で魔神に追いかけられ、虎王たちとはぐれちゃったぼくを、ネコの獣人『ココ』が助けてくれた。ココに話を聞いてみると、この島には『龍樹の種』というすごい力を秘めた宝物があるらしい。もしかしたら、龍神丸の欠片と関係があるかもしれない! ……って思ったその時、この島の自然を壊すドケドケ建設の人間たちがココの村までやってきた。ぼくは獣人のみんなと力を合わせて、ヤツらを追い払ってやったんだ。ハッキシ言って、今日もおもしろカッコいいぜ!」

第19話「とんでもな~く、カバなヤツ!」Aパート

 ココの村では、獣人たちが初めてドケドケ建設の人間に勝ったことを祝って、小さなお祭りが開かれていた。

『あそれっ、カーナマ! カーナマ! カーナーマー!』 

 ヤギやシカの獣人たちが叩く太鼓のリズムに合わせて、村のみんなが輪になって踊り、楽しそうに掛け声を上げている。
 ニワトリのように頭を前後に動かし、タコみたいに腕をクネクネさせ、ゾウのようにパワフルなステップを踏む。
 その動きは、一度見たらしばらく頭から離れそうにない感じだ。

『あそれっ、カーナマ! カーナマ! カーナーマー!』

 ぼくがひとりで広場の端っこからその輪を見ていると、ココが気づいてこちらにやって来た。

「ワタル、お前も早く来いよ!!」
「う、うん!」

 ココに手を引かれるがまま、ぼくは踊りの輪の中へ入れられた。
 戸惑う僕に、みんなが笑顔で声をかけてくる。 

「お、今日の主役が来たぞ!」
「ワタルのおかげで人間たちを追い返せたんだからね!」
「泣きながら帰っていくアイツらの姿、最高だったぜ!」 

 嬉しそうなみんなとは違って、ぼくは素直に喜べないでいた。
 ぼくがホントは人間だってわかったら、みんなはどう思うんだろう?
 踊りの輪の中にいながらも俯くぼくの顔を、ココが不思議そうにのぞき込んだ。

「ワタル、さっきから元気がないじゃないか」
「いや、そんなことないよ……」
「村のみんながこんなに楽しそうなのは久しぶりだ。これもワタルが人間たちをやっつけてくれたおかげさ!」

 ココはトラ柄模様の尻尾を嬉しそうに揺らしながら、ぼくを見つめた。

「オイラは今日ほどカナマの絆に感謝したことはないよ。ワタル、これからも一緒にいてくれ!」
「う、うん……」

 まっすぐなココの目を見て、ぼくは思わず返事してしまった。
 なんだか嘘をついてしまったような、イヤな気持ちが胸に込み上げてくる。

『…ワッタル~……ワッタル~…………』

 遠くの方から聞こえた小さな声に、ぼくの耳がピンと立ち上がった。

「あれ……? この声は……」

『…キャハハハハ……』 

 間違いない、ヒミコだ!
 ってことは、もしかして虎王と先生も一緒にいるの? 

「どうしたんだ、ワタル?」
「えっと……ちょっと、おしっこ!」

 ぼくは急いで、ヒミコの声がした方向に駆け出した。 

「おいワタル、トイレはそっちじゃないぞ!?」

 ココの声を背中に受けながら、ぼくは村の外をぐるりと囲む森の中へと駆けて行った。

 

「お~い、ヒミコ~! どこにいるんだよ~!?」

 ぼくはさっき聞こえた声を頼りに、ジャングルの中を歩いていた。
 確かに声がしたはずなんだけど、ヒミコの姿はどこにもない。


「聞き間違いだったのかな? いや、そんなことは……」
「ワタル、み~っけ!!!」
「うわぁ!」 

上からツルにぶら下がったヒミコが急に降ってきて、ぼくの顔にしがみついた。

「やっぱり、さっきの声はヒミコだったんだね!」
「虎ちゃんとおっさんもいるよ!」
「え……?」 

 ぼくがヒミコを顔からはがすと、前には虎王とシバラク先生が笑顔で立っていた。

「探したぞ、ワタル!」
「お主のために、島中を歩いてしまったわい」 

 三人の姿を見て、ぼくはホッとした。

「みんな、無事だったんだね!」
「ワタルこそ、大丈夫だったのか?」
「うん、獣人のみんなが助けてくれたんだ!」
「なんと、それはまことか!?」

 虎王や先生がビックリした様子でぼくを見つめた。

「オレ様たちもあちこち巡ってみたんだが、なぜかこの島のヤツらは怯えて逃げちまうんだ」
「拙者たち、そんなに怖い顔をしておるかのう?」 

 そうか、まだ虎王たちはアニマランドのことを知らないんだ。
 獣人たちが人間を嫌っていることも…… 

「みんな、聞いて」

 ぼくはこれまでのことを、虎王たちに話した。
 オオカミの姿をしていたおかげで、ぼくがココたちと仲良くなれたこと。
 トン・カバチョたちドケドケ建設の人間が、この島のみんなにひどいことをしているということ。
 そのせいで獣人たちが人間を恐れているんだと話すと、虎王たちもようやく納得したみたい。 

「ってことは、オレ様たちはドケドケ建設のヤツらだと思われてたのか」
「それでは龍神丸の欠片の手がかりも、探しづらいのう」
「実は、そのことなんだけど……」 

 虎王たちの視線が、ぼくに集まった。

「この島には、龍樹の種っていうものがあるらしいんだ」
「リュウジュ? なんだそれ?」
「名前に『龍』がついておるのか……」 

 不思議そうな顔をしているみんなに、ぼくは話し続けた。

「うん。しかもその種には、ボロボロになったこの島の自然を復活させたっていう伝説が残ってるんだって! ホントにそんな凄いものなら、もしかして龍神丸の欠片の手がかりに   

 そこまで言いかけたところで、背後からココの大きな声が響いた。

「やめろ、ワタル!」

 振り向くと、ココが今までに見せたことがないほどの強張った表情で立っていた。

「ココ……!」
「どうして……どうして、龍樹の種のことを話したんだ!?」 

 話すうちに、ココの語気がどんどん強くなっていく。

「あれはオイラたちが昔から大切にしてきた、獣人たちの宝物なんだぞ!? それをお前は……人間なんかにっ!」

 なにかに気が付いたように、ココが目を見開く。 

「ワタル、まさかお前……人間の仲間だったのか!?」

 険悪な空気に、慌てて虎王たちがココへ声をかける。

「おい、ちょっと落ち着けって!」
「拙者たちはドケドケ建設とは関係ござらん!」 

 なだめようとした虎王たちに、ココは牙を剥いて叫ぶ。

「人間たちは黙ってろ!!!」

 あまりの勢いに、虎王たちも思わず言葉を飲み込んだ。
 全身の毛が逆立ったココが、再びぼくを問い詰める。

「ワタル……オイラたちは、カナマの絆で結ばれてたんじゃないのかよ!?」

 怒りに震えたその声に、ぼくの胸は締め付けられた。
 もうこれ以上、ホントのことを黙ってるわけにはいかない…… 

「ココ、実はぼく……人間なんだ!」
「なんだって……っ!?」 

 ココは唖然とした表情で、その場に立ち尽くした。
 ぼくはなんとかココに真実を伝えようと、必死に話し続けた。 

「ぼくはアニマランドとは違う世界からやって来たんだよ。この島に着いた時から、なぜかオオカミの姿になっちゃって   
「ふざけたことを言うな!」 

 ココはぼくの言葉を、最後まで聞いてはくれなかった。 

「ワタル……オイラは、お前を信じてたんだぞ! なのに……お前は……!」 

 悔しそうに顔を歪ませたココの瞳から、静かに涙が滲み始めた。 

「ココ……」 

 その表情を見てぼくは、ココにかける言葉を見つけることが出来なかった。
 ふたりの間に、辛い沈黙が流れたその時     

『ドケドケドケー! ドケドケドケー!』

 遠くの方から地響きのような音と一緒に、バカでかい声が聞こえてくる。

「これは……っ!?」

    ドガガガーーーーーンッ!!!!!

 生い茂るジャングルの木々をなぎ倒し、僕たちの前に黒いダンプカーのような魔神が現れた。
 背中には大きなハンマーを背負い、両肩には巨大なミサイルがついていて、見るからに強そうだ。
 魔神がキッとこちらへ向くと、中から低い男の声が周囲に響き渡った。

「ガーッハッハ! マッハブルコンボスのお出ましだぜぃ!!!」

 地鳴りのようなエンジン音を轟かせ、その黒い巨体は太陽の光を受けてギラリと輝いた。

 

(つづく)


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著者:小山 眞


次回5月21日更新予定


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