【第40回】魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸

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第20話「咲き誇れ、奇跡の龍樹!」Bパート

「なっ、なひぃ~~~ん!? 」

 トン・カバチョの間の抜けた声が聞こえると、なぜかマッハブルコンボスはわし掴みにしていた龍激丸りゅうげきまるの顔から手を放した 。

「てて、てめぇは……こ、こっちに来んな! このっ このぉっ!!」

 マッハブルコンボスは真っ赤なハンマーを手に取り、頭上のなにかを振り払うようにブンブンと大げさに振り回し始めた。

「や、やめろ、来るんじゃねぇ~っ!!!」

 トン・カバチョの叫び声と同時に、マッハブルコンボスがハンマーを振り回した勢いで、ドテーンと仰向けに倒れてしまう。

「ど、どうなってんの……?」
「ハエだああああああああああーっ!!!」

 マッハブルコンボスが仰向けのまま、必死になって両手足をバタつかせている。

「こ、ここまで虫が怖かったのか……!」

 呆気に取られていたぼくの耳元に、ココの声が届いた。

「ワタル! なんだかわからないけど、今がチャンスだー!!!」
「そうだね……よーしっ!」

 再び龍激丸りゅうげきまるを大空へ飛び上がらせ、マッハブルコンボスを鋭く見下ろした。

「いこう、龍激丸りゅうげきまる!」

 声を受けた龍激丸りゅうげきまるが、龍激砲の砲身を引き抜くと、二本の鋭い剣が姿を現す。
 ぼくは龍激丸りゅうげきまるを地上のマッハブルコンボスに向け、一気に降下させた。
 背中に広がるふたつの大きな翼が太陽のように光を放つと、龍激丸りゅうげきまるはどんどんスピードを上げていく。
 龍激丸りゅうげきまるの接近に気が付いたマッハブルコンボスは、大急ぎで立ち上がった。

「ま、待てカバ野郎……っ!!!」

 トン・カバチョの声にも止まることなく、ぼくは七魂の剣を頭上に構えた。

「必殺…………っ!」

 七魂の剣は光に包まれ、二本の炎龍剣えんりゅうけん に変化する。
 ぼくが両手を大きく広げ、炎龍剣えんりゅうけん を構えると、剣身から激しい炎が立ち昇った。

炎龍剣えんりゅうけん ――――――――っ!!!」

 龍激丸りゅうげきまるが、燃え盛る二本の炎龍剣えんりゅうけん に下降してきた勢いを乗せ、マッハブルコンボスに振り下ろす!
 マッハブルコンボスの巨体には、二本の炎の太刀筋が走った。

  ――― ドッカーーーーーーーーーーーン!!!!!

「そんなカバな ――――――――っ!!!」

 マッハブルコンボスが大爆発を起こし、トン・カバチョは勢いよく空の彼方に飛んでいった 。
 龍激丸りゅうげきまるは空中で炎龍剣えんりゅうけん を両肩の鞘に戻す。

「やったね、龍激丸りゅうげきまる!」

 ぼくは笑顔で龍激丸に声をかける。
 戦いを見守っていたみんなから、安心と喜びの混じった歓声が上がった。
 虎王や先生、ヒミコたちも一緒にニコニコとしているのが見える。

「ワタルー!」

 その中にいたココが、ぼくに向かって大きな声で嬉しそうに叫ぶ。

『ワタルーっ! ありがとなー!!!!!』

 嬉しそうなココの姿を見て、ぼくの胸がじんわりと熱くなった。

「ココ……っ!」

 龍激丸りゅうげきまるは突然静かに上昇すると、空中でふたつの翼を目一杯に広げた。

「どうしたの、龍激丸りゅうげきまる……?」

 ぼくが戸惑っていると、龍激丸りゅうげきまるの翼から猛烈な光が放たれ、まるで雨のように小さな粒となってアニマランドに降り注いだ。

  ――― ゴゴゴゴゴゴゴ……

 海岸線に立つドケドケ建設の大きなビルが轟音と共に倒れていく。
 コンクリートに覆われた地面の下から、 めちゃめちゃ巨大な木がみるみる天に向かって伸びていった。
 四方八方に広がる枝の先には、美しい黄金の花がみるみるうちに 咲き誇っていく。

「あれは……っ!?」

『龍樹の木だーっ!』

 誰かが上げた声をきっかけに、地上のみんなが雄叫びのような大歓声を上げた。
 地面からは小さな植物が次々と伸びてきて、あちこちで大木が空に向かって勢いよく伸びていく。
 ドケドケ建設に壊され、ボロボロになったアニマランドが、息を吹き返していく。

「これが、奇跡の龍樹の力なんだ……っ!」

 あまりにも壮大な光景を前に、ぼくは圧倒された。

「あそれっ、カーナマ! カーナマ! カーナーマー!」

 自然が復活したことを祝って、ココたち獣人のみんな は島を上げての大きなお祭りを開いた。
 ヒミコや先生、虎王も一緒に踊りの輪に加わって、楽しそうに踊っている。

「ほれ、カーナマ! カーナマー! キャハハハハ!」
「本当に最高の宴じゃのう! あそれっ、カーナマー!」
「オレ様は少し恥ずかしいぞ……」

 ぼくはその輪の外で美味しいバナナジュースを飲みながら、ひと休みしていた。
 ココがぼくの隣りにやって来て、少し気まずそうにこちらを向いた。

「ワタル、ちょっといいかな……?」
「そんな顔して、どうしたの?」

 ぼくがたずねると、ココが指で頬を掻きながらポツリと言う。

「お前に、謝っておきたくてさ……」
「え?」

 ココはぼくの目を、まっすぐに見つめて来た。

「オイラ、人間はみんな悪いヤツだと思ってたんだ。だけど、ワタルたちは……この島を救ってくれた!」

 ココはぼくに対して、深々と頭を下げた。

「さっきは、ひどいことを言ってごめん! 」
「ココ、謝らないで」

 ぼくはココの手を取って、笑いかけた 。

「ぼくたちは、カナマの絆で結ばれてるんだから!」
「ワタル……!」
「ココ、一緒に踊ろう!」

 ぼくの誘いに、ココが耳を元気にピンと立ち上げて応えた。

「ああ、そうだな!」

 ぼくはココと一緒に、みんなの踊りの輪に入った。

「あそれっ、カーナマ! カーナマ! カーナーマー!」

 みんなでウサギのようにぴょんぴょん跳ねてみたり、ゴリラのように胸を叩いたりするうちに、ぼくとココは笑いながら踊っていた 。
 その途中、ココがハッと目を見開いて足を止めた。

「おい、ワタルの頭が消えかかってるぞ!? 」
「ん?」

 戸惑うココの表情を見て、ぼくはすぐに『その時』が来たんだとわかり、踊るのをやめた。

「これで、お別れみたいだね……」

 ココは驚いた様子でぼくを見つめた。

「どういうことだよ、ワタル!?」

 先生とヒミコ、虎王も踊りながら姿が消えていく。

「出来ることなら、もう少し踊っていたかったのう!」
「キャハハハハ! カーナマ! カーナマ! カーナーマー!」
「おいヒミコ、オレ様の足を踏むなっ!」

 ぼくはココをしっかりと見つめ、言った。

「 ココ……いつまでも、元気でね」

 ようやくココも別れを悟った様子で、ぼくに応えた。

「ワタル……またな!」
「……うん!」

 ぼくの身体はどんどん薄くなり、ココの前から今にも消えそうになっている。
 最後にココは、今までで最高の笑顔を見せてくれた。
 ぼくたちの間に生まれたカナマの絆は、きっといつまでも消えないはずだ。
 アニマランドから姿を消したはずのぼくの耳には、不思議とみんなの楽しい掛け声が聞こえ続けていた。

(つづく)


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著者:小山 眞


次回7月2日更新予定


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